塩野七生のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレどのような政体を採用する政府であろうと、民主政体であろうと少数指導制である貴族制であろうと君主制であろうと、その政府が長期の生命を得るには、国民一人一人の物質的欲求を満足させてやる必要がある。
だから、個人の物質的欲望を満足させることのできる政治ならば、それが民主制であろうが貴族制であろうが君主制であろうが、主義には関係なく善政と賞賛されるということだ。そして、結局は善政が長期の生命を保つ。
しかし、現実はこうはいかない。なぜなら、国民一人一人の物質的欲求を完全に満足させてやることからして、神でさえ不可能なことだからだ。
P322 -
Posted by ブクログ
ジョン・ウィリアムズ『アウグストゥス』から、史実はどうなのか興味が湧いてこちらを読む。天才の後を継いだ、天才じゃないアウグストゥスが、いかにしてローマの平和を築き、持続させたのか。いやー、面白かった。苦悩も含めて。ますます興味が沸く。
(こうしてみるとウィリアムズはほぼ史実に忠実で、そこから人物と物語を深めたこと、特にユリアを膨らませたことで物語の厚みと影が出来たことがよくわかる。これを読んだ後で、ウィリアムズを再読するとまた更に面白そう。)
しかしこれを書いた時点では、塩野さんはウィリアムズ未チェックだった模様。
いやー、ローマ面白いわー。 -
Posted by ブクログ
ローマ人の物語、第2巻はハンニバルの物語から。
“プロセスとしての歴史は、何よりもまず愉しむものである”
塩野さんの、歴史に対する一つのスタンスが見て取れます。
そして、大学で歴史を学んだ一人としても、肚落ちするものです。
私の学生当時、物語として歴史を紡いでいくことは、
司馬史学なんて揶揄も込められの扱いが主流でした。
最近の動向はわかりませんが、広く社会に還元していくのであれば、
人が生きていくための道標となるのであれば、一つの在り様としては、とも思います。
“現代の研究者でも、古代=奴隷制社会=搾取、ゆえに悪、と断定して疑わない幸福な人”
ここ最近ではあれば、行き過ぎたポ -
Posted by ブクログ
『ローマ人の物語』、シリーズ自体は1992年から始まってますので、
存在自体は大学生のころから知っていましたが、
初めてきちんと読んだのは文庫版が出始めた、2002年のころでした。
確か、ちょうど仕事で金沢に入ることが多く、そちらのお供に、
羽田空港の書店で買い求めていたのを覚えています(新幹線が通る前です)。
その後、続きが気になってもハードカバー版には手を出さず、
2011年に完結した文庫版(全43巻)を追いかけていたのですが、、
ここ最近の、急速な世界の在り様が変わりつつあることに触発されたのか、
はたまた、折よくささやかながらの長年の夢でもあった、
ハードカバー版を置くスペース -
Posted by ブクログ
在宅勤務で電車に乗らなくなると、本を読むタイミングも結構難しくなる。
本書のような歴史大作は面白いのだけど、なにぶん読み進めるのに時間がかかるタイプ。
間隔あけちゃったけど、2週間でようやく終わった。
フリードリッヒ二世は本当にお手本のような統治者。それと対比されるローマ法王はまったく尊敬もできないし、勝手に怒りすら感じてしまう。この対立を見るだけで、現代に続く宗教観の争いが良くわかる。中世は(その前もその後もかもしれないけれど)もはやローマ法王には人の言葉は全く通じないうえに嫌な粘着質タイプばかり。自分の意に沿わないフリードリッヒをどうにか排除すべく、暗殺まで試みるという卑劣さ。彼が亡くな -
Posted by ブクログ
ネタバレ塩野七生先生が描きたかったという、皇帝フリードリッヒ二世。
中世では、異端ともされてしまうくらいの圧倒的な先駆者。神聖ローマ帝国の皇位とともにシチリア王国の王位までももちながら、イェルサレムを無血開城してしまい、ローマ法王に破門されてしまったりもする。彼の信念は貫かれており、「皇帝のものは皇帝に。神のものは神に。」であった。だからこその、イスラムのスルタンと学問での友達にもなれたのだろう。
時代が時代ならば、もっと名君として君臨できたのではないだろうか。
彼の一生を描くには、ローマ人の物語やヴェネツィアの物語、十字軍の物語などなどの前段階がないと書けないような濃厚な作品に感じられた。 -
ネタバレ 購入済み
最後のローマ人スティリコ
一部ご紹介します。
・「国家」が瓦解していく過程で人々の心をより強く支配するのは、「理」よりも「情」だ。
・三世紀に実施されたローマ市民権の既得権化と、四世紀に実施されたシビリアンとミリタリーの完全分離が、ローマの軍事力を衰えさせた二大要因だ。
・皇帝ホノリウス「コンスタンティノープルへ行って、幼い甥の統治を助けたい(皇帝は幼少だ。これを機に東ローマ帝国の帝位も自分のものにしたい)。」
スティリコ「この難しいローマ帝国の現状で要になる皇帝の不在は許されません(私の立場を公認できるのは、私に対する反対派が多い以上、皇帝であるあなたしかいません)。」
・互いに本音を出さずに建前だけで相対 -
ネタバレ 購入済み
背教者ユリアヌス
