【感想・ネタバレ】花の下にて春死なむ 香菜里屋シリーズ1〈新装版〉のレビュー

あらすじ

人生に必要なのは、
とびっきりの料理とビール、
それから、ひとつまみの謎。

三軒茶屋の路地裏にたたずむ、ビアバー「香菜里屋」。
この店には今夜も、大切な思いを胸に秘めた人々が訪れる――。

優しく、ほろ苦い。
短編の名手が紡ぐ、連作ミステリー。
不朽の名シリーズ第1弾!
第52回日本推理作家協会賞 短編および連作短編集部門受賞作

解説 瀧井朝世


春先のまだ寒い夜。ひとり息を引き取った、俳人・片岡草魚。
俳句仲間でフリーライターの飯島七緒は、孤独な老人の秘密を解き明かすべく、
彼の故郷を訪れ――(表題作)。
バー「香菜里屋」のマスター工藤が、客が持ち込む謎を解く連作短編ミステリー。

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香菜里屋シリーズ1
香菜里屋のマスター工藤が常連客の話から謎を解いていく。しかも連作短編集という形で、続いてはいるけど一話完結なので、遅読の自分にはちょうど良い長さになってる。工藤の推理も香菜里屋の客と一緒になって楽しめるし、その謎たる人物にかかわる物語がまた良いのだ。ミステリーである前に、ある人の物語としても楽しめる。
シリーズは3まであるらしいので全部読むつもり。
舞台は20年以上前だが、新玉川線と呼ばれる点以外は全く時代を感じさせない。

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2022年02月06日

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懐かしの香菜里屋。
シリーズ1冊目の中で、特にお見事なラストな「家族写真」が1番好き。あのラストには、うわってなる。そうくるの、すごい。
ちょっとコミカルな「七皿は多すぎる」も楽しいし、老俳人絡みの2作品の雰囲気も、香菜里屋で語られると重くなりすぎなくて救われる。
さて、引き続き続巻に行く。

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2021年06月26日

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ネタバレ

オススメのビアバーを見つけた。
三軒茶屋の外れにひっそりと佇む「香菜里屋」という小さな店である。
常時4種類のアルコール度数の違うビールがおいてあり、その日の気分でビールの味わいが楽しめるのでビール好きにはたまらない。
その上マスター手作りの、ビールにぴったりの旬の美味しい料理が、実にタイミングよく出されるのだから、料理目当てに訪れる客も多いはずだ。
このマスター、料理上手なだけでなく聞き上手でもあり、お客の抱える心の重石にさりげ無く気を配り、いつの間にかお客の懐にするりと入りこみ重石を軽くしてくれる不思議な魅力も秘めている。
夜の一時を楽しみ癒やされるため、そして店全体に醸し出される居心地の良さに、何度もリピートする客が後を断たない。

常連客たちが賑わう一夜、客により持ち込まれる謎。
客とマスター、そこに読み手も加わり繰り広げられる数々の謎解きには、必ずしも明確な答えが出る訳ではない。
時になんの根拠もない推測で終わるものもある。
けれどその曖昧さがとても心地よい余韻をもたらすのだから不思議だ。
大人たちによる切なく、ビールのような苦味がほんのり効いた連作短篇集。
無性にビールが呑みたくなった。

シリーズ続編で再び「香菜里屋」を訪れることが今からほんと楽しみ。

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2021年03月04日

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初北森。日本推理作家協会賞受賞作。香菜里屋シリーズ1。短編集。前々から料理描写が巧い(美味い)作家だと聞いていたので、新装版を機に購入。料理描写は勿論のこと、私としては常連客が持ち込む謎の、特にその背景描写の巧みさに心惹かれました。こんなにも味わい深く、魅力的に描けるなんて…。好みのは表題作と「魚の交わり」のニ篇。推しキャラは片岡草魚と飯島七緒のお二人。良い味出してて好ましいなぁと。

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2024年05月10日

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人生に必要なのは、
とびっきりの料理とビール、
それから、
ひとつまみの謎。

三軒茶屋の路地裏にたたずむ、
ビアバー「香菜里屋」。
この店には今夜も、
大切な思いを胸に秘めた人々が訪れる――。

優しく、ほろ苦い。
短編の名手が紡ぐ、
不朽の名作ミステリー!
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12~3年前に読んでいて、
実家にあるはずなのですが…
どうしても読みたくて新装版購入しました。
というか、新装版があることに驚きと喜び。

