あらすじ
赤道上に発生した戦後最大規模の鼓笛隊が、勢力を拡大しながら列島に上陸する。直撃を恐れた住民は次々と避難を開始するが、「わたし」は義母とともに自宅で一夜を過ごすことにした。やがて響き始めたのは、心の奥底まで揺らす悪夢のような行進曲で…(『鼓笛隊の襲来』)。ふと紛れ込んだ不条理が、見慣れたはずの日常を鮮やかに塗り変えていく。著者の奇想が冴えわたる、驚異の傑作短編集。
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Posted by ブクログ
三崎ワールドは長編も良いし短編も良いです。
台風の日に読み始めたこの短編集も面白かったです。
台風のように鼓笛隊が襲来する世界の表題作、本物の象のすべり台「象さんすべり台のある街」、浮遊都市にいる恋人と地上にいる主人公の「遠距離・恋愛」、消えてしまった下り列車に乗っていた人の喪失を受け入れる「同じ夜空を見上げて」が好きです。「校庭」はとても怖くて。
「覆面社員」にあった「バスジャック規制法」に、繋がっている世界なのだなと思いました。「同じ~」も、まだ読んでいない作品に繋がるらしいです。
これからも三崎ワールド、読んでいきます。
Posted by ブクログ
世にも奇妙な物語系、とでも言ったらいいのでしょうか。どこか狂った、しかし至って普通に営まれる日常を描いた短編集。本書、と言うより多分三崎氏の面白い所は、その「狂い」を感覚ではなくシステマティックに組み上げてしまう点です。表題作や象さんの練り上げ方はまさにお見事で、どこからこんな設定が湧いてくるのか、ただただ感心するばかりです。
オチにぞっとする話もあれば、ほんわかできる話もある。でもどの場面においても、世界観の微妙にずれた日常の中で、登場人物たちは当たり前に懸命に生きていく。一貫した作風はまさに「三崎ワールド」とでも称すべきもので、好みは分かれるでしょうが自分はしっかりハマりました。もう何作か、手を伸ばしてみたい作家さんです。
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再読。短編集。よくこういう設定を思いつくなあといつも感心するのだが、短編にも惜しげもなくフシギナ世界設定が使われている。「同じ夜空を見上げて」は「ターミナルタウン」に続くのか。他にも細かいワードが別の作品に少しだけつながっていたりして、にんまりしてしまう。そんな技巧の底には大切なことがそっと語られていて、ぼんやりと物思いにふける幸せを与えてくれる。
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【世界を創造してみたい】
僕は好きだった。表題の鼓笛隊の襲来も他の作品も是非とも長編で読みたいくらい。あっさりしたオチに飲み込みにくい、どろどろした感情が残る。またよみたい。
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やばい。やばばい。三崎亜記の短編では一番好きです。どれも三崎色に染まってる。圧倒的な力で構築された世界観。たまりません。そしてどこかに残る多幸感と寂しさ。脆弱なものだからこそなのかもしれません。鼓笛隊が好き。欠陥住宅も好き。
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ちょっとホラーだったりロマンスだったり日常なのに不思議なお話
不思議設定が当然のように語られるのが楽しい!
鼓笛隊、かわいらしいですけど実際何万人も連れて行かれたりしたら怖い…
「象さんすべり台のある公園」はなんだかジワーっときて泣いてしまった。準公務員な象さん…
「『欠陥』住宅」と「校庭」は読みも奇妙なお話でこれも好き
三崎亜記作品は初読だったので、他作品も読んでみたい
2012/10/11
Posted by ブクログ
・「戦後最大規模の鼓笛隊」がやってくる表題作。台風のようでもあり、宇宙人がやってくるような不思議な話。でも最後はほっこり。
・自分を見失いそうになっている女の人の「記憶」を巡る「彼女の痕跡展」。自分の記憶は正しいものなのか?そもそも私は私なのだろうか?