一部ご紹介します。
・キリスト教の多神教及び皇帝に対する勝利は、「皇帝がその地位に就くのも、権力を公使できるのも、神が認めたからであり、その神の意向を人間に伝えるのは、司教とされている以上、皇帝といえども司教の意に逆らうことはできない」時代の到来であった。
・絶対専制の弊害の一つは、主君の意向を臣下が勝手に推し測ることだ。
・宦官のやることは常に陰湿だ。
・全ての面で苛酷な現実の中で、精神のバランスを失わないで生きていくには、苛酷な現実とは離れた自分一人の世界を作り出せるかどうかにかかっている。ユリアヌスが救われたのは、昔のギリシャの哲学と文学の世界に遊ぶことができたからだ。暗記の結果 -
ネタバレ 購入済み
ローマ帝国の完成
一部ご紹介します。
・皇帝に課された責務は、安全保障と、属州の統治、帝国全域のインフラ整備である。ハドリアヌス帝が、ローマ帝国全域の旅行をした理由は、現地を知らなければ施政者の責務は果たせないと考えたからである。自らの寿命を縮めてまで視察、整理整頓を目的とした大旅行を行ったことで、帝国の防衛システムの再構築と、法体系の整備が実現できた。
・小プリニウス「後世の人々は、われわれを記憶してくれるだろうか。記憶される価値は、われわれにだって少しはあると思うのだが。われわれの天分によるとは言わない。そう言ってしまっては傲慢にすぎる。だから、われわれの勤勉、われわれの熱意、われわれが抱いている名誉を -
Posted by ブクログ
封建社会から法に基づいた君主制国家の確立を目指し、ローマ法王の破門に屈せず政教分離を貫き、十字軍に行きながらもイスラムとの共存を考え和解の道を進む、中世ヨーロッパの先駆者・フリードリッヒ二世の生涯を塩野ワールドで描く後編。
上記の通り、フリードリッヒ二世はあまりにもいろんなことを同時代にやっていたので、頭の整理ができないところ、下巻では「間奏曲」として、女・子供・協力者など、いわゆる各論をまとめた章があったので読みやすかったです。
驚くのはフリードリッヒ二世の協力者を集める人たらしぶりと、女たらしぶり。
嫡子も庶子も一緒に教育させて自身、そして家臣の後継者を育成するなんてあらゆる意味で合理的 -
ネタバレ 購入済み
ローマによる平和
一部ご紹介します。
・防衛を目的とした戦略を最も効果的に現実化する手段として、常備軍の設立がある。
・効率性を追求するために、ローマは集権と分権を共存させた。
・統治と街道には共通点がある。①不断のメンテナンスが不可欠と考える認識力②認識するや直ちに修正するのを厭わない柔軟な行動力③それを可能にする経済力。①~③のどれか一つでも欠けたら機能しなくなる。
・健全な「国家」は健全な「家族」の保護と育成無しには成り立たない。
・妄執は悲劇しか生まない。あくまでも運命を自分の思い通りにしようとする態度は謙虚を忘れさせ、それゆえに神々から復讐されるからである。
・公正を期して作られるのが法律 -
ネタバレ 購入済み
内乱記
一部ご紹介します。
・防衛線を確立した内部での、国力の充実。秩序ある平和。それによる生活大国化の実現。生活大国とは、唱えさえすれば実現するというものではない。実現にはそれに適した諸制度の改革が先行されねばならない。
・平和とは、優劣なき国々相互の話し合いによるよりも、絶対的に優勢な国による調停とか裁定とか、止むを得ないとなれば、力で押さえつけるとかで成り立つ確率の方が高いのが、人間世界の現実だ。
・効率性とは、不測の事態も考慮に入れるからこそ、そのあくなき追求も意味を持つ。
・民主政とは、それが実施される領域の拡大につれて機能しがたくなる。寡頭政も、地理的な事情に無縁ではいられない。広 -
ネタバレ 購入済み
ガリア戦記
一部ご紹介します。
・カエサル「人間ならば誰にでも、現実の全てが見えるわけではない。多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない。」
・幼時に母親の愛情に恵まれて育てば、人は自然に、自信に裏打ちされたバランス感覚を会得する。そして過去に捕らわれずに未来に眼を向ける積極性も知らず知らずのうちに身に付けてくる。
・女は無視されるのが何よりも傷つくものだ。
・女とは、モテたいがために贈り物をする男と、喜んでもらいたいために贈り物をする男の違いを、敏感に察するものだ。
・敵地で戦う総司令官にとって最も大事なことは、戦闘指揮と、兵糧確保だ。戦争は、死ぬためにやるのではなく、生きるためにやるもの -
Posted by ブクログ
日本の世界史の講義では抜け落ちがちな第一次十字軍からルネサンスまでのヨーロッパの状況がよく理解できました。
ローマ教皇の力が絶大な時代に、「皇帝のものは皇帝のものに、教皇のものは教皇のものに」なる世界の実現に向かって突き進む力に勇気をもらいました。既存権力者(本書では教皇)に立ち向かう中で、度重なる困難に直面し失敗しても挽回する姿勢が特に印象的でした。
下巻ではフリードリッヒ二世を取り巻いた環境、特に人間関係についての記述が多く、彼のことをより理解できました。
しかし、何が彼をそこまで突き動かしたのかまでは本書からは分かりませんでした。読み終わって考えるに、青年期にシチリア王国の王、神聖