大森望のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
・時間移民
・思索者
・夢の海
・歓喜の歌
・ミクロの果て
・宇宙収縮
・朝(あした)に道を聞かなば
・共存できない二つの祝日
・全帯域電波妨害
・天使時代
・運命
・鏡
・フィールズ・オブ・ゴールド
劉慈欣の小説を読むと、中国の文芸らしい「壮大なほら話」さが満載で、楽しい。
「一日千秋」とか「白髪三千丈」とか、とにかく表現のスケールがでかいやつね。
素粒子から無限の宇宙まで、私達の世界はこんなにも可能性を秘めていた。
作者は丁儀が好きなのね。
と言っても名前が同じだけで、同じ世界に住んでいる人ではないけれど。
反転する宇宙を体験する丁儀や素粒子になってしまった丁儀。
ぽんぽんと立て続けに丁儀が出る短い作品が三作。
ここ、楽しかったゾーン。
『時間移民』を読んで、フレドリック・ブラウンの『血』を思い起こしてしまった。
もし最後のオチが「私達は、あなた達の言葉で言うところの、カブから進化した植物人です」なんて言うセリフだったらどうしようって…。
もしそんな落ちならパクリ以外の何物でもないが、当然『時間移民』のオチは、もっと哲学的なものだった。
『朝に道を聞かば』は、科学者とは…と突き詰めたときの、一つの答えなのだろう。
でも私は、QuizKnockの須貝さんの「すべての真理を知っても誰にも伝えられないのなら、知らなくていい。自分の研究が次の世代に繋がって真理に続いていくのなら、自分がその結果を知らなくてもいい。科学ってそうやって進歩してきたのだから」という言葉に感銘を受けたので、丁儀には一歩立ち止まって考えてみてほしかった。
そしてスティーヴン・ホーキングだけが排除されたことの意味。
そういえば『歓喜の歌』にはリチャード・クレイダーマンが出てきたので、脳内で『渚のアデリーヌ』が止まらん。
『全帯域電波妨害』は、ミノフスキー粒子のせいでレーダーがし使えなくなったガンダムの世界のように、電波を使えない世界での戦争を描く。
結局は白兵戦なのね。
『フィールド・オブ・ゴールド』はケン・リュウが好きそうな話だなあと思って読んだのだけど、アメリカでは彼が翻訳したものがアンソロジーで紹介されたらしい。
直接この本を読んでの感想ではないけれど、ケン・リュウの『紙の動物園』や劉慈欣の『フィールド・オブ・ゴールド』を読んだとき、自分の命が尽きた後にも何かを繋いで残していこうという気持ちの強さが、したたかな中国という国と重なった気がした。
最近のアメリカや日本のように目先の得ばかりを考えるのは、実は脆弱な思考なのではないかと思っている今日この頃。
自分ではない人たちに、何を残せるのか。 -
Posted by ブクログ
この作品普通じゃあない、レベチすぎる。
話が面白い、構成や説明が上手いとかのレベルじゃあない。話の根本的な理論の構築とそれを物語に組込むのが上手すぎる。
“黒暗森林"猜疑連鎖”技術爆発”
一件、単語だけだと意味が分からない。
でもその概要についての説明された後に言葉を見ると、この意味を表す言葉はこれしかない!ってなるの。また、その説明を物語と上手に絡めてるから理解しやすい。
生存本能という生物学的な本質を捉えてるから筋が通ってるし、物語の垣根を超えた宇宙人実在問題の理論だと思う。物語でここまで納得できる理論を作り出せる事ってあるんだ笑。
もう作者は、宇宙社会学という一種の学問の提唱者です。
IIIは地球が”黒暗森林”に陥るのではないかと予想します。今は友好的でも、いつどんなきっかけで猜疑心が生まれるかわかりませんから。こんな綺麗な形で終わったのに、続きを書こうと思った理由が気になるし、IIIは書くべきして書かれたみたいな感想もあるので期待大!楽しみ! -
Posted by ブクログ
