大森望のレビュー一覧
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本屋では毎回ハヤカワSF文庫の棚を凝視している自分ですが、ちょっと厚めの本作「息吹」は毎回視界に入って印象に残って、しかし購入はしないというパターンが続いてました。
決して軽くはないボリュームですが、2日で一気に読んでしまいました。
SF小説の最高峰とネットのあちこちで書かれていますが、読んで納得。SF小説に求めるものが全部入っていると思います。
私がとりわけ感銘を受けたのは作品のラストを飾る中篇「不安は自由のめまい」です。
人生の選択によって分岐した別並行世界と通信できる装置が、この中篇の中心的なギミックです。誰しも思い描いたことのある「あの時こうしていれば自分の人生はこうなったんじゃな -
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ネタバレ時間をかけて読み終わりました。
SF作品の中でも、特に人間の感情に訴えかけるものが思いの外多く、現代にも地続きに通じるような考え方に心を打たれました。
タイムトラベルから始まり、遠い宇宙の違う種族、自由意志など存在しなくなった世界、AI等等、短編ごとにSFのテーマが全く変わっていて全体を通して読み応えのある作品でした。
特に「予期される未来」は5ページほどで終わってしまう非常に短い短編なのですが、負の時間遅延が実装された事によって自由意志が存在しないという証明になる事実に繋がること、それを知った上で我々がこの先どう生きれば良いのか、これをたった5ページで表現しており、良い読後感を受け取りま -
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ネタバレ二巻である黒暗森林の終わり方が完璧で、続きをどうなるのだろうと読み始めた。
人類の救世主とも言える面壁者のその後が何ともやるせない。世間の評価はどんどん変わり、英雄だ、悪魔だと言われたい放題。ルオ・ジーの達観した様子を見るに極度のストレスにさらされて、ある意味ボケしまったのではないかと思わされる。
人類は重大なミスを犯して、再度滅亡の危機にさらされる。チェン・シンの心情描写には胸が苦しくなる。自分がその立場に立ったとしても、きっと何もできないだろうと思う。
それでもあっと驚く展開で、またも形勢逆転。圧倒的なスケール感と正直理解の及ばない描写が続く。
人類に最後の希望を残して、下巻に続く。 -
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ネタバレII部の時点でそうだったけど、SF以外の要素も考えられてるのがすごい
暗黒森林理論の是非についてもちゃんと議論してたり、様々な状況によって政治や宗教の変遷もちゃんと描写してる。
自分は宗教に対して無関心(強い言葉を使うと、馬鹿馬鹿しい)と思ってたけど、
「地球が助かったのは奇跡=神がいるとしか考えられない→ 信仰しよう!祈りが足りない!」みたいになるのは少し理解できたし、単に自分の教養が足りない(歴史的背景があるからこその宗教)んだな、と気付かされた。
もちろんSF要素も、四次元や他の全宇宙文明を出してくることで、三体文明をちっぽけに見せてしまう圧倒的スケール。理解できてない部分が大半だけど -
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Netflixドラマにもなった「三体」の劉慈欣先生の短篇集。
「時間移民」「思索者」「夢の海」「歓喜の歌」「ミクロの果て」「宇宙収縮」「朝に道を聞かば」「共存できない二つの祝日」「全帯域電波妨害」「天使時代」「運命」「鏡」「フィールズ・オブ・ゴールド」の13作品を収録。
SF×哲学の「時間移民」「共存できない二つの祝日」「朝に道を聞かば」
SF×戦争の「全帯域電波妨害」「天使時代」
SF×科学の「宇宙収縮」「思索者」「ミクロの果て」
三体を感じる「夢の海」「歓喜の歌」
・・・などなどSFといってもいろんなタイプの作品があり、1つ1つの作品で違った世界観に一気に引き込んでくれるものばかりで、ど -
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ネタバレ読みごたえのある作品集だった。こんな一冊にはなかなか出会えないんじゃないかと思うくらいひとつひとつの作品が濃密で、いくらでも深く掘り下げることができる。テーマと読者への問いかけがしっかりしていて、完成度が高い。どれも短編・中編とは思えないくらい、作品の世界に没頭させてくれる。
作品を通してここまで何度も考えさせられる体験は他ではあまり味わえないものだった。前作よりも断然こちらが好みだ。
どれも凄い、けれど特に印象的だったのは「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」だろうか。AIの育成がテーマだが、失敗を重ねて悩み、意見が分かれながらも、現状をよりよくしようとする人間たちのリアルな歩みを見 -
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「三体」、「円」(短編集)ともにとても面白かったので、新年最初に手に取った本
面白かった!
この本でも、ミクロ視点とマクロ視点の切り替えが毎回実に鮮やか
ホラーが苦手なので、タイトルからしておどろおどろしい「呪い5.0」は読み始めるのに心構えが必要だったんだけど、ホラーどころかコメディ…?で面白かった!…と書きたいけど書けないような…
突然の九州シリーズ創始者のひとりがモデルになってる登場人物とか、やっぱり面白いといえば面白いかな
(九州シリーズは、ドラマ「九州縹緲録」と「斛珠夫人」視聴済)
1番好きなのはこれ!って即答できないくらいどれも面白かったけど、あえて選ぶなら中国太陽…いやミクロ紀元 -
Posted by ブクログ
ネタバレ我らが大劉こと劉慈欣、バカSF炸裂。
いやもう、読みながら「バリントン・J・ベイリーみたいだな・・・」と、我ながらちょっと極端だなぁと思える感想を抱きながら読んだんですけど、あとがきで大森望氏が正にその通りのことを書いていて、決して極端な感想ではなかったのだな、と安堵しましたヽ( ´ー`)ノ
とにかく針の振り切れまくった作品ばかりで、その振り切れ具合に大笑いさせられつつも、根底に重厚なハードSFの骨格があり、そのどこかに豊かな詩情とペーソスを感じるのが、さすがの大劉節です。
・・・とまとめたいのに、それを妨げる「呪い5.0」の破壊力といったら(笑)作中に「SF作家の劉慈欣」が登場してSF超大