【感想・ネタバレ】短歌という爆弾 -今すぐ歌人になりたいあなたのために-のレビュー

あらすじ

人気歌人が放つ、衝撃の短歌入門書!

人気歌人、穂村弘による衝撃の短歌入門書が待望の文庫版を電子化。冷たく不気味な世界のすみっこで「短歌という爆弾」を炸裂させて、世界の心臓を爆破しよう。短歌の「製造法」(レッスン)、「設置法」(作った短歌をどう広めるか)、「構造図」(現代短歌の魅力の解剖)を、都市を疾走する歌人、穂村弘が熱く語る。文庫化にあたって、21世紀の短歌についての著者ロングインタビューを収録した。

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Posted by ブクログ

短歌を作るつもりは毛頭ないけど、筆者のエッセイのファンだったので読んでみた。短歌の作り方だけでなく、短歌を作っている人たちのコミュニティや自費出版のことなど、裏側の活動が知れて面白かった。
筆者のエッセイにみられるようなのらりくらりした文章は割と少なくて、特に筆者の短歌への熱い想いが語られている終章はシリアスで涙腺に来た。

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2024年07月21日

Posted by ブクログ

昨年の年末に、111108のレビューを読んで購入した。読みごたえがあって何度も読んだ。

一番印象に残ったのは、5552もレビューで書いていた「オートマティック」な感じになるのはだめというものだ。慣用句的な表現といっていいかもしれない。慣用句的な、みんなが使いそうな表現を使うと、オリジナリティが希薄になる、そんな内容を書いていて勉強になった。

2章の設置法では、歌集の作り方などを著者自身の経験をもとに書いている。歌集のタイトルは自分の名前とのバランスが大事など、他の短歌入門書ではあまり書いていないことも丁寧に書かれている。

3章の構造図は、いろんな短歌を分析している論文のようで少し難しいが、凄く深くて短歌を作るうえでとてもためになる内容だ。

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2023年02月12日

Posted by ブクログ

「何かをみつけるの何かって、いったいなんだ。これだというものって、いったいどれだ。今すぐにそれをやり始めて、世界と自分を決定的に変えられるような何かはどこに隠れているんだろう。
経験的に私が示せる答えがひとつある。それは短歌を作ってみることだ。案外そんなところに、「何か」は隠れているものではないか。
(中略)
その時々の景色や感情を封じこめるという点で、短歌は写真みたいなものであり、生き生きと想いを伝えられるという点で、手紙みたいなものでもありますね。
そしてぼくたちが大昔の歌に感動できたり、逆に未来の読者を夢見たりできるという点で一種のタイムマシンでもある。あと言っておきたいのは、今しか作れない歌が必ずあるということ」


なんとも私にとっては魅惑的な文章でした。
短歌は歌集を出そうとか、歌人になろうとか大きすぎる野望がなければ、誰でも挑戦できるジャンルだと思い、心が動かされました。
それ程までに、この本は面白く魅惑的なのです。

この本は短歌というものは何か知りたい人から上級者でプロを目指す人にまで向けて書かれています。


解説で枡野浩一さんが、
「短歌には興味がないが、穂村弘の顔やエッセイのファンであるというあなたや、短歌に興味を持ち始めたばかりで親切な入門書をさがしているあなたは、本書を買わなくていいかというと、買っておいたほうがいいと思う。
(中略)
本書は「短歌入門」のスタイルをとっているが、ほんとうは初心者向けではない。初心者には理解不能の言葉がたくさん書かれていると思う。初心者でない私にもいまだに理解しがたい部分もある。けれども、だからこそ、あなたは本書を買っておくべきだ。
今はよくわからなくても、本書に書かれていることが必ず必要になる日が来る。あなたが短歌または穂村弘に興味を持っている場合。「ああそういうことだったのか」と本書を読み返したくなる日が来るのです」
とおっしゃられています。


