越前敏弥のレビュー一覧
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一九四三年初版。国名シリーズ→ハリウッド→ライツヴィルときて、またここでニューヨーク市警レギュラー陣わちゃわちゃシリーズへ戻る。わちゃわちゃぶりはだいぶこなれてきた…ヴェリー部長刑事もよく喋るし(昔は影のようだった)、プラウティ医師も少ない出番ながら「(プラウティ医師、退場)」なんて太字の括弧付きで書かれたりするし…と思ったら、解説によるとこうした登場人物たちの性格や“ノリ”は一九三九年に放送開始されたラジオドラマ版エラリー・クイーン・シリーズに寄せたものだとのこと。
なるほど、それだけでもなるほど、なんですが、本作はさらにそのラジオドラマ版に登場するある人物の、前日譚まで兼ねているということだ。こういう演出は本当にクイーンの得意技だよなあと思うが、当時のラジオドラマファンの人はさぞかし喜んだだろう。論創社から四冊出ているというラジオドラマの脚本集、私もいずれ読まねばなるまい。
ミステリーとしてのトリックやらロジックやらについてのコメントは、すでに世にある解説や他の方のレビューにお任せして、私はやっぱり、『十日間の不思議』のレビューに引き続き、エラリーの恋愛について語りたい。ので語ります。
※他作品も含め、このあと事件の真相に関わるようなネタバレはしないつもりですが、そうでない部分についても先入観を持たされるのはごめんだという方はご注意ください。
今回のエラリーのロマンスは、エラリーがシリーズの主人公名探偵として到達できる最大限の「恋の成就」だったのではないかなあ。という話。(ど、どうでもいい!が続ける)
まず、エラリーは結婚する未来を封じられている(第一作『ローマ帽子〜』の序文では、後に妻子を設けイタリアに移住する未来が描かれていたのに、いつのまにかその設定は闇に葬られた)。そして、一九三八年『ハートの4』で初登場し、短編集『エラリー・クイーンの新冒険』に収められた一九三九年発表の四作品で甘々のイチャつきぶりを見せた相思相愛の恋人ポーラ・パリスは、その後姿を表さない(らしい)。やはり、探偵役にステディな相手がいると、作劇上何かと都合が悪いのかもしれない。“名探偵を結婚させると不自由”という言説は、以前『明智小五郎全集(講談社文庫)』の解説でも見かけた。
見えざる神の手によって結婚も恋愛も阻止される運命にあることを悟った(?)のか、エラリーは『災厄の町』でパティ・ライトといい感じになるも、“美女に惚れられても身を引いてしまう寅さん体質”(飯城勇三『エラリー・クイーン完全ガイド』より)を遺憾無く発揮。ポーラのときのように決定打をかましにはいかず、失恋といえば失恋に終わった。それに対し、今回の恋のお相手とは、飯城さんの解説によれば今後も“友達以上恋人未満”の関係が続くということだから、いわば“持続可能な男女関係”(←野宮真貴が横山剣とのデュエット曲に関して述べた言葉をお借りしました)に持ち込めたわけで、物語の都合を背負ったエラリーの立場としては最大限の勝利なのではないだろうか。私みたいな下世話な読者に対しても、楽しいニヤニヤを提供できるし。
エラリーがどれだけ熱をあげるかは色々だが、ある時期以降結構どの作品でも印象的なヒロインが登場するのもクイーン作品の面白いところだ。色んな美女が出てきて、まさに寅さん見てる気分。女性の台詞は特に古い訳だとどうも不自然に感じがち(「〜ですの」とか)なので、どんどん新訳が出てくれたら嬉しいなと思うけど、ちょっと古い日本映画の女優さんのあのお上品な話し方をイメージすれば良いと思えば、苦手意識が減るかもしれない!
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アメリカの作家フレドリック・ブラウンの短篇ミステリ作品集『真っ白な嘘(原題:Mostly Murder)』を読みました。
ここのところアメリカの作家の作品が続いています… フレドリック・ブラウンの作品は2年半くらい前に読んだ『さあ、気ちがいになりなさい』以来ですね。
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どの短編から読まれても結構です。
しかし「後ろを見るな」は、ぜひ最後にお読みください。
奇抜な発想と予想外の展開が魅力の18編
巨匠の代表的ミステリ短編集
名作ミステリ新訳プロジェクト
編を書かせては随一の巨匠の代表的作品集を新訳。
雪の上の足跡をめぐる謎を描いた「笑う肉屋」、緊迫感溢れる「叫べ、沈黙よ」、江戸川乱歩編の名アンソロジー『世界推理短編傑作集』に選出された「危ないやつら」など、奇抜な着想と軽妙なプロットで書かれた名作が勢揃い!
