大森望のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『マイノリティ・リポート』
映画を観たあとだと、驚くほど別物の物語。
犯罪予防局長官のアンダートンが主人公。
3人の予知能力者が未来に起きる犯罪を観ると、自動的に犯人の名前がカードに書かれて提出される。
犯罪予防局は、これから起きる犯罪を捜査し犯人を逮捕する。
犯罪者はまだ何もやっていない。
だから被害者も何も奪われない。
理想のようなシステムに、社会から重大犯罪は消失した。
ある日、カードを受け取った主人公は愕然とする。
カードに書かれたのは「ジョン・A・アンダートン」、本人。
短編の分量で、未来予知の矛盾を突くシンプルな物語。
まさしく未来は一つではない。
選択とは、未来を選ぶことに他ならない。
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Posted by ブクログ
書店で必ずあるのがNHKテキストのコーナー。そこに「筒井康隆」と大きく書かれた薄い本が山積みで置かれていた。なぜ筒井康隆の本がNHKテキストなのか?と混乱しながら本を手に取ってみたら、別冊NHK100分de名著のシリーズ関連図書とのこと。他にも、有名人の本がいくつも置かれていた。この本は、今年のお正月にNHKで放送された内容を基に纏められたもの。筒井康隆大好き人間4人とカズレーザーが出演していたとのこと。4人それぞれが自分のスタイルで筒井康隆作品を解説する。そう言えば、昨年もNHK-BSで筒井康隆の特集番組が組まれていた。一時期、「残像に口紅を」がSNSで話題になり、どの書店でも文庫本がこれも山積みされ、飛ぶように売れたとのこと。一体、どの様な経緯があってSNSでバズるのか理由を知りたい。
中条省平(フランス文学者)は流石に学者らしく、お題目の「脱走と追跡のサンバ」に関連する様々な外部作品や世界情勢を基に持論を展開し、見事に本作品を説明しきっていた。そこまで広げるか?という点は否めないが、この作品に対する深い愛を否が応でも感じてしまう。
池澤春菜(声優・作家・エッセイスト)の担当は「七瀬三部作(家族八景・七瀬ふたたび・エディプスの恋人)」。NHKでドラマ化(NHK少年ドラマシリーズ)されており、主演の七瀬には当時好きだった多岐川裕美が演じていた。この半年前に「東芝日曜劇場」で「芝生は緑」という題名で家族八景を放送していたとは全く知らなかった。こちらも主演が多岐川裕美だったらしく、見逃してちょっと悔しかった。池澤春菜は中条の様に外部の作品をあまり引用することなく、三作品の文章自体を引用して自分の七瀬愛を深掘りしていた。
菊池成孔(音楽家・文筆家)は18作品の短編集「エロチック街道」の個々の作品について解説をしている。まず、本作品が中南米文学から大きく影響を受けていることは知らなかった。私は単に面白い作品だなと楽しんで読んでいた訳だが、その様な深い背景があったとはね。そしてこの時期、筒井は中央公論社の編集者である塙嘉彦氏にかなり影響を受けていたようだ。実は編集者という仕事がそれほど重要とは思ってはいなかったが、編集という仕事は松岡正剛の様に哲学者の如く文学作品に影響を与えることを知った。実際に、筒井康隆をSFから純文学に舵を切らせたのは塙嘉彦氏とのこと。この本は短編集なのだが18作品の個性がかなりバラバラなので、本全体として評価するのではなく、気に入った作品を集中的に、これも深掘りしていた。
そして最後は、SFだったら何でも首を突っ込んで来る大森望(書評家・翻訳家・アンソロジスト)による「虚構船団」の解説。この解説を読んでいると、本当にこれは純文学なのだろうかと首をひねってしまう。大森望が言う通り、この作品が新潮社から叢書風に箱入りで出すような作品なのか?安部公房「砂の女」や大江健三郎の「同時代ゲーム」と同列の純文学なのか?でも実際にこれら3冊を並べてみると、意外としっくりくる。実に不思議で謎だ。正直に言うと、購入当時は擬人化した文房具の説明に辟易して積読コーナーへ。でも大森望の解説を読んだら俄然読む気が出て来た。でもページ数が多いから、また途中で中止するかもとグダグダ悩み中。
今回の参考に使われた筒井作品をリスト化してみたら、意外と抜け落ちているものがあった。DVDは「日本以外全部沈没」、「ウィークエンド・シャッフル」、それと芦名星の映画版「七瀬ふたたび」の3つを持っていた。買った時点で安心して、なんとどれも見ていなかった、ショック! -
Posted by ブクログ
中華SFの傑作である三体の前日章のSF小説。
三体と同一世界線の話であり、三体に登場した人物も1人登場するが、基本的には三体の話とは関係がない、雷の球のような現象についての小説。
(あとがきに記載されていたことだが、中国版の三体ではこの雷球のことが元々書かれていたそうで、翻訳の際に書き換えられたそう。なので、前日章というのは間違いではないらしい)
現実には存在しない科学技術も登場するが、科学的な理由付けも素人にはかなりそれっぽく思えるほど話が練られているので、非現実感はそれほど無く没入感を得られる。
もちろん、そんなもんあるかいというような物も出てくるのてSF感は感じられる。
科学や技術を突き詰めていくと突き当たる、兵器への転用ということについて、科学者から見た景色がリアルに書かれており、その知への欲求と殺人への加担の葛藤が興味深い。
三体が好きな人はもれなく好きな小説だと思うので、是非とも読んで見てほしい
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Posted by ブクログ
ネタバレSF × 哲学の魅力
単なるSFではなく、哲学的な問いや人間の根源的な悩みと自然につながっている点が素晴らしかった。高度な設定を土台にしながらも、難解さより「人間の感情」に重心があり、読んでいて心に残る。自分はSFに身構えていたけれど、むしろ哲学小説として楽しめた。
短編集ならではの多様さ
長編のように構えて読む必要がなく、それぞれの物語に個性があってリズムよく読めた。とくに冒頭とラストは印象が強く、最短の「予期される未来」にも思想の鋭さがあり、「短さ=軽さ」ではないことを痛感した。一方で「デイシー式の進化論」は難解すぎて、自分にはまだ理解が追いつかなかった。再読したら違う景色が見えるのかもしれない。
お気に入りの一編(冒頭の章)
時間を遡行できる、という一見ありがちなSF設定。しかしそれを用いて「過去を変えられるのか?」を突き詰めていくと、むしろ「変えられない」という結論に行き着く。この逆説に惹きつけられた。自分自身に当てはめても、もし時間を遡行できたとしたら何をするだろうか? もしかすると今の自分の行動も、すでに過去から干渉してきた“もう一人の自分”によって決まっているのかもしれない——そんな想像が止まらなくなった。
自由意志の問い
読み進める中で最も強く感じたのは「自由意志は存在するのか」という問題だった。過去に戻っても選択は変わらない、その時の自分はその時の最善を尽くしている——この考え方は妙に納得できた。実際の人生でも、選んでいない選択肢はそもそも存在しないのかもしれない。だとすれば飲み会での失言も「不可避の摂動」なのだろう。そう考えると少し救われる。