あらすじ
●ぼくが生まれた時、地球の自転はストップしていた。人類は太陽系で生き続けることはできない。唯一の道は、べつの星系に移住すること。連合政府は地球エンジンを構築し、地球を太陽系から脱出させる計画を立案、実行に移す。こうして、悠久の旅が始まった。それがどんな結末を迎えるのか、ぼくには知る由もなかった。「流浪地球」
●惑星探査に旅立った宇宙飛行士は先駆者と呼ばれた。帰還した先駆者が目にしたのは、死に絶えた地球と文明の消滅だった。「ミクロ紀元」
●世代宇宙船「呑食者」が、太陽系に迫っている。国連に現れた宇宙船の使者は、人類にこう告げた。「偉大なる呑食帝国は、地球を捕食する。この未来は不可避だ」。「呑食者」
●歴史上もっとも成功したコンピュータ・ウイルス「呪い」はバージョンを変え、進化を遂げた。酔っ払った作家がパラメータを書き換えた「呪い」は、またたく間に市民の運命を変えてしまう――。「呪い5・0」
●高層ビルの窓ガラス清掃員と、固体物理学の博士号を持ち、ナノミラーフィルムを独自開発した男。二人はともに「中国太陽プロジェクト」に従事するが。「中国太陽」
●異星船の接近で突如隆起した海面、その高さ9100メートル。かつての登山家は、単身水の山に挑むことを決意。頂上で、異星船とコミュニケーションを始めるが。「山」
感情タグBEST3
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別の短編集である「円」と比べるとコミカルな作品が多かった印象だった。
本当に「地火」や「栄光と夢」と同じ作者か疑いたくなる。
「呪い5.0」のばかばかしさが最高だった。
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「三体」、「円」(短編集)ともにとても面白かったので、新年最初に手に取った本
面白かった!
この本でも、ミクロ視点とマクロ視点の切り替えが毎回実に鮮やか
ホラーが苦手なので、タイトルからしておどろおどろしい「呪い5.0」は読み始めるのに心構えが必要だったんだけど、ホラーどころかコメディ…?で面白かった!…と書きたいけど書けないような…
突然の九州シリーズ創始者のひとりがモデルになってる登場人物とか、やっぱり面白いといえば面白いかな
(九州シリーズは、ドラマ「九州縹緲録」と「斛珠夫人」視聴済)
1番好きなのはこれ!って即答できないくらいどれも面白かったけど、あえて選ぶなら中国太陽…いやミクロ紀元…やっぱり選べない!
解説もとても良かった
次は「老神介護」を読む
こちらも楽しみ
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我らが大劉こと劉慈欣、バカSF炸裂。
いやもう、読みながら「バリントン・J・ベイリーみたいだな・・・」と、我ながらちょっと極端だなぁと思える感想を抱きながら読んだんですけど、あとがきで大森望氏が正にその通りのことを書いていて、決して極端な感想ではなかったのだな、と安堵しましたヽ( ´ー`)ノ
とにかく針の振り切れまくった作品ばかりで、その振り切れ具合に大笑いさせられつつも、根底に重厚なハードSFの骨格があり、そのどこかに豊かな詩情とペーソスを感じるのが、さすがの大劉節です。
・・・とまとめたいのに、それを妨げる「呪い5.0」の破壊力といったら(笑)作中に「SF作家の劉慈欣」が登場してSF超大作「三千体」を刊行する、という、どこからどう突っ込んでいいのかわからなくなるほどのはっちゃけっぷり。でも、ちゃんとSFしてるんですよー皆さん。置いていかれないように注意しましょうねー。
「三体」シリーズとは別の意味で、ぶっ飛ばしてる短編集です。同時に角川文庫で発売された「老神介護」も超楽しみ!
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目次
・流浪地球
・ミクロ紀元
・呑食者
・呪い5・0
・中国太陽
・山
『三体』シリーズで壮大な世界を見せてくれた劉慈欣の短編集。
『三体』のなかでも、歴史小説風、ゲームの世界風、恋愛小説風等、様々なテイストがありましたが、短篇集はそれをもっと純度を高くしたような感じでした。
『流浪地球』は、ぜひ萩尾望都のマンガでも読みたい。繊細な心理描写と、茫漠たる世界。
断片的だけど萩尾望都の絵が脳内に浮かんでくるの。
『ミクロ紀元』は、フレドリック・ブラウンをマンガ化した波津彰子かなあ、坂田靖子かなあ。
現実を淡々と受け入れるか、飄々と受け入れるかで、読者の受け取り方も変わってきそう。
『呑食者』の、こういう展開は初めて読んだような気がする。
そうか、こう来るのか。
『ミクロ紀元』といい、これからの世界は、小さいことはいいことだ(省エネだ)になりそうだ。
もしかするとユーモアSFなのかもしれないけれど、一番怖かったのは『呪い5.0』。
世界中がインターネットで繋がれ、データがクラウド上に置かれ、AIがプログラムを自動生成できる時代…って今じゃん!
