あらすじ
今、「バスジャック」がブームである――。バスジャックが娯楽として認知されて、様式美を備えるようになった不条理な社会を描く表題作。回覧板で知らされた謎の設備「二階扉」を設置しようと奮闘する男を描く「二階扉をつけてください」、大切な存在との別れを抒情豊かに描く「送りの夏」など、著者の才能を証明する七つの物語。この短編集の中に、きっとあなたの人生を変える一編があります。
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Posted by ブクログ
表紙と題名から、当時騒がれたバスジャックを題材にした、シリアスな長編物語かと思ったが、不思議な話の短編集。
バスジャックがブームとなった社会を描く表題作。「バスジャック」
タイトルからしても不思議な話。「二階扉をつけてください」
双眼鏡の先から見えるはずもない世界を描く。「しあわせな光」
一緒にいる彼女の記憶が自分の記憶と違う2人。「二人の記憶」
雨夜に本を片手に見知らぬ女性が訪れる。「雨降る夜に」
小さな動物園に派遣された若い女性。彼女の不思議な仕事を通じて、得る物とは。「動物園」
いなくなった母親を追って辿りついた町。夏休みの数日を母親や同居人とともに過ごす。やがて別れるものとは。「送りの夏」
同著者の「となり町戦争」と同じように、ありえない世界での日常のお話。
奇妙なお話もあるものの、心に残ったのは「二人の記憶」や「動物園」「送りの夏」などのどこか悲しく、しかし心温まるお話。
これらは「ストーリー」ではなく、「お話」という呼び方がふさわしいのかもしれない。
短いものは4ページ、長いものでも50ページくらいなので、一気に読む時間がない人に。
Posted by ブクログ
友人から三崎亜紀さんと言う素晴らしい作家さんがいるという話を少し前に伺ってました。
街の書店でブラブラしながら本を見ていると、たまたま目についたのがこの『バスジャック』でした。
すごいタイトルだなぁと思いながらも三崎さんが素晴らしい作家さんという友人の印象があったので早速読ませてもらいました。
感想としては唯一無二の三崎ワールドが描かれていて、素晴らしい本だなと心から思いました。
勧めてくれた友人にも感謝しました。
世界観としては、日常の風景なのかなと思うと全く別の世界線にあるような価値観、文化、風習なんかを生活の延長に組み込んでいるようで、一瞬何のことかわからなくなったりしてしまいます。
でもジワジワと何が沸いてくるような読後感です。
『動物園』と『送りの夏』がこの一冊を引き締めていると思います。
『二階扉をつけてください』の急展開にも驚かされましたが、個人的には『雨降る夜に』がとても好きだったりします。
Posted by ブクログ
短編集。どの話も不条理な出来事が語られている点では共通しているが、長さは3ページ程度のものから100ページぐらいのものまで色々ある。結末もブラックなものもあればハッピーエンドもあって、それぞれ違った味を楽しめるバラエティパックだ(逆に言うと、1冊の中でも好き嫌いが分かれるかもしれない)。
短編にしては濃い内容が多く、表題作の「バスジャック」や「動物園」は非現実な部分の設定がしっかり考えられていて、この短編だけで終わらせるのはもったいない気がした。
最後の「送りの夏」は、夏の海辺の美しい情景描写と人々の不気味な行動とのコントラスト、そして、悲哀の中にも希望を感じさせる結末が印象に残った。
Posted by ブクログ
独特な世界観に引き込まれあっという間に読み終わってしまった。魚を食べて「お肉みたいで美味しい」と表現するナンセンスな芸能人みたいだけど、
「世にも奇妙な物語の良作みたいで面白かった」
ショートショートまではいかない短編集という感じ。短編と言えば有名なのは星新一だが、初めて星新一を読んだときぐらい衝撃を受けた。久しぶりに自分の好みの小説に出会うことができてとても満足した。三崎亜記の作品、もっと読みたい!
