三崎亜記のレビュー一覧
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ネタバレ7つの物語からなる短編集でした。
中でも気に入った作品は「動物園」と「送りの夏」です。
どの作品もあり得ない設定でありながら、登場人物はリアルで、とても人間味があり、面白かったです。
「動物園」
主人公の日野原さんは動物になりきる仕事をしています。設定は現実的にはあり得ない仕事ですが、現場対新参者、男社会対若い女性、ビジネスモデルをパクるライバル社の登場など、起こるイベントやその空気感はとてもリアルで今そこに起きた現実のように感じました。
自分も働く女性の1人として、共感できる作品でした。
「送りの夏」
少しわかりにくい作品でした。
短編集の中ではかなり長い作品だと思いますが、展開が多く、少し強引でご都合主義的に感じてしまう部分もあり違和感が残ります。
ただ、時折出てくる考え方にはハッとさせられるものがあり、『信じている、というより、信頼しているんだ』という父の言葉と、帰りの電車の中写真を見て『そこには、すべての人の生があり、そして死があった。』という回想がとても印象的でした。
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Posted by ブクログ
面白かったです。
鉄道と共に生きてきたけれど、乗り換え路線の廃止でほとんどの電車が通過するようになって寂れた町のお話でした。
光陽台ニュータウンや、象さんすべり台のあった公園、駅を通り過ぎる下り451列車の光…と、これまでの三崎作品に出てきたワードがたくさんあって嬉しいです。
80kmの駅、影を無くした「影無き者」、見えないタワー、隧道を種から作る隧道士、鉄道原理主義者や鉄道愛好者、という不思議な要素も三崎さんっぽいです。
それぞれの登場人物の視点でお話が進んでいくので、この人はこういう考えを持っていたのか…と思わされます。
消失した下り451列車の結末はじーんとしました。短い短編がこんなにふくらんだお話になるなんて。
でも町長さんはもっと別の方法があったのではないか、と悲しくなりました。
町興しの光と影をみました。
良い方法、悪い方法…リアリティありました。
町に留まる人、町を出ていく人…でも、彼らのターミナルタウンはずっとここなのだろうな、と思いました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ独特の世界観だけれど、細かく設定されていて説得力がある。
初めは理解できなくても後から繋がってくるので引き込まれる。
消滅に直接立ち向かう人も、それを支える人も、意思がとても強い。
その一方で、自分が失われると分かっているのに何もできない、月ヶ瀬など「失われる町」の住人や管理局職員のやるせなさはいかばかりかと思う。
いつ自分の元にかえってきてくれるのか分からない人を、傷つきながらも待ち続ける茜や勇治の姿は切なかったが、それだけ人を信じて待てるのは素敵なことだと感じた。
統監と中西さんが本体と別体の関係だったとは、最後まで驚かされた。 -
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面白かったですが少しこわくて考えさせられました。
大きな流れには個人の力なんて無力なのだろうと思います。何年もかけて根回しして、その流れを推し進めてきたことは特に。
見えないなら、それは無かったこと…本当に、それでいいのかなと思いました。
今の日本の縮図だ、というような解説だったのですがそう思います。こういうこと、行われているんだろうな。
見えないからといって、知らないままで良いわけではない、ということは忘れずにいたいです。
「となり町戦争」の前日譚の「戦争研修」も面白かったです。
前に読んだときはさらっと読んでしまいましたが、「となり町戦争」を読んでから再読すると、この作品を思わせるような台詞もありました。
そして香西さんの結婚相手がめっちゃ出てる…気付かなかったなんてぼんやりし過ぎ。
戦争が公共事業になる、というのは今でも荒唐無稽ではありますが、形を変えた戦争が日常に入り込む、というのはこれからあり得る話です。 -
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シリーズ最終巻も面白かったです。
樹と偲、そして樹の両親、樹の祖父と水玉様…とたくさんの対が、とか、表の対と裏の対、とか、「くつがえし」と「けっき」とか、「相撲」(すまい)の「取組」など…最終巻なのに更に情報量が多くてくらくらしましたが楽しかったです。
顧問との相撲の取組や、大介とのくつがえし対決などハラハラし通しでしたが、青春だ!と思いました。
真実は受け取る人によっていくらでも変化する、や、歴史とはもともと捻じ曲がっている、など、樹の祖父の言葉が重いです。
それにしても、まだまだ続きがありそうな終わり方でした。登場人物たちのこれからが気になります。 -
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本当は存在しない生き物を、
あたかも目の前にいるかのごとく表出させる、
一種の超能力者のお話。
読み始めて少ししたら、
「この話は読んだことがあるような...」
と思ったのですが、半分正解で半分間違い(^ ^;
正解は、同じ主人公の出てくる「シリーズ物」で、
その第一作が他の短編集に入っていたのを読んだ、
ということでした。
最初は、動物園で「皮膚病にかかってしまったライオン」
の代わりに、元気なライオンを「見せて」
子どもたちを喜ばせているような話でしたが...