悪意を持った誰かが巧妙にその悪意をプログラミングすれば、あとは自動的に悪夢が増殖していく。
怖すぎる。
”いまの車はすべて自動運転で、インターネットが運転手だ。乗客はタクシーに乗るときにクレジットカードを読み取らせる。このとき、「呪い」2.0の新機能は、クレジットカードから乗客の名前を読み取る。(中略)殺す方法は枚挙にいとまがない。もっとも簡単なのは、タクシーを建物に衝突させたり、橋から転落させたりすることだ。”
これで2.0。
4.0になると、医療データを改ざんして、違う薬を(何なら毒を)処方する。
または治療しない。
メンタルを刺激して、自ら命を絶つ後押しをする。
そして5.0は…怖い!
逃げ場なしです。
『中国太陽』は、『三体』のエピソードに組み込まれてもおかしくないね。
中国の片田舎で、ろくに学校にも行けなかった青年が、徐々に活躍する場を広げていく話。
人生の目標その1――まずくない水を飲み、金を稼ぐ
人生の目標その2――もっと明るく、もっと水がうまい街に行って、もっと金を稼ぐ
人生の目標その3――もっと大きな街に行き、もっと大きな世界を見て、もっと金を稼ぐ
人生の目標その4――北京人になる
人生の目標その5――宇宙に飛んで太陽を拭く
人生の目標その6――星海を航行し、人類の目を再び深宇宙に向けさせる
主人公の水蛙(シュイワー)と一緒に、わくわくしながら世界の広がりを楽しんだ。
この話、好きだなあ。
『山』は、一番SFの魂を持った作品と思いました。
高みを目指すことなく、発展はない、と言われると、高所恐怖症の私としては人類の皆さんに「ごめんなさい」というしかないけど。
でも、「知りたい」「見てみたい」という欲が、科学や技術や文明を進歩させてきたということには同感です。
だからといって、山には登りません。
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「三体」で知られる劉慈欣の短編集。どの作品も壮大でスケール感あふれるアイデアが詰まっていて非常に読み応えがあった。
宇宙人の襲来や太陽の爆発といった多様なシナリオで地球が滅亡の危機に瀕し、登場人物たちが極限状況の中で揺れ動く心理がリアルに描かれている。
全体を通して外れのない充実した内容だが、中でも作者自身が登場する異色のコメディSF「呪い5.0」は、独特のユーモアが際立っており、印象深かった。
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『三体」の作者劉慈欣氏の短編集。読み応えありました。
「山」という作品が私は一番好きです。続いて「呑食者」「呪い5・0」も好きだなぁ。
思考の枠を外してくれるようなお話が好きな人はぜひ一読を。
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面白い。ロマンを追い求める作品が多かった。特に山なんかは知的生命体が知的生命体である所以として知的好奇心を華々しく描いており、なかなかに胸に来るものかある。また、中国太陽は農村出身の窓ガラス清掃員があろうことか宇宙空間にまで行くという壮大なストーリーであり、夢を忘れないことの大切さを教えてくれる。おおむねこのような評価ができる良い作品軍。呪い5.0は微妙。
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稀代のハードSF作家の短編集。呪い5.0が断トツに良かった。筒井康隆っぽいシニカルとドタバタあり、阿部和重っぽい視点のミクロにもマクロにも動ける機動力があり、めちゃくちゃ好きだった。他のも普通に作者の作者たる部分が出ててよかった。
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こちらが想定する遥か上の物語が展開することと、そのスケールのデカさに驚く。
そもそも表題作からして笑っちゃうくらいのスケールだ。
地球がヤバいから地球から脱出しよう! ではなくて、地球ごと移動させちゃえなのだ。
正直バカバカしいとも思える。だが、そこはさすが劉慈欣だ。こちらをねじ伏せる筆力で乗せられてしまう。
どれも面白く読んだが、個人的には『呑食者』『中国太陽』『山』が気に入った。
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『三体』を読んだ後だったこともあって、劉氏のSF仕掛けのスケールに自分の感覚が慣れてしまっていたかも。それでも、やはり作品世界への引き込まれ感が凄い。編まれている短編(中編)の一本一本が充実していて、きちんと読ませる作品。次も読まなきゃ。
