大森望のレビュー一覧
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2024年になっても新鮮な読み心地と生々しい迫力を備えている。時代を超えて読み継がれるとともに、実現可能な時代になりつつあることの恐怖も沸き起こる短編集。以下は個々の作品の備忘録
・トータルリコール
経験の記憶を販売する会社で記憶の植え付け施術失敗と思いきや、政府の要人というか機密を持っている重要参考人的な立場だった人の話。映画も見てみたい
・地球防衛軍
人類が始めた戦争を、人類が作ったAIで代理戦争をさせるも人間より遥か上の知能を持ったAIによって管理下に置かれていたことに気が付く愚かな人間の話。
・訪問者
核戦争後、人間が住めなくなった地球で生き延びるために細々と息をしている様を描いた作品。地球も生きていて、人間が滅びるのも地球の歴史の一部になり得る。人間が最後の地球の支配者だなんて考えは傲慢…。
・世界をわが手に
ラスト数行で察してしまう世界の真実と創造者。破壊衝動に限らず「本能的欲求・衝動」と括ってしまうが、それは理解を簡素化するための言葉だった。溜まったエネルギーの発出。何かを使役したい、力を持ちたい、強さを自覚したい。神になりたい。残酷な世界の成り立ちは残酷な人間のエネルギー衝動によるものだったかもしれない。
・フードメーカー
頭の中を他人から読まれてしまう恐怖。政府に対して不都合な思想ややましいことがあれば即刻逮捕。まさにディストピア!
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ネタバレ『地火』
なんとか映像化してほしい作品。
中盤からもう絶対大変なことになるんだろうな…と思ったら想像以上に大変なことになって興奮した。地火が爆発した時の表現がおそろしくて良かった。
劉慈欣作品はやらかしたキャラクターが必要以上にしっかり報いを受ける傾向にある。三体の程心をのぞいて。
『郷村教師』
解説にもあったが、藤子・F・不二雄のSF短編集を彷彿とさせた。なんか終盤やけに宇宙人が地球の美しさに感動してて地球ホルホルか?と思った。
『カオスの蝶』
カオス理論はSFの切り口としてはかなりベタなんだろうけど、目まぐるしく変わる舞台とスリリングな会話の緊張感で楽しく読めた。“著者付記”が誠実で良い。初めて見たこんな注釈。
『詩雲』
この短編集の中で1番好きだった。
Gパンパンダのコントの中で575の俳句のパターンを全部網羅するネタがあるけど、それと発想自体は同じ。俳句に関しては実際にジェネレータが作られていたが、使う文字が漢字になるとここまで壮大な話になるのか…と絶句した。
なんか恐竜ずっとかわいそうで面白い。
全パターンの漢詩を作ろうっていう発想は根本的に詩の情緒を解せていないような気がして、それがおかしかった。
『栄光と夢』
スポ根。主人公の少女も良かったけど、射撃せずに会場を後にしたヤリク・サリが最高だった。こういう脇役がメインテーマとあまり関係ないところで理知的な判断をする展開好きすぎる。娼婦に堕ちたと見せかけて1番アツかったライリーも好き。
『円』
三体で読んだ時にも思ったけど設定が飛び抜けて好き。
コンピュータの発想に直接辿り着く荊軻がサヴァンすぎる。 -
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いやいや、表題作「変種第二号」が傑作過ぎ。久々にやられましたわ。これだからディック読みはやめられないのよ。
「戦争」をテーマとした作品をまとめた、日本オリジナル短編集。戦争テーマと言ってもかなり広義に捉えられていて、収録作はそれなりにバリエーションがあって読み応えがあります。(ただし、本邦初訳らしい「戦利船」だけは取扱注意!ディックにしては珍しい、超絶バカSFです(笑))
数多くの短編を書き残したディック作品の中でも屈指の傑作と言っても良い「変種第二号」は、ディックが永遠のテーマとしていた「人間と人間じゃないものの境界は何か?」という問題意識をストレートに表現しつつ、サスペンスフルな一級のエンターテインメント作品としても仕上がっています。他にも、主人公が最後に迫られた選択の残酷さが戦争の無意味さに直結する「たそがれの朝食」、人間の愚かさを端的に描き出してあまりある「ゴールデン・マン」など、グッとくる佳作が目白押し。ディック初心者にもオススメだと思います。 -