三軒茶屋や電車でよく通っていたし、
利用することもあったので、
とても馴染み深くて。

そんな街のどこかに、
香菜里屋があるのかもと思うと、
当時はドキドキした記憶です。

おいしそうな料理と度数の違うビールたち。
そこに持ち込まれる数々の謎。
6話の短編集です。

最近、アシモフの「黒後家蜘蛛の会」を読みましたが。
当時の私は安楽椅子探偵なんて言葉も知らず、
それでも香菜里屋の世界観に魅了されていました。

久しぶりに読む北森さんは変わらず私の好みで、
ヨークシャテリアに似ているマスターの工藤が
さりげなくお洒落で、
だけど謎がじわじわと浸み込んで迫ってくる感じです。

好みはあると思うのですが、
北森さんのひんやりした細い感じの文体とか表現、
扱うテーマが私は大好きです。

個人的には、「終の棲家」「魚の交わり」が好きでした。
最近、漣丈那智シリーズも新装が発売されたので、
香菜里屋シリーズとあわせて
そちらも読まねばです…!

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2024年05月06日

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春になったので、とうとう読んでみた。
美味しい一品と、四つの度数のビールサーバーがある居酒屋「香菜里屋」が中心になっている連作短編集。
マスターの工藤さんが、客達の持ち込む謎や悩みを、あれよあれよとさりげなく解決へと導いていきます。
話によっては憶測の域を出ない(マスターも言及している)ものもあり、モヤモヤしたり、晴れやかになったりと、色んな話が詰まっていました。
占い師の北さん、フリーライターの七緒さんなど、常連客にも魅力的なキャラクターが沢山いたので、次作以降のこのシリーズも読んでいこうと思います。

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2024年04月29日

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ネタバレ

目次
・花の下にて春死なむ
・家族写真
・終の棲み家
・殺人者の赤い手
・七皿は多すぎる
・魚の交わり

‪以前、シリーズの最終巻を読んでしまったので、最初から通読することに。
連作短編のミステリなので、短編一作を読んでも話は分かるが、店の常連やマスターとの会話でゆるく話が繋がってもいるので、やはりこれは順に読むべき作品と思った。

舞台は、今でこそ珍しくはないビアバーの香菜里屋。
それぞれアルコール度数の違う4種のビールを置き、客の様子を見ながら絶品の料理を提供してくれる。
そして、客の持ち込むちょっとした謎をマスターの工藤が解き明かしてくれる、というもの。
アシモフの『黒後家蜘蛛の会』を彷彿させるつくり。

殺人事件がないわけでもないが、それは直接かかわるものではないので、毒はそれほど強くない。
ただ、工藤のような人が身近にいたら、ちょっとしんどいかなあ。
全てを見透かされそうで。
いや、工藤の方がしんどいんだろうなあ。
面に出さないだけで。

年のせいか『花の下にて春死なむ』と『終の棲み家』が、ことによかった。
ひとり、寒いアパートで震えながら死んでいくというのは嫌だけど、その枕元に季節外れに咲く桜があってよかったと思った。
若者の生真面目な正義感から起こした行動が、一生ふるさとに帰ることのできない放浪生活を彼に強いたのだとしても、思った未来とは違う人生になってしまったけれども、決して不幸ばかりの人生ではなかったのだと思いたい。

謎のすべてを明らかにするわけではないからこそ残る余韻。
それは工藤の、作者の優しさなのだと思う。

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2023年05月02日

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マスターとある引っ掛かりを解いて行く様子や合間に提供する料理とビール、いいですね、シリーズが気になります。

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2023年04月21日

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短編の名手!一つひとつの完成度が高く、それぞれがうまくリンクする。それとやはり、料理の描写か。もう新作が読めないのか残念でならない。

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2022年03月11日

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花の下にて春に死なむ/家族写真/終の棲み家/
殺人者の赤い手/七皿は多すぎる/魚の交わり

幾つかは読んだことがある。複数の作家の作品を集めた短編集だったかな。
幾つかに絵のイメージがある。漫画家さんが作品の原作に選んでいたかも知れない。

マスターの推理には脱帽。そして謎を持ち込んだり一緒に推測を広げたりするお客様方も素敵な人達だと思う。

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2021年03月24日

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北森鴻(個人的なポリシーとしてご存命でない作家は敬称略です)は、蓮丈那智フィールドファイルシリーズを読んだだけ(しかもシリーズ全巻でなくご本人で書き終えられた3冊のみ)ですが、いずれもお気に入りだったので、今回の新装版刊行を機に、この香菜里屋シリーズにも手を出しました。

