北森鴻のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ60ページ前後の短編5編をまとめた文庫本だが、読み進めるうちにだいぶ印象が変わる作品だった。
本書の元となった2003年刊行の同名の書籍も書き下ろし短編集ではなく、1998〜2000年の間に雑誌に掲載されたものを集めたもののようだ。そのためだろうか、1〜2話は設定や物語の方向がまだ固まっていないように思え、後半の4、5話は人気取りの目的かキャッチーな話題としてオカルト的な内容を中心に据えている。
ミステリーと民俗学は相性が良いと思うのだが、最初の1、2話では2つの要素が分離してしまっているように感じた。民俗学的なうんちくが話の本筋から浮いているようで、煩わしいだけのかさ増しのように感じた。対するミステリー部分はあっさりしすぎている印象だったので、「物語の奥行きを深める要素(:民俗学)と短編の組み合わせはダメなのか」という感想だった。
3話以降は2つの要素が上手くかみ合い、本シリーズの良さが生きてくる。私はこの3話の『不帰屋』と5話『邪宗仏』が特に面白かったと思っている。『不帰屋』は派手さはないが民俗学とミステリーがかみ合って、殺人事件と民俗学で2つの謎解きが平行して進む。寒村の湿った気味悪さも良い雰囲気を醸し出している。
4話と5話は、鉄に聖徳太子とメジャーな題材をオカルト的な方向から盛り込んでいる(それまでの地味なテーマでは連載の評判が芳しくなかったのだろうか?)。4話のテーマは大風呂敷を広げすぎであり、「本当に民俗学の守備範囲か?」とも思ったが、5話の『邪宗仏』はオカルトのような話題から入るが、(架空の話であっても)トンデモではなく手堅く収めていて上手いなと思った。
また、『解説』の『5編全てが本格ミステリ』という言葉には賛同できないが、最後の5話はしっかり本格ものだと言えた。この5話『邪宗仏』は5編の集大成といった感じで、キャッチーで大きなテーマから入り、本格ミステリーの香りを漂わせる華麗な推理を見せ、民俗学的テーマは手堅く締めるという綺麗な展開を見せた物語だった。
最初の2話を読み終えた時点では「次巻は無いな」という感想だったが、中盤以降の盛り上がりと最終5話の完成度で考えを改め、次巻を購入することにした。
主に中盤までだが、物語の時代背景と、大学や学者の描写は違和感が強かった。
物語の年代は3話の冒頭で『長く続く不況』に言及しているので90年代後半、連載開始時の1998年付近だろうと分かるのだが、1話を読んだ時点では「80年代なのか?」と混乱した。
学生が携帯電話もPHSも持っておらずアパートの部屋には固定電話がある、ビデオデッキの使用、内藤が公園で喫煙する(;大学ではかなり古い時代から喫煙者が少ない)、内藤が学位を持たずに教員になっている(博士課程の学生や修士号のみで教員にしていたのなんて80年代よりもさらに前ではないか??)と、「著者の大学生時代のイメージで書いていないか?」と思う描写が1話には多い。
学者や学問の描き方も偏っていて中途半端で違和感が強い。
大学院にも行っていない人間が研究者を名乗ったり、論文を投稿し始めて半年で一丁前気取りという内藤の姿勢は明治時代でもないとあり得ない様子なので、「レポートの回答が印象に残っていた学生(内藤)が、他大学の大学院に進学・修了後に行く当てが無かったところをスカウト」の方が自然だっただろう。
那智の大学内での振る舞いにも違和感がある。研究費がなくなったら「どんな怪しいところからでも金を引っ張ってくる」「いくらでも自腹を切る」というなら”研究バカ”らしい態度だと思うのだが、持ち出しは一際せずに助手に金策(管理ではなく)を任せて自分勝手に振る舞う現役研究者など、今も昔もいるものかと思った。
また、やたらに学部の資金をくすねに行くのもおかしく「ちゃんと外部資金を取りなよ」とも思う。毎年、何度も”学部のため”のお金を無心に来られれば『教務部の狐目の担当者』もイヤミくらい言いたくなるだろう。
この十分な研究費を得られず学内で補填してもらっているような描写は那智の研究者としての無能を強調してしまうだけ(『異端』なのも、独自の視点を持った天才性より「考え方や文章の書き方がピンボケしているだけでは?」となってしまいかねない)なので、無い方が良かったのではないか。『凶笑面』の安久津や『邪宗仏』の佐芝のような折り合いの悪い、不利な状況になり得る有力者からであっても(なんなら警察から捜査協力した見返りをもらってもいい)必要に応じて旅費や滞在費の一部をせしめ、それでいて邪な考えを挫いて鼻をあかすくらいの方が那智のしたたかさや研究に向けるなりふり構わない直向きさ、冷徹な現実主義的側面を表現できたのではないだろうかと思った。
この違和感の強い描写だが、話が進む毎に減っていく(連載時に指摘でも入ったのだろうか)。時代を特定するような特徴的な描写はなくなり、また、後半の4、5話では大学での様子はかなりサラリとしたものになっており、アクセントとして差し挟まれる程度になっている。
上記の「後半に行くほど内容が面白くなった」だけでなく、この違和感の強い描写が急激に減っていくのも続編を読もうという気持ちにつながったように思う。 -
Posted by ブクログ
1999年刊行、今年2025年は北森鴻さん没後15年だそうです。今年創元推理文庫となる際に、新しい帯が巻かれ手に取りました。
「物語舞台のモデルは西武池袋本店屋上庭園」
しかも、名物うどん屋の「さくら婆ァ」が不可思議な謎に挑むという!うどん屋!
