北森鴻のレビュー一覧
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タイトルを見た時に、アガサ・クリスティへの
オマージュか?と思ったのですが、どうやら色んな作家さんの
有名な作品名をもじっただけのようです。でも面白い(^◇^;)
「なぜ絵版師(えはんし)に頼まなかったのか」
「九枚目は多すぎる」「人形はなぜ生かされる」
「紅葉夢(こうようむ)」「執事たちの沈黙」の5編を収録。
明治のお雇い外国人として東京帝大で医学を教えたベルツと、
その弟子となった葛城冬馬たちが遭遇する数々の事件を描いた
軽めな時代ミステリですね。
シリーズ化している他の作品のようなミステリを
連想してはいけません。
カバーイラストからもわかるように軽い内容なので
箸休めにちょうどいいと思います。 -
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ネタバレ京都一の貧乏寺・嵐山の古刹大悲閣の寺男、有馬次郎に奇妙な事件が持ち込まれる。
元広域窃盗犯の有馬の直感は鋭く、新聞の記者の折原けいや住職の助言も得、時には裏社会の情報を利用しながら事件を解決していく。
ミステリーですが、かなりコミカルでユーモアたっぷりの連作短編集。
どの話も京都ならではの文化や料理がキーになっているので興味深いです。
非現実なトリックやロジックを使った脱力してしまいそうになるバカミスの話もあるので、物足りなく思う人もいるかも。
「異教徒の晩餐」や「支那そば館の謎」のトリックはどうなんだろう…私はあまり納得できないな~。
大悲閣は実在するそうなので、いつか行ってみたいです。
素材を生かした季節感のある京料理の描写もおいしそうで、読んでいて唾液が出まくりました。 -
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おじがいるのに天涯孤独にされてしまった主人公。
日本大好きな医学部教授の元に奉公する事に。
5話の連続短編で、小さかった主人公は
最後には二十歳過ぎた大学生に。
不思議な話であったり、医学に関係する話であったり。
最初の話は、地味な仕返し、とも言えます。
2話目はそこまでして持って帰って
植民地にしたかったのか、と。
3話目は落ちの頑張る気持ちは分かりますが
その後の事を考えると、大変なものがあるかと。
ちょっともやっとするのが4話目ですが
この時代を考えると、こうなる事も。
そして最後の5話目は…忠誠心というのは
すごいものだな、と。
そしてすべてに関連して、主人公の友人(?)は
結局きちんと長続きする職が持てたのでしょうか?
お金には困ってなさそうに生活しているので
あまり心配する必要はないかも?w -
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「鴨ネギコンビ」のキュータとテッキの高校時代。
羽目を外したキュータは美人局に嵌められ金に窮し〈狂犬〉キョウジと共に信用金庫の裏金を強奪する。
警察の射撃訓練場で拾った弾丸を現場に残し、捜査を撹乱させるが、彼らの計画はいつしか歯車が狂い始めた。
高校生たちのいたずらはヤクザ・警察・脱北者グループをも巻き込んだ大事件へと発展し・・・。
「親不孝ディテクティブ」の続編でありながら、前日譚となっています。
キュータは若いころからお調子者で女好き、テッキのクールな佇まいも変わらず。
二人とも、暴力団と戦ったり、銀行強盗したり、女とすぐに懇ろになったり…こんな高校生いるかよ!と思いつつ、博多弁の軽快なリズムと、緊迫した中でもとぼけたユーモアに縁どられたスピーディーな展開にのめりこむように一気読みでした。
キュータとテッキだけでなく、元警察官の麻生やキュータの面倒を観てきた仙ジイ、テッキの同棲相手など、登場人物が各々の思惑で縦横無尽に動き回って状況が目まぐるしく変わり、展開についていくのが大変でした。
着地点の見えないコンゲームとしては出色の出来で、作者の筆致に思いっきりブン回されるのが快感になってきます。
よく考えるとトンデモ展開が多いんだけども、二人の若いパワーに触れているうちに前向きな気持ちが心に満ちていくような、元気をもらえるお話でした。 -
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店舗を持たない骨董業を営む旗師・冬狐堂こと宇佐美陶子は、銀座の画廊で見たタペストリーに魅せられ、現金で全作品を買う約束をする。
しかし作者は死に、作品は消えていた―。
騙しあいと駆け引きの骨董業界を生き抜く美貌の一匹狼を描く古美術ミステリー短編集。
