三崎亜記のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
町の広報誌をふと見ると「9/1から、隣の町との戦争が始まります」と書かれていた。9月を過ぎた後も戦争の気配はなかったが、広報誌には「死亡(うち戦死者)」という記載が。そこへ、偵察役への就任に関する通知が届く…。
タイトルから何となくああ言うのかな?と思わせられるのは、筒井康隆や小松左京を読んできたからだと思う。気配がなく、夜間のみに行われ、一般市民には被害が出ないようにするという、夜間工事のような戦争。時々差し込まれる、役所的な書類フォーマットなど、なるほど、面白いことを考えるものだなあと感心した。
一方で、テーマ的にも熱くなる部分がほしいところであるが、それを架空のような掴めない話を掴みに行くようにしたいのか、突然襲い来るパニックのようなものにしたいのかがわからぬまま、どんどん進んでいき、気がついたら終戦を迎える。
役所の書類や決済のバカバカしさ、町興しをパロディにしているというところは評価できる点ではあるし、縦書きの中に差し込まれる横書きのシュール感なども成功しているものの、読者はテーマ的にも、ハラハラする何かが欲しいのではないかと思う。そこを曖昧なままにしてしまったせいで、比較的評価が低くなってしまったことは否めない。
個人的にはまあまあ楽しめたし、そういうネタとして一部は使わせてもらおうかと思ったところがある。そこまでたどり着けない人も少なくないだろうという作品だ。
個人的に、本編は★4か★3か悩むところであったが、最後に別章として、大して面白くないエピソードを付け、無理やり伏線を拾おうとしたのでマイナス。本編で評価が低かったからと、蛇に足を描くような真似はしないほうが良い。
レビューを書くに当たり、映画化とか舞台化というのを目にしたが、この作品で面白いのは公文書のパロディによる温度差なので、そこを取っ払ったら龍に目を欠くといったところである。 -
Posted by ブクログ
連載ではなく単行本として出版された本のはず…なんというかどのような読者を想定して書いたのだろうか?
三崎亜紀ファンでこれまでの作品を読んできたのであれば、出てくる要素と過去作とのリンクを少し楽しめると思うのだが、内容はヤングアダルト向けのファンタジーっぽい印象(昔NHKの夕方放送されてた少年少女を主人公にしたドラマのような雰囲気)なので読んでいて「自分は読者層の話なのか?」と考えてしまった。
また、三崎作品初の人にとっては「地味なファンタジー」として見えるような気がする。
「日常から少しずれた世界」よりも濃くファンタジー要素に近づく作品は「失われた町」などにもあったけれど、では"何を伝えたいのか"がいまいちよくわからなかった。
後半になるにつれて、地味さの原因でもあるのだが現実では「見えないもの」をモチーフとして扱っているように読めてくる。
「童話」として捉えると(上記で感じてた違和感なども払拭して)すごくしっくりくる。
巻き込まれた主人公が、翻弄されつつ目的に向かっていく。その途中で登場人物の思惑が見え隠れするのだが、それも少しぎごちなく臭わせる。
なんか下手なのかなんなのか、登場人物に対して「いや、それ後々こうでしたとか言い出す何か言葉を今飲み込んだでしょ?」とツッコみたくなるセリフや場面が多かった。 -
Posted by ブクログ
「三崎 亜記」の『となり町戦争』を読みました。
第17回小説すばる新人賞受賞作ですし、映画化もされているので、ご存知の方も多い作品だと思います。
隣の町と戦争をするという奇抜な設定の中で、フツーのサラリーマンである主人公が、戦時中という実感のないまま、流れに任せて戦争に巻き込まれて行く姿が淡々と描かれており、なかなか興味深く読めました。
-----story-------------
ある日届いた「となり町」との戦争の知らせ。
僕は町役場から敵地偵察を任ぜられた。
だが音も光も気配も感じられず、戦時下の実感を持てないまま。
それでも戦争は着実に進んでいた―。
-----------------------
