あらすじ
ガリアを制圧したカエサルは、軍の即時解散と帰国を命ずる元老院の最終勧告を突きつけられ、国賊と呼ばれるのを覚悟でルビコン河を渡った。その勢いのままかつての盟友ポンペイウスを制し、イタリア半島、ついで地中海のほぼ全域を掌握。迫りくる暗殺を予知したかのように、新秩序樹立のためにあらゆることを為しとげたカエサル。彼のみた帝政という理想――、その真の姿を描き出す意欲作。 ※当電子版は単行本第V巻(新潮文庫第11、12、13巻)と同じ内容です。
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カエサル編終幕!まさに激アツ、古代ローマが産んだ稀代の天才政治家にして天才司令官にして天才文学者。現代のリーダーが見習うべきマネジメント、戦略思考、グローバルコミュニケーションのエッセンスが山ほど詰まっていたなー。アントニウスとクレオパトラの物語も面白い。そしてここから始まるオクタヴィアヌス、アグリッパ、メチェナスによる帝政ローマ、そしてパクスロマーナ!次官もとても楽しみだ。
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ルビコンを渡って以来のカエサル動きから、暗殺、混乱を経てアウグストゥスが派遣を確立するまでの物語。
実質20年に満たないが、内容の濃い時代。カエサルの類稀なるリーダーシップ、固定観念に囚われない決断力、人間的魅力、これらが制度疲労を繰り返共和政の中で彼が台頭した原因。しかし、民衆に愛されたカエサルも共和政エリートの中ではそうでは無く、独裁を強めた結果、凶刃に倒れる。
その後、カエサルの後継者を自認するアントニウスとオクタヴィアヌスが、ブルータスら下手人を討ち果たし、最後は西と東に別れて対決姿勢を強めていくが、ここで光彩を放つのがエジプト女王のクレオパトラ。アントニウスを絡め取るのは良かったが、アントニウスがこれで堕落し、女にうつつを抜かしたダメ男の典型のように部下やローマ人の信頼を失っていく。クレオパトラについては、特に女性の目からか塩野さんの視線は厳しいが、それにしても他の同盟諸国のようにローマ内の主導権争いを静観せず、肩入れしてしまったがためにプトレマイオス朝を滅びに追いやることになる。これに対して、オクタヴィアヌスはアントニウスの失点を冷静に利用して地歩を固めていく。現実の世渡りを考えても示唆に足る二つの対称的な生き方である。
これによってオクタヴィアヌスが、アウグストゥスとしてパックスロマーナを確立する基盤が整ったことになる。
内乱記
一部ご紹介します。
・防衛線を確立した内部での、国力の充実。秩序ある平和。それによる生活大国化の実現。生活大国とは、唱えさえすれば実現するというものではない。実現にはそれに適した諸制度の改革が先行されねばならない。
・平和とは、優劣なき国々相互の話し合いによるよりも、絶対的に優勢な国による調停とか裁定とか、止むを得ないとなれば、力で押さえつけるとかで成り立つ確率の方が高いのが、人間世界の現実だ。
・効率性とは、不測の事態も考慮に入れるからこそ、そのあくなき追求も意味を持つ。
・民主政とは、それが実施される領域の拡大につれて機能しがたくなる。寡頭政も、地理的な事情に無縁ではいられない。広大な領土の統治が機能的に成されるには、何よりもまず効率性が求められる。
・カエサル「どれほど悪い結果に終わったことでも、それが始められたそもそもの動機は善意によるものだ。」
・女とは、理によったのではなく、自分の女としての魅力によったと信じる方を好む人種なのである。
・優れた男は女の意のままにならず、意のままになるのは、その次に位置する男でしかない。
・ローマは、たとえ軍事上ではローマの覇権下に入っても、国内が安定していれば独立国として認め、同盟国の関係を続けつつも、相手国の内政には干渉しないことを、対外政治の基本方針にしていた。屬州化すれば、屬州税は入ってきても、総督を派遣しての内政と防衛の双方ともの責任が、ローマにかかってくるからである。同盟国ならば、相互安全保障を心するだけでよく、内政も自国防衛のための出費も、その国の負担になるからであった。
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カエサルは、歴史上の人物の中でも最も好きな人物である。
以下は、この巻と前巻に記述された「カエサルの思考、行動」について。
・生涯を通じて彼を特徴づけたことの一つは、絶望的な状態になっても、機嫌の良さを失わなかった点である。
→ 楽天的でいられたのも、ゆるぎない自信があったからだ。
・カエサルは、自分の考えに忠実に生きることを自らに課した。
それは、ローマの国体の改造であり、ローマ世界の新秩序の樹立であった。
