北森鴻のレビュー一覧
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「フォーチューンブック」という1冊の本を中心に、実際に起きた事柄を織り交ぜながら虚実ないまぜにしながら物語は進んでいく。
連作と内容紹介には書かれているが、読んでいて普通の長編を読んでいるような感覚だった。
自主規制を版元がしたために都会では入手しにくくなっていた本。
地方都市松本で偶然に「フォーチューンブック」を手に入れた人たちのその後が描かれている。
知らず知らずのうちに絡み合っていた運命・・・運命と呼んでいいものかわからないけれど・・・は、それぞれの人生を大きく狂わせていく。
最後の1行が終わっても、まだ物語は終わらない。
残された人たちは、さらに「フォーチューンブック」によって人生を翻 -
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ネタバレ〇 概要
明治政府に招かれた雇われ外国人の一人,エルウィン・フォン・ベルツのもとで給仕として働き始めた葛城冬馬の成長と,冬馬とベルツが遭遇した事件が描かれた短編ミステリ。
〇 総合評価 ★★★☆☆
小説巧者の北森鴻らしく,5つの短編のそれぞれが,史実と虚構を織り交ぜ,読み応えのある作品になっている。ミステリとしては,それほど完成度が高くないが,ベルツを始めとしたお抱え外国人たちは個性的。各作品で名前を変える市川歌之丞も非常に魅力的なキャラクターとして描かれている。主人公の葛城冬馬も十分魅力的。なにより,史実がうまく虚構に織り交ぜられており,ある程度の日本史の知識があれば,聞いたことがある -
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ネタバレデパートの屋上で発生する数々の事件を、「稲荷社の使い狐」、「観覧車」、「ベンチ」など無生物の視点から描いた連作短編集。救いのない話が並び、後味が悪く、忘れがたいインパクトを与える作品。ある短編の脇役が、次の短編で重要な役割を果たす構成は見事だが、全体的な構成は少し散漫に感じる。個々の短編の完成度は高く、どれも一定の面白さだが、香菜里屋シリーズほどの深みはない。裏京都シリーズよりは上だと感じる。北森鴻の短編作品としては及第点ギリギリの出来か。★3。
○ 始まりの物語
稲荷社の使い狐が語り手。デパートの女性店長の自殺、店長の子どもの万引き、いじめといったネガティブ要素が満載な作品。いじめられて -
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ネタバレ叙述トリックが駆使された作品。読者を驚かせることを主眼として書かれており、まさに「驚愕の真相」と言える構成だが、その反面、リアリティに欠ける部分が目立つのは否めない。
「阿坂龍一郎という作家が女性である」という叙述トリックは、多くの読者が気付く可能性が高い。しかし、ほとんどの人は、小椋という音楽教師が阿坂龍一郎になったと考えるだろう。ところが、真相はその一歩先を行き、阿坂の正体は手紙で「キミ」と書かれている少年の母親だった。
烏丸芳江という人物こそが小椋という音楽教師で、手紙に書かれている「僕」という一人称の正体が「夏川麻美」である。夏川麻美は阿坂龍一郎に殺害され、埋められている。そして -
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ネタバレこれまで文庫になっていない作品を集め,おまけとしてエッセイを追加した作品。北森鴻ファンとしては十分楽しめるが,ファンでない方はスルーでいいだろう。エッセイが楽しめたので,北森鴻ファンとして,おまけで★3かな。
○ 仮面の遺書
暗号の謎を解く作品。暗号を解かれてしまうが,解かれることで,自分の犯罪がバレてしまい,暗号を解いた人物を殺害するというオチ。やや意外性のある短篇。北森鴻の幻のデビュー作
○ 踊る警官
Y塚山御陵に死体を埋めたという話を出し,一度捜索させた上で,妻の死体を埋めたというトリック。一度探した場所は,もう一度探さないという心理だけで,一本の短篇を作ったというもので,北森鴻 -
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ネタバレ雅蘭堂という骨董品屋を舞台とした連作短篇集。安積というアルバイトの女子高生と店主の越名が主要メンバー。さまざまな骨董品,ビスクドールなどをめぐるうんちくを語りつつ,骨太の話が多数ある。★3で。
○ ベトナム ジッポー・1967
「ベトナム ジッポー・1967」に思い出を持つ長坂健作という老人と,その孫の安積という少女が登場する。このライターの持ち主,「グエン」という大佐を知っていると語る老人。老人は自分が媒介となり,軍の機密が漏れたので,グエンが死んだと思っていたが,真相は,グエンこそが裏切り者であり,長坂健作は,煙幕として利用されていたという。ジッポーについてのウンチクもあり,やるせない -
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ネタバレ共犯マジックは,フォーチュンブックというこの世に起こりうる全ての不幸と災いを予言するための本の存在がミッシングリングとなっている連作短編集である。
長野県松本市内の書店で売られていたフォーチュンブックを購入した6人の人間と,フォーチュンブックを手に入れたその書店の店員。これら7人の人間が複雑に絡み合う作品となっている。
6つの短編は,それぞれで事件が発生し,解決が存在している。それでいて,これらの短編には,主人公となる人物だけでなく脇役として,フォーチュンブックにまつわる人物が登場している。そして,これらの短編を時系列で並び替えると,一つの犯罪をめぐる物語が浮かび上がってくるのである。
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