あらすじ
時間旅行の無理がかさなり過労に陥ったネッドは、二週間の絶対安静を命じられるが、レイディ・シュラプネルのいる現代ではゆっくり休めるはずもない。そこで、指導教官ダンワージー教授はネッドをのどかな19世紀ヴィクトリア朝へ派遣する。だが、時間旅行ぼけでぼんやりしていたネッドは、自分に時空連続体の存亡を賭けた任務があるとは夢にも思っていなかった……ヒューゴー賞・ローカス賞受賞の時間旅行ユーモア小説。
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Posted by ブクログ
オックスフォード大学史学部シリーズの長編第2作。まるでシェイクスピア悲劇のようだった前作からうって変わって、今度はヴィクトリア朝を舞台としたてんやわんやのラブコメディが描かれている。
「彼と彼女がくっつかないと未来が大変なことに!」という某名作映画を彷彿とさせるストーリーはもちろん、主人公とヒロインの距離加減もまた読んでいて楽しい。ウィムジー卿に憧れる女の子なんて素敵。
そしてある意味主役の犬と猫! たかがペットと侮るなかれ、驚くほどキャラが立っている彼(&彼女)は始終物語を引っ掻き回すがどうにも憎めない。人間だけじゃなく動物も魅力的な本作は、一見の価値ありです。
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これならばわたしにもわかる。なるほどSFですね。主題はタイムパラドクスであり、メイントリックもタイムパラドクスなんだもの。そして真犯人は執事でも無害な老婦人でもなく…だと!うわー拍手喝采。そして巻頭の引用が思い起こされるわけさ。いわく「神は細部に宿る」…お見事でした!
まあしかしこの小説の楽しいところはこまごまと散りばめられたイギリスミステリとヴィクトリア朝(追記してオクスフォードw)に関する小ネタやお遊びでもあるわけですが。これは確かにニヤニヤしたくなる。そしてそれらが結構伏線めいた働きもしているところがまた楽しい。ニヤニヤ。
ジャンルなど気にせず「面白そうだな」だけで手に取ってほしい、そんな小説。いやはや面白かった。
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大好き!映画化してほしい。
ヴィクトリア朝もドロシー・セイヤーズも大好きな私にとってドンピシャなお話でした。
上巻は説明なしの冒頭とのんびりした川下りで、ヴィクトリア朝に興味の無い人は退屈だったでしょう。予想外のフィンチ登場で上巻は終わりましたが、下巻までくればスルスル読めるはずです(上巻の引きが最高)。あの日コヴェントリーで何があったのか?消えた鳥株の行方は?あっという驚きはないかもしれませんが、犬も猫も誰も死なない、誰も不幸にならない大団円です。中世から現代まで時を駆け抜けてヴェリティを探すネッドにしびれます。ロマンチック。そしてユーモラス。完璧な執事フィンチにやられて、ウッドハウスのジーヴズシリーズも読みました。本当に好きなお話です。
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タイムスリップでヴィクトリア朝ドタバタ下巻。映画化を希望。パラドックスのややこしいところは簡略できなくはないし、犬のシリルのおちゃめぶりだとか、フィンチのジーヴズっぷりだとか、きっと映える。じゃじゃ馬ならしで恋に落ちたトシーに爆笑、規則は破るためにあるレディに爆笑、翻訳小説でこれだけ爆笑するのも珍しい。ローカス・ヒューゴーダブル受賞はやっぱり伊達じゃない。
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上巻に引き続きタイムトラベルしまくりの下巻である。主人公達の思惑通りにはことが進まずにあわや歴史は変わってしまうのか?と思いきやそんなことは無くきっちり丸く収まり“主教の鳥株”は見つかる。結局時間の流れは変化を嫌い、自ら修正しようともするわけである。作中で述べられている通りの職業の人物が犯人か?と思いきや実は意外な人物が犯人でしたというパターンでミステリとしても秀逸。タイムトラベルSFであり、歴史小説であり、ミステリであり、恋愛小説であり、コメディであり、あらゆる要素を含んだエンタメ大作である。登場人物(犬1匹と猫1匹含む)も皆愛着の持てるコミカルな造形で魅力的である。上巻前半の読みにくい部分(主人公がタイムトラベルのしすぎで意識が朦朧としているのが原因)を突破すればその先はただただ楽しんで読むだけである。ぜひともあらゆる人々に薦めたい作品だ。
本作にみられるようなタイムトラベルものは世の中に数多く存在し、どれも工夫に富んだものである。同じ時間軸でタイムトラベルするものもあれば多世界を移動するものもある。純粋にSFとしての作品もあれば、ミステリやその他のジャンルと融合したものもある。人間は今のところ時間の流れに逆らうことはできず現実を見つめ現在を生き未来に進むしかない。自分の過去にたいして全く後悔していない人間などおそらく皆無だろうし、誰しも「あの時こうすればよかった」と思うことがあるはずだ。ゆえにタイムトラベルものは書かれ続けるだろう。少なくとも皆、時空間移動に対して興味をもっているはずだ。国民的アニメであるドラえもんでもタイムマシンは人気の秘密道具であり続けている。
ところで実際にはタイムトラベルは実現可能かというと科学者達(キップソンら)は少なくとも我々が生きている時代には実現不可能だと述べている。結局夢物語でしかないのかと思いきやつい先日ニュートリノが光速を超えたとの報告があった。もしこれが事実ならばアインシュタインの予測をくつがえし、極端な話、タイムトラベルが可能になるかもしれない。もちろんそんなことはやっぱり難しいのだろうがしかしそんなエキサイティングな時代に我々は生きていることに感謝したい。SF作家はタイムトラベルものを書き続けてほしいし、物理学者には時空学を研究し続けてほしい。そして願わくば時間旅行が可能になる日を拝みたいものである。
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タイムトラベルものにパラドックスはつきものだが、それがこの物語では必要不可欠で一番の魅力。なんだかバタバタと不親切極まりないスタートで無事に読み終えれるか不安であったが上巻途中から目が離せなくなって、下巻に至っては一気読み。イングランドの歴史や文学をもっと知ってたらもっと楽しめたんだろうな。
Posted by ブクログ
時間旅行ユーモア小説!
