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人気歌人・穂村弘が選を務める短歌投稿コーナー(本の情報誌『ダ・ヴィンチ』連載)の書籍化第2弾が待望の文庫化。鮮やかな講評が、短歌それぞれの魅力をさらに際立たせる。
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Posted by ブクログ
渡り蝶に月電池を内蔵させる仕事は時給16ムーン 君よりも少しだけ長いお祈りで、君はわたしより幸せになる
「短歌ください」の第二弾です。 穂村さんの選ぶ歌はちょっと一癖ある歌が多い気がしました。 私の平々凡々な頭ではとても思いつかない歌ばかりだと思います。 現在、歌人としてご活躍中の木下龍也さん岡野大嗣さん、鈴木晴香さんらのご活躍もあります。 17歳の少年歌人として投稿されていた寺井龍哉さんが文庫の解...続きを読む説を書かれています。 とにかく、歌を載せますのでお時間のある方は読まれてみてください。 <革靴を買うと偽り二時間のロマンポルノを観た十五の夏> (寺井龍哉・男・17歳) <ともだちの家に今夜は泊まるけど何もいらないぜーんぶ借りる> (平岡あみ・女・16歳) <午前2時裸で便座を感じてる 明日でイエスは2010才> (直・女・17歳) <夏の日に山の手にある病院でたしかに野犬を見たのだけれど> (小川あい子・女・30歳) <あなたのそのキュピュンと光るつむじの中に吸い込まれそう雨上がったね> (深田海子・女・24歳) <俺なんかどこが良いのと聞く君はあたしのどこが駄目なんだろう> (泡凪伊良佳・女・16歳) <来年もよろしくと言ったあの人は知らないうちにオムレツの彼方> (エイシャ・女・22歳) <針に糸通せぬ父もメトロでは目を閉じたまま東京を縫う> (木下龍也・男・23歳) <おかあさん死なないでと掛け布団につかみかかる86歳のわたし> (滝谷脩紀奈・女・24歳) <幻か。愛していると思ってた。見たこともないこどものあなたも。> (ジュン・女・52歳) <パステルの黄色がみつからないのです、ちょうちょが白くて困っています> (いさご・女・22歳) <ともだちはみんな雑巾ぼくだけが父の肌着で窓を拭いてる> (岡野大嗣・男・31歳) <「そのコート素敵な闇の色ですね」君に心を持って行かれる> (えむ・女・21歳) <蛇口から銀河流れるシンクへと溜めた銀河でラディッシュ洗う> (九螺ささら・女・43歳) <答え合わせしてよ初めて愛すんだ空欄だけは無くしとくから> (ナルヒト・女・17歳) <あいつらが結婚したということでますます町は小さく見える> (ななはる・男・30歳) <死ぬときにこの手握ってくれる人募集中 すこし急いでいます> (つきの・女) <隣人にはじめて声をかけられる「おはよう」でなく「たすけてくれ」と> (木下龍也・男・24歳)
一般の方から募集した短歌と、穂村さんによる選評。 日常生活のささやかなことやディテールを通して普遍的なことが浮かび上がっていたりと、面白い作品が多くて、どんどん読んだ。選評があることで、その作品の面白さが引き立ったり、短歌の味わい方が掴めてきたりするのもいい。
掲載されている短歌自体も素晴らしいが、穂村弘の解説も凄い。一つ、紹介したい。 “君を待つ3分間、化学調味料と旅をする。2分、耐え切れずと目を覆い、蓋はついに暴かれた。” せつこという、当時15歳の女性が書いた短歌だ。定型から完全にはみ出したこの短歌に著者はこう書いている。 “カップラーメンの出...続きを読む来上がりが待てなくて2分で開けて食べちゃった。たったそれだけのことを、ここまでハイテンションに詠い切ったのは凄い。今度は五七五七七の短歌定型でつくってみてください。” 化学調味料と旅をする、っていう表現も斬新だが、蓋はついに暴かれた、っていう表現はもっと凄い。 先祖代々絶対開けてはいけません、と言われている開かずの扉が、ついに今開かれる、みたいな異様なテンションだ。表現力が素晴らしい。 あと、次の募集テーマが「バス」ということで、ブク友の5552が書いていたバス旅を俺もやってみたいと思い、昨日やってみた。 ユニクロへ行くだけの短時間の旅だったが楽しかったなぁ。「降りますボタン」も久々に押したし、懐かしい気持ちになれて良かった。たまには、馬ではなくバスにも乗ろうと思う。 バスの短歌のイメージもいろいろ湧いてきたからじっくり作っていきたい。
短歌はほんとうにたのしい! 小説も好きですが、好きなページから好きな分量だけ読んだり、何年も経ってから読替えして新鮮な感じ方をしたり、身に覚えのある感情を見事に57577にしている歌に胸を打たれて自分やそのときの感情についてやっと理解できたり。 言語化したり名前をつけたりするのは、良くも悪くもとても...続きを読む強い行為なのだと気付かされる。 言葉はとても強いものだから、だいじに扱っていこう。
