本谷有希子のレビュー一覧

  • セルフィの死

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     『2001年宇宙の旅』を想起させる結末で、『2001年宇宙の旅』が突出したSF小説だったように、本作の突出したディストピア世界観に、僕はもう追いつけない。
     Windows95の出現を社会人として経験し、トラディショナルな価値観の下で人生を過ごした自分には理解できないところに、まさに世間は到達しているんだと思った。

     今も昔も自意識も承認欲求もない人間はいないが、世の中には不条理があり、不条理に向き合った時、SNS以前の青年はうつむくことしかできなかった。本書を舞台に現在を生きる彼・彼女らはSNSで発信することでそれらと向き合う。ディスプレイに表示される共感を得ることで身を律していくんだろ

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    2025年05月08日
  • 異類婚姻譚

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    2匹の蛇が互いに食い合うように、夫婦も少しずつお互いを食って、お互いに似ていって、お互いではないものになっていく。
    「あの夫婦って見た目も似てるよね」という、多くの人が見聞きしたことある言葉の中には、実はこんな奇譚があるのかもしれない。
    人間社会はクイズ番組なのだと思った(気が付いた?)主婦、山奥の小屋で不思議な犬たちに囲まれて生活する男、「藁の夫」との結婚は何も間違っていないと感じる妻。
    どの物語も、ベースにあるありふれた生活風景が見事に奇譚・寓話として仕上がっているので、気味が悪いと思いながらも、「もしかして」という気持ちになるから面白い。

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    2025年05月07日
  • 生きてるだけで、愛。(新潮文庫)

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    ストーリーとしては大きな物語はないが、文体の面白さと鬱のリアルな心情が描かれていて良い作品だと思った。この感じの女性に出会ったことがあり、記憶が呼び起されてしまう。あの時、彼女の内側で起こっていた波が理解できて学びが多い一冊だった。

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    2025年04月14日
  • 異類婚姻譚

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    【フレーズメモ帳】
    蛇ボールの話、知ってます?二匹の蛇がね、相手のしっぽをお互い、共食いしていくんです。どんどんどんどん、同じだけ食べていって、最後、頭と頭だけのボールみたいになって、そのあと、どっちも食べられてきれいにいなくなるんです。分かります?なんか結婚って、私の中でああいうイメージなのかもしれない。今の自分も、相手も、気づいた時にはいなくなってるっていうか。

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    2025年04月09日
  • 静かに、ねぇ、静かに

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    SNSにまつわる短編3編。
    人のしたたかさ、ズルさがにじみ出ている。
    特に開き直った人の恐ろしさが生々しい。
    切羽詰まった時の行動も興味深い。
    ドロドロしていながらも後味は不思議と悪くない。
    新鮮な読後感。

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    2025年03月09日
  • 生きてるだけで、愛。(新潮文庫)

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    「あたし」は「あたし」と一生別れることができない。そうなんだよ、寧子、分かるよ、私もそれが悩みなんだよ。

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    2025年03月01日
  • 異類婚姻譚

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    再読。現代の怪談のような小説。どれも面白くてすいすい読めた。〈犬たち〉の裏テーマのようなものがよくわからず、他の人の感想や考察を聞いてみたくなった。この短編のタイトルだけ〈〉で閉じられているのも不思議。

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    2025年03月01日
  • セルフィの死

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    フォロワー数がその人の価値。ABEMAのバラエティ番組『チャンスの時間』で千鳥ノブがネタにしているこの言葉に本気ですがってしまった人が辿る末路。自意識と客観視の狭間で苦しみまくった挙句に「もう二度とSNSができない身体にしてほしい」まで到達しちゃうのだからさぁ大変。いわゆる承認欲求を悪い目線で揶揄する話なわけだが、こういう文章を書かせたら本谷有希子の右に出る者はマジでいないと思う。

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    2025年02月11日
  • セルフィの死

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    久しぶりに本谷ゆきこの著書を見つけ、嬉々として手にした。
    各章の数字は、なんなんだろう、とずっと思いながら読んで、わからないまま読み終えて、コレを書き始めて、もしかしてフォロワー数?
    店員さんにマウント取ることが生き甲斐的な主人公。その振る舞いの気持ち悪さに震撼したが、章が進むにつれ、SNS中毒の人の苦しみや葛藤(みんながみんなそんなに思慮深いわけではないだろうが)を読み進めるうちに、なんか、共感できるは部分があるような気がしてきた。かな?
    本谷さんの文章は、難しいところも多いけど、好きです。

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    2025年02月06日
  • 異類婚姻譚

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    カップルは顔が似るというあるあるをよくここまで広げられたなと。猫のおしっこってそんな臭いんだ、知らなかった。

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    2025年02月06日
  • 嵐のピクニック

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    ネタバレ

    1番初めの章は現実的な怖さで好みだった
    たくさんの短編が詰まってどれも不思議な非現実的な話だったりして面白かった。

    特におさるの話が好きでした。

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    2025年02月04日
  • 生きてるだけで、愛。(新潮文庫)

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    ちょっと苦しくなったけどいい本。

    こういう子と付き合うには白身な性格のこの男みたいじゃなきゃだめなのかも。

    この人の本もっと読んでみたい。

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    2025年01月30日
  • 生きてるだけで、愛。(新潮文庫)

