【感想・ネタバレ】ドゥームズデイ・ブック(下)のレビュー

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Posted by ブクログ

☆4.5

結構シリアスな展開な作品なので確かに読むのは疲れるけども、じゃあそこで読むのやめられるかってんだ。
だって希望が欲しいじゃないか。
その希望をくれるのがコニー・ウィリスじゃないか。

二つの時代で起こる感染症。
14世紀はメカニズムが判明していない故に、21世紀は世界が発展してるが故に、感染は広がる。
特に21世紀パートはコロナを経験した今、事実に即してると思えるほどの描写。
トイレットペーパーのくだりとかも、笑っちゃうけどフィンチは真剣そのもの。
貧乏くじな彼、結構好き。

下巻は特に第三部に入るともう怒涛の展開。
優しい人も、嫌いな人も、聡明な人も、人の話聞かない人も、尊敬する人も、面倒くさい人も。
それが訪れるのは誰もが同じ。
怖いしつらい。
14世紀の孤立無援な中、無力なことに打ちひしがれながらもできることをやり続けるキヴリンを本当に褒め称えたい。

物語の前半で何気なく使われてるものが、後々意味の重みが変わってくるのは『航路』の時もそうだったけど、とても印象的だった。
流石"対"と言われることも多いだけある。

パンデミックのことだけでなく、時間遡行から無事に戻れるかというサスペンスフルな話でもあるので、隅から隅まで浸らせてくれた。


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2023年03月17日

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ネタバレ

コリンの大叔母である医師メアリや、いやーな野心家ギリクリストがあっさり死んでしまったのは拍子抜けしたが、死ってそういうものかも。
ペストの蔓延するなかで病人の血で汚れることも厭わずローシュ神父とともに奮闘するキヴリンは、原作版風の谷のナウシカを彷彿とさせたし、コリンは12歳らしく溌剌としてて良かった。無事に現代に戻ってから病院で怒られるんだろうなぁと思うとちょっと可笑しい。
絶望的な話なのに、読後感はとてもよかった。

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2018年12月30日

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ウィリスの感動作 読むべき一冊である
表紙   6点田口 順子(旧作) 大森 望訳
展開   7点1972年著作
文章   7点
内容 800点
合計 820点

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2017年06月08日

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21世紀のドタバタはさておき、14世紀のオックスフォード付近の人々の暮らしがまるで見てきたように活き活きと描かれている。ペストに抗する術を持たない人々が神に祈りながら倒れていく様は哀れだ。キヴリン嬢は本シリーズの続編には登場しないだろうなぁ。

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2016年08月19日

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 タイムトラベルによって実地的な歴史研究が行われるようになった近未来が舞台の、“オックスフォード大学史学部シリーズ”最初の長編。本作では、中世イングランドに降下した史学部生キヴリンを軸に、迫りくるペストと21世紀のオックスフォードで発生した原因不明のパンデミックとの闘いを描く。
 紛れもない長編で専門用語も多く、翻訳SFに慣れない人は二の足を踏みそうな作品だが、それでも読む者をグイグイ惹きつけるこの作者はさすがとしか言いようがない。登場人物は皆活き活きとしており、本当にその時代に生きていたかのよう。主人公の成長物語としても歴史小説としても一級品なので、興味がある人は是非読んでみてほしい。
 また、読後は短編である『空襲警報』を手に取ることをおすすめする。書かれた時期は短編のほうが先だが、脇役として登場するキヴリンにぐっと来ること請け合いである。

