三崎亜記のレビュー一覧
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〔Ⅰ〕崩壊間近な日本はどこかわからない国から攻撃を受け戦争状態に突入したが諸般の事情から戦争と表明することはできず「非平和状態」に移行した。本当に戦争なんてやってるのか?
〔Ⅱ〕戦中と戦後の二部構成でそれぞれ男女二人の視点から描かれる。誰がどの陣営なのか、本音なのか、どこまでが事実なのかわからない状態が続く。
〔Ⅲ〕なかなか複雑でしんどい話でした。戦争の理由は想像できてたけど「ミシラヌ」とかがどういう位置づけになるのか読みきれなかった。むしろミシラヌが物語の中心だったかと。
■簡単な単語集
【宛先不明プロジェクト】戦後登場した。アテサキ・フメイ、浮迷ちゃん、DU(Destination Unknown)の三人のインフルエンサーが所属。オブラートに包んだ感じで戦争やミシラヌについて語る。
【碇沢】教授。ミシラヌ言語の提唱者。自分の考えとは別の方向に向かうことになったので離反した(あるいは処分された)。
【奥崎尚人】前半(戦中)の主人公の一人。戦時であることを国民に意識させる作戦「顕戦工作」に従事している国家保安局の特別対策班第一期生。別れた恋人、有希になんらかのこだわりが残っているようではある。
【カホゴ】ネットへの情報の制限する制度。
【黒瀬】国土保全省の特別組織所属。奥崎と同じような仕事に従事している。
【再平和】戦後のこと。
【戦争】戦争という言葉は使わず非平和状態と呼ぶ。ほぼ鎖国状態。
【自由帳】居酒屋やカフェなど人が集まる場所に置かれたノート。唯一本音を吐き出せる場となっている。
【組織】トオルが属する。戦争で居場所を失った人びとを救出している。
【ソラ】見知らぬ女性(実の母?)から途中まで教わった歌を歌っていたところでユイと出会い、「一分半だけのゲリラライブ」を各地で行うようになった。その歌の言葉はミシラヌ語?
【棚橋】後半(戦後)の主人公の一人。戦中はコネクターとしてミシラヌ・プロジェクトに従事していた女性。
【トオル】後半(戦後)の主人公の一人。
【日本】国としてほとんど破綻しかけている。今の現実の日本とそう違わない状況。それを延命させるための架空の戦争事業という可能性が高い?
【松田】「組織」の地区リーダー。
【ミシラヌ】この国に支援の手を差し伸べてくれるどこかわからない国。楽園として皆が行きたがっている。その言葉はどこの国のものにも似ていない。
【望月】とある海岸に建っているギャラリーで漂流物を展示している。元は織物の貿易商。いなくなった妻を探してはいないが戻ってきてほしいとは思っているようだ。
【望月の妻】とある国で売られていたのを望月が買い取った。その後望月の職業上のピンチを救った。望月が商売をやめたとき読めない文字(ミシラヌ語?)で書かれた置き手紙を残して出ていった。
【ユイ】前半(戦中)の主人公の一人。海岸で漂流物を探す三種徴収者。誰も知らない文字(ミシラヌ語?)を探し、ソラのライブを手伝っている。
【UNC】未確認隣接国家。どこの国かは不明らしい。ミサイルで攻撃してきたらしい。公式な被害報告はパンデミックによる被害者数として表示される。
【Y0639515S】謎のSNSアカウント。国よりも早く正確なミサイル情報を配信している。フォローを切っても勝手にフォローさせなおしてくるゾンビアカウント。 -
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作品紹介・あらすじ
現代的戦争の恐怖。
ある日、突然に始まった隣接する町同士の戦争。公共事業として戦争が遂行され、見えない死者は増え続ける。現代の戦争の狂気を描く傑作。文庫版のみのボーナストラック短編を収録。小説すばる新人賞受賞作品。
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自治体の施策として始まったとなり町との戦争。主人公は自治体からの命令でスパイとしてとなり町に忍び込む。日常とあまり変化のない毎日なのに、新聞には戦死者の人数が掲載される。何も起こっていないようなのに、確実に戦争は続いている。自分とは無関係に戦争は激化し、多くの人々が死んでいく。なのにあまり実感が持てない。
すごく面白そうな設定の割には今一つ楽しめなかった。淡泊過ぎたのかも知れないし、もっと切迫感が欲しかったとも思う。そんなエンタメ性を度外視したところに存在する戦争もあるんだよ、みたいなことを言われているようにも思えるのだけれど。 -
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〔戦争〕戦争というものは基本的には政治の失敗の結果発生するもんやと思うけどここでの戦争は行政上のテクニックのひとつとして両町の協力のもと発生している戦争事業。実体の見えない戦争に主人公の北原修路はどうも釈然としないまま。いったいこの戦争はなんなのか?
