【感想・ネタバレ】みしらぬ国戦争のレビュー

あらすじ

国名も位置も分からない未確認隣接国家〈UNC〉の侵略で、「交戦状態」となったこの国。2年間続く戦争に人々は飽き飽きし、数字だけで伝えられる戦況を他人事のように感じていた。海岸の漂着物を確認するという徴集業務に従事するユイも、そんな「日常」を送る1人。ユイの目的はただ1つ、両親の形見に刻まれた謎の文字を解明し、幼い頃失った記憶を取り戻すことだ。その文字の記された漂着物を拾い集める男性、文字と同じ言語の歌を歌う少女らと交流を深めながら、その秘密に迫ろうとするユイだったが――。
みしらぬ敵、みしらぬ文字、みしらぬ歌、みしらぬ戦争。全てが繋がるとき明らかになる、戦争の“真実”とは?

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

あの思い出の一冊に、続編が出た。

15年以上前のこと。
友人に頼まれて、中学生数十人の前で話をすることになった。テーマは自由。

そこで「読書」について話すことにした。
家にあった読み終えた本を何冊か持参し、演題に並べて話し始めたものの、少年たちはあまり関心がなさそうだった。

そのとき紹介したのが、三崎亜紀『となり町戦争』。

公務員が、となり町との「戦争」の事務を淡々と処理していく──という、奇妙でリアルな物語。
彼らの表情が変わった。本への興味を、確かに示してくれた。

話のあと、お土産に、一人一冊以上、持参した本を配った。
数十冊の本は、若き好奇心とともに、あっという間になくなった。

その『となり町戦争』の「続編」が刊行された。
タイトルは『見知らぬ国戦争』。

この15年のあいだに、世界は大きく揺れた。
東日本大震災、新型コロナウイルス、そしてSNSなど通信手段の異常な進化。
だがその一方で、「事実」か「真実」かわからないことがあふれている。
そして現実世界の戦争は、いまだ終わっていない。

「新たな物語を書かないと、『となり町』から卒業できないと思っていました」
── 著者インタビューより(読売新聞)

現実では「ありえない」ことを、リアルに描き切っていく三崎亜紀の物語は、今もなお、現在進行形。

0
2025年06月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

設定が、こんなことありえないと思うのだけれど、実際ありえたら恐ろしいと思った。
政府が自分たちの支持率をあげるために、国民を誘導し、戦争がないのに侵略されていると国民に思い込ませる。ネットが普及した時代ならではの印象操作。国民がまるッとみんな騙されるとは思わないが、偽の情報、AIによる呟き、不都合な書き込みを自動で削除する仕組み、、徹底的に管理されたら国民みんなで同じ思考になるのかと、恐ろしくも感じた。
小説なので、普通に面白かったが、現代ならではの話だなぁと思った。

0
2025年09月29日

Posted by ブクログ

 映画「カプリコン・1」を思い出した。
 火星へ向かったロケットの隊員たちは英雄となったが、地球への帰還中にロケットが爆発した。
 しかし、実はロケット打ち上げも火星での生活もスタジオで行われており、発覚を恐れた政府から隊員たちが逃げるという話。

 となり町戦争から20年、ディープフェイクなど嘘がまかり通る世の中になるとは想像できなかった。
 見知らぬ国との戦争中で鎖国中の政府が流す情報に国民はうんざりしていた。
 政府の方針に反対するもの、サボタージュするものもインターネット規制で言論が封じられた。

 浜に流れつくものに刻まれた見知らぬ国からのメッセージ。
 何が書かれているのか誰も知らない。

 戦争があることを世間に示す秘密部隊、戦争を陰で支えると言いながら意味があるのか分からない仕事を任される人々。
 政府の目的は何か。
 見知らぬ国との戦争と、戦後を描く。

0
2025年05月19日

Posted by ブクログ

『となり町戦争』を読んでから20年近く経ってることにもびっくりだし、“戦争”の質感も変わった感じ。未確認隣接国家と戦争するのにもリアリティがある時代になったな、と。またいつか読み直したいね。

0
2025年05月14日

Posted by ブクログ

なさそうであり得るかもしれない近未来。
自粛警察や怪しげなネット情報に踊らされる風潮をみると
行き着くところはこんな社会かもしれない。

「国民の心に『無意識の呪縛』を生み出すことこそが、戦争事業の目的の一つだった」

「与えられた幸福の枠内で満足できる、コントロールしやすい国民意識へと変化させるための戦争事業だったということですね」

「今の自分も、誰かに誘導された偽りの記憶によって過去を都合よく塗り替えてしまってるんじゃないかって思えてくるよね」

自分で考えること、選択することはともすれば困難を伴うし辛いこともある。
与えられた「幸せ」を享受する〈コスパの良さ〉がもたらす危機…。
でも「それって、どこが問題なの?。とりあえずちゃんと生活できるし、有り難くね。」的な事を言う人が現状でも多そうで。
怖いな。