実感のない戦争に巻き込まれ、次第に戦争がリアルに忍び寄る不気味さが恐ろしいですねぇ。
静かに、でも確実に戦争が身近に迫ってくる展開は、、、
いきなりガツーンとくるよりも効果的ですね。
でも、本当にリアルな戦争を感じる前に終戦。
戦時中の行動を振り返ると、直接的に戦闘には関わっていないものの、間接的に戦争に加担し、そのために多くの人が命を失ったことに、あとから気付くという展開。
自分は無関係だ!と思っている事象について、無意識のうちに何らかの影響を与えているってことは多々あると思います。
改めて、そのことに気付かされる物語でした。
文庫化の際、追加された別章での「西川」チーフの言葉、、、
『あなたは、わからないふりをして、現実を見ないようにしているだけではないですか?めぐり巡って、あなたは誰かの死に手を貸しているかもしれませんよ。要は、それを自覚しているか、していないかの差だけです』
この台詞が、本作品の全てを物語っているような気がしましたね。
そうそう、なんだか「筒井康隆」作品の匂いを感じる作品でした。
機会があれば映画も観てみたいですね。 -
Posted by ブクログ
いわゆる公共事業として、役所がとなり町との戦争を淡々と遂行する世界。いまいち実感が持てないまま、見えない戦争は着実に進んでいる。そこに主人公始め、人々は巻き込まれていく・・・。という話。非常に読みやすくズンズン読み進められます。
戦争というショッキングなものと、となり町という身近なものを組み合わせたタイトルの妙。
戦争という大きな動きに実感が持てないまま進んでいく様は、現代の日本の社会問題と私たちの関わり方を表している素晴らしいストーリー、、、と三分の二までは思えるのですが、、、
最後の方の結の部分で、言い方は悪いですがズッこける思いでした。
淡々と、しかし確実に話が広がる中、どんどん残りページ数が少なくなっていくにつれ『これはどんなふうに着地させるのか・・?』『いや着地出来るのか・・・?』とドキドキした時間は非常に楽しいものでした。
それだけに最後は『いや!!!これが戦争なんだねじゃねーよ!!!』という鳩尾がググッとなる一種の笑いみたいな感情になってしまいました。
ちなみに私は映画版を見た事はありませんが、そちらを見ているとまた感想は違うのかなとも。 -
Posted by ブクログ
本書とは関係ないけど、私が住んでいた長野県では歴史的に長野市と松本市の仲が悪い。
明治時代、長野県と筑摩県の県庁所在地を長野と松本で奪い合いしたからだ。
で、本書ではそれと同じように、福岡県の最大都市の名称をめぐって福岡と博多の争いがあったというのが、この話のテーマ。
武士の町”福岡”と町人の町”博多”が那賀川を挟み、町の名称を主張しあい、結果として福岡市になり博多は駅の名前として残った。
そして時が経つ。
建設会社の事務員として働く”かなめ”は、東京から来た建設事務所のデザイナー”博”と高校卒業以来ぶりに再会する。
再会を喜ぶかなめだが、博は再会を全く喜んでいない。
かつて、博はかなめの「よかよ」という博多弁の言葉を逆の意味にとり、手ひどく振られたと勘違いしていた。
その二人に降りかかる博多の怨念。
博多市の名称変更をもくろむ現実世界の裏の羽片世界。
その怨念が現実世界への影響を及ぼし始めた。
この状況を打破する白羽の矢が立ったのが、かなめと博の二人だった。
仲たがいをする二人は、博多の怨念を鎮めることができるのか。
一つの県の中でいがみ合ってる都市なんて、やっぱり各地あるのねぇと認識した。
自分の生活範囲外の争いごとは、ぶっちゃけどうでもいいのな。 -
Posted by ブクログ
三崎亜記による地元愛溢れるジェットコースターファンタジー小説。
三崎さんの本では『30センチの冒険』、他にはすっかりうろ覚えだけれど中村航の『デビクロくんの恋と魔法』とか恩田陸の『ドミノin上海』なんかを思い出します。福岡/博多を舞台に次から次にドタバタと少々突拍子も無いファンタジックな事件が起こる。そしてその中でボーイミーツガール。
もとは2021年3月から9月にかけてRKB(旧 Radio Kyushu Broadcasting)の連続ラジオ朗読劇。これを小説化して「シティー情報ふくおかナビ」に2021年7月から9月の掲載。それを単行本化した物です。つまり、完全ローカル。
