Posted by ブクログ
2017年10月14日
「旗師」宇佐見陶子シリーズの3作目です。
前作と違う出版社から出ているのは何故なんでしょうか。
シリーズ物は当然同一出版社から、
と何となく思い込んでましたがそうでもないのか。
今回は4篇の連作集です。
それぞれ違うジャンルの美術品にまつわるミステリーで、
相変わらず陶子さんがトラブルに巻き込まれ...続きを読むて飛び回ってます。
業界内で名前を知られるようになってきたからですが、
半分は美術品に対する好奇心からみずから飛び込んでますね。
カメラマンの硝子さんや練馬署の犬猿コンビも健在です。
『奇縁円空』篇では暗い時代の話もあって重めですが、
「円空仏」に関する記述がたくさんあって大変勉強になりました。
『「永久笑み」の少女』篇では古墳内部の描写が幻想的でした。
謎解き自体はどれもそんなに複雑ではないのですが、
全体を通して主に陶子の美意識というか目利きがすごいです。
感想は、やっぱり骨董の世界って恐ろしい、でした。
大変興味はあるんですけど。
もう、美術品に対する執念が凄過ぎて。
素人としては、ますます敷居が高くなってしまいました。
作品を生み出す側は、ほとんど宗教的とも言えるのめり込み方だし、
流通させる側の駆け引きには薄ら寒くなるものがありました。
コレクターの家族の心情なども、大金が絡むとむべなるかな・・・。
でもそれらの執念が、やはりこのシリーズの醍醐味なんですよね。
普段接することの無い世界を垣間見られて、今回も大満足でした。