三崎亜記のレビュー一覧
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19の掌編。最後の「The Book Day」には羽ばたく本が登場し、これまでの作品とのつながりを感じさせますが、いつも三崎作品に登場する”この国””この街”は出てきません。しかし、原因と結果がひっくり返ったような不思議な世界、理由も分からない不条理な設定、これぞ三崎ワールドという作品ばかりです。
帯に”中学・高校の教科書に採用された「私」「ゴール」「公園」も収録”とあります。いくつかの文学賞候補にはなるものの、デビュー作『となり町戦争』の小説すばる新人賞以外に受賞作も無く、さほどポピュラーとも思えない三崎さんの作品が教科書に載るのですね。この不条理な世界に面食らう生徒さんも多いでしょう。いや、むしろ頭の柔らかい若い人向きなのかもしれませんが。
クレームを回避するために全てが取り払われ、入るのに誓約書が必要になった「公園」の様な風刺的作品も良いけれど、旅人の間で回し読みされる本を描いた「待合室」、亡くなった妻と旅をする「きこえる」、亡くなった人の大切な本を手放す「The Book Day」など、今までにはあまりなかった様な素敵な透明感のある話が印象的でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレうん,面白かった。ま,行ったことがあるからだろうけどネ~かなめは博多の卸問屋のOLで20台後半。社長から言い付かった東京のデザイン事務所勤務の接待相手は中学・高校の同級生で,東京から転校してきて,東京へ帰っていった,交際しかけた博だった。博は「よかよ」という言葉にトラウマを抱えていたのだった。川端通りの振るわない,せいもん払いをなんとかするために奮闘すると,片方だけ羽を生やしたハンらに加勢を頼まれ,博多の呪いを良い方向に持って行き,セールを成功させた。筥崎で陰の玉が消えた事件では,ゴミ収集が滞り,博がカタハネに手を貸して,博多の怨念に味方して,遂には福岡市を博多市に代える運動が広がってしまう。どうやら,町の名が福岡になり,駅名が博多驛になったこと,もっと辿ると商人の町・博多と武士の町・福岡の対立があり,怨念が旧博多驛に凝り固まって動かし,博多駅を沈めに掛かっているらしい。3年前の博多駅前陥没事件もその流れにあった。どんたくの日,怨念は博多の町に渦巻き,旧博多驛が片羽から浮き上がって,新博多駅を沈めに掛かる。正気を取り戻した博は,かなえと共に融和の道を探って,怨念を払おうと奔走する~ローカルのラジオ朗読劇だったんだって。知っている町や通り,スポットが出て来たら,聞いていて面白いだろうけど,どの位の人が聞いただろう?
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Posted by ブクログ
「赤道上に、戦後最大規模の鼓笛隊が発生した。」の、一文から引き込まれる。台風の如く日本に上陸する「鼓笛隊の襲来」
いなくなったが思い出せない彼の喪失感を抱えたまま、立ち寄ったギャラリーで見かけたのは、自分の記憶にある"モノ"たちだった。「彼女の痕跡展」
覆面をつけて生活をして良い制度のある世界「覆面社員」
本物の象が、リタイア後に公園の遊具として生きる世界
「象さんすべり台のある街」
その他「突起型選択装置(ボタン)」
「「欠陥」住宅」「遠距離・恋愛」
「校庭」「同じ夜空を見上げて」
不思議な世界で話が進むため、温かい話のまま終わるのか、怖い話として終わるのかどちらに転ぶかわからない感覚がソワソワして楽しめました。
表題作と、「失われた町」に通ずる書き下ろしが、良かったです。
「消失」「痕跡、記憶」「視点」「怪異・幻覚」「ルール」「別の街が栄えて置き去りにされた街」などキーワードが並ぶ。
自然災害よりも違和感が残る形で消えてしまう人が知人や家族にいた時どう感じるのだろうか?しばらく会っていない人生きているのか死んでいるのかわからない人と何が違うのか?考える種みたいなものが
ポツポツと挟まれてる。 -
Posted by ブクログ
発売当時、単行本を読んでから
数年ぶりに再読
ある日、町から人々が消えた。
「消失」現象が定期的に起こる世界
家族や友人を失った人たちと、消失に対抗すべく活動する「管理局」に属する者達の日々
