高嶋哲夫の作品一覧
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Posted by ブクログ
ウイルスが蔓延した場合における様々な現実を思い知らされた。徹底した事前準備や、政府の初動及び柔軟性は、やはり大事な要因になりそうである。この本自体は2010年に出版されたものだが、コロナ禍を予言したようなものだと言える。特に、各家庭で最期まで生きることを諦めなかったものの、誰にも気づかれずに一家全員が倒れていってしまう現実が映し出されていた。歴史には残らない、そんな残酷な現実が予期されて、虚しさと絶望感が伝わってきた中で、自分の知らない"コロナ禍"を知れた気がする。コロナの怖さを、改めて実感できた。
作品全体としては、流れるような展開で一気読み出来た。特に、登場人物は役人が多いにもかかわらず、比較的柔軟で責任感があり、非常時に最適なリーダーシップを体現していて、どこかスッキリした。現実にも、ここまでのトップがいて欲しいと願うばかり。
解説の成毛眞さんの文章も面白かった。
Posted by ブクログ
日本が核兵器を所持することは抑止力になるのか?大胆な設定と問いかけ。
随分と考えさせられた本である。
現在、核兵器を所有している国は、アメリカ、ロシア、中国、フランス、イギリスの国連の安全保障理事会・常任理事国はNPT(核不拡散条約)で承認されている。NPTという国際的な枠組みの外側で開発を進め、事実上の核保有国となったのが、イスラエル、インド、パキスタンである。NPTから脱退し、保有を強行して保有した北朝鮮であり、9ヶ国が核保有国となっている。
ウクライナは、核保有国であったが、米露英から安全保障の約束(ブダペスト覚書)を受ける代わりに核を全て放棄した。ロシアによる侵攻を受けた結果、国内では「核を放棄したから侵略された」「安全保障の約束は守られなかった」という後悔がある。
現在、アメリカがイランを核保有国にしないとイランへの攻撃を正当化している。
サウジアラビアのムハンマド皇太子は過去のインタビュー等で「もしイランが核兵器を持てば、我が国も対抗してできるだけ早く核兵器を保有せざるを得ない」と明言している。
韓国も、北朝鮮の核・ミサイル能力が実戦レベルに達したことへの危機感から、独自に核兵器を持つべきだという意見が生まれている。
日本は、非核三原則(つくらず、持たず、持ち込ませず)を堅持している。広島と長崎の原爆被害を持っているが故に、反核の闘いの先頭にも立っている。
日本が核兵器を持つことで、いくつかの不具合が生まれる。日本においても、核兵器を持つべきだという意見が生まれてきている。
日本はNPT(核不拡散条約)に加盟しており、独自の核保有は認められていない。核武装するためにはNPTから離脱する必要があるが、これは国際秩序への挑戦とみなされる。北朝鮮がNPTを離脱した際と同様に、国連安全保障理事会などから厳しい経済制裁を受ける可能性が極めて高く、国際的に孤立する。
日本は「核兵器を作らないこと」を前提に、ウラン大国である米国や豪州などから原発用のウラン燃料の輸入や再処理の許可を得ている。この前提である日米原子力協定などが崩れれば、燃料の供給が止まり、国内の原子力発電所はすべて停止せざるを得なくなる。
日本が核を持てば、韓国や台湾、さらには東南アジアの国々なども「自衛のために核が必要だ」という論理になり、世界中で核武装の連鎖(核ドミノ)が起きるリスクがある。これにより、世界の核管理体制は崩壊する。
以上は、国際的な問題であるが、アメリカとの関係においては、世界戦略としてこれ以上の核保有国を増やさないつまり核不拡散ことを国益としている。同盟国であっても独自の核武装は容認しないのが基本スタンスである。日本が核兵器保有を強行すれば、アメリカから政治的・経済的な制裁や、最悪の場合は軍事同盟の停止を突きつけられる可能性がある。
中国は日本の核武装を「重大な脅威」かつ「戦後秩序の打破」であり、軍国主義化したと決定づける。「日本の脅威に対抗する」として、日本を射程に収める中距離ミサイルや核弾頭の数をさらに急増させることになる。中国との緊張は、厳しい状況に追い込まれる。
この本の主人公の真名瀬純は、防衛省技術研究本部研究技官で、ハーバードに留学。その時の友人が、アメリカ人のデビッドと中国人のシューリン。この三人は、戦争をしたくないという点では一致している。そして、真名瀬は、被爆3世で、おばあちゃんが被曝した。その苦しみをよく知っている。
防衛省技術研究本部研究技官の舘山が、機密レポートを持って交通事故に遭う。その文書は、原爆兵器の作成マニュアルだった。そして、その作成マニュアルに基づいて、実行されていた。それを真名瀬は、立山の後任として、探る。そこから、館山が誰の指示で動いていたのかを知る。
その頃に、尖閣諸島の領有権をめぐり、中国と日本との間で、緊張関係が生まれていた。アメリカは、当事者同士で解決する問題と見ていた。
