本谷有希子のレビュー一覧
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『2001年宇宙の旅』を想起させる結末で、『2001年宇宙の旅』が突出したSF小説だったように、本作の突出したディストピア世界観に、僕はもう追いつけない。
Windows95の出現を社会人として経験し、トラディショナルな価値観の下で人生を過ごした自分には理解できないところに、まさに世間は到達しているんだと思った。
今も昔も自意識も承認欲求もない人間はいないが、世の中には不条理があり、不条理に向き合った時、SNS以前の青年はうつむくことしかできなかった。本書を舞台に現在を生きる彼・彼女らはSNSで発信することでそれらと向き合う。ディスプレイに表示される共感を得ることで身を律していくんだろ -
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2匹の蛇が互いに食い合うように、夫婦も少しずつお互いを食って、お互いに似ていって、お互いではないものになっていく。
「あの夫婦って見た目も似てるよね」という、多くの人が見聞きしたことある言葉の中には、実はこんな奇譚があるのかもしれない。
人間社会はクイズ番組なのだと思った(気が付いた?)主婦、山奥の小屋で不思議な犬たちに囲まれて生活する男、「藁の夫」との結婚は何も間違っていないと感じる妻。
どの物語も、ベースにあるありふれた生活風景が見事に奇譚・寓話として仕上がっているので、気味が悪いと思いながらも、「もしかして」という気持ちになるから面白い。 -
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ネタバレ個人的には結構好きだった。
私は躁鬱じゃないけどヒステリックなので共感部分が多かった。
だいぶ今は落ち着いたけど昔の自分を見てるみたいだった。
私が必死な分同じ温度感で返してほしいのもわかる。楽しようとしないで。
ただ津奈木と寧子はいいバランスだったのかもしれないなと思う。味が濃い部分、薄い部分いい感じに調和できればよかったのかな。私は津奈木よりもう少し濃いけど自分より薄い人がいいんだろうな〜
あたしはあたしと別れられない。本当にこんな自分1番嫌なのに止められない。酷いこと言いながら泣いてしまったり…不器用すぎてハグ。
お互いを分かち合うことを富嶽三十六景の北斎と富士山に例えるの文学って感 -
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手元のスマホで24時間365日承認欲求マウントバトルに明け暮れる女性の話。
記入ハラスメント、承認欲求テロ、ニメーバ、自分自身より大事なスマホッ。、もう二度とSNSができない身体にしてほしい…パンチラインの連続。
フォロワーの数がその人の価値であると信じていたのに(信じているふりをしていたのに)実際にそうなってみればフォロワー数なんて救いにも希望にもならない現実に直面する。フォロワーが増えたところで人生も世の中もクソのまま。かと言ってスマホを捨て去る、アカウントを削除することはできない。
中盤までは面白い。終盤は微妙。ラストは映画2001年宇宙の旅みたい。 -
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岸本佐知子さんの編んだ書き下ろしアンソロジー、タイトルに惹かれてまず読んだ津島佑子の短編「ニューヨーク、ニューヨーク」が素晴らしかった。読みながら、読み終わってから、幾つものことを思った。
「ニューヨークのことなら、なんでもわたしに聞いて。それがトヨ子の口癖だった、という」冒頭のセンテンスを読んで、わたしも数年前の夏に数冊の本を読むことで行ったことのない「ニューヨークのことはもう分かった」と嘯いたことを思い出す。そこには彼女がニューヨークを思うのと同じように個人的で特別な理由があったのだけど。
その後に元夫と息子がこの世にいない彼女について語り合うことで明らかになり“発見”される、今まで知り得 -
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ネタバレ自分を好きになる…ということは、少なくとも現時点では自分のことを好きではないということだろう。僕は自分が嫌いだし、他の誰かのことだって、手放しで好きだと宣言できるほど好きな人なんて…いない、いなかったと言い切ってしまうのは正確ではないし、何よりそんなことを口にしてしまったら、きっと悲しくなってしまう。好きな人は、いたこともあったけれど、たいていの場合刹那的なもので、うやむやになってしまうか、こっぴどい幕切れとか、後々思い出したりして、良かったな、なんて思い出など数えるほどもない。そもそも思い出になってしまった時点で、僕には芳しくない結果だったと証明しているようなものだ。僕にとって望ましい結末と
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こんなことって、現実にあるのかな?
なんか、ありそうで怖い。
人から承認欲求を満たしてもらわないと、
生きられない人間って…
悲劇だな。
滑稽とも言える。
他人事ならね。
普通は気づくよね?
周りの人の反応で、自分に才能があるかどうかって。
わからなくて突っ走る。
25歳くらいまでなら、有り得るかも。
その頃までって、意外と自分のこと、
よくわかってなかったりするから。
1番最後が救い。
やっと本当の人生を始められる。
だから、読後感はそんなに悪くはない。
本当に、自分で自分のこと認められないって、本当に悲劇だね。
身に沁みてわかったわ。
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