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買ってはみたものの、SFが苦手な自分を省みると
『もしかしたら読む事はないかも』と思って積んどいた本。
DUNE*3冊+DUNE MESSIAH*2冊を読み終わった時
『円を読むなら今しかないんじゃね?』と読み始め、
想像を遥かにこえて楽しく読めた。
短編集にありがちな『何故か入ってる面白くない作品』がひとつもない。
『メッセンジャー』は唯一ほのぼのとしてる作品だった。
未来の彼からの言葉は、創造だとわかっていても胸を撫で下ろす。
どの作品もドキドキしながら読み進められる。
SFと言えば未来を思いがち、最後の円で『秦の始皇帝』の時代に遡られたのはやられた感。
やってる事はめちゃ現代。
こんなに面白く読めたのは翻訳の良さにも起因すると思うと同時に、心からの感謝を。
読み終わった瞬間、目の前にあったみなとみらい丸善で『三体』買ってしまったわ。 -
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本書はフィリップ・K・ディック短編傑作集ですが、有名なところではトータル・リコール、そしてマイノリティ・レポートが掲載されています。もちろんこれらの有名な話も面白いですが、私はむしろそれ以外の短編を堪能しました。
ネタバレになりますので深く書きませんが、「地球防衛軍」「訪問者」は立場の逆転という視点を、「世界をわが手に」はいまでいうシミュレーション仮説につながる話です。「ミスター・スペースシップ」はBMI(ブレイン・マシン・インターフェース)、「フード・メーカー」は、デジタル監視社会といった形で、むしろ2023年に読むほうが、リアリティを増しているという作品もあると思います。私は個人的に「世界をわが手に」が特に印象に残りました。この短編の中で、世界球という玩具を作っている会社の社長が、「人々は倫理観だけでは動かないんだよ、そうではなく・・・・」というシーンがあり、これは現代のSDGsへの大いなる警句だと思いました。つまり「サステナブル」「持続可能な社会」と倫理だけに訴えていても、一部の人は従うがマジョリティは動かないだろう、ということを想起させるわけです。SFのストーリー展開が卓越しているだけでなく人間心理を深くついた作品集だと思います。 -
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前半は、この世にいない方々へのインタビュー集があり、後半は、カート・ヴォネガットさんとリー・ストリンガーさんとの対談が掲載されている。
私は、対談を書籍にしたものはあえて読まないようにしてきた。なぜかだろう?読みにくいと感じたことがあったり、対談であればライブで聴くべきものだと思っているからかもしれない。そんな私の思い込みを一掃するのにふさわしい対談であった。
リー・ストリンガーさんの作品である『グランドセントラル駅・冬』と、カート・ヴォネガットさんの作品『タイムクエイク』の一部朗読があり、作家同志の書くことについての考察や、対象物との距離感についてなど、聴くことができる(実際は読むことなのだが対談なので)。リー・ストリンガーさんのコメントは、人間に対する深い愛情と優しさに満ちたもので、どんな人(たとえ悪人であっても)でも、共感を測るために、澄んだ心の眼差しで洞察していることが伝わってくる。出会えてよかった一冊。 -
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☆4.5
結構シリアスな展開な作品なので確かに読むのは疲れるけども、じゃあそこで読むのやめられるかってんだ。
だって希望が欲しいじゃないか。
その希望をくれるのがコニー・ウィリスじゃないか。
二つの時代で起こる感染症。
14世紀はメカニズムが判明していない故に、21世紀は世界が発展してるが故に、感染は広がる。
特に21世紀パートはコロナを経験した今、事実に即してると思えるほどの描写。
トイレットペーパーのくだりとかも、笑っちゃうけどフィンチは真剣そのもの。
