三崎亜記のレビュー一覧

  • バスジャック

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    短編集。全体的にナンセンスという言葉が思い浮かぶ。とくに表題作。もはやアトラクション。コンペのようでもある。いずれにせよ乗り合わせたくはない。「二階扉をつけてください」一階に設置できるよう改良すべきではないのか。「雨降る夜に」ホッとする話。「動物園」SFとファンタジーの中間にある仕事小説風。綺麗なだけなら写真で十分。息遣いを感じられてこそだと思うので、私が園長なら柚月さんにお願いしたい。他三編。

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    2021年09月03日
  • 失われた町

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    読み物として、世界観を作り出す中で語られる固有名詞、特に地名・人名ではないキーワードとして使われる用語・概念の解説が淡白なので、没入してこないと賛否両論分かれる作品だと思った。映像化はうまくやれば効果的に表現できるのではないかと思った。かなり一気に読み切れる作品だった。分割された登場人物のエピソードが、最後に一気に結合していく感じは良かった。

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    2021年06月27日
  • となり町戦争

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    地域振興のため、日本各地で隣町同士が戦争をする。
    コンサル会社が双方につき、両町で何年も前から協議して開戦と終戦までも話し合われている――。
    こんな突拍子もない設定だが、私は奇妙なことに受け入れられた。
    この書き手のデビュー作だそうだが、作品世界の破たんもないし、整理されていて、とても読みやすった。

    戦争が始まっても、日常生活に何の変化もないことに戸惑い、良心の呵責に近い苛立ちを抱える主人公、「僕」。
    確かに、太平洋戦争の写真のような、焼け野原やきのこ雲がそこに現出するわけではない。

    何となく、この感じがわかる気がする。
    本作が世に出たのは2003年だそうだ。
    とすれば、同時多発テロからイ

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    2021年03月14日
  • 鼓笛隊の襲来

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    「赤道上に、戦後最大規模の鼓笛隊が発生した。」の、一文から引き込まれる。台風の如く日本に上陸する「鼓笛隊の襲来」

    いなくなったが思い出せない彼の喪失感を抱えたまま、立ち寄ったギャラリーで見かけたのは、自分の記憶にある"モノ"たちだった。「彼女の痕跡展」
     
     覆面をつけて生活をして良い制度のある世界「覆面社員」

    本物の象が、リタイア後に公園の遊具として生きる世界
    「象さんすべり台のある街」

    その他「突起型選択装置(ボタン)」
    「「欠陥」住宅」「遠距離・恋愛」
    「校庭」「同じ夜空を見上げて」
    不思議な世界で話が進むため、温かい話のまま終わるのか、怖い話として終わるのかど

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    2021年02月13日
  • 失われた町

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    発売当時、単行本を読んでから
    数年ぶりに再読

    ある日、町から人々が消えた。
    「消失」現象が定期的に起こる世界
    家族や友人を失った人たちと、消失に対抗すべく活動する「管理局」に属する者達の日々

    消失の現象自体、消失に関する管理局の人間たちの持つ能力、キーアイテムで出てくる古奏器とその再魂(調律)、
    同一性障害の治療として人が
    本体、別体に分離する現象、など

    三崎さんが1アイデアで短編一作
    いけるような要素(テーマとしてはすでに扱っている)が散りばめられていて濃い。

    数章にわたって、立ち位置の違う人物達の視点で消失に触れ、繋がっていく。
    描かれてない消失を経験した人達もいるのだろうけど、次

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    2021年02月05日
  • バスジャック

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    短編集。現実からほど近い不思議なお話ばかりで、思わずぞっとするものから温かい気持ちになれるものまで様々な雰囲気を味わえる。
    一番好きな話は「送りの夏」で、個人的にはこの小説があるだけでこの本を買って良かったと思った。この話がなければ★3つかな。生者と死者の境界線が淡い場所での少女のひと夏の物語。大事な人との別れとは悲しく、切ないものだけれど、とても尊いものだと、心に染み入るように感じさせてくれる。

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    2020年05月17日
  • 失われた町

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    主人公達にとって
    作者にとって
    「町」とは何なのか。
    考え続けても分からないまま読み進めたけど
    何かすごく大切なものなんだろうかな。