・失敗の挽回には、二つの方法があるが、カエサルは後者の代表格であった。
1)失敗に帰した事態の改善に努めることで、不利を挽回する人。
2)それはそのままで、ひとまず置いておき、別のことを成功させることによって、情勢の一挙挽回を図る人。
・人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。
多くの人は見たいと欲する現実しか見ない。 (カエサルの言葉)
失敗の挽回法は参考になる。
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いよいよ、ルビコン渡河以降のカエサル(シーザー)。ポンペイウスとの戦い、ローマ掌握、暗殺、クレオパトラとアントニウスまで。
ローマの版図が拡大し元老院による共和制の限界が見えた状況の打破としての専制政治、帝政への移行。ローマが辿った政治制度の分析に納得。塩野七生のシーザー大好き感もたっぷり。プロヴィンスはそもそも属州のこと、等、イタリア愛、フランスへの対抗意識も見えて面白い。
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カエサルの「3月15日」―人間を、歴史を動かした男の全貌。世界の運命を一身に凝縮させてルビコン川を渡ったカエサルは、たった五年間であらゆることをやり遂げた。地中海の東西南北、広大な地域を駆けめぐり、全ての戦いに勝ち、クレオパトラにも出会った。ついにはローマ国家改造の全改革をなし遂げて、元老院・共和政に幕を引く―。読みだしたらやめられない面白さ、迫真の筆致で描かれるコスモポリス(世界国家)を目指した男の物語。
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ルビコン川を渡る。
サイは投げられた。
ブルータスお前もか。
来た、見た、勝った。
クレオパトラの鼻が。。。
ガリア戦記。
などなど、昔から聞いていた有名な言葉がすべて
ユリウス・カエサルに起源している。
古代ローマが生んだ最高の天才。
これまでのカエサルを見る目がガラッと変わった。
カエサルの言葉で印象に残ったものをもうひとつ。
「人は見たいものしか見ない」
そうであってはならないという逆説的言葉だ。
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誰も見なかった、新しい世界観を見据え、ルビコンを渡ったカエサル。彼の身上であった「寛容」故に暗殺されたが、後継者を含め先を見通すカエサルは死後も自らの構想した世界を実現していく。
心に残ったのは、「何ものにもましてわたしが自分自身に課しているのは、自らの考えに忠実に生きることである。」というキケロへの手紙の彼のコトバ。
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なんでカエサルを殺してしまったのか、というのを同時代から見たら意味があったんでしょうけど、後から見たら無意味もいいとこという感じ。
それにしてもカエサルという人は実に素晴らしい人だったのではないかと思います。塩野さん自身がそう解釈されているんでしょうけど、ともかく自分ではなくローマのために生きた人だったんだと思います。
そのカエサルを無意味に殺したローマ人たち。そしてその報い。それはさておき、続きはパクス・ロマーナ。ちょっとここで休憩しよう。
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第5巻は紀元前49年「ルビコン」からカエサルの勝利、カエサル暗殺、アントニュウスとクレオパトラ、オクタヴィアヌスの勝利、紀元前30年帝政ローマのスタートまで。
たった19年間だがめまぐるしい展開でローマ世界が動く、歴史が動くときは、一気に世の中が変わるのだろう。
西洋の歴史は、帝政から共和制へ進んだとばっかり思っていたら、ローマは王政から共和制、帝政へと進んでいる、共和制が正義ではない。
多神教のローマがなぜキリスト教を国教とするのか、興味は尽きない。
「カエサル・・・何ものにもまして私が自分自身に課しているのは、自らの考えに忠実に生きることである。だから他の人も、そうあって当然と思っている」
「オクタヴィアヌスにはカエサルにはなかった資質があった。それは、偽善だった」
「失敗した場合、人は二種に別れる。失敗した事態の改善に努めることで不利を挽回する人、それはそのままでひとまずは置いておき、別のことを成功させることによって、一挙挽回を図る人である。カエサルは、後者の代表格」
「カエサル『内乱記』・・・パニックが起きると、人は自分個人のことしか考えなくなる」