タイトル作品の『流浪地球』。地球エンジンっていう発想も凄いんだけど、エンジンの作動状況とか、次々に起こる悲惨な超災害とか、映像が頭に浮かんでくるような描写が上手い。じっくり読みたくなる。
『呑食者』 冷静な大佐(元帥)。沖田艦長を思い出したよ。
『山』まだ見ぬ未踏の地への想い(欲望)は普遍なのか。安全を選ぶのは本能だが、より危険な方へベクトルを向ける本能もまた在るらしい。そうやって人類の地平は広がっていく。良いのか悪いのか…
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おもしろいなあ。短編集ですが、どの話もギッチリと世界観とキャラクターが練られていて、ちゃんとSFなのに分かりやすくて読みやすい。
■流浪地球
地球にエンジンをつけて太陽に飲み込まれる前に太陽系外に脱出しようというお話。50ページくらいのお話にこれだけ壮大な世界観を盛り込めることがスゴイ。何世代にも亘る永い時間軸の物語。
■ミクロ起源
流浪地球の続き?と思うようなお話。遥かな時間の後に地球に帰還した飛行士が見た地球は、一見壊滅しているように見えたが、実はミクロ化した省エネ文明が栄えていた。物理スケールは小さいけど、お話のスケールは大きい。
■呑食者
惑星を食べてペッと吐き出す「呑食者」にとりつかれてしまった。一発逆転なるかという展開がアツイ。
■呪い5.0
おバカSF?作者さんの遊び心に溢れた呪いのSF
■中国太陽
衛星軌道上に鏡面マシンをおいて人工太陽とするお話。鏡面の清掃や物理調整が重要で、その役わ担ったのはスパイダーマンと呼ばれる高層ビル窓拭きの男たちだった。
学歴や出身地による格差問題を織り交ぜつつ、ホーキング博士まで登場して、だんだんスケールが大きくなっていく様がアツイ。
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三体文庫化楽しみ!というところでウォーミングアップとして短編集を読もうかと。表題作の流浪地球は映画版があるそうで、知らなかったんですがまぁ面白かったですね。太陽の膨張に飲み込まれないために地球を太陽系外に逃す、ノアの方舟じゃなくて地球ごと移動ってのはスケールがでっかい。地球が自転をやめ、公転をやめ、地球から離れていくことの過酷さ、その問題がしっかり描かれていてハードSFって感じでした。めちゃくちゃスケールがデカくて設定もしっかりしてこの読み応えでこれしかページ数がないのが本当に不思議。分量と読み応えがまったく一致してなくてその作者の想像力の大きさに感服しました。生きることに精一杯で感情が平坦になり理論的になったかに思われた人間が、やっぱり愚かな感じもいいですね。表題作以外もバリエーション豊かで、ちょっと皮肉っぽいコメディ感もあって良かったです。コンピューターウィルスのやつとかよかった。核爆弾で遊ぶ子供みたいな、ちょっとでも悪用しようと思ったらとんでもないことができるおもちゃで遊んでしっかりとんでもないことになるみたいな。よかったです。
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様々な視点の短編でどれも面白い。
どことなく三体を彷彿とさせるけど、これが根幹にあると納得。
短編でこれだけのスケールを感じさせるストーリーはさすが劉慈欣。
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・感想
読み終わるのに時間がかかってしまって既に若干内容を忘れてしまっているものもあるけど、特に面白かったのはミクロ起源、呑食者、呪い5.0、中国太陽。
山が設定の羅列みたいな感じでイマイチノリきれず読み終わるのに時間かかってしまった…。
どの作品もやっぱり作者らしい寂寞の感?というか失いつつ諦めつつ無くしつつも続いていく、そして終わって、また始まっていく…という作風。
特にラストでいうと呑食者と中国太陽が最高だった。こういうの好き。
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「三体」のような奇想天外なハードSFの様相を見せながら(飛躍しすぎて、文章を頭の中で映像化できなかった泣)も、筒井康隆を思い出させるような、ばかばかしさとユーモアがあった。
硬軟どちらもいけるのが劉慈欣なんですね。
「中国太陽」のアメリカンドリームなストーリーが一番良かった(中国製アメリカンドリーム)
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なんというか、懐かしい読後感。
SFにちょっとはまりはじめた頃に
読んでワクワクした「非日常」な感じの。
普通に考えてありえないもんね。
地球に推進装置つけて太陽系脱出するとか。
それが出来てしまえるように思える
この押し切り方!