0
2025年05月11日

Posted by ブクログ

近未来ディストピア風SF、と纏めてはもったいないお話でした。この国には、こんな器用なことは出来ないような気がしますが、面白く読みました。

0
2025年04月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 『となり町戦争』の著者が20年ぶりに筆を執った”Ver. 2.0”というコピーを目にして早速購入。どこか手応えのないまま戦争が遠ざかってしまっていた前作に比べ、3・11やパンデミックの経験が裏打ちされることで、国家の統制装置としての「戦争」がより明確に位置づけられたのは、この20年間の社会の変化ともかかわるか。
 メディア・テクノロジーを用いたプロパガンダ作戦の展開や、インフルエンサーを活用した対抗宣伝のシーンには読みごたえがあった。しかし、作品世界の設定にどこか得心がいかないままで読み進めたことも事実。おそらくその理由は、著者が主要人物以外の人びと(あるいは、登場する人物たちすべて)を容易に操作・洗脳される記号的な身体としか描いていないところにある。言い換えれば、作中の人びとはまさに「駒」以外ではない。国家の戦争プロジェクトを批判的に裏返していく奥崎と有希の二人が著者の傀儡であるようにである。
 
 もう一つの問題は、戦争を「国内」の統制装置としてしか描けなかったことにかかわる。帝国日本の日中戦争・アジア太平洋戦争の歴史を踏まえれば(そして、現在のロシアを踏まえれば)確かに戦争遂行は国家の統制権力を最高度まで押し上げる契機となる。しかし、国家とはつねに諸国家との関係性において存在している。他国との政治・経済的関係、ヒト・モノ・カネの往来なしに「戦争」のフィクションを演じ続けられるとは思えない。この作品世界には、「経済」の観点が決定的に欠けていると思われる。

0
2025年03月20日

Posted by ブクログ

こんな国家の陰謀が情報操作されて実在すると思うとゾッとするが、案外これに近いような事が行われているのではとまたまた怖くなった。

0
2025年10月23日

Posted by ブクログ

「これ小説だよね?大丈夫だよね?」と読みながら何度も確認したくなった。国名も位置も分からない未確認隣接国家〈UNC〉の侵略で「交戦状態」となった国。作中で描かれる、見えない「敵」と戦う戦争に人々が次第に飽きて、数字のみ伝えられる戦況を他人事にしか捉えられない《日常》に怖くなり、他国の戦争のニュースを見てもどこか「遠くの国で起きている」他人事なこの空気感、現実世界でもあるなあと考えさせられる。情報に踊らされたり煽られたりせず、冷静に、正しいものを見極められるようになりたいと思うけど、その"正しさ”は誰の基準なんだろうか

0
2025年08月18日

Posted by ブクログ

〔Ⅰ〕崩壊間近な日本はどこかわからない国から攻撃を受け戦争状態に突入したが諸般の事情から戦争と表明することはできず「非平和状態」に移行した。本当に戦争なんてやってるのか?
〔Ⅱ〕戦中と戦後の二部構成でそれぞれ男女二人の視点から描かれる。誰がどの陣営なのか、本音なのか、どこまでが事実なのかわからない状態が続く。
〔Ⅲ〕なかなか複雑でしんどい話でした。戦争の理由は想像できてたけど「ミシラヌ」とかがどういう位置づけになるのか読みきれなかった。むしろミシラヌが物語の中心だったかと。

