三崎亜記のレビュー一覧
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映画「カプリコン・1」を思い出した。
火星へ向かったロケットの隊員たちは英雄となったが、地球への帰還中にロケットが爆発した。
しかし、実はロケット打ち上げも火星での生活もスタジオで行われており、発覚を恐れた政府から隊員たちが逃げるという話。
となり町戦争から20年、ディープフェイクなど嘘がまかり通る世の中になるとは想像できなかった。
見知らぬ国との戦争中で鎖国中の政府が流す情報に国民はうんざりしていた。
政府の方針に反対するもの、サボタージュするものもインターネット規制で言論が封じられた。
浜に流れつくものに刻まれた見知らぬ国からのメッセージ。
何が書かれているのか誰も知ら -
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ネタバレお話が現実寄りだと、「まとめに入った…」と思うラストでもそんなに説教臭く感じなかったです。全く、というほどではないけれど。
どのお話も面白かった!
どのお話も「!?なるほど」と思いましたが、特に「ぬまっチ」「応援」がブラックで好きでした。
「応援」に“おいつめ”とルビが振ってあるのは痺れました。このやり方は上手いと言ったらいけないけど、わかりやすく脅迫とかじゃないから止めさせることも出来ない…よく考え付くなぁ。忘れ去られるのを待つしかないです。
「正義」の圧がありありと感じられる作品が多いな…と思いましたが、気付かなかった「似叙伝」「チェーン・ピープル」も考えてみれば『正義』のお話なのか。 -
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なさそうであり得るかもしれない近未来。
自粛警察や怪しげなネット情報に踊らされる風潮をみると
行き着くところはこんな社会かもしれない。
「国民の心に『無意識の呪縛』を生み出すことこそが、戦争事業の目的の一つだった」
「与えられた幸福の枠内で満足できる、コントロールしやすい国民意識へと変化させるための戦争事業だったということですね」
「今の自分も、誰かに誘導された偽りの記憶によって過去を都合よく塗り替えてしまってるんじゃないかって思えてくるよね」
自分で考えること、選択することはともすれば困難を伴うし辛いこともある。
与えられた「幸せ」を享受する〈コスパの良さ〉がもたらす危機…。
でも「 -
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ネタバレ『となり町戦争』の著者が20年ぶりに筆を執った”Ver. 2.0”というコピーを目にして早速購入。どこか手応えのないまま戦争が遠ざかってしまっていた前作に比べ、3・11やパンデミックの経験が裏打ちされることで、国家の統制装置としての「戦争」がより明確に位置づけられたのは、この20年間の社会の変化ともかかわるか。
メディア・テクノロジーを用いたプロパガンダ作戦の展開や、インフルエンサーを活用した対抗宣伝のシーンには読みごたえがあった。しかし、作品世界の設定にどこか得心がいかないままで読み進めたことも事実。おそらくその理由は、著者が主要人物以外の人びと(あるいは、登場する人物たちすべて)を容易 -
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(読んだ当時の記憶より)
異世界に迷い込んでしまった主人公がどうにか元の世界に戻ろうとする話。
中世ファンタジーではなく、民族的で独特な感じの世界です。
タイトルから、最初は主人公が小さくなって冒険するのかなと思いましたが、どうも30センチ定規のことのようです。
じょ、定規??定規がキーアイテム???と困惑する自分。
そんな神器みたいな位置に定規を持ってこられても。
ですがこの作品は、滅茶苦茶な法則のユーモラスな世界を主人公と一緒の目線で見る事が出来ます。定規がいくら凄くてもなあ…!と思いながら読んでいたのに、後半の展開は緊迫感がありどきどきしながら楽しませて頂きました。
ファンタジーとして異 -
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19の掌編。最後の「The Book Day」には羽ばたく本が登場し、これまでの作品とのつながりを感じさせますが、いつも三崎作品に登場する”この国””この街”は出てきません。しかし、原因と結果がひっくり返ったような不思議な世界、理由も分からない不条理な設定、これぞ三崎ワールドという作品ばかりです。
帯に”中学・高校の教科書に採用された「私」「ゴール」「公園」も収録”とあります。いくつかの文学賞候補にはなるものの、デビュー作『となり町戦争』の小説すばる新人賞以外に受賞作も無く、さほどポピュラーとも思えない三崎さんの作品が教科書に載るのですね。この不条理な世界に面食らう生徒さんも多いでしょう。いや -
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ネタバレうん,面白かった。ま,行ったことがあるからだろうけどネ~かなめは博多の卸問屋のOLで20台後半。社長から言い付かった東京のデザイン事務所勤務の接待相手は中学・高校の同級生で,東京から転校してきて,東京へ帰っていった,交際しかけた博だった。博は「よかよ」という言葉にトラウマを抱えていたのだった。川端通りの振るわない,せいもん払いをなんとかするために奮闘すると,片方だけ羽を生やしたハンらに加勢を頼まれ,博多の呪いを良い方向に持って行き,セールを成功させた。筥崎で陰の玉が消えた事件では,ゴミ収集が滞り,博がカタハネに手を貸して,博多の怨念に味方して,遂には福岡市を博多市に代える運動が広がってしまう。