三軒茶屋の駅近くの袋小路にある小さなビヤバー「香菜里屋」を舞台に、客が持ち込む謎をマスターの工藤哲也が解く。
こう聞くと、有栖川有栖さんの「山伏地蔵坊の放浪」や、近藤史恵さんの「タルト・タタンの夢」に始まる〈ビストロ・パ・マル〉シリーズの様なイメージを思い浮かべていました。

そのイメージは、香菜里屋が行ってみたくなる店であること、マスターの工藤さんの謎めいた、でも親しみやすそうなキャラと彼の提供する美味いビールや料理が魅力的という点に関しては当たっていました。
いや、ほんと近くにこんな店ほしいです。
そう頻繁にはいけそうもないけど。

イメージと異なっていたのは、持ち込まれる謎とその背景にある物語が、存外、生々しく時になまめかしく「生」を感じさせるものが多かったことです。そのせいか、謎が解けた爽快感は低めです。
そもそも謎解きというより推測にしか過ぎない漠然とした終わり方のものもありますしね。
最初の一編で、それに一瞬抵抗感を持ったのですが、工藤さんのキャラと料理込みでの香菜里屋という魅力的なスペースが、ざわつく心を癒やしてくれたのも事実です。
なので、☆5つとはいかなかったものの、もう少し香菜里屋には足を運びたいと思います。

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2021年03月10日

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安楽椅子探偵もののミステリー。
短編集ではあるがトリックが巧みで内容の濃いものが多くお腹いっぱい。
トリックがわかり始めてから結末まで良いスピード感でよむことができた。
最終話にそれまでの登場人物が出てきたり1話目を踏襲していたりしてまとまりが良かった。
自分の読解力不足で少し内容を読み取れないところがあったが、読み返して理解できた。
ビアバーで途中途中出てくる料理が美味しそうで、実際に行ってみたい、食べてみたいと思った。

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2021年03月07日

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三軒茶屋の路地裏にたたずむ、ビアバー「香菜里屋」。お店に訪れるお客さんとマスターが繰り広げるミステリー短編集。爽快な謎解きものとかではなく、読み終わる度に、切なくなったり、温かくなったり、じ~んとしたり、余韻を与えてくれる。
4種類のビールと美味しい料理も魅力。こんな店があったら通いたい。

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2025年05月23日

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毎回、工藤が作る食べ物の描写が秀逸!
すごい美味しそうに感じた。
連作短編という作りになっており、その中でとりわけ好みの内容だったのは「終の棲み家」。そして全体的に馴染みのある場所やら駅名が出てくるので、読んでいて楽しかった。ミステリー小説だけれど切り口がよくあるミステリーと少し異なってる?ような気がしてなかなか面白いと思った。

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2022年06月25日

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美味しい料理とビール、そして日常の謎。
その謎を解き明かすのは「香菜里屋」のマスター・工藤。
彼が語る真相には驚きと悲哀が満ちている。
静かで美しい世界観が魅力の連作ミステリーは思いの外ほろ苦い。
特に表題作の印象が強く、驚嘆と言い様のない寂しさを同時に味わえる。

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2022年01月11日

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スピーディーに問題が解決されて、自分の考える視点とは別の角度で謎が解けたとき新たな考え方を見つけられた気がした。ビアバーの料理は美味しそうで、仕事終わりに工藤さんのような人に話を聞いてもらえたら悩みや不安が吹き飛ぶだろうなと思った。人生において全て知ることが重要なのではなく、憶測でとどめることも必要なのだと感じた。

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2021年03月26日

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#北森鴻を忘れない―。著者没後10年の昨年を機に、旧作が幾つか復刊されている。この<香菜里屋シリーズ>もその内のひとつ。三軒茶屋の路地裏にひっそり佇むビアバーのマスター・工藤が常連客の持ち込む様々な謎に名推理を光らせる、所謂【安楽椅子探偵】もの。孤独死を遂げた老俳人の過去を追う表題作は昭和史ミステリーとトラベルミステリー、双方の趣を兼ね備えた秀作で、今作の中で頭ひとつ以上抜きん出ている。それ故に、他の収録作品はどうしても見劣りしてしまう。後日談となる「魚の交わり」は少々蛇足的だが、トリッキーさが一際光る。

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2021年03月06日

Posted by ブクログ

初北森鴻作品。短編集ということもあって手に取ってみました。短編集だけど、繋がりもあってそういうところも私のツボに…表題である最初の話から引き込まれて一気読みでした。帯の『人生に必要なのは、とびっきりの料理とビール、それから、ひとつまみの謎。』という文句も私を惹きつけた一因です。

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2021年02月21日

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