私は歌集の読み方の教科書として本書を買いましたが、確かにこの本は初心者には難しくてわからないところが多々ありました。でもこのまま飽きずに短歌を続けて読んでいけば、もう一度この本を読み、この本の言っていることがわかることもあるかもしれないと思います。


ご紹介下さった5552さん、とても興味深い本をありがとうございました。

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2023年02月05日

Posted by ブクログ

来月短歌入門教室に通う予定で予習のつもりで読んだ。
今すぐ歌人になりたいあなたのためにとあるのに、解説の方が、初心者向けじゃないですって。
ほんと、そうです。
メールレッスンはとても楽しそう。
批評会のお知らせは行きたくなっちゃう。
十二か月の歌はとても素敵。

覚書
短歌は写真みたいなもの 一種のタイムマシン
今しか作れない歌が必ずある 

その川の赤や青その川の既視感そのことを考えていて死に損なった 早坂類
好きだった世界をみんな連れてゆくあなたのカヌー燃えるみずうみ 東直子
ひどくあいしたあとはコーラの缶のあかビールの缶のぎんならぶだけ 加藤治郎
いいえいいえわたしはここに残ります割れたコーヒーカップ見つめ 東直子
かたむいているような気がする国道をしんしんとひとりひとりで歩く 早坂類

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2018年12月27日

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ネタバレ

歌人穂村弘による短歌の創作論集。実作演習など詩や小説を書く時にも役立つ要素がいっぱいある。

<印象的な箇所のまとめ>
・愛情や善意だけでは、詩として見た時、物足りない。世界には明らかにもう半分があって、そこには不吉な暗いものが充ちているんだっていうことを同時に感じさせる詩がやはり本物。
・オートマティックからの離脱が必要。オートマティックというのは、自分で書いているつもりで実は何かに書かされてる言葉なのでよくない、ということ。
・短歌においては時に意味以上に韻律感(リズム)が重要。
・普通の文章なら説明する。短歌の場合は説明してしまうことで詩的インパクトが弱まってしまうことがある。
・共感と驚き。素人になくてプロの作品にあるのは驚きである。読者より先にまず作者が自分で自分の作品に共感してしまうと、他人と共有できる感動を生み出せない。他人に共感するのに比べて、自分で自分の気持ちに共感するのはたやすい。この容易さは、自分自身の本当の心に向かって言葉を研ぎ澄ますということから限りなく遠いところにある。共感=シンパシーの感覚に対して、驚異=ワンダーの感覚とは、「今まで見たこともない」「なんて不思議なんだ」という驚きを読者に与える。

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2017年02月05日

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卵産む海亀の背に飛び乗って手榴弾のピン抜けば朝焼け 穂村弘 
白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ 若山牧水 
その川の赤や青その川の既視感そのことを考えていて死にそこなった 早坂類
うつくしい午前五時半ころころと小石のように散歩をします 〃
さみだれにみだるるみどり原子力発電所は首都の中心に置け 塚本邦雄
廃村を告げる活字に桃の皮ふれればにじみゆくばかり 来て 東直子
なにゆゑに室は四角でならぬかときちがひのやうに室を見まはす 前川佐美雄
イヌネコと蔑して言ふがイヌネコは一切無所有の生を完うす 奥村晃作
枕木の数ほどの日を生きてきて愛する人に出会わぬ不思議 大村陽子

面白い、面白いと読んでいたら、「終章」で涙がぶわわーと湧き出して。「宇宙とは何か、時間とは何か、生命とは何か。一刻も早くそれらを知らなければならない。そうしないと、このままでは、いつか僕はほんとうに死んでしまう」「不気味世界」「そして何よりも、これらの考えのすべては単なる自意識過剰な怠け者の妄想かもしれないのだった」「この不気味さには確かに何か意味がある。」

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2015年11月22日

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不安や衝動を歌にして爆弾とするための、方法ときっかけの話。
方法のところは多彩な歌人の作とともに熱心な解説がよめて初心者にもやさしい。
きっかけの話となる「終章 世界を覆す呪文を求めて」が一番印象的だった。人は何か熱狂的になるものを探して、そうと気付かずはまり込んで行くものなのかもしれない。いや、そうならいいと思った。

