大森望のレビュー一覧

  • 息吹

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    ネタバレ

    寡作で知られるテッド=チャンの2冊目の著作.
    テッド=チャンには「未来がわかっている時に,人はどのような選択をするのか?」というテーマが多いようだ.個人的に本書のベストである「不安は自由のめまい」も,少し設定は違うが近いパターンである.これは「ある場面で別の選択肢を選んだことによって分岐したパラレルワールドとコンタクトができる」世界を描くが,登場人物たちは別の世界の自分を見て,自分自身の選択の結果に,ある場合は安堵し,ある場合は嫉妬し失望する.あまり詳しくは書かないが,ある登場人物は,過去の自分の行動について責任を感じて罪悪感を抱き続けていたが,実は....という救いのある話である.

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    2024年02月23日
  • 息吹

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    書店で目立つ場所に置いてあり深く考えずに購入しました。恥ずかしながらテッド・チャンのことをよく知らず本書で初めて読みましたが、とても満足しています。

    本書は9つの短編が盛り込まれていますが、それぞれがとてもユニークで粘着性があり、ストーリーやそこから浮かび上がる情景を当分忘れないだろうなと感じました。クライマックス感やラストの驚きなどはないかもしれませんが、まるでカズオ・イシグロ作品のような静かな深い感動を与えてくれる作品とも思いました。さらに言えば、SF作品というよりは未来社会の課題や機会を純文学作家がSF調で書きました、というような印象すら持ちました。時間や空間、自由意思などを哲学的に扱

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    2024年01月23日
  • 円 劉慈欣短篇集

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    ネタバレ

    『地火』
    なんとか映像化してほしい作品。
    中盤からもう絶対大変なことになるんだろうな…と思ったら想像以上に大変なことになって興奮した。地火が爆発した時の表現がおそろしくて良かった。
    劉慈欣作品はやらかしたキャラクターが必要以上にしっかり報いを受ける傾向にある。三体の程心をのぞいて。

    『郷村教師』
    解説にもあったが、藤子・F・不二雄のSF短編集を彷彿とさせた。なんか終盤やけに宇宙人が地球の美しさに感動してて地球ホルホルか?と思った。

    『カオスの蝶』
    カオス理論はSFの切り口としてはかなりベタなんだろうけど、目まぐるしく変わる舞台とスリリングな会話の緊張感で楽しく読めた。“著者付記”が誠実で良

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    2024年01月14日
  • 白亜紀往事

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    最高に面白かった!読んでいる最中も続きが気になり一気に読んでしまったが、読み終わった後にもしみじみと面白い本を読んだなと余韻に浸ることができる。大森さんもあとがきに書かれている通り、今の時代と重なるところも多く、物語として面白いが恐ろしくもある。劉慈欣ファンの人なら間違いなく、絶対に楽しめる作品。

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    2023年12月28日
  • 変種第二号

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    いやいや、表題作「変種第二号」が傑作過ぎ。久々にやられましたわ。これだからディック読みはやめられないのよ。

    「戦争」をテーマとした作品をまとめた、日本オリジナル短編集。戦争テーマと言ってもかなり広義に捉えられていて、収録作はそれなりにバリエーションがあって読み応えがあります。(ただし、本邦初訳らしい「戦利船」だけは取扱注意!ディックにしては珍しい、超絶バカSFです(笑))

    数多くの短編を書き残したディック作品の中でも屈指の傑作と言っても良い「変種第二号」は、ディックが永遠のテーマとしていた「人間と人間じゃないものの境界は何か?」という問題意識をストレートに表現しつつ、サスペンスフルな一級の

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    2023年12月26日
  • 円 劉慈欣短篇集

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    三体より面白いという帯に惹かれて購入。
    短編集だが読み応えがある。
    SFのすごさにも驚くが、ノンフィクションとも思える中国の田舎の現状に胸が痛くなる。
    来年の文庫化新刊が楽しみ。

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    2023年12月13日
  • 白亜紀往事

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    劉慈欣先生の最新邦訳。
    『三体』シリーズや『超新星紀元』のような厚みはなく(いい意味で!)、スラスラと読める。ただ、ストーリーや筆致に劉慈欣先生の良さを感じられて楽しい読書体験だった。
    エピローグが好き!

