大森望のレビュー一覧
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50代からのアイドル入門
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試し読み
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Posted by ブクログ
こいつは傑作だ!ガハハハハ!!!
傑作という言葉を辞書で引くと、2つの意味があり、この小説には両方の意味で傑作だと拍手喝采を送りたい。
例によって、込み入った世界観を把握するまで序盤はやや読みにくいが、「なにこれどうなってんの!?」というディック節から物語は加速していくのでご安心を。
道徳や倫理が絶対視され、集団相互監視の状態にある息苦しいディストピア。不倫した芸能人を匿名SNSで叩きまくる、昨今の日本を見てきたかのような、先見性あふれる描写に驚かされた(この小説は1956年発表)。その中で、主人公が取る行動によって、痛烈な社会風刺ともいえる、思いがけない結論が導きだされる。序盤の主人公の言動には共感できなかったのだが、少しずつ感情移入が増していく。
過去にSFで多く描かれてきた監視社会に、ますます近づいていく21世紀のリアル。我々はいったいどこにむかっているのだろう?そこに、「いたずら」や「ユーモアのセンス」といったことが一石を投じるストーリーに考え込まずにはいられなかった。
あと、文字通りユーモア全開の終盤の仕掛けには笑わせてもらった。色々な意味で傑作なのだ。 -
Posted by ブクログ
「地図にない町」を含むファンタジー色の少し強い短編集。ファンタジー色が強いとは言っても、日常に感じた違和感に対して自分が狂っているのでは?と疑問を抱かせる描き方はディックそのものです。足元から揺らいでしまう不安感がたまらないです。
風変わりなところでは「妖精の王」、「欠陥ビーバー」(冴えないビーバーが主人公の寓話なのです!)。印象的なのは「宇宙の死者」急速冷凍された遺体が半生者となっているという設定など「ユービック』に通じる不気味なものがあります。子供の教育を扱ったものや、人工妊娠中絶を扱って炎上した表題作など、作品に現代が追いついてきた感がある作品集です。コロナで隔絶された日常をディックが経験したらどんな作品を著したでしょうか? -
Posted by ブクログ
前半の、ユーモアも交えつつ、あっちへ行ったりこっちで隠れたり、みたいなドタバタ劇も楽しかったけど、本下巻では、結構展開がスリリングになってくる。物語の核心に近付いていきつつ、でも本巻の中盤でまさかの主人公死亡事態が発生して、どうなるのかと思いきや、そこからは謎解きの面白さも加味しながら、感動の結末へ突き進む。主人公亡き後とはいえ、二章に一章は死後の世界における主人公の活躍が描かれるから喪失感はさほど無く、悲しみのカラーってよりは、むしろ次の世代に託された希望のカラーのイメージの方が強い。かなりの長編だったけど、翻訳の妙もあって、どんどん読み進められる良品でした。
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Posted by ブクログ
(上下巻を読んだ感想です)
若き認知心理学者のジョアンナは、マーシー総合病院で臨死体験者の対面聞き取り調査を行い、臨死体験の科学的仕組みを解明しようと試みる。だが、死後の世界を信奉するノンフィクション作家のマンドレイクもまた臨死体験者への取材を行っており、彼女の調査の妨げになっていた。そんな折、神経内科医のリチャードから彼が立ち上げる新規プロジェクトへの協力を求められる。そのプロジェクトは、擬似的な臨死体験を発生させ、その状態の脳の動きを観察するというもの。リチャードへの協力を決めたジョアンナであったが、プロジェクトの遂行には不適合な被験者が多く、深刻な被験者不足に悩まされる。プロジェクト遂行のため、被験者となることを申し出たジョアンナが擬似臨死体験でたどり着いた場所とは…
上下巻約1300頁の長編小説は、米国SF界の女王こと、コニー・ウィリスによる臨死体験をテーマにしたローカス賞受賞の大傑作です。全3部構成。
これまでに読んだウィリスの長編は、「ドゥームズデイ・ブック」と「犬は勘定に入れません」の2作品。ウィリスの長編作品で特徴的なことは、まず話がぜんぜん進展しないこと、その冗長さを補うキャラクターの魅力(特にひとの話を聞かない登場人物のウザさといったら!)、そして終盤に怒涛の展開をみせ、一気にクライマックスまで突き上げる豪腕ぶりといったところでしょうか。そんな特徴もあり、先述2作品はどちらも大満足であるとともに、読後も強く印象に残った作品でした。
…が、本書はそれら2作品を凌駕する感動を与えてくれることに。
先述の特徴は本書でも顕在。ジョアンナが擬似臨死体験でたどり着いた場所をつきとめるまでが描かれる第1部では、やっぱり話が思うように進展しません。マンドレイクにミセス・ダヴェンポート、ウォジャコフスキーといったひとの話を聞かない登場人物や逆にまったく話さないミスター・セイジ(被験者にも関わらず!)にいらいらしつつ、ジョアンナとリチャードの研究に関心を寄せることに。
