Posted by ブクログ
2015年11月07日
「M8」で首都直下型地震、「TSUMANI」で巨大津波、「東京大洪水」で巨大台風による都市災害を災害シミュレーションとも言えるリアリティで描き切った高嶋氏が本書で描くのは、災害リスクによる経済の破綻です。
『東京を首都直下型地震が襲う可能性が5年以内90%以上という研究成果が発表されます。このリスク...続きを読むに対して効果的な対策が講じなれなければ、日本国債の暴落、極度の円安、そして株価の暴落が引き起こされ、日本がデフォルトとなる現実が目前に迫ります。この機に乗じて国際ファンドや某大国が日本への経済的攻撃を仕掛けて来る中、首都直下型地震のリスクを回避するには首都遷都しかないと、官僚や政治家が動き出します。果たして彼らの遷都プロジェクトの進捗は、国債ファンドの仕掛けによる国家破綻と、首都直下型地震の発生に対して間に合うのか…。』
本書の中でも指摘がありますが、阪神大震災、東日本大震災からの復興は必ずしも迅速ではなかったにせよ、首都機能に大きなダメージが無かったことが救いとなって進めることができたことは否定できません。今ほど東京に政治的、経済的、文化的なウェイトが集中している状況で、その首都機能が壊滅したら…という想定に対して首都遷都という回答が決して現実離れしていない選択肢であると納得させられます。
国際金融の裏舞台をこの小説を通じて垣間見ることができる、リアリティー十分な大作です。