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2014年08月14日

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いつもの如く前半はドタバタが描かれる。キブリンを送り出した2054年のイギリスでは突然ウィルスが猛威を奮いネット技術者が人事不省に陥りキブリンが1320年に無事に着いたのか判らなくなる。過去に着いたキブリンは当然1320年に到着したと思いこみ、上手いこと領主館に転がり込み姉妹の面倒を見る羽目になる。ホドビン姉弟程ではないにしろロズムンド、アグネス姉妹も中々の曲者。中世の風景に驚きながら日々を過ごしていく。前半での読みどころは「キブリン到着のずれはどれくらいなのか?」「キブリンは自分の降下点を知る事が出来るのか?」の2点だけ。しかし!「オールクリア」を読んで学習済みの私には後半怒涛の展開が有るに違いないと思いながら読み進むと!遂にキブリンがヨーロッパ中にペストが蔓延した1348年にいる事が判明!ここからのスピード感が凄い、ダンワージーは直ちに救出の準備に取り掛かり、前半やんちゃな少年として描かれていたコリンは物凄い行動力を発揮、同じく前半単なる女たらしとして描かれていたウィリアムは病に倒れたダンワージーに関わる全ての部署の看護婦を掌握(籠絡?)、あっという間に病院を脱出、ネットの実行まで漕ぎつける。「オールクリア」でのコリンの成長を知っている私にとっても納得の大活躍!一方1348年は領主館の家族・召使が次々に病に侵されなんとロズムンド姉妹も倒れ家族は全滅、それどころか村全体が死に絶えてしまう。中世に降下した時に助けてくれた牧師までもが死んでしまうシーンは涙なくしては読めない、もう泣ける、泣ける、SFでこんなに泣けるなんて!
ラスト、ダンワージーとコリンが回収に現れるが、全ての死を見届けたキブリンは精神的に大きく成長を遂げ「大人」になって帰って来る。ヒロインの成長する様を描いた大河ドラマとも言えるし、タイムトラベルが授業の一環となっているオックスフォード大学が舞台の時間SFとも言える。ここから「ブラックアウト」「オールクリア」に繋がると思えば感慨もひとしおである。あぁ、素晴らしい物語を読んだ満足感でいっぱいです。(も一度ブラックアウト読まなきゃ!)

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2013年09月18日

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近未来と過去で発生したパンデミック。物語は両時代を舞台に進行する。リアルな14世紀時代の描写でまさにタイムスリップを体感。そこにホントに生きていた人々を見てきたかのような錯覚を覚える。故に終盤にかけての展開は悲しく胸をえぐられる思いだ。この感情移入体験は半端ない!

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2013年07月08日

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ネタバレ

というわけで,下巻まであっという間でした.あとがきに書いてあったけど,まさにスティーブンキング並み.キングも「ただ長いだけ」と言う人もいるので,ウィリスも好き嫌いが分かれると思うが,僕は大好きです.しかし,このシリーズって主人公は結局ダンワージー先生なんだなあ.続けて「犬は勘定に入れません」と「航路」も再読せざるを得ないな,こうなったら.

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2013年07月06日

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ネタバレ

タイムトラベルが歴史研究目的で行われるようになった21世紀中盤。
オックスフォード大学史学部の学生、キヴリンは14世紀の農村に実習で赴いた。しかし、到着直後、彼女は病に倒れてしまう。一方21世紀でも謎のウイルスが蔓延し始めた。二つの時代を席捲する病。キヴリンもまた、「ドゥームズデイ」(世界の終わり)というべき悲劇に直面する……

「犬は勘定に入れません」のほうを先に知っていて、この本に興味を持ち読みました。すばらしい物語でした。
 
この物語のタイムトラベルシステム、「ネット」はタイムパラドックスを許容しません。歴史家たちは個々の人間に関わることはできても、歴史の大きな流れを変えることはできません。この物語を読んでいるうちに、自分もまた、14世紀の人々と紙という「ネット」を介しているのだと思いました。懸命に生きた。けれども物語の結末は変えられない。それがこの物語を読んで感じる悲しみなのではないか、と思いました。

"Requiem aeternam dona eis,et lux perpetura luceat eis."
(下巻、483ページより引用)

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2012年09月06日

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ネタバレ

ページを閉じて逃避したくなるほどの死ぬ死ぬラッシュ…
しかし読み終わったときにはやはり読んでよかった、と。

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2011年06月29日

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壮絶で胸を打つ展開。コニー・ウィリスを知らなかったって、なんてもったいないことしてたんだろ。英語で読みたいと思った作品。

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2011年05月01日

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最後までちゃんと読み終えてよかった! 何度涙ぐみそうになったことか…。
昨年の新型インフルエンザ騒ぎの前に読むか、後に読むかで、だいぶ没入感が違うのではなかろうか。

