三崎亜記のレビュー一覧
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リアリティの障壁を避けるため、現代社会以外をを背景にする物語があります。その背景が過去ならば時代小説、未来ならSF、現代あるいは時代不詳ならファンタジーと呼ばれます。しかし、それらは背景であって、物語の主題はヒューマニティだったりミステリーやサスペンスだったりします。
一方で、背景としてではなく、世界そのものを描こうとする物語もあります。科学の進化によって変化した未来の世界を描くのがハードSFだし、過去ならば歴史小説になります。
三崎さんは現代の中にちょっとした不条理を持ち込み、不思議な世界を作り出します。例えば台風の如き鼓笛隊だったり、ラピュタのような浮遊都市だったり。とはいえ、それらは科学 -
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相変わらず不思議な世界を作り出す作家さんです。
日常の中にボコッと非日常の(今回は町の全住民が消失する)シチュエーションを突っ込みます。その現象の理論的説明は無いのでSF的では無いし、ファンタジーと言うには周りが日常過ぎるし。
最初は「当り!」と思ったのです。
でも読み進めるうちに、色々不満も出てきました。一言で言えば「やり過ぎ」です。古奏器、西域、消滅耐性、電域など特殊な熟語を用いて雰囲気を出すのは面白い手法ですが、余りに多用しすぎて小道具感がして来ます。さらには登場人物の造形も面白いのですが、少々カリカチュアライズされ過ぎて浅く見えてしまいます。
ともあれ、なかなか面白い作品でした。 -
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作品紹介・あらすじ
1話5分でわくわくできる、本にまつわる18のストーリー。
森を飛びかう絵本をつかまえる狩人、ほしい本をすぐにそろえてくれる不思議な本屋、祖父がゆっくり本を読む理由、書店のバックヤードに隠された秘密……。
青春、恋愛、時代小説から、ミステリにファンタジーまで、「本」と「本屋」をテーマに豪華執筆陣18名が集結! 本の世界の奥深さが短いお話の中にたっぷり詰まっています。1話5分でわくわくできてどこから読んでも面白い、本にまつわるショートショート・アンソロジー。
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本にまつわるショートショート18編を集めた短編集。
僕は梨木果歩さんの作品目当てで購入。
ホロリとさ -
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〔Ⅰ〕崩壊間近な日本はどこかわからない国から攻撃を受け戦争状態に突入したが諸般の事情から戦争と表明することはできず「非平和状態」に移行した。本当に戦争なんてやってるのか?
〔Ⅱ〕戦中と戦後の二部構成でそれぞれ男女二人の視点から描かれる。誰がどの陣営なのか、本音なのか、どこまでが事実なのかわからない状態が続く。
〔Ⅲ〕なかなか複雑でしんどい話でした。戦争の理由は想像できてたけど「ミシラヌ」とかがどういう位置づけになるのか読みきれなかった。むしろミシラヌが物語の中心だったかと。
■簡単な単語集
【宛先不明プロジェクト】戦後登場した。アテサキ・フメイ、浮迷ちゃん、DU(Destination U -
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作品紹介・あらすじ
現代的戦争の恐怖。
ある日、突然に始まった隣接する町同士の戦争。公共事業として戦争が遂行され、見えない死者は増え続ける。現代の戦争の狂気を描く傑作。文庫版のみのボーナストラック短編を収録。小説すばる新人賞受賞作品。
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自治体の施策として始まったとなり町との戦争。主人公は自治体からの命令でスパイとしてとなり町に忍び込む。日常とあまり変化のない毎日なのに、新聞には戦死者の人数が掲載される。何も起こっていないようなのに、確実に戦争は続いている。自分とは無関係に戦争は激化し、多くの人々が死んでいく。なのにあまり実感が持てない。
すごく面白そうな設定の割には今一つ楽し -
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〔戦争〕戦争というものは基本的には政治の失敗の結果発生するもんやと思うけどここでの戦争は行政上のテクニックのひとつとして両町の協力のもと発生している戦争事業。実体の見えない戦争に主人公の北原修路はどうも釈然としないまま。いったいこの戦争はなんなのか?
〔香西瑞希〕町役場の職員で北原とともにとなり町に潜入する。あくまでも行政としての戦争を遂行しようとしている。その感情は? 北原にとっての「運命の女」になるか。
〔日常〕《考えてみれば、日常というものは、そんなものではなかろうか。僕たちは、自覚のないままに、まわりまわって誰かの血の上に安住し、誰かの死の上に地歩を築いているのだ。》p.230
■簡 -
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「表出」の設定開示の饒舌さと比べて、外見や風景など目に見えるもののに関する描写がびっくりするほど少ない。映像を必要とせず文字だけで進んでいけるので、えらく読みやすくはあったのだが、果たして作者にとっても文字だけの存在なのか、それとも描写するまでもなく映像が存在しているのかどうかが気になった。
物語としては過去作の短編を読んでいれば気に入るであろう人物再利用っぷりではあったのだが、残念ながら初見だったので刺さらず。
ところでタイトルから手のひらサイズの幻獣(ユニコーンとか)を出現させられる能力の話だと思っていた私の期待はどこへもっていけばいいのか。 -
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あらすじを書いちゃうとネタバレになるし、書かないと説明が難しいし、感想を書き辛い本です。
ネット上のフェイクニュースの怖さや陰謀論的な国家活動など現代に合わせた設定に成って居るし、ストーリーも全く違うけど、デビュー作『となりまち戦争』のリメイクという印象。中心から少し離れた狭い範囲の人々や事件を描く事で、全体像を感じさせようとする手法の所為ですかね。
読み始めてすぐに「多分、この戦争って、こういう状態だろうな」という想像はつきます。そしておおよそその予想通りに話が進む。終盤に入って、三崎さんだからエンディングは大ドンデン返しではなく中途半端にひっくり返すんだろうな~と思ったら、まあこれも予想の -
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ネタバレ久々三崎さん。
主張が違う人、理解できない現象とやっていくために、自分の心とどうやって折り合いをつけるか…難しい問題です。
ここで描かれる主張はいやちょっと無理筋、みたいなものもありましたが。でも現実に「そうはならんやろ」みたいな説も目にするので、あまり変わらないのかも。
「坂」の主義主張大バトル面白かった。頓知か詭弁か。
お役所が杓子定規なところは、元公務員の三崎さんならではのリアリティあります。イラッとさせられる。
ラストを教訓めいた文言で締めてしまうんだな相変わらず…と思っていましたが、「ニセモノの妻」のブラックな終わり方は好きでした。「断層」は切ない。