Posted by ブクログ
短編集。全体的にナンセンスという言葉が思い浮かぶ。とくに表題作。もはやアトラクション。コンペのようでもある。いずれにせよ乗り合わせたくはない。「二階扉をつけてください」一階に設置できるよう改良すべきではないのか。「雨降る夜に」ホッとする話。「動物園」SFとファンタジーの中間にある仕事小説風。綺麗なだけなら写真で十分。息遣いを感じられてこそだと思うので、私が園長なら柚月さんにお願いしたい。他三編。
Posted by ブクログ
短編集。現実からほど近い不思議なお話ばかりで、思わずぞっとするものから温かい気持ちになれるものまで様々な雰囲気を味わえる。
一番好きな話は「送りの夏」で、個人的にはこの小説があるだけでこの本を買って良かったと思った。この話がなければ★3つかな。生者と死者の境界線が淡い場所での少女のひと夏の物語。大事な人との別れとは悲しく、切ないものだけれど、とても尊いものだと、心に染み入るように感じさせてくれる。
Posted by ブクログ
7つの物語からなる短編集でした。
中でも気に入った作品は「動物園」と「送りの夏」です。
どの作品もあり得ない設定でありながら、登場人物はリアルで、とても人間味があり、面白かったです。
「動物園」
主人公の日野原さんは動物になりきる仕事をしています。設定は現実的にはあり得ない仕事ですが、現場対新参者、男社会対若い女性、ビジネスモデルをパクるライバル社の登場など、起こるイベントやその空気感はとてもリアルで今そこに起きた現実のように感じました。
自分も働く女性の1人として、共感できる作品でした。
「送りの夏」
少しわかりにくい作品でした。
短編集の中ではかなり長い作品だと思いますが、展開が多く、少し強引でご都合主義的に感じてしまう部分もあり違和感が残ります。
ただ、時折出てくる考え方にはハッとさせられるものがあり、『信じている、というより、信頼しているんだ』という父の言葉と、帰りの電車の中写真を見て『そこには、すべての人の生があり、そして死があった。』という回想がとても印象的でした。
Posted by ブクログ
短編集。
基本的には現実味の無い舞台設定の物が殆ど。
タイトルの『バスジャック』はテンポは良いが特に何か感じるほどじゃなかった。
ただ、意外にも最後の話は現実には有り得ないとしても少しじんわりと暖まる話だった。
Posted by ブクログ
読書会の為に再読しました。
三崎ワールドは長編にも短編にも確かにあります。非日常も続けば日常になる、って確か他の作品に出てきた言葉ですが、三崎ワールドを上手く表現してあるなぁと思います。
読書会では表題作を紹介したのですが、お話はやっぱり「動物園」と「送りの夏」が好き。動物園は日野原さんの能力表出のところが少し想像し難いですが、どのお話も情景が浮かんでくるようです。映像的。
ヒノヤマホウオウ、見てみたいなぁ。
情報量の少ない、静かな世界なのも好きです。
ハヤカワ・トータルプランニングのシリーズも、他の作品も読むのが楽しみです。
Posted by ブクログ
「世にも奇妙な物語」が好きな方にはオススメ
表題作のインパクトが強い
日常によくあることを少しずらしてさらにそれが日常になった世界を描かせたら随一
この著者の作品を読むきっかけになった作品
Posted by ブクログ
『となり町戦争』がおもしろかったので、その作者の二作目。購入したのはだいぶ前なので、かなり積読していた。外れの少ない短編集。好きなのは…
「二階扉をつけてください」町内会の回覧板に書かれたその言葉。わからないままつけた二回扉に隠された秘密。SFチックで後味が少し悪い。笑
「バスジャック」バスジャックブームにより、ルールや様式美が定められた不思議な世界。「ロマンはどこだ」感。
「動物園」動物を表現できる不思議な能力を持った女性の話。おじさん飼育員との会話が良い。
「二人の記憶」彼女との記憶に少しずつすれ違い。そのずれをどうするかという話。彼女と主人公、どちらが違うのかもはっきりしないんですよね。
「送りの夏」ある日突然蒸発した母の行き先を求めて娘が向かった先には、マネキンのような人を抱えたいくつかの家族のシェアハウスが。彼らとマネキンのような人々の正体は?
ショートショートから短編まで、変わった設定の作品が多いけれど、どれも読んでいて感情移入できる。「動物園」と「送りの夏」が好き。とくに「送りの夏」はアニメ映画にでもできそうな感動的なストーリーです。命とか、死の乗り越え方について考えさせられます。
Posted by ブクログ
回覧版で知らされた『二階扉』なる設備をつけるべく奮闘する男の話『二階扉をつけてください』、バスジャックがブームとなり形式化しつつある世界を書いた表題作『バスジャック』などの七つの物語。
突如不条理な世界で繰り広げられる三崎ワールド全開の短編集。
一番目の話が、戸惑いつつもコメディタッチだったのに、オチがホラーで少々ビビりましたが、その他はほぼ優しさの中に寂寥感漂うお話でした。
特にラストの『送りの夏』は、小学生の女の子の生き生きとした目線で話が書かれている為、対局である『死』もより強く、残された者達の苦しさ悲しさが感じられる話だったと思います。
この中で私が一番気に入ったのが『動物園』。どこがとは上手く言えないのですが、印象強いものを感じました。
Posted by ブクログ