ダークな色合いの謎(決して日常の謎ではない ^^;)の真相を、さくら婆ァとその仲間たちで明らかにしていくのてすが、さくら婆ァにも仲間たちにも人生があり、ほろ苦く哀しい。
デパートの屋上って、平和で穏やかだけど少し寂しくて、舞台にはぴったりかもしれません。
さて、
西武池袋本店は2025年9月現在大改装中。
モデルとなった、名物うどん屋「かるかや」は2024年に閉店。閉店したからモデルを明らかにした、とのこと。(勿論、さくら婆ァはいません(笑))
「かるかや」さん、本当に美味しくて、大人気でした!
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Posted by ブクログ
ネタバレ創元推理文庫の積読を消化しよう月間4冊目、まだ出たばかりの屋上物語
うーん、とりあえず暗い
そして話が重い
美味しそうなうどんでは払拭できないよ
屋上の話かつ晴天のストーリーもあるのに、ずっと曇天のイメージ
とある登場人物の死を皮切りに関係者が次々と死にすぎ
各章の視点がユニークな点は評価
最後は屋上が関係なくなったけど
W解説も良かった
蓮丈那智の民俗シリーズも暗かった印象だが、あちらはテーマに沿っているのでヨシ
巻末には、ありがちな「現代においては不適切な表現うんぬん」ではなくて「喫煙シーン」に関するお断りがあって笑った
初めて見たけど令和ってそうなの?(ちがうだろ
作中では確かに未成年も吸っているけど
未成年の暴力や性の表現を比較対象に持ち出すつもりはないが、なんだかなあ -
Posted by ブクログ
ネタバレ佐江さんはレギュラーになったのですね。
彼女が優秀な分、三國くんの情けなさが気になってしまうという……直感は正しいんですけども。
表題作ではいいところまで推理してたのに、結局ひっくり返されてしまうし……可哀想。
驚いたのは、狐目の彼のお名前がここで判明したこと。
永遠に明かさないものだと思っていたから、かなり驚いた。
個人的には『湖底祀』が好き。
「ひっくり返り方」が見事だったので。
表題作は、タイトルでオチが分かってしまうのと、絡繰箱の正体が分かると、美術史にある程度明るい人だと芋蔓式に分かってしまうのが、自分としてはちょっと物足りなさを感じてしまった。
驚きが少ないという…… -
Posted by ブクログ
目次
・ヨコハマ12・31
・対の琴声(きんせい)
・祭りの準備
・貴婦人だより
・同行二人
・夜行にて
・風の来た道――夜行にてⅡ
・雪迷宮
・うさぎ二人羽織
北村鴻の遺作ということで、少し期待をしすぎたのかもしれない。
まったく面白く感じることができなかった。
主人公リツ子はフリーのライター。
音響技術者である義兄が飛行機事故で亡くなった。
遺書と思しきメモと、音のメッセージを受け取ったリツ子は、納得できないものを感じ、音源を探し始めるのだが……。
まず、親同士の再婚で義理の妹になったリツ子を「うさぎ」って呼ぶ違和感。
その後出てくる、恋人のことも「うさぎ」。
なんかちょっと気持ち悪い。
リツ子が音源の謎を探るため日本各地を旅するのだが、いくら音響技術者だからと言って、こんなわかりにくいメッセージを残す意味が分からん。
メッセージって伝えてなんぼじゃないの?
