穂村弘のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『ダ・ヴィンチ』誌上で今も連載されている、穂村弘さんが読者から募集した短歌を選び、評する「短歌ください」。人気シリーズ第三弾の文庫化。
歌人の穂村さんが、読者から寄せられた短歌を評する「短歌ください」の文庫化第三弾です。今回も面白い。
それぞれの短歌の短い文中にぎゅぎゅっと詰められた、作者さんごとに違う言い回しや世界観。日本語って本当に色々な表現方法があって、軽やかだったり重厚だったり自由で大好き。
個人的に気に入った歌をいくつか。
「半ドンの日は掃除機をかけながらママとチャーハンが待っている家」(こずえさん、テーマ「昭和」)
チャーハンのリアリティ。初夏の日差しの香りもしそう。
「余 -
Posted by ブクログ
短歌を読むこと、特に歌集が、あまり得意ではないのです。好きではあるはずなんだけど。
1ページに何首も並んでるのを見ると、ペース配分に困ります。いいねーステキ、これ好き、わあすごい!ぜんぜんわからん、はいまたステキ、では次、と行き過ぎちゃう。
読み方が雑すぎる!と反省してじっくり感じ入って読もうとすると、今度は振り回されて疲れちゃう。
ふいに心を刺されて泣けるかと思えば、全然わからなくて疎外感しかないのもある。この乱高下から適切な距離感を見いだすにはどうすればいいの…
そんな私にとって、とてもありがたい本でした。
本の流れに視線を任せるだけで、読むことに焦らなくてすむのがうれしい。
まず口 -
Posted by ブクログ
緑内障になったと同時に自身の弱さを吐き出し
不安なこと、いまの思いを正直に書き
読者に届けてくれた。
眼科医の後藤先生、精神科医の春日先生との対談は
わかりやすく、読者が疑問に感じていることを
種村さんが代わりに問いかけて安心感を与えてくれる。
P.078
〈究極的には『どうせ死ぬんだから何でもやればいいんだ』
という話になりますが、
そうは言ってもなかなか踏ん切りがつかないものです。
『恥をかいたら嫌だ』という気持ちも絶対あるわけですから〉
その一歩が踏み出せない。
そういうことは多々あるけれど
エッセイを読み、少しだけ勇気をもらいました。 -
Posted by ブクログ
歌人・穂村弘さんが、自身の緑内障や家族、これまでの半生のことについて語った本書。
著作をコンプリートしていない穂村ファンとしては、穂村さんの上半身が(エッセイのなよなよしている印象とは裏腹に)しっかりされている理由がわかって嬉しかった。
そうか、若い頃のベンチプレス!
「シンパシー/ワンダー」、「生きる/生きのびる」のおはなしも改めて聞かせていただき、再確認した。
緑内障の主治医の後藤克博先生、長年のご友人で共著も出されている春日武彦先生との対談も興味深かった。
調べると、後藤先生は短歌好きで、歌集も出されているようだ。読んでみたい。
瞳を巡る短歌、という、瞳に特化した他の歌人の短歌の短い紹 -
Posted by ブクログ
最近読んだエッセイのなかでは一番面白かった。「毎年、半袖に着替えるのが人よりも一日だけ遅れる」とか、「猿みたいにウキウキ言いながら初めて携帯電話を買う」とか、「一刻もはやく面白い映画を観終わった後の自分になって安心したい」とかが、情けないのに共感できた。映画については、最近『国宝』を見た時に同じことを思ったかも。いや、あれは上映時間が長すぎてトイレに行きたかっただけか。
しかし、生きることのむずかしさや非モテを嘆く人が、ふたを開けてみたら結婚しているとがっかりしてしまう(後半以降でしれっと「妻」の存在が明らかになる)。一生不幸でいてほしいわけでも、ましてや穂村弘ガチ恋勢でもないが、「なんだ、結 -
Posted by ブクログ
意外に面白かった。
もっと嫌になるかと思ったからだ。
私は主人公よりもその妻に近いところにいる。
2人にとっての真実がどこにあるかはわからないから、ここでその是非を問うても意味はないだろう。
そもそも、人と人との関係において正しさは無力で、正しくても正しくなくても暮らせないものは暮らせない。そして、自分がどうしても子供を失いたくないと思えば、正しくないことだって私ならするなと思った。
ただ、著者はおそらくとても正直な人で、ここに書かれたことは彼の世界の真実なのだということは信じられる気がした。
書評という体裁を取っていることは、私には功を奏しているように思えた。ことの顛末についてそのま