臨死体験の科学的仕組み、すなわち臨死体験の意義解明に奮闘する第2部でも同じような展開で進みますが、ここでミステリー小説顔負けの大どんでん返しが…
正直、この展開はまったく予想していなかったなぁ…「え?」ってなりながら、頁をめくるめくる。そのまま第2部終了。完全な喪失感を味わい、そこから抜け出せないまま第3部突入。第3部幕間の紹介文「さて、このあともう一幕ありますが、どんな話になるかはみなさんもうお察しのことでしょう」には、「わかるかよ…」と嘆く始末。まだ全体の2/3の段階でクライマックスをもってくるウィリスですが、米国SF界の女王は最後の最後まで読者を揺さぶることに長けているようです。2度目のクライマックスはもう涙なしには読み進められません。あのにくい演出にはやられました。最後の一幕は解釈に悩みますが、希望の残る終わり方だと信じたいところ。
とまあ、とにかく終盤からの展開が凄まじい作品でした。ただ凄まじいだけでなく、それまでに張り巡らされたちっちゃな伏線や設定を丁寧に結末に結びつける器量には驚くばかりです。特に、臨死体験の意義をジョアンナやリチャードによる研究活動や病院での医療行為そのもので例えたりする件には「うまいなぁ」と感嘆。
理不尽な登場人物に笑ったり、大きな喪失感で胸がいっぱいになったり、読んで良かったと充足感に満たされたり、でもちょっぴり寂しさがつのったりと、いろんな感想で一言で表現できない本書ですが、読後のこの言い尽くせない余韻は暫く続くことでしょう。
素晴らしい作品でした。 -
Posted by ブクログ
2018年47冊目。
これまでで一番好きな短編集になった。毎晩一つお話を読むのが楽しみだった。
特に「セルマに捧げる歌」は至福の23ページ。ユーモア溢れる展開から、音まで聴こえてきそうなクライマックスの盛り上がり、そして「...ジャンッ!!」という感じの完璧な終え方。にやけが止まらなかった。
ブラックな作品も少なくはないけど、基本的に終え方が本当に優しい。長編『タイタンの幼女』でもそうだったけど、終盤の一言にすっと救われる。
ヴォネガットの魅力にすっかりはまってしまった。来週から、全4巻の短編全集が発売するということで、絶対に買って読もうと思っている。長編作品も全部読みたい。
村上春樹さんも強く影響を受けている作家のようで、確かにどことなくその感じを受けた。 -
Posted by ブクログ
2023/10/3再読
読み返してみて今回印象深いのは「聖なる争い」。
大統領の役割は情報分析し判断するコンピューターシステムが代替している。どうしてそのような判断が下されたかは人間側はわからない。敵が攻めてきているとの判断がくだされ一気に戦争状態になってしまうのを止めようとするFBI とコンピューターエンジニア。まるで現代の生成AIによる問題を予言しているかのようではないですか。この短編集にはある物をとんでもない物に代替させその存在価値を突き詰めて考えさせる作品が多く集められています。でもよく考えると今所属している社会にとっての価値であって、その社会そのものが正しいものかはわからないし保証もされていません。たまたま生まれたとろこの国であったり組織体での価値があるかないかなんてそんなに執着すべきものなのか?とも思えてきます。ディックの異常な思考から生み出された作品はこのような歪みを拡大して見せてくれます。価値や考え方の多様性をうたっておきながらある少数の考えにたやすく誘導されそれが大多数の考えであり、スタンダードだと思い込んでしまいがちな自分の傾向に楔を打ち込まれます。情報統制、思想統制は恐ろしいと思っていながら自らが進んで統制されてしまいがち。これにAIが生成する偽情報も加わって何が本物かわからない現代はまさにディック的悪夢が現実化した世界。恐ろしいではないですか。情報を鵜呑みにせず自分で検証できる思考力と想像力をつけていく事がこれからはますます大事だと痛感します。
2018/7/4
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」の原型となった表題作。宗教的な話だったのか。でも、共感ボックスというガジェットを通じてしか他人と通じ合うことができないという、ある意味強烈な皮肉でまさに現代を描写していないか?人間がディックのいうアンドロイド化しているのか?そら恐ろしくなる短編集。 -
Posted by ブクログ
自分は元々キルラキルは好きな作品だったが、本作へはキルラキル経由ではなく、ベイリー経由で偶然たどり着いた。長年色々追っていると、こういう偶然が出来て面白い。
読後感を振り返るとまるっきりキルラキル。服がテーマってなんだよ?という、多少穿ったような、本当に面白いのか?という疑問も抱きながらの読み始め、荒唐無稽でありながらもグイグイ引き寄せてくる構成に徐々にハマっていき、最終的には秀逸なオチに唸る。振り返ってみると見事としか言いようがない作品で驚くに至る。なるほど、中島かずき氏が本作の影響を受けた、というのはよくわかる。中島氏の視点を追体験する意味でも、読んでよかった。