・覆面を被る権利が成立した世界での日常を描く「覆面社員」
本当の素顔をさらせなくなった切ない話。
・本物の象のすべり台がある街の話。しかも象さん日本語喋ってるし。あなたの「故郷」はどこですか?
・「突起型選択装置」…ボタンのある女のひとと出会う男の人の話。ボタン、押したらどうなってたのかなぁ…。
・「欠陥」住宅に取り込まれてしまった家族の話し。「欠陥」の度合いと「世界の秩序」について。自分が見ている景色をみんなが見ているとは限らない、というさみしいような納得できるような不思議な話。
・「浮遊都市」に住む彼との遠距離恋愛を描く「遠距離・恋愛」
こんなプロポーズ、憧れるわぁ(笑)
・気づいてはいけないことに気づいてしまったために人としての生活が営めなくなってしまった家族。これは恐かった…。
・理不尽にも離れ離れにさせられてしまった人たちの話。
列車事故、震災…日常が一変してしまって、大切な人を失くして、いつになったら「受け入れ」られるんだろう。かなしいけど、さみしいけどちゃんと受け入れて前に進まなきゃいけないんだな、と思った話し。
久しぶりにこの作家の本を読んだ。いろんな話がぎゅっと詰まって楽しめます。
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本当に、三崎亜記の意表のつき方は巧い!日常に馴染んだ言葉が、全然知らないものへと変化する。鼓笛隊、象さん滑り台、ボタン、欠陥住宅、遠距離…。
そのドキドキ感が堪らない。意表をつかれたい時(笑)、おすすめな三崎亜記でした。。
(2011.03.26)
『廃墟建築士』を読んで、久しぶりに再読。
やっぱり、三崎亜記には自分の中の常識をあっけなくひっくり返されて、それがものすごく快感。
この中だったらやっぱり「鼓笛隊の襲来」が一番好きかな。鼓笛隊が可愛くてw
『廃墟建築士』よりもライトにさらっと読める短編集なのでとても好き。
(2012.10.13)
Posted by ブクログ
三崎さんの作品は、突拍子もないことが淡々と、実に物静かに語られます。
でも、その淡々とした雰囲気こそが、物語に登場する人々の気持ちや、そこで起こる少し不思議な出来事を逆にくっきりと印象づけることに成功していると思います。
やっぱり好きですね。
Posted by ブクログ
「赤道上に、戦後最大規模の鼓笛隊が発生した。」の、一文から引き込まれる。台風の如く日本に上陸する「鼓笛隊の襲来」
いなくなったが思い出せない彼の喪失感を抱えたまま、立ち寄ったギャラリーで見かけたのは、自分の記憶にある"モノ"たちだった。「彼女の痕跡展」
覆面をつけて生活をして良い制度のある世界「覆面社員」
本物の象が、リタイア後に公園の遊具として生きる世界
「象さんすべり台のある街」
その他「突起型選択装置(ボタン)」
「「欠陥」住宅」「遠距離・恋愛」
「校庭」「同じ夜空を見上げて」
不思議な世界で話が進むため、温かい話のまま終わるのか、怖い話として終わるのかどちらに転ぶかわからない感覚がソワソワして楽しめました。
表題作と、「失われた町」に通ずる書き下ろしが、良かったです。
「消失」「痕跡、記憶」「視点」「怪異・幻覚」「ルール」「別の街が栄えて置き去りにされた街」などキーワードが並ぶ。
自然災害よりも違和感が残る形で消えてしまう人が知人や家族にいた時どう感じるのだろうか?しばらく会っていない人生きているのか死んでいるのかわからない人と何が違うのか?考える種みたいなものが
ポツポツと挟まれてる。
Posted by ブクログ
不思議な世界の短編集。
三崎亜記の真骨頂のホラーでいろんな角度から紡いでいて、どれも味わいがある話がならんでいる。
高橋克彦の「記憶」シリーズを彷彿とさせた。直木賞候補作にもなった傑作集。
Posted by ブクログ
現代日本に似ている世界だけれども、
不思議な現象、制度が紛れ込んでいる短編集。
オチにひねりのない(というか投げっぱなし?)
