穂村弘のレビュー一覧
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不器用さの果てに
穂村弘さんは、常に社会における「まともさ」「当たり前」「こうあるべき」などと戦っている。そして、穂村さん的には、大抵「負けている」。
私は穂村弘さんのファンで、エッセイはほぼ読んでいるが、最近の穂村さんは、社会に負けつつも、小さな小さな勝利を自分なりに見出してきたのではないだろうか。
それは社会にうまく馴染めない同志達を強くする。独りで戦って、ボロボロになりながら、「それ、おかしくないか、、?」と、ボソボソと負けを負けとして終わらせない精神力で、私達の道を切り開いてくれるような。
生き方が下手。社会に認められなくて辛い。人間関係がうまく掴めない。そんな私達でも大丈夫。そんな気にさせてくれる -
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ネタバレ「他人という存在の扉を叩く行為は本質的には常に恐ろしい。何故なら、他人とは、自分とは異なる命の塊だから。そこには眩しいほどの未知性が詰まっている。それこそが恐怖の源であり、同時に喜びの源でもあるのだろう。」(他人に声をかける p.27)
「蜻蛉を喰いたいと蛙が云うのだ。おたまじゃくしの仇を討つと(中村みゆき)」(ヤゴと電卓 p.68)
「飲みこみて残らぬことの多しといふ血のつきたる猫の乳歯拾ひつ(横山未来子)」(落ちている p.107)
「だから、わたしは過去に遡って「これ以外の今」に辿り着く可能性を探さずにいられなかった。ドミノ倒しが別の道に向ってゆくような運命の分岐点を探していたのだ -
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ネタバレ歌人穂村弘による短歌の創作論集。実作演習など詩や小説を書く時にも役立つ要素がいっぱいある。
<印象的な箇所のまとめ>
・愛情や善意だけでは、詩として見た時、物足りない。世界には明らかにもう半分があって、そこには不吉な暗いものが充ちているんだっていうことを同時に感じさせる詩がやはり本物。
・オートマティックからの離脱が必要。オートマティックというのは、自分で書いているつもりで実は何かに書かされてる言葉なのでよくない、ということ。
・短歌においては時に意味以上に韻律感(リズム)が重要。
・普通の文章なら説明する。短歌の場合は説明してしまうことで詩的インパクトが弱まってしまうことがある。
・共感と -
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ネタバレ紛れもなく天才だ。ほむほむ(親愛をこめて)は、言葉を操る天才だ。短歌という、マゾヒズムとしか思えないような制約を設けて「表現」をする「歌人」という肩書きを持つ人間というのは、かくも変態でないとなり得ないのか。そうにちがいない。絶対そうだ。
ボウリングでストライクを出してもガッツポーズできない姿。かっこわるい怒り。おしっこを膀胱から膀胱へ飛ばす(妄想)。まどろっこしいナンパ(妄想)。「お互いに高め合う」恋愛への懐疑。コロンビア・ナリニョ・スプレモを云えたよ。『小太り』な文体。「自分がもしも本当の自分だったらきっとこうなるであろう本棚作り」。嗚呼いとおしすぎる!母性本能がゲラゲラ笑っちゃうくら -
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卵産む海亀の背に飛び乗って手榴弾のピン抜けば朝焼け 穂村弘
白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ 若山牧水
その川の赤や青その川の既視感そのことを考えていて死にそこなった 早坂類
うつくしい午前五時半ころころと小石のように散歩をします 〃
さみだれにみだるるみどり原子力発電所は首都の中心に置け 塚本邦雄
廃村を告げる活字に桃の皮ふれればにじみゆくばかり 来て 東直子
なにゆゑに室は四角でならぬかときちがひのやうに室を見まはす 前川佐美雄
イヌネコと蔑して言ふがイヌネコは一切無所有の生を完うす 奥村晃作
枕木の数ほどの日を生きてきて愛する人に出会わぬ不思議 大村陽子
面白い、