    カタカナが多いシーンは苦手だったけど

    ファンタジー強すぎる作品なのに
    現実みたいに捉えられた。
    市川拓司さん並みに有り得ないファンタジーなのに。

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    2020年03月03日
  • メビウス・ファクトリー

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    ネタバレ

    足元がすくんだ。「私の生きてきた人生って、本当に私自身が選んで来たんだろうか」と怖くなった。P1と言う読み手からしたら何のこっちゃ訳が分からない物をひたすら製造し、誇りすら持つ住民。盲目的に信じきる自分たちの生活はある意味安寧だ。出来れば真実を住民全員に暴露して、ラストには住民が目を覚ます描写まで欲しかったが、真実を知る事が幸せとは限らないので、この終わり方が1番良いのかなと思う。結局、「ボーッと生きてんじゃねえーよ!」と、自身のこれからの人生にも、この住民達にも某女の子の台詞を伝えたい・・(読書メーターにも投稿)

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    2020年01月04日
  • 玉磨き

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    現実にはあり得ない、かつ読んでも何も生み出さないように思える職業に就く人たちを描く三崎作品。
    何かを隠喩しているような気もするし、かと言って具体的には何も分からないけれど、何故か魅力を感じてるしまうのが不思議です。
    ちなみに本書で一番好きなのは通勤観覧車です。

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    2019年10月26日
  • メビウス・ファクトリー

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     例えば、ある会社に勤めていて、ある日とんでもない大問題が発生する。
     もう明日は来ないかもしれない、どうしよう。
     なんて緊急事態は社内だけで、世間的にはどうでもいいことなのかもしれない。
     近視眼的になりすぎて、世の中全体が見えてない。
     だけどそれって、ある特定の組織だけの問題なのか。
     世界的にみれば、極東の島国で起こることなどどうでもいいことばかりなのかもしれないし、
     宇宙的にみれば、辺境の惑星の些末なことなどどうでもいいのかもしれない。

     この街では、工業製品P1を生産している。
     P1はこの国のあらゆる箇所で利用され、その供給が止まってしまうと大変なことになると言われている。

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    2019年09月16日
  • 失われた町

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    ファンタジーもので、かなり練られた作品。こんなに何度も戻っては読み、戻っては読み、を繰り返した本はないだろう。

    ハリーポッター以来かな。

    まだまだサイドストーリーもあるはずだし、それも書けば相当な長編になったであろう内容を、このサイズに収めることで作品の魅力をより引き立たせている。

    沢山の登場人物をとても丁寧に、大事に描き、きちんと伏線を回収する、、、
    とても好きな本になった。

    この著者、三崎亜記さん、すごいなー。天才。

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    2019年09月02日
  • バスジャック

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    ネタバレ

    7つの物語からなる短編集でした。
    中でも気に入った作品は「動物園」と「送りの夏」です。
    どの作品もあり得ない設定でありながら、登場人物はリアルで、とても人間味があり、面白かったです。

    「動物園」
    主人公の日野原さんは動物になりきる仕事をしています。設定は現実的にはあり得ない仕事ですが、現場対新参者、男社会対若い女性、ビジネスモデルをパクるライバル社の登場など、起こるイベントやその空気感はとてもリアルで今そこに起きた現実のように感じました。
    自分も働く女性の1人として、共感できる作品でした。

    「送りの夏」
    少しわかりにくい作品でした。
    短編集の中ではかなり長い作品だと思いますが、展開が多く、

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    2019年05月24日
  • ニセモノの妻(新潮文庫)

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    三崎亜記のニセモノの妻を読みました。
    不条理な事件に巻き込まれてしまう人々を描いた短編集でした。

    印象に残ったのは「断層」という短編でした。
    突然、住んでいる場所に断層と呼ばれる異変が起きて妻がその断層に飲み込まれてしまいます。
    夫はその妻との接触を続けていくのですが、タイムリミットが来て妻は失われてしまいます。

    三崎亜記の小説では、突然家族や仲間が異変に飲み込まれてしまうという設定の物語が多いですが、この短編もせつない余韻を残す物語でした。

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    2019年03月23日
  • ニセモノの妻(新潮文庫)