で、行く先々でリツ子が小さな謎を解いていくのだけれど、これまたどうでもいい。
例えば、のどに刺さった小骨が取れた後も、もやもやとスッキリしない感じ。
小さな謎をいくつ解いてももやもやは解消しないし、全体を通した大きな謎も意味不明。
人間の可聴域を超えた音を聞くことができる人物が3人。
特に必要だったかなあ、この設定。
全体的に消化不良でした。 -
Posted by ブクログ
北森鴻の連作ミステリ短篇集『支那そば館の謎 裏京都ミステリー』を読みました。
ミステリ作品は『パンドラ'S ボックス』、『狂乱廿四孝/双蝶闇草子』に続き、北森鴻の作品です。
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元怪盗の寺男と慈悲深い住職が、難事件を次々と解決する。
京の風情がてんこ盛りの傑作本格推理!
僕の名は有馬次郎。京都でも指折りの貧乏寺、大悲閣千光寺の寺男だ。
怪盗と呼ばれた過去もあったが、縁あって慈悲深い住職に拾われ、表の世界の住人となった。
厄介なのは、寺に奇妙な事件ばかりが持ち込まれること。
持ち前の身軽さと裏の人脈を駆使、住職の智恵をお借りして、解決にひた走る毎日だ。
京の風情と垂涎の料理の数々も楽しい、本格推理の傑作登場!
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光文社が発行しているミステリ専門誌『ジャーロ』に2002年(平成14年)から2003年(平成15年)に掲載された後、2003年(平成15年)3月に刊行された裏(マイナー)京都ミステリの第1作です。
■不動明王の憂鬱
■異教徒の晩餐
■鮎躍る夜に
■不如意の人
■支那そば館の謎
■居酒屋 十兵衛
■解説 大林道忠
元広域窃盗犯にして寺男の有馬次郎と、穏やかな相貌と鋭い観察眼をあわせもつ住職の二人が、みやこ新聞の自称「エース記者」折原けいや、京都府警の碇屋警部と共に、難事件の謎に迫る! 京の風情と人情と、密やかな悪意と……傑作本格推理。
京都を舞台に、銭湯の構造、鯖寿司(棒寿司)、五山送り火、藍染め、町屋建築 等々、本格ミステリに京都文化と密接に結びついたネタをバランス良く織り込んだ作品でしたね……元怪盗である寺男の有馬次郎と洞察力に優れた住職が、京都の大悲閣千光寺で奇妙な事件に立ち向かう様子がコミカルに描かれていました、、、
みやこ新聞の自称「エース記者」折原けいや、京都府警の碇屋警部 等を含めた登場人物たちの軽妙な掛け合いや、京都の料理の描写も魅力的でした……独特の味わいがあり、本格ミステリや京都のことが好きな人にオススメですね。
以下、登場人物です。
有馬 次郎(ありま じろう)
大悲閣千光寺の寺男。けいからは名前をもじって「アルマジロ」と呼ばれる。
数年前まで関西一帯を活動範囲にする広域窃盗犯だった。
身のこなしの軽さなどから大阪府警・京都府警から「怪盗」扱いを受けた。
大悲閣に忍び込んだところ階段から落ち骨折し、温情ある住職に助けられ、寺男として表の世界に戻ることができた。
折原 けい(おりはら けい)
京都みやこ新聞文化部の記者。
折に触れて大悲閣を取り上げる、自称「大悲閣千光寺の守護神」。
住職
大悲閣千光寺の住職。
盗みに入った次郎を警察に突き出すこともなく、寺男になるよう諭した。
洞察力に優れており、時には推測ではあるものの、次郎さえ解けない謎を解くこともある。
碇屋(いかりや)
京都府警捜査一課の警部。
常に「警部元気で暇がいい」と標榜し実践に務め、そのくせ重大事犯になるとしゃしゃり出てきては現場を混乱に導く。
次郎からは「正真正銘の税金泥棒」と評される。
十兵衛の大将
次郎行きつけの割烹店「十兵衛」の主人。
懐の寂しい次郎に、手頃な値段で数々の絶品料理を供してくれる。
水森 堅(みずもり けん)
『鼻の下伸ばして春ムンムン』で大日本バカミス作家協会賞を受賞した作家。
みやこ新聞社協賛の講演会に出席予定だったが、ある事件を起こしてしまって以来、大悲閣に居候するようになる。
次郎とけいからは受賞作のタイトルに因んで「ムンちゃん」と呼ばれる。 -
Posted by ブクログ
北森鴻の短篇&エッセイ集『パンドラ'S ボックス』を読みました。
北森鴻の作品は、昨年11月に読んだ『香菜里屋を知っていますか 香菜里屋シリーズ4〈新装版〉』以来ですね。
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短編の名手・北森マジックの原点! デビュー作を含む、初期傑作7編!
