三崎亜記のレビュー一覧
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自分たちの総意であるかのように錯覚させられて、実は全く別の誰かによって、コントロールされている。メビウスの輪のように、わざとねじれを作り真実を覆い隠し、大きな欺瞞の歯車の小さな歯車となって滞りなく回り続ける人々。何も見ず、何も考えずに歩き続ければ、平坦で歩きやすい道がどこまでも続く。足元を一旦見つめれば、自分がねじれた空間にいることに気づいてしまう。気づいてしまえば、ねじれた部分から振り落とされてしまうだけ。だから、人々は、目をつぶる。そうすれば、足元がねじれていることなど気にかけることもなく、元の通りに平坦な道を歩くことができる。見ないフリをすれば少なくとも平穏に日々を送ることができる。目を
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巨大な企業が支配する、極端に閉鎖的な街が舞台。外界との交流も制限され、小さな世界で何の疑問を持つこともなく暮らしている人々の生活に、少しずつ亀裂が生じてくる。
何を作っているのかもわからないまま、工場で真心を込めて作業にあたることが美徳とされ、素直に恩恵を受けることが強要される。全体主義の社会では、日々の暮らしも通貨も価値観さえも、独自の基準で統一されている。
正体不明の中枢によって情報が操作され、すべてを支配されている様は、まるでどこかの社会主義国家のよう。
本当はねじれているメビウスの輪の上を、何も考えずに歩き続けること、気づかないことが幸せという、そら恐ろしい世界だ。
非常事態には得 -
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ネタバレ架空のスポーツ「掃除」に情熱を傾ける男子高校生の物語です。
現実にはありえないものをあるように思わせるのが作者の持ち味ですが、中短編では控え目なこの表現力を全開にしたらこうなるのかと、面白く読ませてもらいました。
内容としては青春小説の王道を踏まえ、多分にライトノベル的・少年誌的であり、その手の話に慣れている人間にはとっつきやすかったと思います。
ただ中盤以降の「修行」時代は、どこを目指しているのか分かりにくかったり、顧問の筋書き通りに動く展開が繰り返されたりで、やや間延びしてしまった感もあります。
その点は作者がこのジャンルをまだモノにできていないことが原因なようで、今後に期待という -
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あれ、えらくドロドロとしちゃったな、というのが正直な感想。
建築物を偏愛する三崎さんですが、もう一つのこだわりが戦争なのでしょう。これは『となり町戦争』の系譜の作品です。
三崎さんの作品は、どれも現実とは少しずれた不思議な共通の世界を舞台にしていますが、この作品にも州都とか自治区とか隣国とか、『コロヨシ!!』にも出てくる用語が出てきます。
しかし、何だかちょっと違います。暗めの雰囲気はいつも通りですが、いつもはサラリと距離感を置いて描かれる登場人物たちが、この作品では妙にドロドロと重いのです。何だか昼間のメロドラマでの雰囲気なのです。
同時併録された短編『戦争研修』は『となり町戦争』のス -
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30年に一度、何処かの町が失われる。
正確には30年の周期で何処かの町の住人が全て消滅してしまう。
それを悲しんではいけない。
何故なら悲しむことでその人も消滅してしまう可能性があるから。
この小説の世界観を掴むまでに時間が掛かります。
ジグソーパズルのように1ピースづつ嵌めていく感じです。
それと、泣けます!
町に捕らえられそうです。
となり町戦争の時にも思いましたが、近未来でもなく異世界でもない日本?
というか、そもそも日本なのか?と、思っちゃいますが、この小説を受け入れられるかどうかは、この世界を無防備に受け入れられるかどうか?ではないでしょうか? -
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何だか長編スポコンアニメです。
「キン肉マン」とか「悟空」のノリです。最初は軽いものだったのが、どんどん拡張して行き、舞台も技もとてつもないものになってしまい(笑)。
アニメを意識してるのか、登場人物も初代顧問の寺西先生は「スラムダンク」を思い起こさせるし、今回の顧問・牧田先生もどこかのアニメにモデルが居そうです(私は詳しくないので)。
ただ、それが成功しているかというとチョット。何か所も「ずっこけ」シーンは作っているのですが、笑う前に「ああこのパターンね」と思ってしまいます。
そもそも三崎さんは人を描くのはあまり上手くないのかな。考えてみれば、過去の三崎作品の中で思い出されるのは、作品に描か