どこから読まれても結構です。
ただし巻末の作品「後ろを見るな」だけは、ぜひ最後にお読みください。
解説=小森収
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1940年(昭和15年)から1950年(平成25年)に発表された以下の18篇が収録されている短篇集です。
■笑う肉屋
■四人の盲人
■世界が終わった夜
■メリーゴーラウンド
■叫べ、沈黙よ
■アリスティードの鼻
■背後から声が
■闇の女
■キャスリーン、おまえの喉をもう一度
■町を求む
■歴史上最も偉大な詩
■むきにくい小さな林檎(りんご)
■出口はこちら
■真っ白な嘘
■危ないやつら
■カイン
■ライリーの死
■後ろを見るな
■解説 小森収
奇抜な着想、軽妙なプロット、論より証拠、まず読んでいただきましょう… どこからでも結構、、、
ただし最後の作品『うしろを見るな』だけは、最後にお読みください… というのは、あなたがお買いになったこの本は、あなたのために特別の製本がしてあるからです―― さて、その意味は?
新訳で読みやすかったし、発想が豊かな作品が並んでおり、愉しく読めましたね、、、
そんな中でも、印象に残ったのは、
雪の上に残された足跡… サーカス団のOBならではのトリックが秀逸な『笑う肉屋』、
犯人(?)の意外性が愉しめる『四人の盲人』、
聞こえてなかったなんて… 皮肉な結末が印象的な『背後から声が』、
納得の結末で「むきにくい小さな林檎」という呼び名が最後に皮肉な意味(実際はむきやすい)を持つ『むきにくい小さな林檎』、
夫は殺人者? 疑心暗鬼に陥る妻の恐怖を描いた『真っ白な嘘』、
お互いを殺人鬼と思い込んだ二人の緊張感を描いた『危ないやつら』、
ゾクっとさせられる結末が印象的な『後ろを見るな』、
あたりかな… でも、その作品も面白かったです。 -
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ダンブラウン、恐ろしい……
実在する信仰、都市、科学、建物、全てに気を配り、読者の知的好奇心を途絶えさせない物語を何作も……
難しい、本当に、難しいのよ!ちゃんと理解できてないところもたくさんあると思う。それでもめっっっっちゃおもしろい。
前作までは宗教信仰に深く関係していたので、「ふーん」くらいにしか思わなかったけど、今回は、夜中布団の中で「魂の質量」についての箇所に読んでいるとき、確実に死の恐怖を感じた。身体からなくなった魂はどこに行くのか。この意識はどうなってしまうのか、って。
純粋知性科学、学びたいなぁ。この間一人で美術館に行った時に気づいた。私、展示を見てると段々頭痛と息苦しさがひどくなる。これって展示物への人の思考が関係してるのではないか?って。笑
今作も哀愁のある人間関係だったけど、最後は少し軽くなって終われたかな?
ラングドン氏、毎回大変だけど、人類のためにこれからも頑張ってほしい。 -
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アメリカの作家「スティーヴ・ハミルトン」の長篇ミステリ作品『氷の闇を超えて〔新版〕(原題:A Cold Day in Paradise)』を読みました。
「スティーヴ・ハミルトン」作品は、2年半前に読んだ『解錠師』以来ですね、、、
『解錠師』が、切なくてほろ苦い青春期の複雑な感情や疎外感を描いた作品で、とても感動的な物語だったので、本作品も期待して読みました。
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【感動の傑作『解錠師』の原点。 エドガー賞、シェイマス賞受賞の名作】
わたしの心臓のすぐそばには、一発の銃弾が眠っている。
わたしが警官だった時代に「ローズ」という男に撃たれたものだ。
あれから14年が過ぎた今、私立探偵となったわたしのもとに「ローズ」の署名のある手紙が届く。
手紙は、最近わたしの身辺で起きた連続殺人は「ローズ」自身の犯行だと告げていた。
彼は逮捕され、刑務所で服役中なのだが……アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞他を受賞した、『解錠師』の著者の、記念すべきデビュー作!