話も多いけれども、
個人的には世界観の面白さでおなかいっぱい。
話に出てくる不思議な現象や制度
(鼓笛隊や覆面)が社会風刺的な
何かの暗喩なのかなと思いつつも、
意外と何も裏がなくまんまなのかと思ったり。
作者は公務員時代こんなことを
日々妄想していたのだろうか。
Posted by ブクログ
【本の内容】
赤道上に発生した戦後最大規模の鼓笛隊が、勢力を拡大しながら列島に上陸する。
直撃を恐れた住民は次々と避難を開始するが、「わたし」は義母とともに自宅で一夜を過ごすことにした。
やがて響き始めたのは、心の奥底まで揺らす悪夢のような行進曲で…(『鼓笛隊の襲来』)。
ふと紛れ込んだ不条理が、見慣れたはずの日常を鮮やかに塗り変えていく。
著者の奇想が冴えわたる、驚異の傑作短編集。
[ 目次 ]
[ POP ]
戦後最大規模の鼓笛隊が発生した。
列島上陸・直撃の被害を恐れた住民が避難するなか、鼓笛隊の襲来体験をもつ義母の言葉を受け自宅に残ったわたし。
恐るべき鼓笛隊の真相とは……(表題作)。
奇想天外な設定とリアルな人間描写が織りなす短編集。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
小説のカテゴリの切り口を、現実世界と、非現実世界にしているが、この作者の小説はいつも迷う。
読後時間がたつと、鼓笛隊が襲来したのかなという気持ちになる。
私が読んだこの作者の本にしては珍しく、祝福された存在が小説の核となっている気がした。
Posted by ブクログ
現実的な世界の日常に、非現実的な設定が混ざりこむ不思議な短編集です。
作者の書きたいことが明確にあり、それを分かりやすく読者に伝えようとする姿勢はこの作品でも健在でした。
多くの話の中に過去や現在の「喪失」という要素が含まれるのが印象的で、作者の主要な主題となったのでしょうか。
各話について細かいことを言えば、お約束ではある「お役所仕事」は無理に入れなくても、とか、設定に慣れた頃に話が終わってしまった、とか感想はありますが、作者らしい安定して面白い短編集でした。
Posted by ブクログ
異常性の中に覗く日常への警句。
シュールな設定を引き立てる淡々とした語り口は、著者のお家芸か。
「覆面社員」は、本心を隠して理想的な役割性格を演じる内に、自分がわからなくなってしまう――そんな誰もが身に覚えのあるような病のメタファーに思われた。
現代版『人間失格』と呼べそうな1篇。
Posted by ブクログ
やっぱり三崎さんらしい短編集。
ありえない世界だし
読み終えてすっきりもできないのに
現実を感じさせられる。
ただひとつ、
ボタンを押すとどうなるのかだけ教えていただきたい。
Posted by ブクログ
この人の小説は、いつも不思議な内容です。
この作品も、その例に違いません。
シュールなショートショートというと、
星新一の名前が思い起こされますが、
星新一とも、また違うんですよね。
星新一の場合は、シニカルな現代風刺と言う感じですが、
この人の作品の場合は、風刺というより、
一風変わった世界の話に尽きると思います。
短い物語ばかりなので、一気に読んでしまいました。
Posted by ブクログ
これ面白い! 短編集だけれども。
世界のほころび隙間をあぶりだすような物語。
表題になっている『鼓笛隊の襲来』は、”鼓笛隊”が台風のように語られていて、面白い。
Posted by ブクログ
引き込まれて抜けられなかった。
実際とは違う物事を使って表現されているけど、日常生活の中にある出来事や気持ちの動きが書かれているように思う。だから、起こっていることは非現実的なのに、どこかで自分の経験と重なる物があるみたいで、ものすごく恐い。いくつか最後にほっこりできるお話があって、救われた。
現実と非現実の境が解らなくなるような、こんな感覚は初めて。良かった。
Posted by ブクログ
三崎亜紀の世界、最高です!