貧乏くじな彼、結構好き。
下巻は特に第三部に入るともう怒涛の展開。
優しい人も、嫌いな人も、聡明な人も、人の話聞かない人も、尊敬する人も、面倒くさい人も。
それが訪れるのは誰もが同じ。
怖いしつらい。
14世紀の孤立無援な中、無力なことに打ちひしがれながらもできることをやり続けるキヴリンを本当に褒め称えたい。
物語の前半で何気なく使われてるものが、後々意味の重みが変わってくるのは『航路』の時もそうだったけど、とても印象的だった。
流石"対"と言われることも多いだけある。
パンデミックのことだけでなく、時間遡行から無事に戻れるかというサスペンスフルな話でもあるので、隅から隅まで浸らせてくれた。
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フィリップ・K・ディックは20世紀中盤に活躍したSF作家で、この短編集は、有名な二つの映画化作品をベースに、21世紀に入って日本で再編されたもの。
いずれも切れ味抜群の結末と個性ある世界観で、「傑作短編集」の名に恥じないものばかり。
同じ作家の少し難解な長編「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」に比べて、ずいぶんと解りやすく、読みやすかった。
映画化された「トータル・リコール」「マイノリティ・リポート」はもちろん、他の作品もいずれも印象深い。
「訪問者」は、驕慢であった人類の地球上での最後の姿が垣間見える。
「吊るされたよそ者」のあとは、街中を走り回る自分の姿を夢に見そう。
「フード・メーカー」には、監視社会の問題が漂う。
フレドリック・ブラウンがちょっと不思議系でレイ・ブラッドベリが寓話的であれば、ディックは文字通りSFの王道。
もっと、掘っててみようかな……。 -
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文句なしに大満足の一冊。ジョー・ヒル「お試し」としては十分すぎる内容。こんなにも気持ち悪くて、こんなにも美しい物語を、様々なスタイルで読めるなんて。
私のお気に入りは「ポップ・アート」。近年読んだ中で最も美しい物語。イタロ・カルヴィーノの「木登り男爵」のラストを思わせるクライマックスには泣けました。「自発的入院」は本書のなかで唯一中篇と言ってもよい作品で、そのアイデアと恐ろしさは唯一無二。とにかく、ジョー・ヒル、すごい才能としかいいようがない。お父上がいなくなっても(そんな世界は考えたくないが、いずれ訪れるであろう)、これで安心、と思ったホラーファンは私だけではないはず。 -
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テレパス同士がコミュニケーションできるようになり、混乱度はさらに上がる。そして伏線がどんどん回収されていく。CBや大叔母の言動の背景が明らかになっていくのだが、予想の範囲かなと思いつつも、「うわっ! !ややこし! 」と思うくらい真相もごちゃごちゃしている。とはいえ、背景も含めて物語は交通整理ができていくのだが、本当にこの背景で上巻の登場人物の言動に矛盾は生じていないのだろうかと心配になる(検証は面倒だから私はしない)。 上下巻合わせて約1000ページの長編である。でも、登場人物がそれほど多くないからか、読みやすかった。コニー・ウィリスらしい作品である。
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笑える方のコニー・ウィリスの長編作品。EEDという脳外科手術を受けるとパートナーがまるでテレパシーのように気持ちを共有できるようになる。主人公のブリディは恋人のトレントとEEDを受ける。もちろん正常に気持ちを共有できるようになりはしない。ブリディはトレントと接続できずに、同僚のCBとつながってしまう。手術の失敗だけではなく、ブリディの一族の過干渉や詮索好きの同僚など、ブリディは常に気を抜けない状況で手術を受けトレントと接続しようとする。なお、「クロストーク」とは混線の意味がある。ブリディの頭の中の混線と、現実世界の家族などとのつながりというかもつれ合いがドタバタと展開するストーリーは他人だからこそ笑える。