あらすじ
デパートの屋上、それはかつて人々の憩いの場であった。遊園地あり、レストランあり、舞台でのショーありと、まさにエンターテインメントの集う場所だった。とあるターミナル駅に隣接する有名デパートの屋上には、知る人ぞ知る讃岐うどんの名店がある。老若男女のファンが、安くてうまいうどんの味を求めてやって来るが、同時に不思議な謎や事件も集まってくるのだ。うどんを提供するのと同様に、素早く謎解きするのは、通称「さくら婆ァ」。デパートの屋上で繰り広げられる様々な人間模様を、魔術師・北森鴻が丁寧に描いた8篇を収録した、連作ミステリ。装いも新たに贈る、決定版。/【目次】はじまりの物語/波紋のあとさき/SOS・SOS・PHS/挑戦者の憂鬱/帰れない場所/その一日/楽園の終わり/タクのいる風景/解説=愛川晶/創元推理文庫版解説=村上貴史
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Posted by ブクログ
デパートの屋上という楽園を舞台に、そこで起こる決してコージーではない事件(実際人が何人も死ぬ)を描く8つの連作短編。
各話の語りが屋上にある稲荷社の使い狐だったり、観覧車やベンチやピンボールマシンといったモノである点も面白い趣向。
そしてなんと言っても秀逸なのは“さくら婆ァ”の人物造形と彼女を手助けするヤクザ者の杜田、高校生のタクとのやり取り。
事件は人間の悪意を浮き彫りにし、総じて暗く、ほろ苦を通り越してビター過ぎるんだけど、3人の関係性があるからどこか救われながら読んでいけた。
無敵に見えるさくら婆ァにも、一見明るく見える杜田にも消化しきれない心の闇があって作品全体に深みが増す。
最終話のタクがちょっと明るい未来を見せてくれて、読後に少し光が差した感じなのもいい。
うどん屋のモデルになった池袋西武屋上庭園のお店が昨年閉店になったのは残念でならない。さくら婆ァがいなくても行ってみたかったな〜。
Posted by ブクログ
とあるデパートの屋上のうどん屋の店主さくらさん。
その周囲ではなぜか不思議な出来事が巻き起こる。
さくらさんが手下のように興行師の杜田を動かして謎を解く。語り手がヒトでなく、屋上に置かれた様々なモノというのも面白い。
さくらさんにも過去があるし、事件もなかなかにダークだったけど、さすが北森鴻さんで読み応えばっちり。
とはいえ、次は「裏京都シリーズ」みたいなライトな方にいきたいかも。
Posted by ブクログ
あるデパートの屋上を舞台とした本格推理連作短編集。ポイントとしては、短編ごとに語り手が変わり、しかもすべて無生物というところ。どのお話も謎が解けてスッキリという感じはあまりなく、どちらかというとほろ苦い系。時代設定はよくわからないけど、キャラクターが少々、昭和っぽいところが、今ひとつ乗れなかった。
Posted by ブクログ
1999年刊行、今年2025年は北森鴻さん没後15年だそうです。今年創元推理文庫となる際に、新しい帯が巻かれ手に取りました。
「物語舞台のモデルは西武池袋本店屋上庭園」
しかも、名物うどん屋の「さくら婆ァ」が不可思議な謎に挑むという!うどん屋!
ダークな色合いの謎(決して日常の謎ではない ^^;)の真相を、さくら婆ァとその仲間たちで明らかにしていくのてすが、さくら婆ァにも仲間たちにも人生があり、ほろ苦く哀しい。
デパートの屋上って、平和で穏やかだけど少し寂しくて、舞台にはぴったりかもしれません。
さて、
西武池袋本店は2025年9月現在大改装中。
モデルとなった、名物うどん屋「かるかや」は2024年に閉店。閉店したからモデルを明らかにした、とのこと。(勿論、さくら婆ァはいません(笑))
「かるかや」さん、本当に美味しくて、大人気でした!
Posted by ブクログ
創元推理文庫の積読を消化しよう月間4冊目、まだ出たばかりの屋上物語
うーん、とりあえず暗い
そして話が重い
美味しそうなうどんでは払拭できないよ
屋上の話かつ晴天のストーリーもあるのに、ずっと曇天のイメージ
とある登場人物の死を皮切りに関係者が次々と死にすぎ
各章の視点がユニークな点は評価
最後は屋上が関係なくなったけど
W解説も良かった
蓮丈那智の民俗シリーズも暗かった印象だが、あちらはテーマに沿っているのでヨシ
巻末には、ありがちな「現代においては不適切な表現うんぬん」ではなくて「喫煙シーン」に関するお断りがあって笑った
初めて見たけど令和ってそうなの?(ちがうだろ
作中では確かに未成年も吸っているけど
未成年の暴力や性の表現を比較対象に持ち出すつもりはないが、なんだかなあ