特に短編が上手いと思っています。
「鼓笛隊の襲来」は、わくわく感に怖い気持ちが入りこみ、興味をそそるような心情が何とも言えない。
台風が来る気分が鼓笛隊の音楽にそわそわさせられます。
後は、「彼女の痕跡展」と「覆面社員」や、「校庭」は今すぐ短編ドラマにできそうなお話です。
切なさと、人間の心の表と裏、そして、リアルにありそうな恐怖体験に近い部分が、非現実的ですが、そのユーモアが人を引き付ける気がします。
Posted by ブクログ
三崎さんの文才を感じさせる作品!
三崎亜記さんの魅力は独特な言葉の紡ぎ方。余計な言葉は一切ない。なのに、短い文節には心理描写を詳細に読者へ伝える繊細な言葉が、所狭しと盛り込まれている。長くもない、難しくもない。余計な言葉が無いから、読み手のリズムは一定に保たる。優しい文調も心地いい。
ストーリーに関しては好き嫌い分かれるだろうが、とにかく三崎亜記さんの非凡なる文才を十二分に味わえる秀作。いかに自分に才能が無いかを思い知らされる。
Posted by ブクログ
リアリティの障壁を避けるため、現代社会以外をを背景にする物語があります。その背景が過去ならば時代小説、未来ならSF、現代あるいは時代不詳ならファンタジーと呼ばれます。しかし、それらは背景であって、物語の主題はヒューマニティだったりミステリーやサスペンスだったりします。
一方で、背景としてではなく、世界そのものを描こうとする物語もあります。科学の進化によって変化した未来の世界を描くのがハードSFだし、過去ならば歴史小説になります。
三崎さんは現代の中にちょっとした不条理を持ち込み、不思議な世界を作り出します。例えば台風の如き鼓笛隊だったり、ラピュタのような浮遊都市だったり。とはいえ、それらは科学的な裏付けを与えられたものでは無くファンタジーの世界です。そして、描いている対象は、三崎さん自身が奇妙な前提を与えた世界その物のようです。
う〜〜ん、ハードファンタジーとでも呼びましょうか。
ファンタジーの世界では珍しい描き方だと思います。
Posted by ブクログ
赤道上に発生した戦後最大規模の鼓笛隊が勢力を拡大しながら上陸する。避難する人々、近づく大音響。---『鼓笛隊の来襲』 そこにいるのに誰も気づかないあの子に気づいてしまった私。---『校庭』、ほか日常に紛れ込む不条理を描く短編集。
Posted by ブクログ
日常の中にもしかしたらこんな世界が隣に広がっているかもとひやりとさせられる話がたくさん詰まってます。遠距離恋愛は巫女はちょっと複雑ですが概ねいい話です。校庭はちょっとホラーが入っていてどきどきします。この後どうなったのか想像力をかきたてられます。
Posted by ブクログ
9つの短編。現実の中の1箇所のみが非現実に置き換えられているという着想がおもしろい。しかし、あくまでも現実世界がメイン。ほんの一刹那に垣間見せる人の心の細やかな機微がハッとさせる。意外な設定の陰に隠れて見えにくくなっているがメッセージは奥深い。注意深く読まないと見落としてしまう朧さ。そこがまたイイ。
Posted by ブクログ
三崎さんの持ち味「不思議なことが当たり前にある日常の話」が詰まった短編集。台風のように鼓笛隊がやってきたり、記憶にない恋人との失恋だったり、覆面をかぶって別人になったり、レプリカではなく本物の象だったり・・・そんな不思議な9編が収録。短いページで不思議なことが当たり前の世界観と、その世界観で起こるちょっとした物語を楽しめる。次はどんな日常なのか?どんな現象が当たり前になっているのか?そして人々はその現象に対してどう向き合っているのか?と楽しめる1冊。