【感想・ネタバレ】みしらぬ国戦争のレビュー

あらすじ

国名も位置も分からない未確認隣接国家〈UNC〉の侵略で、「交戦状態」となったこの国。2年間続く戦争に人々は飽き飽きし、数字だけで伝えられる戦況を他人事のように感じていた。海岸の漂着物を確認するという徴集業務に従事するユイも、そんな「日常」を送る1人。ユイの目的はただ1つ、両親の形見に刻まれた謎の文字を解明し、幼い頃失った記憶を取り戻すことだ。その文字の記された漂着物を拾い集める男性、文字と同じ言語の歌を歌う少女らと交流を深めながら、その秘密に迫ろうとするユイだったが――。
みしらぬ敵、みしらぬ文字、みしらぬ歌、みしらぬ戦争。全てが繋がるとき明らかになる、戦争の“真実”とは?

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Posted by ブクログ

ネタバレ

設定が、こんなことありえないと思うのだけれど、実際ありえたら恐ろしいと思った。
政府が自分たちの支持率をあげるために、国民を誘導し、戦争がないのに侵略されていると国民に思い込ませる。ネットが普及した時代ならではの印象操作。国民がまるッとみんな騙されるとは思わないが、偽の情報、AIによる呟き、不都合な書き込みを自動で削除する仕組み、、徹底的に管理されたら国民みんなで同じ思考になるのかと、恐ろしくも感じた。
小説なので、普通に面白かったが、現代ならではの話だなぁと思った。

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2025年09月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 『となり町戦争』の著者が20年ぶりに筆を執った”Ver. 2.0”というコピーを目にして早速購入。どこか手応えのないまま戦争が遠ざかってしまっていた前作に比べ、3・11やパンデミックの経験が裏打ちされることで、国家の統制装置としての「戦争」がより明確に位置づけられたのは、この20年間の社会の変化ともかかわるか。
 メディア・テクノロジーを用いたプロパガンダ作戦の展開や、インフルエンサーを活用した対抗宣伝のシーンには読みごたえがあった。しかし、作品世界の設定にどこか得心がいかないままで読み進めたことも事実。おそらくその理由は、著者が主要人物以外の人びと(あるいは、登場する人物たちすべて)を容易に操作・洗脳される記号的な身体としか描いていないところにある。言い換えれば、作中の人びとはまさに「駒」以外ではない。国家の戦争プロジェクトを批判的に裏返していく奥崎と有希の二人が著者の傀儡であるようにである。
 
 もう一つの問題は、戦争を「国内」の統制装置としてしか描けなかったことにかかわる。帝国日本の日中戦争・アジア太平洋戦争の歴史を踏まえれば(そして、現在のロシアを踏まえれば)確かに戦争遂行は国家の統制権力を最高度まで押し上げる契機となる。しかし、国家とはつねに諸国家との関係性において存在している。他国との政治・経済的関係、ヒト・モノ・カネの往来なしに「戦争」のフィクションを演じ続けられるとは思えない。この作品世界には、「経済」の観点が決定的に欠けていると思われる。

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2025年03月20日

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