消失の現象自体、消失に関する管理局の人間たちの持つ能力、キーアイテムで出てくる古奏器とその再魂(調律)、
同一性障害の治療として人が
本体、別体に分離する現象、など
三崎さんが1アイデアで短編一作
いけるような要素(テーマとしてはすでに扱っている)が散りばめられていて濃い。
数章にわたって、立ち位置の違う人物達の視点で消失に触れ、繋がっていく。
描かれてない消失を経験した人達もいるのだろうけど、次の別の消失に向けて希望を繋げていく線(人のつながり)が描かれている。
悲しみがあり、全体的に静かな話かと思いきや章によって動きがあり、別の話を読んでいるような気分になる。
今のコロナの状況と照らし合わせることも出来る(死ではなく、二度と会えなくなること)だけど、亡くなった親族や突然引っ越して誰もいなくなった友の家とか、今ここから見える場所、建物にある思い出のことを考える。
前に読んだ時より、沁みた。
追記:
読んでいる最中に「ニセモノの妻」を購入
「失われた町」の中にも妻の本体、別体と生活する夫が出てきたりする。
「古奏器」は別の話に出てくる職人を思い起こす。 -
Posted by ブクログ
短編、どれも良い作品だった。
三崎亜記テイストが元々好きなのだけど、この短編集では、より現実社会側にシフトさせている感じがして、それが良かったなー。
冒頭「正義の味方」は個としての正義を、末尾の「応援」は全体としての正義を、それぞれ冷ややかに描いていて面白い。
ある時、日本を襲う謎の敵が現れ、政府が責任を負いたくないあまりに武力行使を控えていたところ、三分間の「正義の味方」が現れる。
では、何を以てそれは味方と呼べるのか。
敵を排除してくれるから、同じ思いを共有できるから、それとも……。
味方は、敵に対して「私がこちら側にいると思える存在」であって、味方自身が何を思っているかは別なのだ。
だから、「正義の味方」は悪となり罰される。
町や人を破壊し、理由もなく敵を倒し、何も言わず自分の星に還ってゆく。
私たちが「ありがとう」を言える間だけの味方なのだった。
同じことは「応援」でも言える。
魅力的な俳優を応援によってのし上げ、また共演女優を追い落とし、聖地巡礼はやがて騒動となる。
俳優を追われても、それは事務所の陰謀であり、倹しい暮らしを取り上げ、消滅するまで追い回す。
「私たちがあなた側にいるのだ」という領域が、今度は敵を作り、排除の対象とする。
先ほどとは逆の構造で、無理に味方につくことで、正義が生まれ、敵が現れるわけかー。
いやあ、これ、めっちゃ面白いですね。
他に「似叙伝」「チェーン・ピープル」「ナナツコク」「ぬまっチ」が入っていて、どれも、この話はさぁと語り出したくなります。
語ってください(笑) -
Posted by ブクログ
例えば、ある会社に勤めていて、ある日とんでもない大問題が発生する。
もう明日は来ないかもしれない、どうしよう。
なんて緊急事態は社内だけで、世間的にはどうでもいいことなのかもしれない。
近視眼的になりすぎて、世の中全体が見えてない。
だけどそれって、ある特定の組織だけの問題なのか。
世界的にみれば、極東の島国で起こることなどどうでもいいことばかりなのかもしれないし、
宇宙的にみれば、辺境の惑星の些末なことなどどうでもいいのかもしれない。
この街では、工業製品P1を生産している。
P1はこの国のあらゆる箇所で利用され、その供給が止まってしまうと大変なことになると言われている。
町民は皆、P1の生産に関わっており、町内では貨幣の流通もなく社内パスで全てのものが精算できる。
また、町民が町外に出る時には事前申請が必要であり、町の外から見ると閉じた世界になっている。
この工場に新入社員として引っ越してきたアルトは、かつてこの町に住んでいたことがある。
町外からの社員は異例なことだった。
アルトはこの町に慣れようとするが、妻の様子がおかしくなってくる。
最終工程を経たP1は鑑定士が、P1に真心が入っているかの最終チェックを行うが、町出身の鑑定士を育てようという機運が高まる。
遠山は、何故自分が鑑定士見習いに選ばれたのか、理由が全く分からなかった。
町外に住む師匠の跡をつける。
自分の仕事が世の中で、どのように役立っているか分かって仕事をする人は少ない。
その働き方は、機械とは一体何が違うというのか。