〔香西瑞希〕町役場の職員で北原とともにとなり町に潜入する。あくまでも行政としての戦争を遂行しようとしている。その感情は? 北原にとっての「運命の女」になるか。
〔日常〕《考えてみれば、日常というものは、そんなものではなかろうか。僕たちは、自覚のないままに、まわりまわって誰かの血の上に安住し、誰かの死の上に地歩を築いているのだ。》p.230
■簡単な単語集
【北原修路】主人公。舞坂町在住。戦時特別偵察業務従事者に任命された。
【香西瑞希】役所から北原に電話で従軍の意志を確認してきた女性。後に任務として北原と(仮の)夫婦となりとなり町で暮らす。弟がいる。
【佐々木】協力者。
【主任】北原の会社の上司。紛争地で兵士だったという噂がある。飄々とした言動だが生死の境界がないタイプのようでもある。
【筒井】戦争コンサルティング会社社員。営業畑のようだ。
【となり町】舞坂町と戦争状態に入った。
【智希】鳴海の元恋人。いまても半恋人。
【鳴海舞】とあるコンサルティング会社に勤めているがモチベーションを上げにくい状態。智希の元恋人。
【西川】鳴海の上司。チーフ。あるコンサルティング会社の営業社員。
【本田】北原の勤める会社の事務員。
【舞坂町/まいさかちょう】北原が住んでいる町。
【前田善朗】となり町戦争推進室室長補佐。
【室園絹子】となり町戦争推進室室長。
【森見町】舞坂町と戦争をしたとなり町。
【矢加部岩恒】舞坂町長。
【郵便局】舞坂町ととなり町は郵便の集配区域としては同じなので互いに郵便には手を出せない。 -
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「表出」の設定開示の饒舌さと比べて、外見や風景など目に見えるもののに関する描写がびっくりするほど少ない。映像を必要とせず文字だけで進んでいけるので、えらく読みやすくはあったのだが、果たして作者にとっても文字だけの存在なのか、それとも描写するまでもなく映像が存在しているのかどうかが気になった。
物語としては過去作の短編を読んでいれば気に入るであろう人物再利用っぷりではあったのだが、残念ながら初見だったので刺さらず。
ところでタイトルから手のひらサイズの幻獣(ユニコーンとか)を出現させられる能力の話だと思っていた私の期待はどこへもっていけばいいのか。 -
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あらすじを書いちゃうとネタバレになるし、書かないと説明が難しいし、感想を書き辛い本です。
ネット上のフェイクニュースの怖さや陰謀論的な国家活動など現代に合わせた設定に成って居るし、ストーリーも全く違うけど、デビュー作『となりまち戦争』のリメイクという印象。中心から少し離れた狭い範囲の人々や事件を描く事で、全体像を感じさせようとする手法の所為ですかね。
読み始めてすぐに「多分、この戦争って、こういう状態だろうな」という想像はつきます。そしておおよそその予想通りに話が進む。終盤に入って、三崎さんだからエンディングは大ドンデン返しではなく中途半端にひっくり返すんだろうな~と思ったら、まあこれも予想の範囲で。
そういう意味で三崎さんらしい物語。ただ、何となく予想がついてしまうだけに、個々の章でのメリ張りが乏しさや、ズルズル話が続く感じで、読むのがしんどい作品でした。キーアイデアは新言語なのでしょうが、それに三崎さんの他作品ほどの魅力を感じなかったせいかな。 -
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ネタバレ久々三崎さん。
主張が違う人、理解できない現象とやっていくために、自分の心とどうやって折り合いをつけるか…難しい問題です。
ここで描かれる主張はいやちょっと無理筋、みたいなものもありましたが。でも現実に「そうはならんやろ」みたいな説も目にするので、あまり変わらないのかも。
「坂」の主義主張大バトル面白かった。頓知か詭弁か。
お役所が杓子定規なところは、元公務員の三崎さんならではのリアリティあります。イラッとさせられる。
ラストを教訓めいた文言で締めてしまうんだな相変わらず…と思っていましたが、「ニセモノの妻」のブラックな終わり方は好きでした。「断層」は切ない。 -
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6人の様々な「人」。
それを「私」という記者が文字にして記録を残す。
だから、この「私」は、あくまで黒子。
「ナナツコク」は頭の中にしかない地図の国の物語。
どこにもない国を代々女性が記憶として受け継いでいく家系があるのだという。
語らない、記さない、自ら変えない……繋ぎ続けるものには、そんな掟があるそうだ。
地図は日々変わり、それを記憶し伝える者はナナツコクが他国から攻められても何もできない。
なんとふしぎな世界だろう。
物語はナナツコクが主人公の嘘やもうそうなのか、それとも本当なのかについて明らかにしない。
なぜなら人の心の中は自由だから。
嘘か誠か、それはそこでは大きな問題ではない。
人は自らの中に心の地図を持っているのだ、と「私」は記事を締める。
表題作「チェーン・ピープル」は無個性の個性について。
このチェーンはチェーン店のチェーンである。
チェーン・ピープルは平田昌三という一人の人間の個性をマニュアルとして、自分を作り上げている。
たくさんの個性の中であえて同じような人となる……。
しかし生きている年齢や仕事が違うから、個性が際立ちもする。
ふしぎな感覚だが、よく考えれば街のコンビニだって同じ店は一つとしてない。
同じなのに違う。
それこそが個性?
本書では読者が生きる現実世界を少し変えた不思議な世界が広がっている。
大きな事件が起きるわけではないが、淡々とした世界にSF要素が入ってくる。
私とは、そして私が見ている世界とはなんなのだろう?
そんなことを問われているようだ。