佐藤優のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「悪」というテーマについて、キリスト教神学での考え方や小説・映画などに表現された洞察を掘り起こしながら論じている本です。
著者の発想の根幹にあるのは、やはりキリスト教における「悪」の考え方ですが、とくに現代においては「悪」に対する感度が鈍くなっているという状況判断にもとづいて、「悪」の具体的なかたちを例を引きつつ考察しています。そのうえで、「サバイバル護身論」というサブタイトルが示しているように、読者一人ひとりの日常のなかにもひそんでいる「悪」を見抜き、それに対処するための方法についても論じられています。
キリスト教徒ではない読者としては独断的にも思えるような「悪」についての議論を、現代の社会状況における具体的な「悪」のありかたにまで落とし込んでいく振れ幅の大きさが著者の議論の魅力のひとつなのかもしれません。 -
Posted by ブクログ
イスラエルとユダヤ人について、しらないことが多いと思い、勉強のために読んだ。
置かれた立場により、これほどまでに評価が変わるのか、という感想を持った。
読みながら、「本当か?そうは思えない」ということが数多くあった。
筆者は「日本の外交官は、日本国家と国民だけを愛し、国益を考えるべき(要約)」と言い、イスラエルを支持することが国益と考えている。
外交官として、それが正しいということはわかったが、人としてどうかと思う。
外交官は、その考え方と自分の思想が違えば、思想を横において置かなければならず、精神的に厳しそう。入省の時点で心得ていればよいが、そうでもなさそう。
著者は国益と今現在に集中している。正しい正しくないではなく、そういう視点から考えて書いている。ただ、私はパレスチナの人々の立場にも立って考えるので、本書の記述に違和感を覚えることが多かった。いままさに虐げられている人々を無視し、二千年も前のことを持ち出されても納得感はない。
「イスラエルが消滅すると、中東は日本とまったく異なった価値観を持つ地域になる」とあるが、本当だろうか。イスラエルがあることでイランやイラクが自由主義や民主主義になっているとは思えないし、イスラエルが消滅しても、いまと変わらないのではないか。
その結果、日本が安定的に化石燃料を入手できないというのも「なんで?」と思う。イスラエルから輸入しているわけではないし、輸出国はイスラエルがなくても輸出して外貨を稼がなくてはならない。イスラエルがいなくなると他の産業が育つのか?いまは阻害されているのか?
「日本と人類のためにイスラエルとイランのどちらの立場を支持した方がよいか」も「日本とイスラエルのために」ではないか。
一方で、勉強になったのは以下の点。
イスラエルにはロシアからの帰還者が多く、日本にとってロシアとの交渉に有益であるという。この辺はまったくしらなかった。
ロシアとイスラエルの提携や、ロシアと日本の声明発表から、裏でどのようなことがあったと推測されるか、それぞれの国にとっての関心事と優先度から裏付けがされており、声明の読み方を学んだ。
マサダの戦いにからめて、外交官や自衛官は無限責任を負う職業であることを明示的に示しており、私はあまり明確に意識していなかった。 -
Posted by ブクログ
メンタルがどうこうという話よりも、佐藤氏の時評が面白かった。最低賃金をあげようという流れができているのは知っているし、働き方改革という時短圧力も最近はきびしい。働き手のことを考えてくれているようで、中小企業にはキビシイ。国の狙いは何かといえば、正規労働者の非正規化と、中小企業の淘汰。国の狙いは一部の大企業、競争力のある会社を残してあとはつぶし、行き場のなくなった労働者を非正規化して安く使う。そうしなかれば国際競争力は保てないというのが、国の見方なのだという。怖い話だ。俺なんか、一発で淘汰されそうだなぁ。
そのすべてが正しいと思わないけど、ありそうな話だし、今の流れを説明するうえで説得力がある。
そうした社会の流れに対して、どのように生き残っていくかが本書の主旨なんだけど、いろいろ考えさせられたね。最近の佐藤氏の本は、出版数が多いだけに読み終えてからどの本に何が書いてあったっけ?と残らないこともしばしばなんだけど、本書は刺激的だった。