小路幸也のレビュー一覧
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東京バンドワゴンシリーズも10作目ですよ。お馴染みの面々が繰り広げる安定の物語という感じが強くなりましたね。読んでいて居心地がよく、いつまでもこの世界に身を置いていたいという想いに包まれます。
しかし安定が故に物足りなくなるのも事実。特にどんどん登場人物が増えるので、それぞれの人物の年月に応じたできごとを追っていくだけで物語が終わってしまう印象も強いのです。でも研人の受験の顛末は、今までの積み重ねがあったからこその感慨深さはありましたけどね。それは花陽と研人のふたりがお気に入りだからというのもあるのかも。何だかふたりを小さい頃から見てきた、近所のおじさんの心持ちなのですよ。だから花陽がバシッと -
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シリーズ10作目。第1作が出てから十年以上経つシリーズ。
一冊の中で、毎作、四季が廻るので、その中で登場人物が着実に年齢を重ねて成長して行く、大家族。シリーズ一作目では、幼稚園小学生だった子が中高生になったりと、いきなりすっ飛んで十年後ではなく、一作毎に、家族が増え、そしてまた死に行く者もいる。
このシリーズは毎回ほっこりさせられる。
禍福は糾える縄の如しなんて言うけども、そういった人生というか、日常の、人が生きていく上で誰しもが経験する浮き沈みなんかの事柄が物語なんだけども、自然とすんなり入ってくる描写。
穿った見方をすると青臭いのかもしれなけども、とても前向きで温かな作品。
今回も良 -
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いつもながら小路さんの描く物語は優しくあたたかい。
「家族」をテーマに、不器用な生き方しかできない善良な人たちが共に過ごすひとときが、軽いタッチで丁寧に描かれている。
「僕」は中学生のときから心にある決心をし、それを守って生きてきた。
何かというと困っている人に救いの手を差し延べてしまうのも、他者を冷たくあしらうことができないのも、すべては中学生のときのある経験に基づいている。
ある意味「僕」の生き方を決定したもとを、多くの人が苦難を強いられたあの災害に設定したことが良かったのかはわからない。
当事者でなければわからない哀しみや辛さが、いまも深く胸に刻まれている人も多いと思うからだ。
もしかし -
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こんなに哀しくて切なくて、それでいてあたたかな物語を小路幸也は書けるのだろう。
10年前の約束を果すため。
ただそれだけのために、委員長はニューヨークから帰ってきた。
けれど相手は約束の場所には現れず、それどころか代わりにやって来た夫と名乗る男は「ヤオ」は失踪中だという。
途方にくれた委員長は、協力してくれそうな友人をひとり思い出す。
久しぶりに会った巡矢は、以前とまったく変わらない態度で接してくれた。
ヤオを探す手伝いもしてくれるという。
巡矢から見せられた幽霊映像に写るヤオ。
人工的に作られたその映像は、何のために誰が作ったものなのか。
ヤオは何故幽霊になっているのか。
ふたりの前にさら -
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このシリーズはいつも読み終わると心があたたかくなる。
我南人の「LOVEだねぇ」が、登場人物の中にも物語の中にもあふれている。
ギスギスしたりイライラしたり、日常の生活は平穏なときばかりではない。
そんなとき、この物語はあたたかな心を思い出させてくれる。
「東京バンドワゴン」の蔵に眠る資料的価値の高い書籍たち。
ずっと長い間堀田家が守り通してきたものを、勘一もまた守ろうとする。
けれど、孤軍奮闘してきた市井の古書店には大きな勢力に対抗する力はない。
救ってくれるのは、やっぱり堀田家のあたたかさに安らぎを感じている人たちなのだ。
堀田家のあたたかさは、いつも周りの人たちを癒している。
都会にひ -
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冷静に考えると青の立場ってすごく微妙なんだけど、自然に家族としてわだかまりなく生活できているのって、きっと亡くなった秋実さんの影響が大きいんだろうなと思う。
確かに池沢さんは青の母親だけれど、生まれたての頃からずっと同じ時を過ごして、思い出もたくさんある人にはかなわない。
青だけじゃなく、堀田家に関わる人たちはみんな優しい。
大切な人を守ろうとして、大切な人が苦しむのを黙って見過ごしになんか出来ない。
我南人じゃないけれど「LOVEだねぇ」と思う。
淑子さんが遺してくれた別荘も、けっして裕福とはいえない堀田家にとっては、これからの教育費とか考えたらとても大きな財産になったと思う。
でも、勘一は -
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短編集。
「東京バンドワゴン」シリーズの第6弾。
シリーズが始まった頃は独身だった青も、今では結婚して一児の父親になっている。
勘一は相変わらず元気だけれど、アメリカから戻った妹・淑子さんは体調が思わしくない。
医者になるという目標を持った花陽は受験生として勉強に明け暮れ、研人ももうすぐ中学生となる。
新しく家族に加わった人たちもすっかり堀田家の一員として馴染み、今日も小さな謎が周囲の人たちを巻き込んでいく。
誰かを大切に思う気持ち。
それがどんなにあたたかくて大切なものか、このシリーズを読んでいるとあらためて考えさせられる。
我南人の「LOVEだねぇ」はまるで万能の言葉のように、大きな愛で家