しかし後半の展開はすごい。痛い胸を抱え、呆然として読み終わった。

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2010年05月31日

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内容(「BOOK」データベースより)
21世紀のオックスフォードから14世紀へと時をさかのぼっていった女子学生キヴリン。だが、彼女が無事に目的地にたどりついたかどうか確認する前に、時間遡行を担当した技術者が正体不明のウイルスに感染し、人事不省の重体に陥ってしまった。彼女の非公式の指導教授ジェイムズ・ダンワージーは、キヴリンのために、新たな技術者を探そうと東奔西走するが!?英語圏SFの三大タイトルを独占したコニー・ウィリスの作。

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2009年10月04日

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おりしも、送り出した側の現代イギリスでもインフルエンザが爆発的に流行し、重要人物も倒れていく。キヴリンの指導教官と亡くなった女医さんの甥っ子はどうする。

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2009年10月04日

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テーマが大変重いのに、思い返すキャラクターたちは笑みが浮かんでしまうエピソードで彩られています。
各所に用意された伏線がひとつに対峙した時は驚きでした。すごい作品です。

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2009年10月04日

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どんな時代であれ、生があり、死があり、その時代に生きる人々のささやかな喜びや悲しみがある。タイムトラベル先の14世紀のイングランドの片田舎で、ペストの蔓延により、知己が次々と倒れていくなか、キンバリーは身をもってそのことを思い知らされたのでは。歴史とは、後世に名を残すこともなく生き、死んでいったこの人の、あの人の人生の集まりなのだと。

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2010年03月14日

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後半、話のテンポは上がっていく。
しかし、これにSF的な派手な展開を期待すると全く外れる。
あくまでSF的な設定ではあっても、中世と現代とで疾病と戦かう物語として割り切って読めば実に緻密な描写で引き込まれるが、通常のSF(タイムワープ物)的な展開を期待すると全く外れる。

誰も見たことも無い中世の世界を緻密に描きこみ、多彩な人物をリアルに配置し、二つの時代をまたがって物語を展開する手法は見事だし、後半のシビアな展開には驚く。

しかしそれであっても、(全くストーリーに関係のない)不要な描写は読み疲れて、正直読むのに努力が必要だった。続編はどうしよう・・?

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2021年05月04日

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多くの登場人物のキャラクターや関係性を理解しようとするのをやめて、どんどん読み進めると後半はストーリーが加速してくる。
なんと設定した時代からずれたところにタイムトラベルしていたとは。
最後にギヴリンやダンワージーは助かったのだろうか?

ところで「鳴鐘者」って鐘を鳴らす人だと思われるが、教会の鐘を鳴らす人なのだろうか?どうもハンドベル奏者のイメージがつきまとい、物語がうまく想像できないのだが。

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2018年05月31日

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二つの時代の疫病の蔓延で、物語は加速する。
わかっているのよ、創作だということも
すでに700年前に結果が出ているということも。
でも年代が判明した瞬間、
あの人(達)が亡くなった(とわかった)時
何度か震える一行があった。
なによりキヴリンの最後の一言は、
文字通りにとってよいのだろうか。

途中、若さゆえ活き活きと頼もしくもあった
最終盤では、それがわずらわしくもあるコリンが
成長して出るなら、シリーズは全部読まないとね。
もちろん空襲警報も読みなおそう。

他の方感想に「長い」とあるが、確かに長い。
(いや、今年ようやく読み終わった『レ・ミゼラブル』
各巻冒頭100ページに比べたらなんでもない)
でも、それだけ情報が与えられているなら
登場人物たちが身近な「あの人」に
感じられるだけの、異常ななかでも
なんでもない日常の一コマになるのではないかと思う。
混乱のなかで、アメリカ人団体に巻き込まれ、
いつまでもトイレットペーパーに頭を悩ませる
フィンチ君とか。