前作とは異なり、今回は陶子ひとりで事件を解決に導いていくエピソードが多かったのですが、表題作の「緋友禅」では友人のカメラマン硝子さんとのコンビが見られて満足でした。
もたれ合わないけどお互い信頼しているという二人の関係性がいいんですよね。
このお話は真相が早く読めてしまうほどシンプルな謎解きとなっていますが、文章にみなぎる凄みや緊張感が心地よかったです。
中篇の「奇縁円空」は他の短編よりもページが多い分、力が入っているお話でした。
かつての顧客の鑑定により陶子が手に入れた円空仏は“鬼炎円空”と呼ばれるいわくつきの作品。
円空仏をめぐり事件が起こるが、それは30年前の贋作事件に端を発したものだった―。
“鬼炎円空”に秘められた謎や作者の秘密など、行き着く暇なく用意された謎と急展開の連続。
何が贋作で何が鬼炎円空なのか、読んでいるうちにごちゃごちゃしてきて少し混乱しました。
しかし、これだけの作品をものするには豊富な知識や美術眼が必要だと思いますが、豊富なバックグラウンドを秘めながらも押しつけがましくならずに物語を御し、読者をクライマックスへと力強く導いていく筆力が素晴らしいと思いました。
クールな陶子が時折見せる業の深さに惚れてしまう…。 -
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ネタバレ骨董商の「旗師」宇佐見陶子は、同業者の橘薫堂(きくんどう)の主人・橘から贋作のガラス器をつかまされる。
プライドを傷つけられた彼女は報復を決意するが、目利きの橘の目をごまかすことは容易ではない。
そこで彼女は、別れた夫のつてを頼り、贋作の天才・潮見老人に協力を求める。
一方、橘薫堂に勤める女性が殺され、陶子も殺人事件に巻き込まれてしまう。
骨董の世界を舞台にした、古美術ミステリ。
骨董業界という特殊な業界の事情をわかりやすく描いているのでとても読みやすかったです。
贋作をつかまされるのは見る目が無いから、つまり騙される方が悪いという非情なルールがまかりとおる業界。
そんな素人の想像を絶する古美術業界を舞台に、人の飽くなき欲望や駆け引きが描かれ、読み手はどんどん作品世界に引き込まれ、読み始めたら止まらないジェットコースターストーリーとなっています。
陶子がどのようにして復讐を果たすのか、殺人事件の捜査が陶子にどのように絡んでいくのか、一筋縄ではいかぬ手に汗握る展開や途切れのない緊張感に最後まで気が抜けません。
刑事のでこぼこコンビのしたたかさとか、潮見老人の不気味で迫力のあるキャラクターとか、脇を固める登場人物も個性豊かで魅力的でした。
ただ、最初の導入部分はちょっとわかりづらかったです。
まず主人公の陶子が橘に贋作をつかまされ、保険会社の調査員によって騙されたことに気づいた彼女は、その恨みを晴らすべく、復讐(目利き殺し)を決意する・・・という流れになっているのですが、彼女の心情が説明されないので、なぜリスクを冒してまで復讐を決意するのかが読み手には伝わらない。
一筋縄ではいかない世界で一人で仕事をする女性が並々ならぬ気概を持っていて、そのプロ意識の高さゆえに復讐をするのかな?とも思うのですが、贋作作りに手を染めるというのは、明らかに「犯罪者側」に行ってしまうことなので一度そうなったら絶対に元の立ち位置には戻れないし、職を失う可能性もある。
序盤の展開が早すぎて事情がのみこめず、陶子にも共感できないので読者が置いてかれる気がしました。
お話自体は面白かったので続編も読んでみたいです。 -
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ネタバレ博多・中州の屋台を営むテッキと結婚相談所の調査員キュータが、2人に持ちこまれる事件を解決していく連作短編集。
高校時代からの腐れ縁であるテッキとキュータが謎を解決していくのですが、2人の性格が好対照でとてもいい味を出しています。
冷静沈着で頭脳派のテッキと感情で突っ走るタイプの憎めないキュータは一見デコボココンビですが、それぞれが足りない部分を補完しているような、お互い欠かせない関係性が魅力的です。
後味のよろしくない苦みの強い事件も多いですが、2人のテンポの良い会話で軽い読み心地となっています。
たいてい事件の背景にはヤクザが絡んでいて、しかもキュータが突っ走って事件を複雑化させてしまうという展開が多く、話が定型で単調な感じもしました。
謎解きにも奥深さはあまり無いので、人間の裏側を事件にからませたような屋台ならではの切ない話をもっと読みたかったです。
続編がありそうなラストでしたが、作者は亡くなられているので書かれていないんですよね。残念。 -
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「フォーチューンブック」という1冊の本を中心に、実際に起きた事柄を織り交ぜながら虚実ないまぜにしながら物語は進んでいく。