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2014年12月05日

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軽やかな穂村弘の文章を期待すると大火傷をします。こういう側面もあったのだなというかこちらが本体なのかもしれない。決して短歌の道は易しくないことを読者に伝えてくれる本。何度も読み直そうと思う。

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2025年08月02日

Posted by ブクログ

穂村弘さんの短歌入門書ですね。
まことさんのお薦めの本でした。読むのにかなり時間が掛かりましたが、興味深く読めました。
まことさん、ありがとうございます。

 入門書とありますが!歌人の為のステップ解説書と、短歌の構造別の解説書が主な主題ですね。
 穂村さんの圧倒的な短歌愛にあふれ、エネルギッシュに語りに騙ります。ただ、時代的に、巻末の対談で語られているように、この本が出された時代と、現在には些か温度差があります。それほど、短歌の世界も目まぐるしく進化を遂げているのに、驚きを感じます。
 私は、短歌のまだ素人ですが、その私にも、短歌の表現の自由さや世代の広がりを、短歌集に(まだ、それほど読んではいませんが)触れる事で、感じています。
 穂村さんのデビューのエピソードは面白く、ちょっとびびりました。短歌集デビューなどは、まだまだ先の事で(あり得ないかも)ビビる必要など無いのですが(笑い)。短歌仲間との楽しいエキゾチックな活躍も面白く拝見しました。
 解説は、穂村さんと感性の違いを感じながら読みました。実はこの解説が、この本の大半なのですが、私は「話し言葉」が当たり前の短歌から入りましたから、ちょっと違和感が大きいかも知れません。
 文庫本スペシャル・インタビューは、そういうながれで、これが一番面白く興味深いものでした。
 私の短歌はどちらに向かうのか謎ですが、暫くは短歌を味わって、入門書・解説書・短歌集を廻ってみます。

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2024年05月28日

Posted by ブクログ

タイトルと著者からどれだけラジカルなお話かと期待するが、なんと本当に歌人になりたい人へのレクチャーなのである。しかしやはり、なぜ爆弾が欲しいのか、扉を吹き飛ばす呪文が欲しかったのだ、という原動力が描かれていて、そこにとても惹かれるのです。製造法、設置法、導火線、構造図と、爆弾のように描かれている。どんな出版社から出すか、紹介文を誰に書いてもらうか、なんてくだりまで。短歌がつくりたかったわけではないが、僕も爆弾を作りたかったのかなあ、と思った。説明がうまくできない「力」というか、そういうの。

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2014年03月18日

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短歌の入門書のようでいて、けっこう難しいところまで踏み込んでいます。歌の読み込みや歴史的な説明など中盤は私には難解過ぎましたが、「これいいなあ」と思う歌にたくさん触れることができたのは嬉しかったです。
私が短歌を作ってみる起爆剤になってくれたわけで、やはり名著と呼ぶべきなのでしょう。これから「爆弾」を作り続けたら難しく感じた部分も素直に読めるようになるかもしれないと思うと、ワクワクしてきました。いや、違った。短歌だけに、和歌和歌してきました。

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2013年12月18日

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詩歌らしきものが自分でも作れるのではないかと思わせる本です。phaさんの紹介で読んでみました。でも実際手を動かしてみると難しい。

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2022年11月27日

Posted by ブクログ

短歌について知るための入門書のようだけれど、ずいぶんボリュームがあって難解だった。
構造図の章では、著名な短歌の読み解き方を事細かく解説してくれているが、『〈実存的な読み〉の可能性を探る』という形而上学みたいな話で、ほとんど何を言っているのかちんぷんかんぷんだった……。
でもそれこそ今すぐ歌人になりたい人にとってはスペシャルに親切な文章なのやもしれない。私は歌人にはなれぬ……。
でも心に残る表現はたくさんみつかった。
ふわふわしたことばっかり言っているほむほむさんが好きだけど、こういう真面目な話をしているほむほむさんもすてきです。