『超新星紀元』(2003年)は『三体』(2008年出版/日本語訳2019年)で有名な劉慈欣(リウ・ツーシン)の長篇デビュー作。『三体』のファンといえばバラク・オバマ元大統領が有名です。3部の発売が待ちきれず、ホワイトハウスからメールを著者に送ってみたらスパムメールだと思われてゴミ箱に入れられていた、という話が大好きなのですが、他にも読書好きの池上彰が「文化大革命で何が起こったかは『三体』を読むと良い」と『三体』を著作の中で取り上げていたりなど……『三体』についてネットで検索すれば有名人、一般人が書いた感想や、エピソードを沢山拾うことができて楽しいです。長く多くの人の印象に残っている本だなぁと思います。
劉慈欣は短編も多く書いています。私が読んだことがある短編は『地火』(2000年)、『神様の介護係』(2005年)、『月の光』(2009年)、『円』(2014年)……おっと……4つだけだな……全然読んでないな……
まぁ、全然数を読んではいないんですけどぉ!!!(やけっぱち)
劉慈欣を一番最初に読む一冊としてはやっぱり『三体』を推したいです。『三体』は三部作で大長編ですが、読み終わったらこんな壮大な話を三冊でバシッとキメてしまうなんて!と手腕に驚くこと請け合いなので。『三体』の次に短編をいくつか読んで、それから『超新星紀元』を読むのが良い塩梅ではないかな、と思います。特に短編『地火』は『超新星紀元』に通ずる「継承」や「歴史」といった人生観が作品全体に滲んでいてかなりおすすめです。『三体』を読んだ後にね!(しつこい。)
『地火』を読むなら橋本輝幸・編 ハヤワカ文庫SF 『2000年代海外SF傑作選』が良いです。劉慈欣以外のSF作家の作品も全部面白くて雰囲気良くまとまっているアンソロジーで……
『超新星紀元』の感想文で『三体』と『2000年代海外SF傑作選』をおすすめして終わっていいはずない。まずは『超新星紀元』のあらすじから。
1999年末、超新星爆発によって発生した宇宙線が地球に降り注ぎ、全人類の染色体が破壊される。調査の結果、13歳以下の子どもは自己修復が可能だが、14歳以上の人間は全員死亡することが判明する。全ての大人がこの世から消えてしまうまで残された期間は1年。限られた時間で大人たちは子供に医療や発電等のインフラ、教育や軍事など国の運営に必要な技術を託そうとするが──というお話。
優秀な子供を選別するためにゲームを行うシーンは展開が軽快で面白く、大人たちが今わの際まで自分たちの知識と技術を子供たちに指導し、何とか彼らを新世界に押し出してやろうとするシーンはかなり切なかったです。読んでるときには「あぁ、これは子供たちが十五少年漂流記みたいに試行錯誤して問題を乗り越えていく話になるんだろうな」と思っていました。そしたら痛い目に合いました。これはサバイバルのみならず、「国の運営」も子供が行うお話なんですよね。私が好きな登場人物はアメリカ合衆国の子ども大統領のハーマン・デイヴィーと同国務長官のチェスター・ヴォーンなんですが、彼らを中心にして、あれよ、あれよと世界大戦が勃発する話へと転がっていきます。どうしてだ子供たち!日本国子ども首相の大西文雄も良いキャラしてましたね。(やっぱり戦争する気まんまんでしたけど。)
子どもたちの大半は自我の境界がまだまだ未熟なため、群れであることに疑問を抱きません。一丸となった中国、一丸となったアメリカ、一丸となった日本……「国」そのものみたいになった子どもの争いの凄惨なことといったら。大人に強制されているわけでもないので無邪気に戦争ゲームに興じていく様はあっけらかんとしていて、より不気味でした。劉慈欣は爆発や破壊のシーンを書くのが非常に巧みですので戦争なんて書いたら臨場感たっぷりです。
戦争のシーンは中盤の山場です。戦争が終結してからもう一つ、意外な山場が設けられています。その先で子どもたちは自分たちがいかに無自覚に「国民」であったかに気がつきます。そうして物語は終焉を迎えます。新たな「始まり」も感じさせるエンディングでした。