色んな博多あるあるが散りばめられてるのだろうけど、土地鑑が乏しいと(一日歩き回った事は有るけど)なかなかついて行けません。他の人の評を見ても「福岡市民は必読の一冊です」とか「福岡を知る人には楽しめる一冊だと思う 」など、ローカルに徹した作品です。せめて地図だけでも付けてくれれば。。。
という訳で残ったのは「三崎さん、こんな小説も書くんだ~」という印象ばかりでした。 -
Posted by ブクログ
数年前「武士道シックスティーン」を読み、「おっ、青春スポーツモノいいかも?」と続けて購入した一冊
で、やっぱりオッサンには青春ものキツいんじゃないか…と不安になった。
元々、三崎作品が好きなので抵抗なく読めるかと思いきや「青春×スポーツ×三崎ワールド」に馴染めず、また続けて同じジャンルを読むのも良くないかと思い止める。
それから数年経ち再挑戦
スポーツとしての「掃除」が存在する世界で、高校の「掃除部」として活動する少年が主人公
この「掃除」がクセモノで…
部屋の掃除とは違い「塵芥」と呼ばれるバトミントンや羽子板の羽のような物を「長物」と呼ばれる箒のような物で空中に巻き上げ技術を競う競技(なかなか場面を想像しづらい)
そして成り立ちの経緯には国家が絡んできてなんだか昔武術として危険視されたとかなんとか…クセがね…
舞踊としての側面もあるので、なんだカポエラの成り立ちとバトミントン合わせたような、不思議なスポーツ。
本筋はスポーツ青春モノなんですが、三崎作品に出てくる独特な職業、地名が出てくるのと、「国家」に話が広がる要素、過去に起きたことなどに「運命」に主人公が翻弄されすぎていて、臨機応変に切り抜けていくんだけど、なんかモヤモヤしたまま…
続編も近々入手予定 -
Posted by ブクログ
ファンタジーほどまで飛ばない
日常をズラす三崎ワードの短編集
「終の筈の住処」
「ニセモノの妻」
「坂」「断層」の四篇
「終の〜」実は、これに似たような現象
(同建物内で周辺に一切居住者が居なくなる)に遭遇し、なんだか怖さが強まる。
なにより主人公の職場の先輩の立ち位置が怖かった。
「静かな戦争」であるマンション建設反対運動が出てくる。
「ニセモノの妻」自分がニセモノなんじゃないかと言い出した妻と本当の妻を探す話。
何がニセモノでホンモノなのか曖昧なところをどう捉えるか?
読み終えて、いつ入れ替わっているのかも分からない自分の妻を観察する。
「坂」坂ブームという三崎作品ぽい
「ないないあるある話」そして夫婦間の戦争…詰め込んできた感がある。
「断層」ある日を境に次元の狭間に囚われ、1日の数分間を何日かに分けて生活する妻と、それを維持するために妻との生活を続ける夫
二人の時間と、夫の時間にだけ流れる深刻さの対比が際立ち、切なくて泣きそうになりました。
「失われた町」で起こる「消失」よりも急ではない分、酷ですね。
夫のつぶやいた言葉が心に残る。
「お好み焼きを作って、余った青のりを磯辺揚げに使って食べる」場面から
ぐっと感情移入しました。(よくやる人) -
Posted by ブクログ
「となり町戦争」の前日譚も収録されているが、そちらよりは表題作の方が良かった。(ぼんやりとはしている)
A町に住む女性が主人公、隣のC町との市町村合併が「乗っ取り」なのではないか?と言う噂を友人から聴き、ネット上での「合併反対派」の動きや、デモ活動(お散歩)について知っていくうちに、何が真実なのかがわからなくなっていく…
情報操作、印象操作の攻防、切り取られた報道、怒りが長続きしないとか、ネット上だけ=仮面をつけた人達のこと、など
Twitterやってることで、より身近に感じる事がテーマ
そして静かな「目に見えない戦争」と言うテーマはとなり町であれ遠くの国であれ無関心な意識のこと
そういう感覚を再認識するには良い。
「となり町戦争」と通じるテーマ
でも、ちょっと「これは話がどう言う方向に向かうのか?解決するはずがないので、どう終わりに向かうのか」がなんとなく、予想の中のひとつ通りで少し弱く感じた。
でも、この先何度も思い出す気がする。