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    2023年12月05日
  • 超新星紀元

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    前半はエンダーの知能ゲーム
    後半は楳図かずおの狂気世界
    のようなイメージ

    もちろん 至福の

    ただ 「三体」と比較し ところどころ 冗長な部分も
    例えば 戦争ゲームのルール決めの部分
    長い....

    ーー

    2回目
    1回目よりも面白かった
    後半の戦争ゲームの部分がちょっと長かったのかも

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    2023年11月15日
  • 息吹

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    ネタバレ

    オムファロス
    科学者であることとキリスト教徒であることは両立するのかずっと疑問だった。これはこういう世界だったら…の話だけど、現代の科学者はどう折り合いをつけているのだろう?

    不安は自由のめまい
    クリストファー・ノーランの映画になりそうな設定。選択をした時点でもう一方とは違う自分。その選択が次の選択に影響を与える。

    ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル
    ディジェントの流行とブーム終了。プラットフォームの廃止で動かせる場所が無くなるとか、ありそーな展開。
    が、我が子のようにディジエントに感情移入するアナには全く共感出来ない。

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    2023年10月25日
  • 円 劉慈欣短篇集

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    買ってはみたものの、SFが苦手な自分を省みると
    『もしかしたら読む事はないかも』と思って積んどいた本。
    DUNE*3冊+DUNE MESSIAH*2冊を読み終わった時
    『円を読むなら今しかないんじゃね?』と読み始め、
    想像を遥かにこえて楽しく読めた。
    短編集にありがちな『何故か入ってる面白くない作品』がひとつもない。

    『メッセンジャー』は唯一ほのぼのとしてる作品だった。
    未来の彼からの言葉は、創造だとわかっていても胸を撫で下ろす。

    どの作品もドキドキしながら読み進められる。
    SFと言えば未来を思いがち、最後の円で『秦の始皇帝』の時代に遡られたのはやられた感。
    やってる事はめちゃ現代。

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    2023年10月21日
  • 息吹

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    『あなたの人生の物語』のテッド・チャンによる 17年ぶりの短編集。映画化もされた世界的な有名作家なのに専業ではなくものすごい寡作ぶりで、そのぶん一編一編が奥深く、消化するのに時間もエネルギーもかかる。
    収録は全 9本、ネビュラ賞やヒューゴー賞など名だたる賞を獲得した珠玉の作品ぞろい。

    この人の頭の中はどうなってるんだと思うようなぶっ飛んだ設定の上で、さらに話が想像もつかない方向に発展していくので、一度読んだだけではなかなか理解が難しい。
    毛色の違う作品ばかりだが、「避けられない運命、受け入れ難い真実を知ったとき人はどうするか」というテーマは一貫している。

    「息吹」
    舞台が地球でもなく主人公

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    2023年10月15日
  • トータル・リコール

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    本書はフィリップ・K・ディック短編傑作集ですが、有名なところではトータル・リコール、そしてマイノリティ・レポートが掲載されています。もちろんこれらの有名な話も面白いですが、私はむしろそれ以外の短編を堪能しました。

    ネタバレになりますので深く書きませんが、「地球防衛軍」「訪問者」は立場の逆転という視点を、「世界をわが手に」はいまでいうシミュレーション仮説につながる話です。「ミスター・スペースシップ」はBMI(ブレイン・マシン・インターフェース)、「フード・メーカー」は、デジタル監視社会といった形で、むしろ2023年に読むほうが、リアリティを増しているという作品もあると思います。私は個人的に「世

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    2023年10月14日
  • 円 劉慈欣短篇集

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    「三体」の劉慈欣の短編集。
    以前「折りたたみ北京」で「円」を読んでどっひゃー!と思った記憶があるがそれをタイトル作とした短編集。
    「郷村」「円円のシャボン玉」「人生」が好き。でも他の作品も甲乙つけがたい。まさにセンス・オブ・ワンダーな作品ばかり。

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    2023年08月13日
  • キヴォーキアン先生、あなたに神のお恵みを