「子どもだけの世界」は古典作品でも書かれてきたけれど、こんな話になるとは思わなかったです。ぶっ飛んだ設定から、読者をぐいぐい引っ張っていく劉慈欣ならではの外連味。二転三転しているように思わせて最初から最後までテーマがブレない構成の強さもすごい。
こんなところに運ばれてしまう予定は無かったけれどレールからは一切外れなかった、みたいな読後感があるのが劉慈欣の作品の特徴だと思います。『三体』も今まで読んできた短編もそうでした。特にこの『超新星紀元』は突飛な発想の数々が強烈です。私は好きでしたがぶっとんだ奇想具合は人を選びそう。 -
Posted by ブクログ
何と言っても着想が良い。白亜紀にでっかい恐竜とちっちゃい蟻それぞれに知性があって共生関係を築いていたら。それだけで様々な想像が膨らむ。共生関係なのでお互いに利がないといけない。恐竜と蟻、それぞれ何が欠けていて、補う為に何を与え合うのか。こんなことは考えたこともないだけにワクワクする。まさか蟻が恐竜の医者になるなんて思いもしない。しかも体内に侵入しちゃうのだからぞっとしてしまう。恐竜は恐竜で文明発達の末にボタンひとつがモニターサイズのキーボードを叩くようになり、一戸建てサイズの車を乗り回すようになるのだから愉快だ。傍から見ているとかけがえのないはずの竜蟻同盟なのに、戦争になってしまうのはどう考えても悲しい。だけどその戦争の様子もそれぞれの戦い方がよく考えられていて感心してしまう。果たして戦争の末に彼らがどうなってしまうのか、最後まで興味が尽きない展開だった。
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”PKD”ことフィリップ・K・ディックの短編、面白いっ!
どうして世のSFファンはこれを先に勧めてくれなかったんですか!笑
現時点での「2026年ベスト本」候補作です(人*´∀`)
以前「電気羊」を読みましたが、あちらは正直半ば意地になって読み通したところがあったのに比べ、本書は面白くて一気読み。
出会いのきっかけは書店でたまたま見かけたことで、「トータル・リコールとマイノリティ・リポートってディック原作だったんだ〜」くらいの気持ちで手に取りました(なお映画は未鑑賞。「ペイチェック」は観ました)。
全体の雰囲気としては、星新一をもっと重たくした感じでしょうか。
監視社会、死の灰が降る核戦争後の世界……など、共通する要素はあるものの、それぞれ設定も読後感も異なっていて、ワクワクしながら読み進めました。
「地球防衛軍」には実際の世の中もこうなってほしいとしみじみ思いましたし、SFファンには低評価で編者からさえも「だれがどう見ても成功作とはいいがたい」と言われてしまった「ミスター・スペースシップ」も私は好き!
個人的に、罪のない老人がむざむざ命を散らすシーンがほんとうに苦手なので、どうかそうなりませんように……とハラハラしましたが(^^;
「バカSF」呼ばわりされる結末ですが、遠い遠い惑星で、第一世代を見守り続けてやがて役目を終える、鋼鉄の体に宿った老教授を想像して勝手にグッときてしまいました。そういう設定に弱いのよ。。
ラストが切ない「訪問者」も良かったな〜。
そんな中、白眉の出来と感じたのが「世界をわが手に」。
途中で「もしかして……」と予想がつくものの、自分の認知している世界を揺さぶられる感覚(ディック感覚)にはゾワゾワきてしまいました。
わりとどのお話も、おかしいのは語り手なのか世界なのか判断がつかないものが多く、最後の1ページ、最後の1行まで気が抜けない緊迫感がなんともクセになりました。
彼の短編集はハヤカワからオシャレな装丁でたくさん出ているようなので、ぜひまた読んでみたいです!