画壇の若き寵児(ちょうじ)が突然、不可解な焼身自殺を遂げた。その死に秘められた驚くべき秘密とは?(「仮面の遺書」)
大阪府警に届いた殺人を告白する手紙。少女の死体を古墳の稜墓(りょうぼ)に埋めたというのだ。捜査は、専門家による発掘調査を終えてからと命じられた刑事は……(「踊る警官」)。
大胆な着想と鮮やかな謎解き!
デビュー作を含む初期短篇7作と、エッセイ7編を収録。
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2000年(平成12年)に刊行された作品…… 初期の未収録短編を集めてそれぞれに詳細な自解を加えた一冊です。
・作者口上
■仮面の遺書
・短編デビューまで
■踊る警官
・長編デビュー前後
■無残絵の男
・トリック嫌い
■ちあき電脳探てい社
・錬金術師・1996
■鬼子母神の選択肢
・『狐罠』のころ
■ランチタイムの小悪魔
・作家というお仕事
■幇間二人羽織
・作家交遊録
・カッパ・ノベルス版 あとがき
■怪説 はざま隆治
画壇の寵児が突然の自殺を遂げた!その死に秘められた謎とは?(『仮面の遺書』)……警察に届けられた殺人者からの告白文。その衝撃の内容から、日本の古代史の謎にメスが!?(『踊る警官』)、、、
大胆な着想と、鮮やかな謎解き! 読者に息つく暇さえ与えぬ、卓抜なストーリー展開! 短編の名手が放つ、デビュー作から今日までの珠玉の短編七本を収載! さらに、各々の短編に合わせ、作家の肉声をユーモアと哀感をこめて書き下ろしたエッセイを掲載! フィクションとノン・フィクションが絶妙に融合したクロス・オーバー・ノベルス、ここに誕生。
初期の作品とエッセイが綴られた作品集……短篇7篇とエッセイ7篇が交互に収録されています、、、
エッセイでは、デビュー頃の仕事の様子や若いころにハードな仕事をしていた様子が語られており、興味深い内容でしたね……短篇では、デビュー作で犯人の職業ならではのトリックが印象深い『仮面の遺書』と、犯人の真の目的が明らかになる衝撃的なエンディングと大阪弁が印象に残る『踊る警官』が面白かったですねー 北森鴻の作家としての幅広い才能を垣間見ることができる一冊でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ蓮丈先生が骨折したり襲われたり容疑者扱いされたり、何なら三國くんも容疑者扱いされたり(でもご褒美チューはあった)と主役コンビがピンチに陥る話がそれなりにあってびっくりした2巻。
1巻では今後サブキャラになるのかなと思っていたキャラから被害者となってさっさと退場していた印象だったが、2巻は新しく助手が増えたり(そして退場しない)狐目さんの出番も増えたりと、こちらの予想をいい意味で裏切ってきて面白かった。
民俗学の話としても、即身仏と道祖神の話や敢えて風化するよう作られた五百羅漢の話など、印象的な話が多かった。
ぞわっと怖さを覚えたのは、新興宗教の話。
他の話に比べて身近に起きそうという怖さが。
それに後味が微妙に悪く、あるキャラを救えなかった点にやるせなさを感じた。
事件としては前述の即身仏の話が好きかなあと。
この話は珍しく殺人未遂で済んでるが、民俗学の話が二段構えだったのと、トリックがいい意味で結構大胆だったので。
あと、三國くんの有能さが見える話があったのもよかった。
普段は頼りない感じなんですけど、例の暗号メッセージに対して適切に動けていた点と最後の話の根回しの良さに痺れました。
その前にボコボコにされてたんですけどね、彼……胃痛に負けず頑張ってくれい。