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    ネタバレ

    個人的には結構好きだった。
    私は躁鬱じゃないけどヒステリックなので共感部分が多かった。
    だいぶ今は落ち着いたけど昔の自分を見てるみたいだった。
    私が必死な分同じ温度感で返してほしいのもわかる。楽しようとしないで。
    ただ津奈木と寧子はいいバランスだったのかもしれないなと思う。味が濃い部分、薄い部分いい感じに調和できればよかったのかな。私は津奈木よりもう少し濃いけど自分より薄い人がいいんだろうな〜

    あたしはあたしと別れられない。本当にこんな自分1番嫌なのに止められない。酷いこと言いながら泣いてしまったり…不器用すぎてハグ。

    お互いを分かち合うことを富嶽三十六景の北斎と富士山に例えるの文学って感

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    2025年01月19日
  • セルフィの死

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    手元のスマホで24時間365日承認欲求マウントバトルに明け暮れる女性の話。

    記入ハラスメント、承認欲求テロ、ニメーバ、自分自身より大事なスマホッ。、もう二度とSNSができない身体にしてほしい…パンチラインの連続。

    フォロワーの数がその人の価値であると信じていたのに(信じているふりをしていたのに)実際にそうなってみればフォロワー数なんて救いにも希望にもならない現実に直面する。フォロワーが増えたところで人生も世の中もクソのまま。かと言ってスマホを捨て去る、アカウントを削除することはできない。

    中盤までは面白い。終盤は微妙。ラストは映画2001年宇宙の旅みたい。

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    2025年01月19日
  • セルフィの死

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    主人公に共感できなすぎて新鮮。痛々しさや醜悪さがクセになる。病んでる人しか出てこない。病んでる人は病んでる人としか出会わない。

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    2025年01月12日
  • セルフィの死

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    常に他人に攻撃して、その実自分も攻撃していて、更に読者も攻撃するような。
    攻撃力が高い。

    弱いのに強い、とか。弱いから強く見せてるのかとか。
    そんな矛盾とか複雑さをずっと感じながら読んだ。

    自分の価値や居場所をなにかに委ねながら生きる辛さは計り知れないだろうなと他人事みたいに思うのに、何故かあぁ分かるなって感じる部分もあって、本当にチクチクと抉られるような具合で最後まで読み通しました。

    過剰な思考。よかった

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    2024年12月26日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    岸本佐知子さんの編んだ書き下ろしアンソロジー、タイトルに惹かれてまず読んだ津島佑子の短編「ニューヨーク、ニューヨーク」が素晴らしかった。読みながら、読み終わってから、幾つものことを思った。
    「ニューヨークのことなら、なんでもわたしに聞いて。それがトヨ子の口癖だった、という」冒頭のセンテンスを読んで、わたしも数年前の夏に数冊の本を読むことで行ったことのない「ニューヨークのことはもう分かった」と嘯いたことを思い出す。そこには彼女がニューヨークを思うのと同じように個人的で特別な理由があったのだけど。
    その後に元夫と息子がこの世にいない彼女について語り合うことで明らかになり“発見”される、今まで知り得

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    2024年11月13日
  • 自分を好きになる方法

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    ネタバレ

    自分を好きになる…ということは、少なくとも現時点では自分のことを好きではないということだろう。僕は自分が嫌いだし、他の誰かのことだって、手放しで好きだと宣言できるほど好きな人なんて…いない、いなかったと言い切ってしまうのは正確ではないし、何よりそんなことを口にしてしまったら、きっと悲しくなってしまう。好きな人は、いたこともあったけれど、たいていの場合刹那的なもので、うやむやになってしまうか、こっぴどい幕切れとか、後々思い出したりして、良かったな、なんて思い出など数えるほどもない。そもそも思い出になってしまった時点で、僕には芳しくない結果だったと証明しているようなものだ。僕にとって望ましい結末と

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    2024年10月14日
  • 静かに、ねぇ、静かに

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    これはもう、タイトルが素晴らしいのひと言。
    もちろん中身も大事だけど、「タイトルは最初の一行目」という言葉にもあるように、とても大事。

    時々本屋で見かけただけなのに妙に頭から離れてくれないタイトルとかたまにあるけど、それってもうそれだけでものすごい存在感な訳です。

    S 静かに
    N ねぇ、
    S 静かに

    この本谷有希子さんのセンス、素晴らしすぎる。
    頭文字にしている上に、SNSというモノを上手に表現していて…こういうの大好き。

    初めてそういう意味なのだと知った時からずっと驚愕している。

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    2024年10月08日
  • 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

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    こんなことって、現実にあるのかな?
    なんか、ありそうで怖い。

    人から承認欲求を満たしてもらわないと、
    生きられない人間って…

    悲劇だな。

    滑稽とも言える。

    他人事ならね。


    普通は気づくよね?

    周りの人の反応で、自分に才能があるかどうかって。

    わからなくて突っ走る。

    25歳くらいまでなら、有り得るかも。

    その頃までって、意外と自分のこと、
    よくわかってなかったりするから。

    1番最後が救い。

    やっと本当の人生を始められる。

    だから、読後感はそんなに悪くはない。


    本当に、自分で自分のこと認められないって、本当に悲劇だね。

    身に沁みてわかったわ。

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    2024年08月06日