「世界を覆す呪文を求めて」の終章は、穂村弘さんがどのように短歌と出会っていったかがイノセントに綴られていてたまらない気持ちになる。

〈それまでに誰も考えなかったような、自分だけの呪文を意識して歌を作るようになった。それとともに、誰か僕の呪文を好きになってくれないだろうか。誰かそれを覚えていっしょに唱えてくれないだろうか。そんな風に思うようになった。たまたま隣の席に座った友達に歌のカードを見せてみた。友達はちょっと困ったように歌を見て「いいね」と言った。 〉

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2022年07月22日

Posted by ブクログ

穂村弘(1962年~)氏は、札幌市生まれ、上智大学文学部卒、1986年に連作「シンジケート」で角川短歌賞次席(同年の受賞作は俵万智の『サラダ記念日』)、1990年代には加藤治郎、荻原裕幸等とともに「ニューウェーブ短歌」運動を推進した、現代短歌を代表する歌人の一人。エッセイスト、絵本の翻訳家等としても活動している。
私は50代の会社員で、最近短歌に興味を持ち始め、これまで俵万智、穂村弘、東直子、枡野浩一、木下龍也等の歌集や短歌入門書、また、現代短歌のアンソロジーである、山田航の『桜前線開架宣言』、瀬戸夏子の『はつなつみずうみ分光器』、東直子/佐藤弓生/千葉聡の『短歌タイムカプセル』等を読み、半年ほど前から新聞短歌に投稿している(最近ぽつぽつ採用もされるようになった)。
本書については、少なくない若手歌人が、短歌をつくるきっかけとなったとか、影響を受けたと語っていることから読んでみた。(実は、著者の入門書では、『はじめての短歌』を読んだ後、本書を一度本屋で手に取ったことがあるのだが、難しそうで断念した)
そして、今回一通りページを繰ってみたが、著者が「読み手にインパクトを与えて、世界を一瞬揺るがせる短歌の魅力とはいったい何なのか。破壊力のある爆弾の中身はどうなっているのか」を語ったメインの章については、一つ目に挙げられていた、いい短歌は読者に「共感(シンパシー)」を抱かせるだけではなく「驚異(ワンダー)」を与えるものである、という点以外は、残念ながら消化不良に終わった。そういう意味では、解説で枡野浩一が書いているように、本書は「初心者向けじゃ、ない!」し、素人・初心者には枡野の『かんたん短歌の作り方』、木下龍也の『天才による凡人のための短歌教室』、俵万智の『考える短歌』等の方がはるかに実践的・有用だろう。(私はいずれも読んだ)
また、本書には、文庫化(2013年)された際に、単行本(2000年出版)の内容に、「爆弾のゆくえ 現代短歌オデッセイ2000~2013年」というインタビューが加えられており、そこでは、著者や俵万智の世代以降の短歌界の歴史について語られているのだが、こちらは、上述した現代短歌アンソロジーで多数の歌人の作品を読み、その主題・スタンス・スタイルのバリエーションの広さに驚いている私としては、とても興味深く読むことができ、頭の整理にもなった。
もう少し作歌を続けてから、改めて読み直してみたいと思う。
(2021年12月了)

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2021年12月25日

Posted by ブクログ

短歌の書き方詠み方のヒントだけでなく、選評会や朗読会の様子や、結社と同人の違いなど、素人には知れない場面でのやりとりが分かり面白い。(しかし自分の読みが浅すぎ、プロが良いという歌がなぜ良いのか分からない…。)歌人を目指す人には実践で役立ちそうだと思った。短歌の構造を紐解く項では、歌人には「入力型」と「出力型」がいる、という指摘に目鱗。個人的には「入力型」の歌が好きな気がする。

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2015年03月05日

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