中島義道のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
101203
p.10 きみの姉さんに赤ちゃんが生まれた。きみはその泣き叫ぶ顔を見ながら、どうせ死んでしまうのに、なぜ生まれてきたんだろう、と感ずるのだ。
同じことを思う。親戚に赤ちゃんが生まれても「おめでたい」という感情は湧かない。人生というものがまたひとつ、その再生装置とともにこの世に現れてしまったことを残念に思い、赤ちゃんに同情するのみである。
p.15 父親が自分に殺意を抱いていることを知らずに布団に入ってるその子がかわいそうでたまらない。(中略)彼の平静な顔に対して、猛烈な怒りがこみあげてくる。ぼくは酔いに任せて、大声で怒鳴った。「子を産んだだけでも親は罪なのに、そのうえ殺すとは -
- カート
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試し読み
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Posted by ブクログ
厳格な倫理思想として知られるカントの倫理学を、「悪について」という観点から解き明かしている。
カントの問題は、何が適法的な行為であるかを規定することではなく、道徳的に善い行為を、単なる適法的な行為から鋭く区別することだった。著者はこうしたカントの問題意識の中に深く沈潜することで、カントの「形式主義」といわれる道徳法則についての議論が、一見道徳的に見える行為の中にびっしりとはびこっている「自己愛」をえぐり出す鋭い刃として機能していることを読み取っていく。ここでの著者の議論は、上に述べた論理的明晰さと繊細さが類まれな統一を見せており、まさに圧巻である。
カントの倫理学の中には何が適法的行為であ -
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中島義道という人が優れた書き手かどうかはひとまず置いておいて、人を嫌いになったら、あるいは誰かを嫌いな自分に嫌気がさしたら、自ずとこの本に興味が湧いて来るでしょう。氏は嫌われ者らしく(それが最も面白いポイントである)、それ故「嫌う」こと「嫌われる」ことについて、この本の他にも数冊書き上げている程に考えをうんぬんかんぬん巡らせている。「嫌われること」を本にしてしまっている時点で、氏を嫌っている人はますます嫌いになる事必須である。もちろんそんなことに本書は触れる訳ないのだ。目次構成がぱらぱらしているので、僕はいつも風呂に入りながら読んでます。
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[ 内容 ]
哲学は無害なもの、品行方正なもの、そして立派なものとして語られることが多い。
けれども、それはあらゆるものへの根源的な懐疑から出発するという点で病気に近いものであり、凶暴で、危険で、しばしば反社会的でさえある。
では、なぜ人は宗教ではなく、哲学を必要とするのか。
日本語で哲学するとは、具体的にはどういうことなのだろうか。
死の不条理への問いから出発した著者が、哲学の神髄を体験に沿って解き明かす。
[ 目次 ]
第1章 哲学にはセンスが必要である
第2章 哲学には暇が必要である
第3章 哲学には師と仲間が必要である
第4章 哲学には修行が必要である
[ POP ]
[ おす -
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個人的には「これは活字にしてもいいんやろかー」てなことも遠慮なくズバズバ書いちゃう中島義道が好きなのですが、もし僕が中島義道本人に「いやー、エゴイスト入門おもしろかったですー」と言ったら、十中八九、「分かった。分かったからお引き取り下さい」といわれるか、無視されるかのいずれかでしょう。
中島義道は哲学博士ですが、基本的に哲学なんか要らない、むしろ哲学なんか勉強しない方がうまく生きていけるというスタンスの持ち主です。それだけで、面白いです(不謹慎で、失礼ですが)。
タイプは違いますが、中島義道とか勢古浩璽、池田清彦あたりが書く文章が大好きです。シニカルでアイロニーに富んだ語りが、とにかくくす -
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■本の内容・特徴
往復書簡による、違う価値観同士のガチンコ(議論)。
■目的
人は分かり合えるのか? また、娯楽。
■感想
PHP新書の書簡形式の本は2冊目です。
これ、面白いです(笑) 何が面白いって、真剣勝負なところです。「人は分かり合えるのか?どうなのか?」という前提なので、妙に相手にへつらうことなく容赦なく二人はぶつかります。「きっと分かり合える」という予定調和が感じられないこともあり、読者としてはハラハラドキドキしながら、大の大人のケンカを目の当たりにすることができます。
結局、人は分かり合えないかもしれないけれど、面と向かって真摯にぶつかればぶつからないよりはいい、一つの -
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2冊目の中島義道。「まずはこれ。」の『哲学の教科書』に続き,「次にこれ。」のこの本です。(詳細は『哲学の教科書』の感想を参照。)書いてあることのだいたいは『教科書』と同じ。哲学をする心構えと,哲学研究者になり下がらないように注意を促す。ただ,『教科書』のほうでは哲学研究者を非難していたのに対し,哲学研究者も世の中には必要なんだなあということを僕はこの本から読み取りました。『教科書』よりも,哲学者の書いた文章からの引用が多い。けっこう序盤から哲学書を読む作業をしていて,最後にカントを読むのですが,カントは僕にはどうしようもなかった。途中放棄。最初の方にあるキルケゴールの文章なんかは楽しかったんだ