三崎亜記のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
6人の様々な「人」。
それを「私」という記者が文字にして記録を残す。
だから、この「私」は、あくまで黒子。
「ナナツコク」は頭の中にしかない地図の国の物語。
どこにもない国を代々女性が記憶として受け継いでいく家系があるのだという。
語らない、記さない、自ら変えない……繋ぎ続けるものには、そんな掟があるそうだ。
地図は日々変わり、それを記憶し伝える者はナナツコクが他国から攻められても何もできない。
なんとふしぎな世界だろう。
物語はナナツコクが主人公の嘘やもうそうなのか、それとも本当なのかについて明らかにしない。
なぜなら人の心の中は自由だから。
嘘か誠か、それはそこでは大きな問題ではない。
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Posted by ブクログ
ネタバレなんとなく感想が書きにくい。そんな読後感の本。
『失われた町』が良かったのでこれを買ったが、最初の短編を読んだときには「(買ったことを)間違ったか?」と思った。
「最初に本書を読んでいたら他の著書は買わなかったかもしれない」と思いながら読み進めたが、読み進めていくうちに、短編の順番はこの順で良いと思うようになった。
本文も良いが、解説が秀逸で、まさに"何かが書いてある"だ。
むずむずとしたものがあるのだが、それを感想として文章に吐き出しにくい。それをうまく表現したのがその言葉だ。
名詞や概念を入れ替えることで不思議な世界観を演出している本作だが、最初の短編(『7階闘争』 -
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Posted by ブクログ
暗喩、というのだろうか。
廃墟を建築する、というのは、理に叶わない話に聞こえるかもしれないが、結果全ての建物は無に帰す。
つまり、その無に帰す前の段階では、どんなに短い間でも、廃墟、となる理屈ではある。
最近、自分が入社当時やっていた仕事で、あるいはそれ以降やった仕事で、今もかたちをなしている、価値を持ち続けているものはあるのだろうか、と思うことがある。
もう少しスコープを広げると、考えたくもないが、自らの人生それ自身も、同じだが。
だからといって、全て無意味と短絡するのも、多分早計だとは思うが、はきとした答えは見つからぬままではある。
この小説を読みながら、そんなことを考えた。
古くか