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    前半は、この世にいない方々へのインタビュー集があり、後半は、カート・ヴォネガットさんとリー・ストリンガーさんとの対談が掲載されている。
    私は、対談を書籍にしたものはあえて読まないようにしてきた。なぜかだろう?読みにくいと感じたことがあったり、対談であればライブで聴くべきものだと思っているからかもしれない。そんな私の思い込みを一掃するのにふさわしい対談であった。
    リー・ストリンガーさんの作品である『グランドセントラル駅・冬』と、カート・ヴォネガットさんの作品『タイムクエイク』の一部朗読があり、作家同志の書くことについての考察や、対象物との距離感についてなど、聴くことができる(実際は読むことなのだ

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    2023年08月12日
  • 円 劉慈欣短篇集

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    ネタバレ

    【印象に残った一文】
    「李白の目に映っていた自然とは、あなたがいまごらんになっている川辺の少女です。しかし、同じ自然でも、テクノロジーという目を通して見たそれは、結局のところ、白い布の上に整然と並べられた血の滴る人体の各パーツなのです。ですから、テクノロジーとは反詩情的なものです。」( p.286, 『詩雲』)

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    2023年06月24日
  • いたずらの問題

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    ネタバレ

    ディック初心者にもオススメできるストーリー展開で読みやすい。本作にあるモレク的な風潮がいまだに蔓延していて時代を経ても色褪せない一冊だなとも思いました…!(無意識に銅像の頭部を持ち帰ってくるところは笑いました)

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    2023年06月20日
  • 円 劉慈欣短篇集

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    理系の友人が、エンジニアは世界を変えていけると言っていた。 この短編集は、劉慈欣が、エンジニアとしての知識をフルに活かして、さまざまな世界を、そこにあるかのように生み出してくれる。一緒に旅する世界は、過去から未来、宇宙、そこに住む人々、ありとあらゆる世界だ。私たちの想像力は、羽を持っているように、導かれて広がっていく。

    一方で、人間たちへの優しさが、細やかな表現を通して、伝わってくる。自然もまた、テクノロジーとの対比で描かれていると同時に、その世界を包むように、さりげなく美しく表現されている。

    久しぶりのSF、これがSFなのだなあ、と思う。

    そしてこのお話を生かしているのは、見事な

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    2023年06月11日
  • 円 劉慈欣短篇集

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    短編集なのに一気読みしてしまいました!最高傑作揃い!劉慈欣氏の作品は『三体』を最初の1冊だけ読んだことがあるのですが、いろんなアイデアをひとつのストーリーに押し込むより、短いストーリーでサクッ、サクッと読める短編集の方が私は良いと思いました。世界観もひとつひとつのアイデアに合わせているので、壮絶だったり、底抜けに明るかったりバラエティ豊かな感じです。

    個人的には、自然と立ち向かう『地火』、壮大すぎるコメディ『詩雲』『月の光』が超オススメ!『円』もオチまで考えるとやっぱり短編にしなおして良かったと思います。未来への希望感も、貧乏の描き方のエグさも日本の作品にはないものがありますね。西側諸国の価

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    2023年05月07日
  • ドゥームズデイ・ブック(下)

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    ☆4.5

    結構シリアスな展開な作品なので確かに読むのは疲れるけども、じゃあそこで読むのやめられるかってんだ。
    だって希望が欲しいじゃないか。
    その希望をくれるのがコニー・ウィリスじゃないか。

    二つの時代で起こる感染症。
    14世紀はメカニズムが判明していない故に、21世紀は世界が発展してるが故に、感染は広がる。
    特に21世紀パートはコロナを経験した今、事実に即してると思えるほどの描写。
    トイレットペーパーのくだりとかも、笑っちゃうけどフィンチは真剣そのもの。
    貧乏くじな彼、結構好き。

    下巻は特に第三部に入るともう怒涛の展開。
    優しい人も、嫌いな人も、聡明な人も、人の話聞かない人も、尊敬する

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    2023年03月17日
  • 航路(下)

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    臨死体験を科学的に解き明かすSF。
    ”科学的であること”に対する深い信頼と、それ自体がエンターテイメントになりうるという確信。
    まさにSFとしか呼びようのない傑作小説でした。

    本を読んでいるとたまに自分の読む速度が遅いのが悔やまれることがある。もっと読みたい、もっと先を知りたい!それなのにどうして私の読書スピードはこんなにも遅いのか!!
    そんな憤りすら感じられるほど面白い。
    面白すぎて、脳みそが蕩けてしまいそうなほど。

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    2022年12月20日