平野啓一郎の作品一覧
「平野啓一郎」の「文学は何の役に立つのか?」「マチネの終わりに」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「平野啓一郎」の「文学は何の役に立つのか?」「マチネの終わりに」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
京都大学法学部卒。1998年『日蝕』でデビュー。同作品は芥川賞を受賞。他にも『葬送』『決壊』『マチネの終わりに』など数多く執筆している。
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Posted by ブクログ
名作…平野啓一郎さんの天才ぶりを存分に感じた。
火星への宇宙探査、アメリカ特有の社会構造を踏まえた大統領選挙、そして《散影》という新たな社会システム。複雑にみえる場面たちが、ディビジュアル・分人主義という平野さんの軸となる思想と絡み合って、最後収束していく様が本当に美しかった。
2008年刊行ということに驚き…まだスマホもろくにない世代に《散影》や「可塑整形」のある情報過多社会をこんなにもリアルに描くなんて…
ディストピアのようだったけど、今や描かれている内容も遠くない未来のように感じてしまう。《散影》が定着した背景にどこか納得してしまうところもあるし--
「警察に見られることを怖れて、犯罪に手を出さない。──悪くない考えでしょうが、私としては、アメリカ国民の一人として、誰に見られても恥ずかしくない行動を取る、という考えの下に日常生活を営む方が望ましいと思っています。同時に、権力の濫用には、国民全員で対抗すべきです。」
歴代大統領の名前にトランプが出てきていなくて、発刊当時からのアメリカの変化を思うと、どうしてネイラーのような考えの人が立ってくれていないのだろうと現実を哀しく感じてしまった。
代替銃の考え--「これは、個人individualではなく分人dividualだけを撃つ銃です。誤射の際に、取り返しがつく銃であり、後悔が常に間に合う銃なのです。」
も心から賛同できるし
デルガードとの関係性を通じて明らかにされる、ネイラーの「普通の感覚(自分こそがサポートしなければならないという積極的な支援の感情を抱かせるもの)」も、とても納得。
一方で、キッチンズもきっと己の正義と戦っていたのだろうし、デヴォン社のタールがアストーにキレるとき
--「たった一発の誤射で、世界中が非難囂々という有様だ。何もせずに、リヴィングのソファで指を咥えて見ている世界中の偽善者どもが!」
の発言にはハッとさせられるものがあった。これまで「悪者」として見ていた人物の正義をまざまざと見せられて、それを否定しきれなかったから。でもやっぱりどんな正義のためだろうが、暴力や殺人を許してはいけないのだよね。自殺まで追い込まれてしまったけれど、彼も正義のために戦ったひとりだよな、と。
Posted by ブクログ
見事なまでにすれ違う大人の静かなラブストーリー。
三谷のしたことに賛否あれど、結果的にうまくいったのならそれが運命だったと言えなくもない。
結局のところそのようにして人はいつも誰かと繋がったり途切れたりしているのではないか。
ならば三谷を一方的には責められない。
蒔野と洋子があっさり最初から付き合っていたとしても未来がどうだったかはわからない。
何年もの年月にそれぞれの人生が流れる。
もう時々しか思い出さないと思う日もあれば、まだ思いが燻って近くにあると思い知る日もある。
NY公演の客席にひっそりと座る洋子に気がついた蒔野がマチネの終わりに贈った一曲。
For you
英語だと『皆さんのために』。
同時に『貴方のために』とも訳せる。
公演後にセントラルパークを散歩すると公言した蒔野。
お互いにすれ違いを演じることもできた二人だが、そこに洋子はいた。
会うのは3度目だが、二人はそのときやっと初めて出会ったのかもしれない。
上質の映画をみたような読後感でした。