大森望のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
我らが大劉、再びのバカSF炸裂。(←褒め言葉)
「流浪地球」と同時刊行された、劉慈欣のバカSF短編集です。(←褒め言葉)
劉慈欣のSFの特徴は、長編でも短編でも、笑える話でもしんみりする話でも、どこかに必ず「バカ」の要素が潜んでいることだと、鴨は思います。
この場合の「バカ」とは、頭が悪いという意味ではなくて、えっ、そんな発想、常人にはとても出せないけど!?という畏敬の念を込めた「バカ」です。代表作「三体」なんて、これ以上なくスケールの大きなバカSFだし。
本作「老神介護」も、人類を作った神様が宇宙船に乗って介護を要求しにきたり、中国から南極まで通じる巨大な穴をマントルもコアもぶち抜いて作ったり、その中を人間が行ったり来たりとか、もぅその発想だけ見たらバカそのものなんですけど、バカをキープしつつ見事なハードSFを成立させ、ついでに普遍的な詩情さえ感じさせてしまうという、とんでもない力技を披露しています。ちなみに、「流浪地球」に収録されている「呪い5.0」みたいな、本当の意味でバカなSFは本作にはありません(笑)
スケールの大きなバカSFを堪能するには最適の短編集です。が、鴨が一番感動したのは、巻末に収められているエッセイ「我々はSFファンである」。中国SFの現在位置と、それに関わる劉慈欣の覚悟がビシバシと伝わってくる名文です。SF者たるもの、すべからく読むべし。 -
Posted by ブクログ
三体が面白すぎたので、劉慈欣短編集も読んでみた。全13遍漏れなく面白かったけど、印象深かったの作品は以下の通り。三体のモチーフにもなってる作品もあるから、好きな人は是非読んでほしい一冊。
郷村教師…あとがきでも触れてたけど、広大な宇宙と小さな個体の描き方がえぐい。2つが交わった瞬間は痺れた。
カオスの蝶…バラフライ効果の意味は知ってたけど、それが物語になるとこんなに面白いのかと。
詩雲…これがダントツ好き。テクノロジーが芸術を超越することはないというのがよく分かって痛烈。
栄光と夢…2国間オリンピック。ありそうで怖い笑
月の光…何度も歴史が動いたようで結局何も起きてないのが面白い。1エンジニアとして、化石燃料依存を救うアイデアが面白かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ中国の方である劉慈欣が描くSF短編集。『三体』も文庫化されたらすぐ書いたいと思う。「鯨歌」「詩雲」「円」が特に面白かった。
「鯨歌」鯨にチップを埋め込むことにより外部からの制御ができるようになった世界。その技術を利用して薬物の密輸をするマフィアとその技術者。密輸自体は成功したものの密猟者たちによって鯨が狩られて2人とも死んでしまうというもの。新旧の価値観の皮肉が描かれていた。
「地火」石炭労働をメインとした話。技術革新により炭鉱夫の仕事が楽になるはずであったが、技術を過信しすぎたために自然にやられてしまう。父親と局長の言葉が刺さった。
「郷村教師」中国の農村地で一生を終えようとしている老教師。周りから変な目で見られても彼は農村地の少年少女たちに学問を教えることをやめなかった。一方で、天の川銀河の中心地では超高度に栄えた文明があった。彼らは宇宙間戦争で疲弊しており、新たな火種が生まれないように宇宙を整理しているところであった。
老教師の最後の教えが、地球を救うことになるというのが、教育の大切さを説いており、また、超高度文明の人たちが純粋さ、素朴さに気付いたのも作者が伝えたかったことなのかな。
「繊維」量子力学に基づく平行世界がたくさんあり、その世界が一堂に介してしまう話。いろんな地球の色があったり、同じだが違う人がいたりと面白かった。
「メッセンジャー」アインシュタインの過去を元にした話。彼が未来の人と交信した、という話を元にしているのだろう。
