中島義道のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
中島義道先生による哲学エッセイ集。長年、カント研究に取り組んできた人だけあって、本書全体を覆うニヒリズムが心地よい。(中島先生の書くところによると、ニヒリズムの始祖はニーチェではなく、カントらしい)
本書を読んで初めて知ったのだが、中島先生と、分析哲学の大家である野矢茂樹先生は同門(共に師匠は大森荘蔵先生)とのこと。このお二方、共通点がまるで見いだせないのだけど、実際、野矢先生は本書の解説で「人生に生きる価値はないとは、いったいどういう意味なのだろう」と記述している(汗)。でも、きっと仲は悪くないのだと思うが。
話が逸れたが、私も、あと何十年か「生きる意味」とか「人生の目的」を探し続けて、見つ -
Posted by ブクログ
この本の肝は後半の「集団生活に溶け込めなかった人たち」のお話です。
講義中に突然どうでもいいことを延々と質問し続ける生徒、受講料を延滞しても取り立ててこなかった方が悪いと本気で信じる人たち、ルール化されれば守るけどルールにないことは何をやってもいいと思ってしまう事例、怒られても何に怒られるのかがさっぱりわからないばかりか「なぜ怒られているのですか?何をすればよいのですか?」と聞く案件。
どれもこれも最近目立ってきた若者の行動ですが、羅列されると自分もどれかやってるのではないかと不安になってきます。
「状況を読むことを学ばずにある程度の年齢になった者は、それを挽回することは非常に難しい」とい -
Posted by ブクログ
ネタバレ<Key Learnings>
・社交性
万人ウケする社交性→ミニマムでよし。が、自分を相容れない人を全部排除するのではなく、上手くそれなりには付き合う様に。
そのかわり、自分のワガママが通る場所を確保せよ
・他人の目、評価が気になる→仕事か、
他人を恐れる人
=他人による自分の評価を恐れる人
=他人によく思われたいという欲求が強い人
これを希薄化して気にならなくする方法は、2種類
1)カントみたいに仕事で評価されれば、どんな変人でも、仕事によって多くの人と結びついていられ、しかもかなりのワガママが通る
が、誰にでも出来る事ではない
2)1人でいいから、本当の理解者、本当に信頼出来る -
Posted by ブクログ
一言でいえば、「愉快」だった。
中島氏の本は、好き嫌いがはっきり別れると思う。
というのも、きっと彼の本が、
他のフィクション小説・なんらかのテーマにそって学術的な知見をまとめ、それをふまえて最終的に自身の知見をくわえる、といった本にくらべて、
圧倒的に、作者自身の「我」が全面に感じられる本だからだ。
彼の主張に賛同する、しない。
共感する、しない。
・・・なんて分かれ道の前段階に、
まず彼の「我」が、生理的に好きか嫌いか。
みたいな、分かれ道がある気がする。
人に、安易にすすめられる本じゃない。
というか、これほどすすめにくい本はない。
私は、好きだ。
正しいと思う、良いと思う、とい -
Posted by ブクログ
ネタバレ久しぶりに、ストンと腑に落ちた本である。特に第Ⅰ部。精神衛生上の秘訣と言ってよい、人間関係上のヒントを紹介してくれている。特に軽症?の人間関係ノイローゼの人には、病院の受診などより効果的ではないだろうか。また、翻って著者には「働くことの喜び、達成感」という事もあるのではないかと、お節介ながら忠告をしたくなってくる。
第Ⅱ部では、著者が主宰する哲学塾での様々なエピソード、トラブル集が披露されている。マネジメント職の方には一読をお薦めしたい。しかし、ここに出てくる人は逆に、臨床医学の世話になった方が良いのではと思われる。この先生も「罵倒」というガス抜きをしつつ、意外と根気よくつきあっているな -
Posted by ブクログ
中島義道の本が出てるっと思ったら、哲学本ではなくて、初の小説とのこと。
中島義道が描くんだから、とてもハッピーにはならないだろうと、思って読んだけども、やはり・・・。
小説『異文化夫婦』は、2009年にだされた『ウィーン家族』を改題したもので、ある夫婦(家族)についての物語。三人称形式で夫の康司に焦点を当てて描かれている。
暴力などのシーンはないのだけども、相容れることの無い2人の関係にとても気分の悪くなる内容だった。
家族や夫婦の愛、それを逆説的に表現されている。
人間の内面を書き起こされているようでもあって、終始辛くなった。
受け入れたくない人間関係なんだけども、ほんとは、こんな -
Posted by ブクログ
『対話』とは言語を用いた、発展する相互理解である。
1.自身の体験談で対話のなさを嘆く
2.会話と対話の違い、日本と欧米の相互理解の過程の違いを示す
3.対話の意義
この三部構成からなる。
最初はがんばっている教授の憤りを荒々しくぶつけているだけで抵抗感を感じるが、読み進めて行くと主張の妥当性、重要性や危機感などが感じられる。おそらく麻痺した日本人に対して、軽くでなく、ガツンと言わないと伝わらないんだという著者なりの考えなのだろう。
優しさや思いやりの使い方、認識が甘いと横暴な一面があるなど、納得できる。責任を負うのを避け、摩擦を嫌い、言葉を失いつつある日本人。昔いた近所の -
Posted by ブクログ
ネタバレここ数年に流行したアニメに描かれている主題は、ガンダムしかり、エヴァンゲリオンしかり、攻殻機動隊しかり、「お互いのコミュニケーション不全が問題の原因だということだ。だから「心が分かり合えることが理想なんだ」という流れにいきつく。
エヴァンゲリオンでは全人類が1つになることで他人を無くし、傷つくことのない世の中を理想とした。しかし主人公はやはり他人が居る世界を望むことになる。それはこの厳しい現実の世界で生きていくということだ。
しかし、この本は言ってしまえば他人のいない世界をあえて望んでいる。他人がいるから気を遣うのだ、期待して傷つくのだ、他人の評価に踊らされるのだ、いい子でいようとして窮屈