三崎亜記のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ失われた町
30年に一度、ある町の住民が突然失われるという現象に巻き込まれた人々の物語です。
「となり町戦争」と同様に、無機質で冷たい官僚機構の中に情緒ある物語が展開されるので、物語が引き立っています。
この物語には何人もの主人公がおり、それぞれの体験から町が失われるという現象に否応なく巻き込まれたり、進んで対峙したりしていきます。冒頭で次の消失を防ごうとする様子が大きなインパクトを持って語られますが、続く各章で、大円団に向かって収束していく主人公達の軌跡が丁寧に語られていきます。語られるにつれて登場人物同士の関わり合いがだんだんとわかってくるという構成はとてもわくわくしながら読むことができ -
Posted by ブクログ
”近年ますます、日常生活で「自爆」を求められる状況は多様化している”
そうなのか?と疑問を挟む余地を与えられずにストーリーは進む。
解説に書かれている作風の説明で「予め疑問が排除されている空気感」とあり、まさにそうだと思う。
現実に見えるが、明らかに異なる世界が現実として存在するかのように世界観を作り上げる。
本書はショートショート19編、
うがいをした拍子で体から部品を失くしてしまった男の違和感を描く「部品」
政府が確認したために日常で見かけることが多くなった飛行物体をめぐる「確認済飛行物体」
祖父も父も失踪した原因となる”闇”が、ついに自分の近くで見かける機会が増 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「こんなに美しく、哀しい作品を書ける人がいるのか。」
これが読んでいる途中で何度も思った感想。実際電車の中で読んでいて何度も目を潤ませることになった。
人々に忌み嫌われながらも町の消滅を解明し、止めようとする人たちは、みな心に傷を負っていて、それでも自分の身を犠牲にしてでも消滅を止めようと奮闘する。
登場する名前のある人物にはすべてに役割があって、ちょい役のようでも伏線のように後で効いてきたりする。そういう上手さもある。
悲壮な努力の結果は報われたのか、新たな問題を生み出したのかはわからないし、今回使えた手は次回使えない(消失した双子はいないし、属体のひびきはおそらく戻ってこられない。消滅耐 -
Posted by ブクログ
三崎亜記さんの大ファンなので、色々なところに発表されていた短編たちがまとめられてとても嬉しい!と思って購入しました。
収録されている「私」という作品は教科書に採用されていまして、もう既に教科書からさよならしてしまった私にとっては、読みたくても読めない〜!!とハンカチを噛む思いをしていたのでした。それがついに!こちらに収録されまして!読むことができました!ありがとうございます。フリマで教科書買おうか悩んだことが懐かしい・・・・・・。内容は流石というかちょっと不思議でちょっと難しいんですけど、テスト対策و・◡・وみたいな動画がYouTubeに上がってたりして、新鮮な楽しみ方ができますよ。
お気に -
Posted by ブクログ
ネタバレ地域振興事業の一環としてとなり町と戦争を始める舞坂町。しかし開戦の9月1日になっても一見何の変化もない。そんな中僕に、戦時特別偵察業務従事者の任命書が届く。
役所の決めた通りに淡々と進められる戦争。戦争があることを前提として受け入れてしまっている住民たち。戦争はとなり町との協力のもと何年も前から計画され、大きく経済を動かす。その裏で目に見えないまま増えていく戦死者数。クリーンセンターことゴミ焼却場で処分されることになった戦死者の遺体。香西さんの弟の遺体を包んでいた防水袋は、その元恋人が「地域振興事業」のために発注したものだった。誰もが無意識のうちに戦争に手を貸している。
平和に生きているような -
Posted by ブクログ
比較的最近の短編集
いつの作品なのか知らず、いつもの感じかと舐めてました(謝罪)今まで読んできた短編集の中ではベストです。
「正義の味方」
突然現れ街を破壊する「敵」とそれを退治する謎の存在「正義の味方」人々は初めは快く迎え入れたのだが、巻き込んで街を破壊するため、徐々に群衆心理が変化してくる。
「似叙伝」
当人がたどりたかった偽の人生を自叙伝として作成する業者の話
残るものが本だけだとしたら、その理想は何なのか?
「チェーンピープル」
人格のチェーン展開化、マニュアルや大会まで開かれて、ひとつの理想の人格者を持って生きる人々の話
「ナナツコク」
記憶の中だけに存在する地図、その地図を -
Posted by ブクログ
かつて鉄道によって栄えた「静原街」
乗り換え路線の廃止、高速列車が通過する事になり、町は衰退の一途を辿っていった。三崎流町おこし小説。
三崎亜記さんの他作品に出てくる「都」や本物の象が引退後の職として遊具となる「象さんのすべり台」、人が消える「消失」の現象(今作では列車ごと消える)、有り得なさそうな職業などが登場します。
現実の中には微妙に現実とは違う「ありそうでないモノ」を散りばめてくるので毎回ネタの濃さ、複雑さにむせ返ってます(褒め言葉)
衰退した町の復興という題材ではあるものの、物語に配置された要素
「処置」として影を失った男や、無いのに有るとされているタワー、トンネルとは違う「種」