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2014年10月14日

Posted by ブクログ

どうして誰も人の話を聞かないのか…。登場人物たちの身勝手さに読んでてイライラするのはいつものウィリスだが。我慢して上巻の最後のページまでくればすぐさま下巻を読みたくなること間違いなし。過去も現代もパンデミックのためバタバタ人が死んでいく。その凄惨さの中で唯一の救いがコリンの明るさ。「ブラックアウト」に成長したコリンが出てくるらしいので楽しみだ。(ろくでなしの母親しかいないのに何故名門イートンに入れたのか気になる)。
あと、ボドリアンをボドレアン、ベイリオルをベイリアルとするなど、どうしてそのカタカナ表記にした?という細かいことが気になって仕方ない。

キブリンのその後は短編『空襲警報』でどうぞ。

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2014年04月09日

Posted by ブクログ

長い物語だったが、後半から結末への収束は畳み掛けるような勢いがあって決して冗長ではないと思う。
文量の割にシンプルなプロットで、それゆえ分かりやすいストーリーであるし、キャラクターの描写がとてもしっかりと描かれているので、小難しさがなく意外と取っつきやすい小説だ。
海外ドラマを見ているような気分で読める良作エンタメSFといったところ。

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2013年06月28日

Posted by ブクログ

ペストの蔓延する中世にタイムスリップ。未来のこちらもパンデミック。パラドックスのややこしい話もない。なのにこの話の厚みはどうだ。かといってひたすら暗いわけでなく、秘書のフィンチやら悪ガキのコリンが素晴らしく、ハリソン・フォードで断固映画化すべきだ。ヒューゴー、ネビュラ、ローカスのトリプルだけれど読みやすい。ハードではない。コリンが出てくる続編を切に希望。コニー・ウィリスは二冊目だがファンになってしまった。

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2012年10月14日

Posted by ブクログ

それ以前がのほほんと見える程、後半1/2が盛り上がって面白い。が、やはりそれまでが長い。
それでも上巻に比べると現代パートが短めですっきりしていて読みやすい。もっとも、現代パートはキャラでもたせてるとしか思えないが(そして、何者なんだウィリアム)。

固まった吐瀉物とかが平気で出てくるあたり、キレイなだけではない、作者の意思を感じる。

救いはコリンにある。そして、コリンのちょろまかさを表現している大森望がいい仕事をしている。

ダンワージーは確実に自分を責めすぎである。

最後、キヴリンが口数が少なく、ちょっと怖い感じで終わるが、もっとゆったり語って終わって欲しかった。最後だけいきなり早送りで見せられた気分。


キヴリンに関して言えば、世の中の不条理さを知って成長するのではなく、不条理にずっと怒っている。なのでちょっと怖い。

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2012年04月10日

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SFでいっぱい賞を取った名作。中世史を研究する女性がタイムマシンで、1320年にいくはずが、手違いでペストの流行する年へ。現代の方も疫病が流行し、助けにいけないという話。
SFというより、文芸作品という感じ。死を前にした時の、神の沈黙と人間の尊厳は、遠藤周作の「沈黙」につながるものを感じた。
また、主人公の女性が思う、「イエスキリストもタイムマシンでやってきたが、送り出した側が座標を特定できなくなり、迎えにいけなくなった。それでキリストが見捨てたのか、と叫んだ」という想像は、なんか真実味がありました。

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2011年11月28日

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上巻読んでいたときは「だから担当教授の言うことはちゃんと聞けよ!」とか、教授に対しても「愛弟子が心配なのは分かるけれど、倒れた同僚にももっと優しさを示せよ!」とか思ったけれど、下巻はそんなことを思う間もなく事態が進んでいく、という感じ。読み終わって泣きはしなかったけれど、遣る瀬無さ無念さが胸に沁みる

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2010年03月27日

Posted by ブクログ

アメリカの作家「コニー・ウィリス」の長篇SF作品『ドゥームズデイ・ブック(原題:Doomsday Book)』を読みました。

「ヒュー・ハウイー」の『ダスト』に続きSF作品です。

-----story-------------
〈上〉
歴史研究者の長年の夢がついに実現した。
過去への時間旅行が可能となり、研究者は専門とする時代を直接観察することができるようになったのだ。
オックスフォード大学史学部の女子学生「キヴリン」は、実習の一環として前人未踏の14世紀に送られた。
だが、彼女は中世に到着すると同時に病に倒れてしまった…はたして彼女は未来に無事に帰還できるのか?
ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞を受賞した、タイムトラベルSF。