「カオスの蝶」バタフライ効果を解明し、一種の気象兵器として用いる話
「詩雲」高度に発展したテクノロジー文明に飲み込まれた地球文明。その高度に発展したテクノロジーよりも発展したテクノロジーを持つ神との邂逅。精神的な文化はテクノロジーによって越えることはできない、と伝えてている。将棋などのAIの進化も一手の評価は教えてくれるが、全体としての評価や価値は教えてくれない、というのと似ている。
「栄光と夢」オリンピックが戦争の代わりになった世界。競技での勝利が戦争の行方を左右するというもの。1人のアスリートにより国が一つにまとまるも、競技での勝利が戦争での勝利という勝者の理論には響かず、泥沼化していってしまう。
「円円のシャボン玉」シャボン玉が好きで美しいと感じる円円が科学者となってシャボン玉によって街を救う話。他に比べて暖かい話だった。
「2018年4月1日」改延という遺伝子的な延命ができるようになった時代にその手術を受けるという決断をした主人公の話。IT共和国なるものが建国され、実社会に宣戦布告をした。が、これはエイプリルフールのネタであった。この話のどこまでが虚実なのかがわからないのが、この話の面白さなのだろう。
「月の光」未来の自分から科学のアドバイスをもらうもそれを実行に移そうとすると、さらなる悲劇的な未来になってしまう話。最初に呈示されたせんたくしがやはりベストだったのかもしれない。それを知るためには、他の時間線を旅するしかない。どんな決断にも後悔があるというこれが真理であろう。
「人生」前世の母親の記憶を持った胎児と母親と研究者が会話をする話。『ドグラ・マグラ』の胎児の歌のような話に感じた。
「円」円周率には不老不死が宿っているとされるため、秦の始皇帝により、円周率を求めよ命令される。人間を使って0と1の二進法によって円周率を求めようとする。それは、コンピュータの先駆けであったが、人間コンピュータにも裏があったという話。 -
Posted by ブクログ
劉慈欣『三体0 球状閃電』ハヤカワ文庫。
『三体』シリーズの前日譚。『三体』の3部作同様に面白い。
突然発生し、あらゆる物質を透過し、突如として爆発的なエネルギーを放出する球電。何故、球状の中に電磁波が閉じ込められているのか。そんな謎に満ちた球電の正体を追う科学者たち。
ストーリーの中で語られる哲学や科学アプローチの方法は十分に現代の仕事に活用出来る考え方であり、決して創作と軽んじてはいけないと思った。
今の自分の存在が事実であるのか否か。そんな疑問が渦巻くような結末。
本作の中で興味深かったのは球電を発生させるためのパラメータと計算式のシミュレーションを行う過程であった。確かに大昔のコンピュータは演算能力が限られていたし、コンピュータを制御する言語にも苦労させられた。そんな中、クラウド・コンピューティングの思想を盛り込んで来たところは面白い。
自分も高校時代に自作したマイコンは機械語しか扱えなかったが、大学に入るとたちまちBASIC言語が登場して来た。社会人になると仕事でオフコンとメインフレームコンピュータを扱っていたが、それがパソコンからサーバーへとダウンサイジングされ、言語もCOBOL、FORTRANからC言語、VC++、PL-SQLなどに変わっていく過程を目の当たりにした。
14歳の誕生日に突然発生した謎の球電により両親を失ったことから、その後の人生を激変された陳は球電の研究に没頭する。
大学、大学院と進み、球電の研究を続ける陳は思わぬプロジェクトに巻き込まれる。陳が巻き込まれたのは、林雲が進める軍による球電を兵器に利用しようとするプロジェクトだった。一度だけ目撃した球電を再現しようと、パラメータと計算式を模索する陳だったが、なかなか結果を出せずに居た。
そんな中、陳と林雲はロシアの科学者から招待を受け、ロシアでの球電研究の結果に衝撃を受ける。
本体価格1,300円
★★★★★