連作と内容紹介には書かれているが、読んでいて普通の長編を読んでいるような感覚だった。
自主規制を版元がしたために都会では入手しにくくなっていた本。
地方都市松本で偶然に「フォーチューンブック」を手に入れた人たちのその後が描かれている。
知らず知らずのうちに絡み合っていた運命・・・運命と呼んでいいものかわからないけれど・・・は、それぞれの人生を大きく狂わせていく。
最後の1行が終わっても、まだ物語は終わらない。
残された人たちは、さらに「フォーチューンブック」によって人生を翻弄され、狂わされていくのだろう。
何ともいえないうやむやさのまま作品は終わってしまった。
第一話でモコが口にした友人の言葉は「二十歳の原点」のものだった。
あとがきに登場した先駆的な作品は「虚無への供物」だった。
どちらもすでに読んだことがあった。
なるほど。北森さんは「虚無への供物」に大きな影響を受けたのか・・・と、好きな作品だったのでちょっとだけ嬉しくなった。 -
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ネタバレ〇 概要
明治政府に招かれた雇われ外国人の一人,エルウィン・フォン・ベルツのもとで給仕として働き始めた葛城冬馬の成長と,冬馬とベルツが遭遇した事件が描かれた短編ミステリ。
〇 総合評価 ★★★☆☆
小説巧者の北森鴻らしく,5つの短編のそれぞれが,史実と虚構を織り交ぜ,読み応えのある作品になっている。ミステリとしては,それほど完成度が高くないが,ベルツを始めとしたお抱え外国人たちは個性的。各作品で名前を変える市川歌之丞も非常に魅力的なキャラクターとして描かれている。主人公の葛城冬馬も十分魅力的。なにより,史実がうまく虚構に織り交ぜられており,ある程度の日本史の知識があれば,聞いたことがある歴史的事実,偉人(ビゴー,フェノロサ,岩倉具視,井上馨など)が出ており,これも結構楽しい。最後の終わり方が唐突なのが残念。葛城冬馬が主人公の描かれていない話があるのかもしれない。全体を通じた趣向が用意されていたのかもしれない。傑作というほどの作品ではないが,北森鴻らしい安定した作品。
〇 なぜ絵版師に頼まなかったのか
ベルツと冬馬の出会いとなる作品。ここで,シリーズを通じ,名前と職業を変えながら出てくる市川歌之丞とも出会うことになる。「なぜ絵版師に頼まなかったのか」という言葉を残して,殺人をし,自殺した水夫。その真相を探る。真相は,外国人に復讐をするために,水夫が一緒に写真を撮った人物が「コレラ」であるとウソをついて,そのウソが発端となって,恐怖を感じ,殺人と自殺をしたというもの。不平等条約の存在が背後にある。
〇 九杯目は多すぎる
求婚広告に秘められた謎がテーマとなる作品。お雇い外国人のフェノロサが登場する。市川歌之丞は市川扇翁という名で,古美術商として登場している。真相は,海外に,日本の「地図」を運び出すために,求婚広告は利用されていた。しかし,その地図は偽の地図だった。フェノロサは,地図が運び出されているという事実だけを見て,日本が近いうちに外国に侵略されると考え,美術品を海外に運び出していたというオチ
〇 人形はなぜ生かされる
市川扇翁は小山田奇妙斎という名前で登場。れおな堂多弁児という人形作家が作った人形が,町を徘徊するという謎が描かれる。真相は,人形のモデルとなった人間を,人形のように見せかけ徘徊させていたというもの。動機は,れおな堂が自分の子供に見せかけた人形を殺害し,徴兵逃れをしようとしていたというもの。背景には,日本の徴兵制度が変わったことがあった。
〇 紅葉夢
小山田奇妙斎は鵬凛という住職として登場。お抱え外国人としては,ビゴーが登場する。小梅という芸妓が殺害される。真相は,おたかという芸妓。外務卿の井上馨の結核の薬を毒にすり替えておき,小梅に飲ませたという真相。井上馨の部屋に毒があったことが広まるのを恐れた紅葉館のマダムが死体の場所を変えたことにより,おたかにはアリバイができたというもの。ビゴーが犯行現場を見事な絵で再現したことで真相が分かった。
〇 執事たちの沈黙
お抱え外国人としてはスクリバが登場。鵬凛は,仮名垣魯文という名で登場し,作中で葛城頓馬と名を変える。東京大学内で火災が発生し,謎の死体が見つかる。洋装に下駄をはいていたこの死体の正体は誰かという謎。真相は死体がどこかに忍び込もうとしていたと見せかけたかったというもの。東大に遺棄したのは正確に解剖してもらうため。謎の死体は,森有礼の家の執事であり,密偵だった男で,正体がバレ、殺害されていたのだ。物語の最後は,葛城頓馬が語る。その口調は,葛城冬馬が死んでしまったかのような口調であった。