〈下〉
21世紀のオックスフォードから14世紀へと時をさかのぼっていった女子学生「キヴリン」。
だが、彼女が無事に目的地にたどりついたかどうか確認する前に、時間遡行を担当した技術者が正体不明のウイルスに感染し、人事不省の重体に陥ってしまった。
彼女の非公式の指導教授「ジェイムズ・ダンワージー」は、「キヴリン」のために、新たな技術者を探そうと東奔西走するが!?
英語圏SFの三大タイトルを独占した「コニー・ウィリス」の感動作。
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本作品は、近未来(21世紀中盤)のオックスフォード大学が舞台で、若き女性歴史家「キヴリン・エングル」がイギリスの最も危険な時代と思われている14世紀にタイムトラベルするというSF小説、、、

作者の「コニー・ウィリス」は、これまでにヒューゴー賞を11回、ネビュラ賞を7回、ローカス賞を11回受賞しており、1980年代から1990年代における最も優れたSF作家の一人と呼ばれている女流作家… 彼女の作品は初めて読んだのですが、本作品も、その3賞を受賞しているので期待して読みました。

 
物語は2054年のオックスフォードから幕を開ける… 過去へ向かうタイムトラベル技術が確立され、歴史研究のために利用されており、ブレイズノーズ・カレッジ中世史科の女子学生「キヴリン・エングル」は本人の強い希望もあり、前人未踏の14世紀に送り出される、、、

しかし、彼女が無事目的地に着いたかどうかを判定するデータが出る前に、時間遡行の実務面を担当した技術者「バードリ・チャウドゥーリー」が正体不明のウィルスに感染して突如、意識不明の重体に陥り、「キヴリン」が計画通り1320年に到着したかどうかの確認が取れないが、町はクリスマス・シーズンで、かわりの技術者は見つからない… 「キヴリン」の非公式の指導教授でベイリアル・カレッジの教授「ジェイムズ・ダンワージー」は、なんとか教え子の安否をたしかめようと孤軍奮闘するが、ウィルス感染が拡大し、オックスフォードは他の地域から隔離されてしまい、自身も未知のウィルスに感染して倒れてしまう。

一方、14世紀にやってきた「キヴリン」も、到着と同時に病に倒れ、やはり意識不明に陥る… たまたま通りかかった現地の人間に助けられ、かろうじて一命はとりとめたものの、意識不明の状態で村まで運ばれてしまったことから、未来世界に帰還するためのゲートとなる出現地点の場所がわからなくなる、、、

果たして「キヴリン」は元の世界に帰り着けるのか… 「レイディ・エリウィス」等の献身的な介護もあり、なんとか体調が回復した「キヴリン」だが、追い打ちをかけるように、思っても見なかった危難が発生する。

周囲の人物が次々と病に倒れ、その症状は、当時、ヨーロッパを恐怖に陥れた黒死病(ペスト)に酷似していた… ペストがイギリスに辿り着いたのは1348年なので、「キヴリン」が到着した1320年には、まだペストはイギリスに存在していなかったはずなのだが、、、

実は、「キヴリン」が到着したのは1348年で、まさにペストが猛威をふるっていた時代だった… 「キヴリン」は、伝染病について無知な村人を少しでも多く助けようと懸命な介護を続けるが、村人は次々と命を落とし、彼女の命の恩人で献身的に村人の介護にあたっていた「ローシュ神父」まで発病していまう。

一方、謎のウィルス感染により発病し、なんとか一命を取り留めた「ダンワージー」は、友人の医師「メアリ」の姪の息子「コリン」とともに、「キヴリン」の迷い込んだ時代に遡り、彼女の救出を試みる… 彼らは限られた時間の中で、「キヴリン」を捜索するが、そこはペストによる夥しい死体が山積みに放置され、見捨てられた村だった、、、