叙情的な季節感を醸しながら語られる不思議な短編集。その中にあって、二階扉〜とバスジャックの2篇はブラックユーモアテイストで読み手を飽きさせない。
作者は情景描写がとても素敵ですね。
お気に入りは、送りの夏かな。小6の少女が大人過ぎだけど。
Posted by ブクログ
再読。
建築物に執着を見せる三崎さんですが、この短編集では建物は「二階扉をつけてください」に少し出てくる程度です。
初読の時と同じくこの短編集の中では長めの「動物園」「送りの夏」が印象に残ります。特に今回は「送りの夏」。
それぞれ動かないマネキン人形のような人間を抱えた4つの家族が共同で暮らす家。主人公の小学生・麻美の母親も家出してそこで暮らしていた。
愛する人の死を受け入れるための場所。そこで麻美の知らない動かぬ男性と暮らすどこか奔放な母親と、妻や娘を信頼する父親。ちょっと不思議な家族。
夏の物語なのにどこか静寂でひんやりと、しかし暖かな気持ちになる話でした。
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08-099 2008/12/09 ☆☆☆☆
不条理の世界です。
「となり町戦争」も不思議な世界でしたが。
読み始めは「何で?」という感覚が強く。何だか不条理な世界を描くことのみが目的のように見えて、付いて行けませんでした。しかし、読み進めるうちにかなり感じが変ってきました。
特に最後の2作は私好みです。
動物園の檻の中で、見物客に居もしない動物の幻視を起こさせることを生業にする若い女性。大切な人の死を受け入れかね、人形を代役にゆっくりとした別離を図る集団。不思議な世界ではあるけれど、切なさがあって、染み込んで来ます。
Posted by ブクログ
三崎亜記さんの短編集。
この方は設定が緻密であればあるほど面白いので、そういう意味では長編向きの作家さんかなという読後感を得ました。ある程度の長さだと読ませるけど、ショートショートばりの掌編ですとこちらが作品世界になじむ前に終わってしまい、少々惜しい感じがありました。
とはいえ、手を変え品を変え次から次へよくもこんな世界を想像するものです。二階扉は若干トラウマですが(でもこの世にも奇妙な~感、大好き)、表題作のシステマチックなコミカルさも秀逸。玉石混交感はありますが、どれが玉かは読者によって全然異なるでしょうね。
Posted by ブクログ
短編集。
SFやちょっと奇妙な味わいの作品等が収録されている。
とりたてて好きなストーリーはなく全てが60点位。
強いて言うなら「動物園」が1番印象深いか。
可もなく不可もなし。
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7つの短編集
2階扉と動物園、送りの夏
この三つが印象に残った。
2階扉はブラックジョークのような後味悪いけど少しクスッとしてしまう作品。
動物園は意味のわからない表現、言葉が出てくるのにすらすら読めた。
送りの夏は1番考えさせられる作品。お父さんの「信じてる」は一方的、「信頼」は互いに思い合ってるというニュアンスの言葉を娘に伝えててなるほどと感じた。
全体的に世界観がすごい。
Posted by ブクログ
短編集で、それぞれのお話が印象的!
説明しすぎず余白を残してくれるので、読者も想像や共感出来る部分が多いと感じました。でもそこが合う合わないで分かれてしまうかも!「送りの夏」が1番好きです。
Posted by ブクログ
「二階扉をつけてください」 コミカルなテンポで話が進んだ結果、後味の悪い結末。という対比が読んで癖になる。
「送りの夏」 短い文章ながら、舞台設定の細かい描写が見事で情景が目に浮かぶような作品。
Posted by ブクログ
7種類の短編
二階扉をつけてください
世にも奇妙な物語でありそうな話、コミカルでテンポが良いです。
しあわせな光
ほのぼのしてますが、職質されないように!
二人の記憶
記憶は曖昧なものだけど・・・
バスジャック
バスジャックが娯楽として認知されてる世界!物語の造りは同作者の『となりまち戦争』のようです。
雨降る夜に
こんな来客が居たら雨の降る夜も楽しいでしょうね!
動物園
超能力もの!こちらは同作者の『失われた町』が思い出される。続編希望!
送りの夏
母が失踪、そんな母に文句を言ってやろうと娘が母を追い掛ける。追いついた先では人形のような人達と暮らす住人が居ました。
Posted by ブクログ
いろいろなタイプの短編が収録されている。
しかし、作者の個性が発揮されていない作品が多く、
消化不良気味。
ネタは申し分ないと思う。
もう少しインパクトが欲しい。
Posted by ブクログ
なんとなく懐かしい感じがして面白かったですね。
筒井さんはじめ、不条理で少し怖くて、悲しくて、なんか染みてくる小説に夢中になった昔を思い出されます。
Posted by ブクログ
不思議さの度合いが心地良い短編集。
世にも奇妙な物語で映像化してほしい。
大切な人の死を受け止めるには、見守ってくれる第三者と、特別な時間が必要なのだと「送りの夏」を読んで思った。哀しみに浸り切る贅沢って、あってもいいのにな…
Posted by ブクログ
再読3回目。
短編集。ホラー、とは呼びたくないようなファンタジー。
表題作が一番いい、かな。結末は予測可能な範囲だったけど、丁寧な書き方が好きです。