■簡単な単語集

【宛先不明プロジェクト】戦後登場した。アテサキ・フメイ、浮迷ちゃん、DU(Destination Unknown)の三人のインフルエンサーが所属。オブラートに包んだ感じで戦争やミシラヌについて語る。
【碇沢】教授。ミシラヌ言語の提唱者。自分の考えとは別の方向に向かうことになったので離反した(あるいは処分された)。
【奥崎尚人】前半(戦中)の主人公の一人。戦時であることを国民に意識させる作戦「顕戦工作」に従事している国家保安局の特別対策班第一期生。別れた恋人、有希になんらかのこだわりが残っているようではある。
【カホゴ】ネットへの情報の制限する制度。
【黒瀬】国土保全省の特別組織所属。奥崎と同じような仕事に従事している。
【再平和】戦後のこと。
【戦争】戦争という言葉は使わず非平和状態と呼ぶ。ほぼ鎖国状態。
【自由帳】居酒屋やカフェなど人が集まる場所に置かれたノート。唯一本音を吐き出せる場となっている。
【組織】トオルが属する。戦争で居場所を失った人びとを救出している。
【ソラ】見知らぬ女性(実の母?)から途中まで教わった歌を歌っていたところでユイと出会い、「一分半だけのゲリラライブ」を各地で行うようになった。その歌の言葉はミシラヌ語?
【棚橋】後半(戦後)の主人公の一人。戦中はコネクターとしてミシラヌ・プロジェクトに従事していた女性。
【トオル】後半(戦後)の主人公の一人。
【日本】国としてほとんど破綻しかけている。今の現実の日本とそう違わない状況。それを延命させるための架空の戦争事業という可能性が高い?
【松田】「組織」の地区リーダー。
【ミシラヌ】この国に支援の手を差し伸べてくれるどこかわからない国。楽園として皆が行きたがっている。その言葉はどこの国のものにも似ていない。
【望月】とある海岸に建っているギャラリーで漂流物を展示している。元は織物の貿易商。いなくなった妻を探してはいないが戻ってきてほしいとは思っているようだ。
【望月の妻】とある国で売られていたのを望月が買い取った。その後望月の職業上のピンチを救った。望月が商売をやめたとき読めない文字(ミシラヌ語?)で書かれた置き手紙を残して出ていった。
【ユイ】前半(戦中)の主人公の一人。海岸で漂流物を探す三種徴収者。誰も知らない文字(ミシラヌ語?)を探し、ソラのライブを手伝っている。
【UNC】未確認隣接国家。どこの国かは不明らしい。ミサイルで攻撃してきたらしい。公式な被害報告はパンデミックによる被害者数として表示される。
【Y0639515S】謎のSNSアカウント。国よりも早く正確なミサイル情報を配信している。フォローを切っても勝手にフォローさせなおしてくるゾンビアカウント。

0
2025年08月13日

Posted by ブクログ

現代社会の問題がてんこ盛りされた、
(架空の?)日本が舞台。ほんとに架空でいいんだよね?と思わせる現実の既視感が漂う物語でした。

ニュース見てても他人事だし、戦争は、
「過去に起きた出来事か、よその国がやめたらいいのにやってること」なのかもしれない。

情報に踊らされず、煽られず、
正しく現実を見つめていけたらいいな。
その正しくが難しいことなんだろうけど‥

0
2025年08月10日

Posted by ブクログ

好きな作家の世界観がどの本でも好きになるとは限らない。ネットに踊らされている人々に知らない間に加担されている人など現実でも同じような事が三崎亜記氏の世界では戦争という表現で描いている。そして使われた事ないパンデミックという言葉もコロナによって日常会話に、三崎亜記氏世界でも違和感なく浸透。情報、政府に踊らされている警告とも言える。が世界に入る事が出来ず読むのに時間がかかってしまった。

0
2025年06月24日

Posted by ブクログ

あらすじを書いちゃうとネタバレになるし、書かないと説明が難しいし、感想を書き辛い本です。
ネット上のフェイクニュースの怖さや陰謀論的な国家活動など現代に合わせた設定に成って居るし、ストーリーも全く違うけど、デビュー作『となりまち戦争』のリメイクという印象。中心から少し離れた狭い範囲の人々や事件を描く事で、全体像を感じさせようとする手法の所為ですかね。
読み始めてすぐに「多分、この戦争って、こういう状態だろうな」という想像はつきます。そしておおよそその予想通りに話が進む。終盤に入って、三崎さんだからエンディングは大ドンデン返しではなく中途半端にひっくり返すんだろうな~と思ったら、まあこれも予想の範囲で。
そういう意味で三崎さんらしい物語。ただ、何となく予想がついてしまうだけに、個々の章でのメリ張りが乏しさや、ズルズル話が続く感じで、読むのがしんどい作品でした。キーアイデアは新言語なのでしょうが、それに三崎さんの他作品ほどの魅力を感じなかったせいかな。

0
2025年05月10日

Posted by ブクログ

隣町との戦争からパワーアップ。人口減少や経済停滞から浮上し、国家に従順な国民意識の形成目的に、架空の戦争でっち上げ…その国民性からも日本がモデルとしか考えられないけど、こんなディストピア描ける指導者生み出せないことだけが救いかも。

0
2025年04月28日

「小説」ランキング