穂村弘のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ紛れもなく天才だ。ほむほむ(親愛をこめて)は、言葉を操る天才だ。短歌という、マゾヒズムとしか思えないような制約を設けて「表現」をする「歌人」という肩書きを持つ人間というのは、かくも変態でないとなり得ないのか。そうにちがいない。絶対そうだ。
ボウリングでストライクを出してもガッツポーズできない姿。かっこわるい怒り。おしっこを膀胱から膀胱へ飛ばす(妄想)。まどろっこしいナンパ(妄想)。「お互いに高め合う」恋愛への懐疑。コロンビア・ナリニョ・スプレモを云えたよ。『小太り』な文体。「自分がもしも本当の自分だったらきっとこうなるであろう本棚作り」。嗚呼いとおしすぎる!母性本能がゲラゲラ笑っちゃうくらいくすぐられている!
本著のおかげで短歌というジャンルに興味の幅が広がり、読みたい本がうんと増えました。ありがとうございます。 -
Posted by ブクログ
卵産む海亀の背に飛び乗って手榴弾のピン抜けば朝焼け 穂村弘
白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ 若山牧水
その川の赤や青その川の既視感そのことを考えていて死にそこなった 早坂類
うつくしい午前五時半ころころと小石のように散歩をします 〃
さみだれにみだるるみどり原子力発電所は首都の中心に置け 塚本邦雄
廃村を告げる活字に桃の皮ふれればにじみゆくばかり 来て 東直子
なにゆゑに室は四角でならぬかときちがひのやうに室を見まはす 前川佐美雄
イヌネコと蔑して言ふがイヌネコは一切無所有の生を完うす 奥村晃作
枕木の数ほどの日を生きてきて愛する人に出会わぬ不思議 大村陽子
面白い、面白いと読んでいたら、「終章」で涙がぶわわーと湧き出して。「宇宙とは何か、時間とは何か、生命とは何か。一刻も早くそれらを知らなければならない。そうしないと、このままでは、いつか僕はほんとうに死んでしまう」「不気味世界」「そして何よりも、これらの考えのすべては単なる自意識過剰な怠け者の妄想かもしれないのだった」「この不気味さには確かに何か意味がある。」 -
Posted by ブクログ
『テレビで海の番組を観る。
画面一杯に現れた大きな烏賊が真っ黒な墨を大量に吐いている。
ぶわぶわぶわぶわぶわぶわぶわ。
凄いなあ、と思う。
あれでお習字をしてみたい。
なんて書こう。
「いか」かな。
それから、蛸が出てきた。
やっぱり墨を吐いている。
ぶわぶわぶわぶわぶわぶわぶわ。
これも凄いなあ。
なんて書こう。
「たこ」。
と、みせかけて「いか」。』
『「うちがわからうちがわから」という呪文を習う。
そう云いながら、ヨーグルトを嘗めると美人になるらしい。』
「声をあげて、泣け。昔、私も数多くの失恋をした。片思いをした。破れるたびに、私はダルマのように、強くなった」
『快適さを追求している筈のホテルの部屋の殆どが、ひどく乾いているのはどうしてなんだろう。
小便小僧を設置すればいいのに。』
「失礼しました。当学院は校舎内での標準語の使用は原則的に禁じられているものですから」
「あ、そうなんですか」
「はい。標準語に頼らない環境をつくることで、生徒さんたちが少しでも早く関西弁に慣れることができるようにという配慮なんです」
「レッスン&リピート、パート1、ちゃうんとちゃうん」
「ちゃうんとちゃうん」
「ちゃうんとちゃうん、ちゃうんとちゃうん」
「ちゃうんとちゃうん、ちゃうんとちゃうん」
「いいですよ。その調子」
『子供が大人になるのは給食のせいだ、と教えてくれたことがあった。
給食のパンを毎日持ち帰って家の金魚にあげてたら、仔猫くらいの大きさになった、というのだ。
ユミコちゃんは声をひそめて云った。
「給食には大きくなる薬が入ってる。だから、みんな大人になるんだよ」』
『二十年ほど前の母に云われて驚いた言葉を思い出す。
「四捨五入ってなーに?」』
『テレビで世界陸上を観る。
実況中継なので、さまざまな種目がくるくると映し出されて、ついていけないことがある。
画面が切り替わった一瞬、これは男子? 女子? と迷う。
迷ったら女子、と唱えながら観る。』
『高松さんからメールが来る。
高松です。
今、高松にいます。
それだけです。』
『若い男の子に言われる。
「西さんは絶対いいお嫁さんになりますよ。」
うるせぇ。』