森島は、真名瀬の中学、高校の友人で、防衛大学校に進学した。海上自衛隊一等海尉で、「あすなみ」に乗艦する。真名瀬も乗艦した。尖閣諸島の荒波の中で、中国の船と自衛隊の艦船が睨み合いをしていた。中国の上陸用船艇と「あすなみ」がぶつかって、中国の将校が海に落ちた。それを救助するために、森島は海に飛び込み、その将校を助けたのだが、本人は荒波に打ち付けられて、死んでしまう。
そこで、上巻は終わる。
Posted by ブクログ
できたて、ほやほやの本だ。本日が届いたので、すぐさま読み始めた。そして、一気に読めてしまった。やはり、著者の読ませる力はすごいものがある。
核融合発電って、原発とどう違うのか?あまりよくわからなかった。
もと原子力研究者だった著者が、想いを込めて、わかりやすく、丁寧に最新の情報と核融合発電が社会にどういう影響をもたらすかについて、物語風に綴る。最後の森本誠の章がすばらしい。
ノーベル賞を受賞したアダムス博士の言葉。
「この受賞は、ここにはいない多くの人々のものです。途中で道を変えた者も、名を残せなかった者も、すでに亡くなった方たちも、すべての関係者が、この地上の太陽を支えてきました」
著者は、強調したかった言葉だ。科学の営みって、こういう連綿たる人々の営みで成り立っている。
核融合とは「地上に太陽を」つくることだ。まさに、神を恐れぬ仕事だ。
鉄腕アトムを見てきた世代は、「原子力は明るい未来のエネルギー」と信じていた。しかし、フクシマの原発事故で、裏切られた気がした。明るい未来って、そうやすやすいうなと老人は独りごちた。
福島原発事故において、止めることはできたが、冷やし、閉じ込めることができなかった。「最悪の事態に対する想像力の欠如」による人災であったと指摘されている。「原子力は絶対に安全だ」という神話を信じ込んでいたことが大きな問題だ。
さて、地上に太陽をということは、一体どんなことなんだろう。
本書を読みながら、面白い時代がやってきていると思った。
物質の状態とは、個体、液体、気体につづく、プラズマは、高いエネルギーを与えられた状態で、物質の第四の状態とされる。太陽は、プラズマの状態にあるという。このプラズマから、エネルギーを取り出すのが、核融合電力。核融合の燃料は、水素、重水素、三重水素(トリチウム)である。
核融合反応を持続させるためには、1億度以上の超高温、1ccあたり100兆個以上、持続時間が1秒以上を満たす必要があるという。だいたい1億度を測る温度計があるのかと思った。粒子の運動の激しさで測定するという。よくわからない。
核融合炉では、プラズマを閉じ込めて核融合反応を起こさせる。プラズマを真空容器の中に閉じ込め、容器に触れさせないで、反応させる。それが旧ソビエト連邦で1950年代に開発されたトカマク容器ということだ。それ以後、ヘリカル型、レーザー方式などが開発されている。原理は、本書に説明されている。そして、核融合から、熱エネルギーを取り出し、電気に変える。
1985年米ソ冷戦終結後、レーガン=ゴルバチョフの核融合の平和利用の枠組みができた。太陽のように核融合でエネルギーを起こす技術を人類で共有しようと始まり、ITER(International Thermonuclear Experimental Reactor:国際熱核融合実験路)がフランスに作られた。トカマク方式で、50MWの入力エネルギーで、500MWの出力エネルギー。加盟国は、アメリカ、ロシア、日本、EU 、中国、韓国、インドである。日本は、超伝導磁石の開発を主に行う。2034年に、プラズマ運転開始の予定となっている。
テレビで『太陽を作り出す者たち〜ITER・地球最大の核融合計画』を見た。
中国やアメリカのベンチャー企業と取り組みが紹介される。その中で日本の果たすべき役割というかポジションも明確に見抜いている。日本は、核融合の周辺技術にものづくり技術を生かすべきだという。少なくとも、核融合の事業は政策的であり、高市早苗総理の存在も重要な気がした。積極的な投資の中に、核融合事業は入るべき課題である。2番でいいという発想では、日本のポジションがなくなるような気もする。核融合は、資源小国である日本が、技術力によって「エネルギー産出国」に転換できる唯一の道でもある。
ここでの中心的なことは、『核融合発電』は、『水素社会』と密接に繋がっていると強調されていることだ。核融合は電気を作る装置ではなく、巨大な熱を生む装置だ。核融合によって生み出されたクリーンなエネルギーを、水素という形で受け取り、水素を使いこなすことになる。
そしてそのことで、エネルギーをめぐっての争いはなくなり、アメリカの石油・エネルギーを支配するための横暴がなくなることも意味する。トランプの時代は終わる。核融合発電が可能になれば、放射性燃料廃棄物さえもなくなり、原爆を作る原料もなくなる。その原爆の脅威が、失せていく可能性もある。確かに、大きな社会構造の変換となる気がした。核融合発電を技術だけで見ることなく、エネルギーと熱という観点から見ることで、新しい世界が生まれるような気がした。
著者は、核融合は静かに実用段階に入っているという。そのためには、準備の必要性をいう。技術が先行すると社会は混乱するからだという。色々な問題は、技術が悪かったから起きた問題ではないという。なるほど。確かに。久しぶりに、いい本を読んだ。