本来は過去から何かを持ち帰ることは不可能なはず…
しかしある学生が川に溺れた猫を助けて連れ帰ってしまった。
この猫が原因で歴史に齟齬が生じたら?
齟齬を生じさせないから連れ帰れたのか?
とにかく猫を元のところに戻すために過去に送られたネッドだがそこでもまた歴史と異なる出来事が起こってしまう。
どうなる歴史!? いやぁ〜後半に進むにつれてどんどん面白くなっていって一気読みしました
Posted by ブクログ
ドゥームズデイ・ブックと比べると感動がない
表紙 6点松尾 たいこ 大森 望訳
展開 6点1998年著作
文章 7点
内容 700点
合計 719点
Posted by ブクログ
長さを抜きにすれば、お気楽に読めるけど、
あちらこちらに散りばめられたヒントや、
複雑にしようとしていると思える仕掛けに
気づいて楽しむには、人物たちに惹きこまれて
じっくり読むのが一番。
引用を多用するテレンスも気取り屋ではなく
夢見がちで嫌味のないイイヤツだし。
19世紀の謎は、早くにわかるけど、
「そこと、掛かっていたいたか!」と。
イングランドの建築や美術、古典や詩だけではなく、
推理小説も知っているとより楽しめるのだろうが、
知らなくても、この世界を楽しめる。
前作に続きフィンチ君、抜群の安定感、癒し系。
天職を見つけます。
Posted by ブクログ
ヴィクトリア朝時代のイギリスにタイムトラベルする話。
面白い!久しぶりに本で声出して笑いそうになりました。作中で引用されてる本も読みたくなります。そして読み終わった後、登場人物と別れるのが寂しく感じる本。また読みたいです。
訳文に違和感がつきまとうのはしょうがないのかな。
Posted by ブクログ
現代で過去の資料が発見・解析されていくのとともに、一八八八年ではネッドたちがどう行動すればいいのかを手探りで考えていく。本来の歴史から外れそうになり、それを修正しようとするも正しい行動の指針はほとんどない。先の読めない混迷したドタバタ物語を、こうもすらすらと読ませるとは。
プロットの妙か?
ミスターCの謎。主教の鳥株の謎。時間齟齬の謎。
もつれた糸がするするとほどけて行くように、すっきりしていく後半。
Cの謎は、伏線のセンスが素敵だったし、時間齟齬の謎は驚いたとともに納得。
下巻序盤のタイムラグにかかったヴェリティがかわいい。
あたたかな陽光をさえぎる、水面まで垂れた柳の枝の木陰。そしてボートの上で眠りこんだ彼女。ドタバタ続きのところを小休憩する、空白のようなこの情景が良かった。
Posted by ブクログ
上/下巻 気になってはいたけれど、タイトルと表紙を見る限りどうも踏み切れずに本屋さんに行く度に手に取っては戻し、手に取っては戻しを繰り返し結局買ってみた作品。あまり期待してなかったけど結構面白かった。タイムトラベルもののSFだがそれだけではなくミステリーの要素もあり歴史も絡んでてんやわんやな感じ。
今どこに誰がいて、何をしなきゃいけなくて、など時間軸と場所と行動の絡みが面白い。もう猫一匹で大騒ぎです。
Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて手に取りました。
序盤=参った。読むのしんどい・・・。→長らく積読
中盤=ちょっと面白くなってきたかも
後半=一気読み
という感じでした。
SFなのかミステリなのか。
タイムパラドクスの解釈が面白かったです。
Posted by ブクログ
2057年。タイムトラベルが可能になった未来で、一匹の猫の命を救ったことからはじまるドタバタ劇。
タイムトラベルにより時差ボケならぬ時代ボケ(タイムラグ)で、疲労困憊したネッド・ヘンリーの描写から物語は始まります。
そもそも主人公のネッドが冒頭から朦朧としているので、読んでいるこっちも何がどうなってるんだか分かりにくい始まりでした。
「主教の鳥株」がタイトルにある花瓶なんだろうなぁ、ネッドはこれを過去まで行って探してるんだろうなぁ、という曖昧な認識のまま読み進めていきましたが、ネッドの意識がしっかりしていき事態が見えてくるにつれて、こちらも物語にのめりこんでいきます。
イギリス文学の引用が多く、ミステリー小説のネタバレも若干していました(特に月長石)。イギリスの歴史と文学が楽しめます。
タイトルの「犬は勘定に入れません」はジェローム・Kジェロームのユーモア小説「ボートの三人の男」からとったようですが、本書を読み終えて、これだけ多くの人が、動物が、事象が複雑に絡み合ったタイムパラドックスでありながら、なるほど、この混乱に犬のシリルは勘定に入ってなかったなぁと思いました。
にも関わらずこのブルドッグのシリルの存在感は絶大です。他にも猫のプリンセス・アージュマンドや女傑・レイディ・シュラプネルなど登場人物達は一人残らず愉快です。
SFであり、ミステリーであり、恋愛小説であり、楽しくて面白いことがぎゅっと詰まった物語でした。
Posted by ブクログ
名作ドゥームズデイ・ブックの続編(?)。
今回はドタバタ劇に終始しており、その分読み終わっての感動等はないが、予定調和の世界で安心感があり、読んでいてとくにかく楽しい。