三崎亜記のレビュー一覧
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⚫︎受け取ったメッセージ
人は大きい問題であればあるほど認識できなくなり、考えることを諦めたり過小評価してやり過ごしてしまう。でも、それらを意識しようと思っていることと、無意識でいることとは、違う。せめて、前者であろうとすることができる人でありたいと思う。まず知ろうとすることがその一歩だ。
⚫︎本概要より転載
現代的戦争の恐怖。
ある日、突然に始まった隣接する町同士の戦争。公共事業として戦争が遂行され、見えない死者は増え続ける。現代の戦争の狂気を描く傑作。文庫版のみのボーナストラック短編を収録。小説すばる新人賞受賞作品。
⚫︎感想
「となり町戦争」ということで、始まりもとっつきやすく、ポッ -
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あの思い出の一冊に、続編が出た。
15年以上前のこと。
友人に頼まれて、中学生数十人の前で話をすることになった。テーマは自由。
そこで「読書」について話すことにした。
家にあった読み終えた本を何冊か持参し、演題に並べて話し始めたものの、少年たちはあまり関心がなさそうだった。
そのとき紹介したのが、三崎亜紀『となり町戦争』。
公務員が、となり町との「戦争」の事務を淡々と処理していく──という、奇妙でリアルな物語。
彼らの表情が変わった。本への興味を、確かに示してくれた。
話のあと、お土産に、一人一冊以上、持参した本を配った。
数十冊の本は、若き好奇心とともに、あっという間になくなった。 -
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ネタバレ失われた町
30年に一度、ある町の住民が突然失われるという現象に巻き込まれた人々の物語です。
「となり町戦争」と同様に、無機質で冷たい官僚機構の中に情緒ある物語が展開されるので、物語が引き立っています。
この物語には何人もの主人公がおり、それぞれの体験から町が失われるという現象に否応なく巻き込まれたり、進んで対峙したりしていきます。冒頭で次の消失を防ごうとする様子が大きなインパクトを持って語られますが、続く各章で、大円団に向かって収束していく主人公達の軌跡が丁寧に語られていきます。語られるにつれて登場人物同士の関わり合いがだんだんとわかってくるという構成はとてもわくわくしながら読むことができ -
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”近年ますます、日常生活で「自爆」を求められる状況は多様化している”
そうなのか?と疑問を挟む余地を与えられずにストーリーは進む。
解説に書かれている作風の説明で「予め疑問が排除されている空気感」とあり、まさにそうだと思う。
現実に見えるが、明らかに異なる世界が現実として存在するかのように世界観を作り上げる。
本書はショートショート19編、
うがいをした拍子で体から部品を失くしてしまった男の違和感を描く「部品」
政府が確認したために日常で見かけることが多くなった飛行物体をめぐる「確認済飛行物体」
祖父も父も失踪した原因となる”闇”が、ついに自分の近くで見かける機会が増 -
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ネタバレ「こんなに美しく、哀しい作品を書ける人がいるのか。」
これが読んでいる途中で何度も思った感想。実際電車の中で読んでいて何度も目を潤ませることになった。
人々に忌み嫌われながらも町の消滅を解明し、止めようとする人たちは、みな心に傷を負っていて、それでも自分の身を犠牲にしてでも消滅を止めようと奮闘する。
登場する名前のある人物にはすべてに役割があって、ちょい役のようでも伏線のように後で効いてきたりする。そういう上手さもある。
悲壮な努力の結果は報われたのか、新たな問題を生み出したのかはわからないし、今回使えた手は次回使えない(消失した双子はいないし、属体のひびきはおそらく戻ってこられない。消滅耐 -
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三崎亜記さんの大ファンなので、色々なところに発表されていた短編たちがまとめられてとても嬉しい!と思って購入しました。
収録されている「私」という作品は教科書に採用されていまして、もう既に教科書からさよならしてしまった私にとっては、読みたくても読めない〜!!とハンカチを噛む思いをしていたのでした。それがついに!こちらに収録されまして!読むことができました!ありがとうございます。フリマで教科書買おうか悩んだことが懐かしい・・・・・・。内容は流石というかちょっと不思議でちょっと難しいんですけど、テスト対策و・◡・وみたいな動画がYouTubeに上がってたりして、新鮮な楽しみ方ができますよ。
お気に -
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ネタバレ地域振興事業の一環としてとなり町と戦争を始める舞坂町。しかし開戦の9月1日になっても一見何の変化もない。そんな中僕に、戦時特別偵察業務従事者の任命書が届く。
役所の決めた通りに淡々と進められる戦争。戦争があることを前提として受け入れてしまっている住民たち。戦争はとなり町との協力のもと何年も前から計画され、大きく経済を動かす。その裏で目に見えないまま増えていく戦死者数。クリーンセンターことゴミ焼却場で処分されることになった戦死者の遺体。香西さんの弟の遺体を包んでいた防水袋は、その元恋人が「地域振興事業」のために発注したものだった。誰もが無意識のうちに戦争に手を貸している。
平和に生きているような