あらすじ
飛行機事故で突然この世を去ってしまった、義兄・最上圭一。優秀な音響技術者だった彼は、遺書とは別に「うさぎ」宛に不思議な“音のメッセージ”を遺していた。圭一から「うさぎ」と呼ばれ、可愛がられていたリツ子は、早速メッセージを聞くことに。環境庁が選定した、日本の音風景百選を録音したものと思われるが、どこか不自然なひっかかりを覚える。謎を抱えながら、録音されたと思しき音源を訪ね歩くうちに、リツ子は奇妙な矛盾に気づく――。横浜、札幌、山口、香川、岩手……、音風景を巡る謎を、旅情豊かに描いた連作長編。
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Posted by ブクログ
北森さんを初めて知ったのはおそらく20年程前で。
久しぶりに北森さん作品を読みたくなり、手に取りました。
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義兄が遺した不思議な”音のメッセージ”。
音源を巡る「うさぎ」が、
旅路の果てに見たものは……
旅情豊かに描いた連作長編ミステリ
鮎川賞作家最後の贈りもの
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飛行機墜落事故で命を落とした義兄。
兄が最期に残した、うさぎ宛てのメッセージ。
生前「うさぎ」と呼ばれていた妹が、
兄のPCに残されていた音源を頼りに、
生前の足跡を辿るお話です。
連続の短編となっており、
最期にひとつの結末に向かいます。
色々な感想があると思いますが、
「音」だけで複数の仕掛けを作れることに驚き、
謎が少しずつ明らかになっていくなかで、
しんしんと降るような静けさと不安を覚えました。
音が物語の軸にあるのに、
「本当の音」が聞こえないような不安です。
兄の思考と妹の気持ちに対して、
表記されている文字だけだと、
行動と感情が繋がらず、
置いてけぼり、共感できないとなりそうですが、
裏側でこんな気持ちや行動があったのか、
だからお母さんの言動があったのかと思うと、
ぞわっとしました。苦笑
久しぶりに北森さんに再会して嬉しい気持ちと、
もう新作は読めないんだなというさみしい気持ちです。
本屋さんで北森さんの作品を見つけられず、
ネットで購入しました。ネット感謝です。
実家に置いたままになっているシリーズ、
再購入しようかなあと思います。
Posted by ブクログ
二匹のうさぎが入れ替わり立ち替わり…と不思議な雰囲気の連作短編集。
最近出版業界とかライターさんが主人公のお話を続けて読んでる気がする!そんなちょっとした偶然。
それにしても、まさかまさかのオチでした。
うわー、セツナイ。
Posted by ブクログ
私がミステリーをたくさん読んだ成果か、この本は丁寧に読むって心して読んだせいか、これが遺作ゆえ未推敲だったのか…中盤で始まるミスリードにすぐに気がついた。そこから怒涛の伏線が散りばめられて、各所にいた登場人物たちが集結し、クライマックスへ。
義兄を悼みたどるリツ子に寄り添っていたこともありラストはイヤミスのようにも感じた。唐突な終わりで、圭一さんはなぜうさぎたちに音風景を残したのか?どういう未来を期待して死を選んだのか?謎と伏線が文字の中を漂ったままの終わってしまった。
綾子サイドの旅も読んでみたい。
Posted by ブクログ
目次
・ヨコハマ12・31
・対の琴声(きんせい)
・祭りの準備
・貴婦人だより
・同行二人
・夜行にて
・風の来た道――夜行にてⅡ
・雪迷宮
・うさぎ二人羽織
北村鴻の遺作ということで、少し期待をしすぎたのかもしれない。
まったく面白く感じることができなかった。
主人公リツ子はフリーのライター。
音響技術者である義兄が飛行機事故で亡くなった。
遺書と思しきメモと、音のメッセージを受け取ったリツ子は、納得できないものを感じ、音源を探し始めるのだが……。
まず、親同士の再婚で義理の妹になったリツ子を「うさぎ」って呼ぶ違和感。
その後出てくる、恋人のことも「うさぎ」。
なんかちょっと気持ち悪い。
リツ子が音源の謎を探るため日本各地を旅するのだが、いくら音響技術者だからと言って、こんなわかりにくいメッセージを残す意味が分からん。
メッセージって伝えてなんぼじゃないの?
で、行く先々でリツ子が小さな謎を解いていくのだけれど、これまたどうでもいい。
例えば、のどに刺さった小骨が取れた後も、もやもやとスッキリしない感じ。
小さな謎をいくつ解いてももやもやは解消しないし、全体を通した大きな謎も意味不明。
人間の可聴域を超えた音を聞くことができる人物が3人。
特に必要だったかなあ、この設定。
全体的に消化不良でした。
Posted by ブクログ
私たちが機器を通して目にするもの、また音として聞いているものの中には、本物というものは存在しないのだということが改めて思い知らされた感じだ。映像も音も、より感動的になるように、あるいは悪意的な作為を持って編集され私たちの中に入ってきているのだ。
こんなところに目をつけた北森さんはすごいと思うけれど、ストーリーに自然な流れを感じない、何か違和感を感じてしまう。