あっと驚く展開はなく、予想通りのエンディングで、期待通りの内容でしたね… 面白くないわけではないのですが、ちょっと物足らない感じかな。


14世紀のパートは、シリアスな歴史小説風な展開で、その時代に生きる人々の息遣いや生活の匂いまで含めて、中世イングランドの日常を鮮やかに描き出されているのに比べ、、、

21世紀のパートは、コメディ風で、交互に描かれる700年の時を隔てたふたつの時代が、巧く書き分けられていることが印象的でした… そのふたつの時代の展開が、ひとつになってクライマックスに向かう終盤の展開は集中して読めましたね。

でも、上下巻で1,000ページを超えるボリュームは、ちょっと冗長な感じ、、、

途中で少し飽きそうになりましたね… シンプルな物語なので、もう少しコンパクトな方が良かったな。


21世紀のパートで、

いつもトイレットペーパーの残量を心配している「フィンチ」、

いつもずぶ濡れになっていて、色の変わるキャンディを舐めている「コリン」、

いつも新しい女性といちゃついている「ウィリアム・ギャドスン」、

いつも行方不明で一度も登場しない史学部の学部長「ベイジンゲーム」、

等々、同じシチュエーションを繰り返すキャラクター達の行動が印象的でしたが… 映像化されることを想定した仕込みのような気がしましたね。



以下、主な登場人物です。

<21世紀(オックスフォード大学)>

「キヴリン・エングル」
 ブレイズノーズ・カレッジ中世史科史学生

「ジェイムズ・ダンワージー」
 ベイリアル・カレッジの教授

「フィンチ」
 ダンワージーの秘書

「ベイジンゲーム」
 史学部の学部長

「ギルクリスト」
 史学部の学部長代理。ブレイズノーズ・カレッジの中世史科教授

「バードリ・チャウドゥーリー」
 ベイリアル・カレッジのネット技術者

「ラティマー」
 ブレイズノーズ・カレッジの教授

「ループ・モントーヤ」
 ブレイズノーズ・カレッジの考古学者

「メアリ・アーレンス」
 付属病院の医師

「コリン・テンプラー」
 メアリの姪の息子

「ウィリアム・ギャドスン」
 ベイリアル・カレッジの学生

「テイラー」
 アメリカ人の鳴鐘者

「ヘレン・ピアンティーニ」
 アメリカ人の鳴鐘者


<14世紀>

「レイディ・イメイン」
 ギョーム卿の母

「レイディ・エリウィス」
 ギョーム卿の妻

「ロズムンド」
 ギョーム卿の長女

「アグネス」
 ギョーム卿の次女

「ガーウィン」
 ギョーム卿の家臣

「メイリス」
 召使

「ローシュ」
 神父

「サー・ブロート」
 ロズムンドの婚約者

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2022年11月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

特定の人物をペスト流行の時代に学生を送り込んだ黒幕と疑って下巻を読み始めたが、それは浅はかなものだった。上手く騙されて気持ちいいくらいだ。それは置いといて、物語は酸鼻を極める。特に中世パートはこれでもかとペストの悲劇を投入してくる。現代パートも同じくらいウィルス感染の悲惨な現場となる。絶望を極限まで経験することになるが、そこから逆転するのがエンタメ小説である。最後の方は感動で泣けてくる。人の狂気を感じるし、それ以上に人の強さを感じる。

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2019年08月12日

Posted by ブクログ

ペストが猛威をふるう1348年の中世イギリスに間違って送り込まれた少々・キヴリン。

上巻をまるまる使ってたっぷりと遅延させたあとのこの加速感!

続編のブラックアウトとオールクリアをまた読み直そうっと。

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2018年06月02日

Posted by ブクログ

面白いのだけれど、もっと短くもできる話。
多分、タイムトラベル要素以外の部分の書き込みと時代考証が評価されているのだと思うが、それでも長い。また、小説内での現代(我々にとっては近未来)におけるパンデミックの原因については、すぐに検討がつくのだが、それを明らかにするタイミングも遅い!
それでも下巻の方が星一つだけ評価が上なのは、ラストへの展開が非常に納得がいくから。

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2014年01月06日

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