【感想・ネタバレ】あなたにオススメののレビュー

あらすじ

身体に埋め込んだチップで複数の娯楽を同時に楽しむ時代。子供達の将来の夢は「ええ愛」が大人気。完璧な等質教育で名高い保育園で、オフラインに拘るママ友の観察は最高のエンタメだった…。「推子のデフォルト」ほか、マンション最上階に住む家族を滑稽に描く「マイ・イベント」を収録。世界が注目する作家がえぐり取る最恐リアルな全2編!

スマホ依存、管理教育……私たちはどこへ向かうのか?
本谷有希子が愛用するAI・マルスラによる解説を収録。

「推子のデフォルト」
子供達を<等質>に教育する人気保育園に娘を通わせる推子は、身体に超小型電子機器をいくつも埋め込み、複数のコンテンツを同時に貪ることに至福を感じている。そんな価値観を拒絶し、オフライン志向にこだわるママ友・GJが子育てに悩む姿は、推子にとっては最高のエンターテインメントでもあった。

「マイ・イベント」
大規模な台風が迫り河川の氾濫が警戒される中、防災用品の点検に余念がない渇幸はわくわくが止まらない。マンションの最上階を手に入れ、妻のセンスで整えた「安全」な部屋から下界を眺め、“我が家は上級”と悦に入るのだった。ところが、一階に住むド厚かましい家族が避難してくることとなり、夫婦の完璧な日常は暗転する。

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Posted by ブクログ

2016年に「異類婚姻譚」で第154回芥川賞を受賞した本谷有希子さん。
舞台演出家としての顔を持ち、他にも数多くの文学賞を受賞している作家でありながら、実はこれが初読となります。
文学フリマで ご本人さんが売ってらしたので
この機会にと。

「芥川賞作家」という印象から、純文学的な方向を構えて読み始めましたが、本作はむしろテンポ良く読み進められるタイプ。
少しSF的な設定の不穏さと、現代的なコミカルさが交錯し、エンタメ作品らしい面白さも強く感じられました。

「推子のデフォルト」
近未来の日本と思われる、ごく普通の家庭が描かれていきます。
社会問題としても語られるオンライン依存や、SNSでの承認欲求がテーマに置かれているように見えますが、作者はそこに説教じみた暗さを持ち込まない。
むしろ、テクノロジーに純粋に傾倒していく空気感を、軽快さとポップなユーモアで包み、世界観に没入させてくれます。
「現実から乖離する怖さ」のはずなのに、どこかコメディっぽい。その新鮮さがこの作品の魅力だと感じました。
私たちの“今”がもうすでにSFの世界の入口に立っているのかもしれない。

「マイ・イベント」
分譲マンション最上階に暮らし、“自分の生活だけ”を何よりも重視する男が主人公。
石橋を叩きすぎて叩き壊すほどに慎重で、社会との接触を避けながら、極めて個人的な満足を積み上げて生きている。
その偏執的な生活ぶりは、小気味よくリズミカルである一方、読者の心のどこかをざわつかせる。
しかしその「小気持ち悪くて、気持ち良い」感覚こそ、作者の筆致が光るところ。
彼にとっては、自分の生活こそが一大イベント。そんな歪で愛おしいエゴが、ちぐはぐな現代社会と絶妙な距離感を読める。

純文学とエンタメのすごく良いとこらへんを
漂っている感じ。もう少し読んでみようかな。

0
2025年11月30日

Posted by ブクログ

最高に不愉快な気持ちになれる中篇2作。
個人的には2篇目がより印象に残った。語り手含め、皆が自己中心的な人物で、どう転ぶかが全く掴めなかった。語り手の考えがところどころ理解できたかと思えば、すぐに自分の理解の先にいってしまって面白かった。

0
2025年11月25日

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