いいわ。
でもポイントはガジェットじゃなくて
それに関わる「人類史」のウェットさ。
わかっているのに涙腺を刺激する。
という表題短編『流浪地球』の他
地球が家畜牧場化されそうになる『呑食者』や
宇宙開拓物語『中国太陽』のノスタルジー
『ミクロ紀元』は、ちょっとピ○ミン想像し(笑)
『三体』読む前の助走として良かったかも。
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・劉慈欣「流浪地球」(角川文庫)を読んだ。その解説の加藤徹 「SFと『科幻』ー劉慈欣文学の魅力」に次のやうな文章があつた。中国は科幻系の国である。「『科幻』系の国々で は、たとえ虚構でも、そんな空想を発表した作家は、たたではすまない。」(301頁)そんなとは、例へばゴジラの東京襲撃である。これだけで恐ろしくなるのだが、中国の作家はそれでも書いてきた。どのやうに書いたか。「劉氏の出世作『三体』の物語は『文化大革命』から始まる。(中略)米ソをさしおいて、社会を恨む中国人が最初に宇宙人と交信する、というあの物語の冒頭は、科学的には不自然だが、科幻としては正しい。『文革』は、中国共産党があやまちであったと失敗を認めている、唯一の時代だからである。」(301〜302頁)以下、本書の短編について述べる。「『呪い 5.0』は中国の科幻小説では珍しく、実在の中国本土の都会が火の海になる。が、ここにもクレバーな配慮が周到にめぐらされている。まず、舞台は北京ではない。」(302頁)以下、「この作品に限っては筒井康隆氏のスラップスティック小説や横田順彌氏のハチャメチャSF作品のようである。」(同前)とか、「自分自身を作品の中に滑稽な描写で登場させた。」(同前)とあり、これらの「どの一つの要素が欠けても『幻想』ではなくなる。ギリギリの作品なのだ。」(同前)といふ。私が読んでも政治的には何とも思へないのだが、実は相当な配慮のなされた作品であつたらし い。それを「クレバー」と言ふ。これまでいくつかの作品で危なさうなのがあつたが、それらも同様の配慮のなされた「クレバー」な作品であつたらしい。かういふことまで考へて書かねばならないのは相当な苦痛であらうと思はれる。もしかしたらいかに当局をだますかの知恵比べをしてゐるのかもしれない。これは身に危険の及びかねない知恵比べであるが、これも考へ方で、「科幻は、現実社会との間合いに対する深謀遠慮を余儀なくされる反面、想像力の面では幻想の特権をフルにいかすことができる。」(同前)といふことにもなるらしい。それが現代中国のSF作家である。
・私は中国における政治と文学の関係にこだはつてSFを読んできたと思ふ。SFではないが、莫言はリアリズムで書い てきた。だからノーベル賞ももらへた。それに値する作品でもあつた。SFの場合はリアリズムではなく想像力の世界と なる。創造=想像である。「呑食者」は他の短編集にあつた作品の前日譚である。ここで呑食者たる大牙は、地球初お目 見えの時、「ヨーロッパの首脳のひとりをつかむと(中略)優雅に口に放り込み、咀嚼しはじめた。」(107頁)のだ が、これも中国人でないところに意味がある。いかに国連でも事務総長や首脳が中国人で、それが食はれたりしたらそれこそ「たたではすまない。」その一方、大牙の相手たる大佐(300年後!には元帥)は“冷静なアジア人”である。中国人としても良ささうだが、これは分からない。こちらは国連首脳とは違ふ。ここにもそんな「クレバー」な配慮があるのであらうか。中国でSFを創作するのはかくも大変だといふことである。さうするとこれまで危なさうだと思つた作品で、英語版しか出てゐないやうなのはやはり「クレバー」ではなかつたといふことか。中国や中共を思はせてはいけない。これだけなら易しい、たぶん。しかし、そこを超えると様々なことが出てくる。ちよつとしたことでも危ない。「子どものころから『愚公移山』を暗記してきた中国人にとって『流浪地球』の世界観は、すんなり胸に響く。」(304頁)さういふ世界に生きてきた人であつたのかと思ふ。
Posted by ブクログ
他の短編集よりも作者のバリエーションの豊かさを感じられる作品たちだと思う。あとがきにあるように表題作の映画版はちょっとガッカリだったので、原作の面白さが際立った。