著者より日本の読者へのメッセージを収録。
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元警官で私立探偵の「アレックス・マクナイト」を主人公とするシリーズの第1作で1998年(平成10年)に発表された作品… 「スティーヴ・ハミルトン」のデビュー作です、、、
先日まで読んでいた「ロバート・B・パーカー」作品の警察署長「ジェッシィ・ストーン」を主人公とするシリーズの舞台はマサチューセッツ州の小さな町パラダイス(現実のマサチューセッツ州スワンプスコットにおおよそ基づいた架空の町)でしたが… 本作品の舞台はミシガン州のパラダイスという小さな町、偶然なんでしょうが、同じパラダイスという名前を付けられた小さな町が舞台でした。
「わたしの胸のなかには銃弾がある」という印象的な一文で始まる本書は、主人公で私立探偵の「アレックス・マクナイト」が、警官時代に負った身体と心の傷がもたらした恐怖心を事件を解決することで克服していく様子を描いた作品です、、、
「アレックス」は、元マイナーリーグの捕手… 野球で頭角を現すことができず、転々と職を変えたのち、デトロイト市警に8年間勤務するが、同僚の「フランクリン」とともにパトロールをしていたとき、「ローズ」という男に銃で乱射された。
「フランクリン」は命を落とし、「アレックス」は瀕死の重傷を負って退職… 「アレックス」の心臓のすぐそばには、未だに一発の銃弾が摘出できずに残っている。
それから14年、ミシガン州の最北端に近いパラダイスという小さな町で、狩猟者たちの宿泊用のロッジを管理しながら暮らしていた「アレックス」だったが、弁護士「レーン・アトリー」の依頼で、私立探偵の仕事をはじめる… パラダイスに近いスーセント・マリーの町で、「アレックス」の友人で資産家の「エドウィン・フルトン」がギャンブルで借金をしていた二人の賭け屋が続けて惨殺される事件が起きた後、「アレックス」のもとに「ローズ」という署名のある手紙が届いた。
手紙の主は連続殺人は「ローズ」自身の犯行だと告げていたが、「ローズ」は14年前に終身刑の判決を受け、以来ずっと刑務所で服役中のはずだった… 「アレックス」は「ローズ」への恐怖心から、「ローズ」が密かに刑務所を脱出したのではないかと疑心暗鬼になり精神的に不安定な状態に追い込まれる、、、
そんな中、「エドウィン」が行方不明となり、「ローズ」から犯行を仄めかす手紙が届く… そして、「アレックス」のロッジにも「ローズ」の影が忍び寄る。
ハードボイルド系の雰囲気を漂わせつつも、心の中に弱さを抱える「アレックス」に感情移入しながら読めるところが特徴ですかね… サイコスリラー的な事件だったと思わせておいて、最後にひとひねりあるところも良かったですね、、、
不安そうにしていた「エドウィン」の母「セオドーラ・フルトン」が曲者でしたね… あと「アレックス」の雇い主で弁護士の「レーン・アトリー」も怪しい感じはしたんですよね、面白かったです。
以下、主な登場人物です。
「アレックス・マクナイト」
私立探偵
「エドウィン・フルトン」
アレックスの友人
「シルヴィア・フルトン」
エドウィンの妻
「セオドーラ・フルトン」
エドウィンの母親
「フランクリン」
アレックスの元同僚
「トニー・ビング」
賭け屋
「リーアル・プルーデル」
私立探偵
「マクシミリアン・ローズ」
服役囚
「レーン・アトリー」
弁護士
「ロイ・メルヴン」
スーセント・マリー市警察署長 -
Posted by ブクログ
メタミス的なひねりもあまりない、直球勝負なミステリで、長さも考えるとメイントリックがやはり軽い気がする。その分、読み物としては抜群に面白い。濃すぎる登場人物に、マザーグース殺人と仕掛けも派手。最後の拳銃が見つかってからの、罠と称するエラリイのドタバタなんて過剰サービスの気もする。巻末の解説ではラジオドラマとの関係が指摘されているが、なるほどなあという感じ。
個人的には生涯で初めて読んだエラリー・クイーン物で、多分中学生(ひょっとしたら小学生)の頃のことで、異様に面白かったことはともかく、終盤の展開(犯人が誰とか、署名を巡るあーだこーだ)をまるごと覚えていたのは、さすがに子供の記憶力。ひさしぶりの再読に感慨深かかったり。 -
Posted by ブクログ
収録されている短編がどれも結構な読み応えで、読み終えるのにかなり時間がかかってしまった(さぞやジャスティンは待ちくたびれただろう)。そういうとき大抵は最初の方に読んだものは忘れていったりするのだけれど、すべてのタイトルで内容を思い出せるというのはすごいかもしれない。
どの話もミステリ要素はあるものの、表題作のようにハラハラするサスペンスもあれば、なんだかほっこりさせてくれるものだったり、かと思えばグロテスクな描写が続いたりと、振り幅が大きいため最後まで飽きずに楽しめた。
直接的表現をせず、それとなく真相を匂わせるのがお好きなよう。そして最後にゾクッとさせられるものが多い印象。
どれも良かったが、『叫べ、沈黙よ』はタイトルも含め気に入った。
『メリーゴーラウンド』も好き。犯人がアリバイ工作をする話は数々読んできたけれど、こんな展開は初めて。メリーゴーラウンドの中(?)で寝てるおじさんを想像したらなんだか笑えるし。