徐々に話のスケールがでかくなり、
どんどんきな臭い「大人の事情」が絡んできて...
最終的にはかなりスケールのデカイ話になる。
それでも、細かいところまで設定に手を抜かないので、
不思議なリアリティを感じるのが三崎節(^ ^
いつの間にか「正義の側」に肩入れしてしまう。
が、悪も単純な悪ではなく、いつものように
「元々の設定が変」なだけであって、
きっちりと人間ドラマとして成立している。
これぞ、三崎亜紀ってかんじ(^ ^
ただ、私が三崎節に慣れてきたせいかも知れませんが、
今作は結構「先が読める」ストーリー運びで...(^ ^;
その分、☆一つ減らしてみました(^ ^;
面白くない訳では、ぜんぜん無いです(^ ^
また、いきなり本作から読んでも無問題です(^ ^ -
Posted by ブクログ
三崎氏らしい独特の世界観。
ただ本作は、「隧道を種から育てる隧道士」と
「影を失った者」という異様な設定以外は、
割とまとも(失礼!)か(^ ^;
事故で乗客もろとも行方不明になった列車が、
光だけの存在となって毎日同じ時間に線路を通る...
というファンタジー要素も入ってくるが、
この程度は過去に何度も描かれている。
代表作は「X電車で行こう」とか?
前提となる設定・世界観は「異常」だが、
その中で描かれていることは「政治の駆け引き」や、
「家族を喪った哀しみと復讐」「人生の進路」
「地方都市の過疎化」「世代交代」などなど
しごく「まとも」なストーリー。
そのため、異様な世界観の中でも
うっかり感動させられてしまうのが三崎節(^ ^;
ただ、今回は、設定の「後出し感」が
やや強いような印象で...(^ ^;
そのためか、説明くさい描写が多い気も(^ ^;
その分★一つマイナスしてみました(^ ^; -
Posted by ブクログ
理不尽に大切な何かを奪われていく人々。
これは喪失の物語だ。
原因を突き止めるために生き残った人たちは監視下におかれる。
生きていくためには「管理局」に協力するしかない。
さまざまな実験が繰り返されデータが集められる。
その犠牲が報われる日は来るのだろうか。
三崎さんが作り上げた独自の架空世界。
けれど、その世界にだって哀しみもあるし喜びもある。
「消失」という抗えない現実に直面したとき、人々には選択の余地は残されていない。
消え去ることを知らせることも出来ず、別れを言うことも叶わない。
消失後、国家によってすべてはなかったことにされていく。
今はまだ、それだけが被害を拡大させないための方法だから。
地図からは抹消され、土地の名前を別のものに変えられる。
個人の持ち物からも写真や書籍、場所が特定できるようなものはすべて処分されていく。
消滅した人たちを想う心。
消滅した町にはせる思い。
大切な何かを「喪失」した心はどうなるのだろう。
きっと少しずつ慣れていくんだろう、と思う。
でも、慣れることはできても「喪失」によって空いた心の穴はけっして埋まることはないような気がする。
たとえ異世界であっても、喜怒哀楽の感情に共感はすることはできる。
どうすることも出来ない理不尽さに負けない希望。
明日へ、もっと先の未来へとつながる希望のカケラ。
わずかな可能性でも諦めない人間の強さが、結局は解決への糸口になるのでは?と思ったりもした。