あらすじ
ビールの苦みが、心に寄り添う夜がある――
何度でも味わいたい、極上のミステリー!
若き日の面影を探して街をさまよううち、
カメラマンの有坂祐二はビアバー《香菜里屋》に辿り着く。
十六年前に別れた恋人の名を耳にした男は、
料理上手で聞き上手のマスター工藤に心をほぐされ、
胸の奥底にしまっていた過去を語り始める。
そこには思いもよらぬ謎が――(表題作)。
連作短編ミステリーの傑作!
解説 藤田香織
感情タグBEST3
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表題作、美しいけれど悲しい。
蛍の光って、何かはかなくて切ないイメージがある。
猫に恩返しは不思議で楽しくて好き。
もう、おじさまたちってばー。
とはいえ、話題の舞台がなんのことかわからなくてちょっともどかしいw
相貌は、ちょっと頭が混乱したけど、こういう流れはかなり好き。あのラスト、もうーーーーっ。
そして、どの作品も工藤と、彼の作る料理があってこそ、その魅力が何倍にもふくらむ。
あぁ、憧れの香菜里屋。
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今回は「待つ」がテーマのように感じた。特に「狐拳」の話は余韻が残る。シリーズ3となり、店主工藤の謎も垣間見えてきた。次作が楽しみだ。
解説から、1999年からシリーズが始まったそうだ。今でこそ美味しい小説は珍しくないが、その当時は美食と蘊蓄とミステリーが相まった小説は珍しかったとのこと。先駆けだったのかしら。
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目次
・蛍坂
・猫に恩返し
・雪待人
・双貌
・孤拳
《香菜里屋》に集まる人は、皆それぞれに鬱屈を抱えながら、マスターの工藤に心をほぐしてもらって前に進む。
取り返しのつかない選択でさえ、工藤に話を聞いてもらって、美味しい料理とビールがあれば、なんとか前に進んでいける。
苦い後味の話もあるけれど、時系列と人称が複雑な割に最後に明るく終わる『双貌』が面白かったかな。
だけど『孤拳』が白眉。
5歳しか年の違わない叔父と姪。
幼なじみの恋人同士のような二人の日々。
見ようとしなかっただけで、最初から終わりが来ることはわかっていた。
だから互いに口にせず、大切にしてきた想い。
それは『孤拳』という、誰も聞いたことのない幻の焼酎、二人だけの秘密の味。
「前に進みなさい。でも忘れないで。」
あまりにも切ないメッセージに涙が。
Posted by ブクログ
香菜里屋シリーズ第3弾。今回は大きな事件も無く、どの章も待ち人来たると言うか数十年ぶりに会う機会があり何でまた、と言った首を傾げるビアバーでの談話。
待ち続ける事の切なさと執着過ぎるだろうみたいな。
ビアバーでの描写に喉が欲しくなる読書になりました。今後のマスターも気になります
Posted by ブクログ
何処かに香菜里屋みたいなお店があれば良いのに。
文章でしか感じられない空間でも、その心地好さは十分伝わってくる。
その場所に自分も行ければなあと心底思うくらいには。
相変わらず読みやすい作品ではあるけれど、気楽なストーリーではない。
店を訪れる客の話にはいつも、予想外の謎となんとも言えない真実が隠されている。
Posted by ブクログ
前作、前々作に続きおもしろかった。
それぞれの話が香菜里屋で提供される食べ物のようにいろんな種類、いろんな味わい方ができる。
後味もそれぞれ異なりほろ苦いものもある。
好きだったのは、ラスト2作。
『双貌』はミステリーとしておもしろく、そのトリックにドキドキしながら読んだ。
『孤拳』はストーリーが好きで切なさもあるが、事物が何かを思い出すトリガーとなるように願われているのがよかった。