本の情報誌、『ダ・ヴィンチ』の読者投稿企画の連載「短歌ください」の文庫化第二弾。 今回も面白い。掲載されている短歌の作者さんは比較的若い方が多く、自由で寂しくとても軽やか。短歌に添えられた穂村さんの一言が、また優しくて、歌がより味わい深くなります。 私はテーマ「性格」の回が好きです。31文字で、...続きを読む人の性格という繊細で複雑なものを表現できるのが素敵で惹かれました。 私は短歌を詠んだりする経験はあまりないですが、日常をこういった新鮮な観点で切りとり、言語化するという感性は磨いていきたいなと思います。
新鮮ではっとさせられる作品がたくさんありました。 読んでいて、そういうものの捉え方あるんだと知り、楽しくなる。
穂村弘(1962年~)氏は、札幌市生まれ、上智大学文学部卒、1986年に連作「シンジケート」で角川短歌賞次席(同年の受賞作は俵万智の『サラダ記念日』)、1990年代には加藤治郎、荻原裕幸等とともに「ニューウェーブ短歌」運動を推進した、現代短歌を代表する歌人の一人。エッセイスト、絵本の翻訳家等としても...続きを読む活動している。 本書は、月刊誌「ダ・ヴィンチ」に連載されている短歌投稿コーナー「短歌ください」の2010年11月号~2013年4月号をまとめた単行本を加筆・修正の上、2020年に文庫化したものである。尚、2008年5月号~2010年10月号をまとめたものも、2014年に文庫出版されている 私は50代の会社員で、最近短歌に興味を持ち始め、これまで俵万智、穂村弘、東直子、枡野浩一、木下龍也、岡野大嗣、九螺ささら等の歌集や短歌入門書、いくつかの現代短歌のアンソロジーを読み、半年ほど前から新聞短歌に投稿している(最近ぽつぽつ採用されるようにもなった)。 また、穂村氏の作品では、歌集『ラインマーカーズ』、入門書の『はじめての短歌』、『短歌という爆弾』、エッセイ集の『鳥肌が』(講談社エッセイ賞受賞)、『蚊がいる』、対談集の『あの人と短歌』等をこれまで読んできた。 本書については、以前より目にしつつも、せっかく読むならプロの歌集の方がいいだろうと思い、敬遠していたのだが、本屋でパラパラとめくってみると、木下龍也、岡野大嗣、九螺ささら、木下侑介など、後に歌集を出す人々の作品も多数含まれており、上記の2008~2010年のものと一緒に購入して丁寧に読んでみた。 読み終えてみて、若く、感性の鋭い人たちの歌には感心しきりなのだが、一方で、私が現在モチベーションとする新聞歌壇にはこうした歌はほとんど選ばれておらず、日常に起こったことを日記のように詠んだ歌が大半である。その背景としては、投稿者の母集団の年齢層が異なること(「ダ・ヴィンチ」は主に10~30代、新聞歌壇は主に50代以上、だろうか)が大きいと思われるが、また、選者も、媒体の性格や投稿者の母集団の指向を意識した上で、選んでいるのかも知れない。 そうした意味では、短歌とは様々な作風があり得る、実に幅の広いものだと改めて感じると同時に、若い人たちの感覚も取り込みつつ、色々な作風の歌を作れるようになりたいと思う次第である。 また、この「短歌ください」や、かつて枡野浩一が少女向け月刊漫画誌「キューティ・コミック」に連載していた短歌投稿コーナー(ここから加藤千恵や佐藤真由美が出た)が、こうした機会がなければ短歌に興味を持つことすらなかったかも知れない若手歌人の発掘に貢献しているというのは、実に素晴らしいことだと思う。 (2022年3月了)
極個人的な感覚だと思っていたものが、他の人によって鮮やかに言語化され、共有される驚きだったり、思いもよらない角度からのものの見方におお!となったり、かつて感じたことのある心の揺れがアルバムのように並んでいたり、31文字、季語がなくてOKな現代短歌の世界はとてもユニークで豊かでした。 このシリーズの他...続きを読むの本も、読んでみようと思います。 気になった短歌をいくつか さかあがり靴を飛ばして落下するもう懐かしい地上ただいま 明日からも生きようとする者だけが集う夕べのスーパーマーケット 戦争はもうなかったよ 飴を噛む六歳にとって私はおとな 煮え切らぬきみに別れを告げている細胞たちの多数決として
2021年の初読み本。 「短歌をください」はダ・ヴィンチの中で一番好きな連載ですが、2010年頃はまだダ・ヴィンチを読んでいなかったので、この本に掲載している短歌をよむのは初めて。 短歌は読んでいると、世界を他人の目線で見ている感覚になります。 夜に読んでいたからか、明るい短歌よりも薄暗い短歌の方が...続きを読む目に止まりました。 特に心に残ったのは 「ドトールなう」つぶやく君のドトールはここじゃないのかいまじゃないのか (p200)
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短歌ください 明日でイエスは2010才篇
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穂村弘
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