中島義道のレビュー一覧
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幸福なんて、薄っぺらいものだという考え方は良かった。
SNSの普及による、承認欲求の囚われや、流行という価値観の押し付けが蔓延る世の中。
いいね!をされること、流行の波に乗れていることは、確かに、幸福ではなく、息苦しいものだと思う。
しかしながら、幸福の条件を厳密にし、こうでなければ幸福ではない、みんな不幸だ、という、二値論理的な考え方はどうなんだろうか。
また、哲学者ゆえに、自分の考え方を世間とは違うという表現を使ったり、少数派だという希少性を用いつつ、意見の正しさをデータなどの根拠もなく伝えようとしているのは、今の時代如何なものか?とは思う。そこが、学問から抜け出せないところなのかもしれな -
Posted by ブクログ
幼い頃から「いい子」でいた著者が、同じような生き方をしてきた結果、20歳になって自分の生き方に疑問を抱き苦しんでいる「T君」へ向けて書いた、9通のメールという体裁の本です。
著者は、社会と折り合いがつけられない不器用な若者に、そうした自分を圧殺してしまうのではなく、逆にそうした生きづらい自分の人生を考えるために生きる、という道筋を示そうとしています。
おそらく「T君」も、著者の手紙を読んですぐさま悩みから解放されるということにはならないのだろうと思います。そうした自分自身のほとほと嫌気がさすような「どうしようもなさ」に付き合っていくうちに、そうした自分の「どうしようもなさ」を決して投げ捨て -
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「相手の気持ちを考えろよ!」「ひとりで生きているんじゃないからな!」「おまえのためを思って言ってるんだぞ!」「もっと素直になれよ!」「一度頭を下げれば済むことじゃないか!」「謝れよ!」「弁解するな!」「胸に手をあててよく考えてみろ!」「みんなが厭な気分になるじゃないか!」「自分の好きなことがかならず何かあるはずだ!」。
こうしたもっともらしい10個の言葉を吐く人びとの背後に、著者はマジョリティに立つ者のマイノリティに対する粗野で傲慢な精神を嗅ぎつけ、告発します。あらためて指摘されるとまったく著者のいうとおりなのですが、世のなかってそんなものでしょう、と思ってだれもが問題にすることなくやりすご -
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『道徳的センスは常に善いことしようと身構えることでもなく、自己批判に余念がないことでもなく、善とは何か悪とは何かを問い割り切ろうとしないこと』
『道徳的に良い行為はなにか誰もが知っている。でも、それは道徳的に良い行為へと向かう指針を与えられるだけで、行為を実現できる訳では無い。』
『道徳的人間とは、常に善い行為をする人間のことではない。自分の信念を貫くことが他人を不幸にするという構造のただ中で、信念をたやすくも捨てることも出来ず、とはいえ自分の信念ゆえに、他人の不幸のうちに見捨てることも出来ずに、迷い続け、揺らぎ続ける者のことである。』
哲学初心者としては難しい内容でもあった(カント -
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ネタバレ哲学の大きな特徴は、時間や自我、物体、因果律などについて徹底的な懐疑を遂行することであり、この点で、これらに拘泥せずに前提とした上で論じられる思想や文学、芸術、人生論、宗教とは異なっているのである(なお、哲学でないことがこれらの価値を下げることはない)。また、物理学、社会学、心理学などの諸科学では、私固有の意味付けや印象は排除され、客観性が求められるが、哲学は、自分固有の人生に対する実感を忠実に、しかもあたかもそこに普遍性が成り立ちうるかのように言語化する営みである点で異なっている。ゆえに、科学には客観的な答えはあるが、哲学は、人類の歴史が終わるまで終わりはなく、問い続ける運命にあるのである
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Posted by ブクログ
実家にあり、タイトルに惹かれて読み始めた。幸せと一般にみなされることを含め、人生の全ては、どうせ死ぬという真実を直視したとき、絶望的に虚しくなる。ならばなぜ生きるのか。自殺するべきではないのか。
まず、周りの人が自分が自殺すると悲しむから、自殺は悪であるという考え方が示される。しかし、より筆者が強調するのは、哲学者として生きるということである。「なぜ生きるのか」という問いへの答えを出せないままに自殺することは、哲学における至上の命題を考える機会を放棄するということであり、知を愛する哲学者として言語道断である。また、答えが出なくとも、真実の虚しさを偽って世間で生活するよりも、せめて虚しい