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    4編からなる短編集。どれも荒唐無稽な物語ながら,結末が知りたくなり止まらず一気読み。面白い!!中でも表題作が一番好き。
    あらすじ(背表紙より)
    「もしかして、私、ニセモノなんじゃない?」妻と思ってきた女の衝撃的な一言で始まったホンモノの妻捜し。けれど僕はいったい誰を愛してきたのだろう(「ニセモノの妻」)。ある日、仲睦まじい夫婦の妻だけが時間のひずみに囚われてしまった。共に明日を迎えられない彼女のために夫がとった行動は―(「断層」)。その他、非日常に巻き込まれた4組の夫婦の、不思議で時に切なく温かな短編集。

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    2019年01月09日
  • 逆回りのお散歩

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    三崎氏の作品にしてはリアリティがあるというのが第一印象です。
    行政やマスコミによる情報操作が、ネット社会になり誰もが情報を発信できるという神話によって、更に高度化している可能性に対する怖さを感じた。

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    2019年01月05日
  • ターミナルタウン

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    面白かったです。
    鉄道と共に生きてきたけれど、乗り換え路線の廃止でほとんどの電車が通過するようになって寂れた町のお話でした。
    光陽台ニュータウンや、象さんすべり台のあった公園、駅を通り過ぎる下り451列車の光…と、これまでの三崎作品に出てきたワードがたくさんあって嬉しいです。
    80kmの駅、影を無くした「影無き者」、見えないタワー、隧道を種から作る隧道士、鉄道原理主義者や鉄道愛好者、という不思議な要素も三崎さんっぽいです。
    それぞれの登場人物の視点でお話が進んでいくので、この人はこういう考えを持っていたのか…と思わされます。
    消失した下り451列車の結末はじーんとしました。短い短編がこんなにふ

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    2018年12月29日
  • 失われた町

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    ネタバレ

    独特の世界観だけれど、細かく設定されていて説得力がある。
    初めは理解できなくても後から繋がってくるので引き込まれる。
    消滅に直接立ち向かう人も、それを支える人も、意思がとても強い。
    その一方で、自分が失われると分かっているのに何もできない、月ヶ瀬など「失われる町」の住人や管理局職員のやるせなさはいかばかりかと思う。
    いつ自分の元にかえってきてくれるのか分からない人を、傷つきながらも待ち続ける茜や勇治の姿は切なかったが、それだけ人を信じて待てるのは素敵なことだと感じた。
    統監と中西さんが本体と別体の関係だったとは、最後まで驚かされた。

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    2018年12月16日
  • 逆回りのお散歩

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    面白かったですが少しこわくて考えさせられました。
    大きな流れには個人の力なんて無力なのだろうと思います。何年もかけて根回しして、その流れを推し進めてきたことは特に。
    見えないなら、それは無かったこと…本当に、それでいいのかなと思いました。
    今の日本の縮図だ、というような解説だったのですがそう思います。こういうこと、行われているんだろうな。
    見えないからといって、知らないままで良いわけではない、ということは忘れずにいたいです。

    「となり町戦争」の前日譚の「戦争研修」も面白かったです。
    前に読んだときはさらっと読んでしまいましたが、「となり町戦争」を読んでから再読すると、この作品を思わせるような

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    2018年11月15日
  • バスジャック

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    短編集。
    基本的には現実味の無い舞台設定の物が殆ど。
    タイトルの『バスジャック』はテンポは良いが特に何か感じるほどじゃなかった。
    ただ、意外にも最後の話は現実には有り得ないとしても少しじんわりと暖まる話だった。

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    2018年11月11日
  • 終舞! コロヨシ!! 3

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    シリーズ最終巻も面白かったです。
    樹と偲、そして樹の両親、樹の祖父と水玉様…とたくさんの対が、とか、表の対と裏の対、とか、「くつがえし」と「けっき」とか、「相撲」(すまい)の「取組」など…最終巻なのに更に情報量が多くてくらくらしましたが楽しかったです。
    顧問との相撲の取組や、大介とのくつがえし対決などハラハラし通しでしたが、青春だ!と思いました。
    真実は受け取る人によっていくらでも変化する、や、歴史とはもともと捻じ曲がっている、など、樹の祖父の言葉が重いです。
    それにしても、まだまだ続きがありそうな終わり方でした。登場人物たちのこれからが気になります。

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    2018年11月04日