「憎悪とは対等かでなければ上位にある者に対して抱く感情である」
「苦境は友を敵に変える」
「カエサル・・・アレクサンドリアで、ポンペイウスの死を知った、小林秀雄・・・大理石に刻まれた、文章というよりは古代の美術品」
「クレオパトラとカエサル・・・女とは理によったのではなく、自分の女としての魅力によったと信じるほうを好む人種なのである」
「カエサル・・・自己制御能力とは、緊張の張りとゆるみを自ら制御する能力でもある」
「筆者・・・歴史は、勝者が自分たちに都合のよいように書いたものだという、思い込みがまかり通って久しい。そうとは限らない。カエサル暗殺時のキケロの書簡集こそが、現場証人の証言集である」
「なぜカエサル下の高級将校が、カエサルの暗殺に参加したのか・・・王政への移行を阻止し、元老院主導の共和制に戻すこと・・・人間ならば誰にでも、すべてが見えるわけではない。多くの人は、自分が見たいと欲することしか見ていない」
「ひとかどの女ならば生涯に一度は直面する問題、優れた男は女の意のままにならず、意のままになるのはその次に位置する男でしかない」
「歓待とは、客人が無意識かで望んでいたものを提供することである。ただし、それだけでは充分ではない。満足してもいつかは飽きるからだ。ゆえに、思いもしなかったものを提供することで。プラスアルファする必要がある」
「他者の文化を、自分のものにはしなくても尊重することこそ、知性である」
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ユリウス・カエサルがルビコン河を渡った以降のお話。
「賽は投げられた!」で有名な、その後。
塩野先生はカエサルが大好きなので絶賛。
たしかにカッコイイ惚れます。
兄貴!ついていきやすぜ!!!そんな感じ。
かの有名なクレオパトラも出てきます。
塩野版彼女、結構コテンパン。
塩野版オクタヴィアヌスは好き。大好きです。
そして私のローマバイブル。
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英雄が暗殺されるのは悲しい。生きていたら、何をどこまで成し遂げていたか。日本では織田信長や坂本龍馬だが、カエサルはスケールが違う。暗殺者が愚かなのも余計に悲しい。
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カエサルすごい!!スッラと同じ方法を絶対に取らずにローマを内側からジワジワ改革していった天才。
カエサル暗殺後の、暗殺者サイドとか残されたローマ市民とか、カエサル派も反カエサル派も、圧倒的無力感。
歴史の授業だとブルータスがカエサルを暗殺した、くらいの分量でしか教わらないから、ブルータスっていうやべえ奴、って勝手な印象抱いてたけど、極めて普通の青年っていう印象。担ぎ上げられてブルータスも大変だったろうなあ。(なぜか同情)
アントニウスとクレオパトラの二人が残念すぎるのと、オクタヴィアヌスにどうしても血の通った人間味を感じられなくて、終盤カエサルが恋しくなった。笑
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カエサルはついにルビコン川を渡り、ポンペイウス擁する元老院派との対決に臨む。決意を決めたカエサルとは対照的に、国賊認定をしてカエサルを追い込んだ元老院派はルビコン川を越えたカエサルの行動は予想できていなかった。冬季であったため、軍勢を整えるためにも春まで待つだろうと予想をしていたからであった。準備ができていないポンペイウス陣営は、早々にローマを捨て南伊ブリンディシに向かい、イタリアをも捨てギリシャへと渡る。ポンペイウスは地中海の海賊一掃作戦を通して地中海全域に渡り多数の「クリエンテス」を有しており、イタリア内での決着よりも地中海全域を盤面とした方が有利とみたからであった。カエサルは当然この展開を防ぐべくイタリア内での早期決着を望んでいたが、海軍を持たないカエサルは港を封鎖することができず、ブリンディシ包囲戦でポンペイウスをイタリア内に留めることはできなかった。
ポンペイウスをギリシャに逃した事で長期戦となった対決だったが、「東」での決着を万全とするには「西」のスペイン・「南」のアフリカを支配下におき、背後の憂いを断つ必要があった。カエサル自身はスペインに赴き、ポンペイウス配下の将を降伏に追い込んだものの、アフリカを任せた若き将クリオは任務を果たすことができずアフリカの地に散ることとなった。
南への憂いを残す形となったが、カエサルはポンペイウスを追いギリシャへの向かう。決戦の地をギリシャに移した後は、ドゥラキウム攻防戦、ファルサルスの会戦にて決着となり。ポンペイウスは逃亡を強いられる形になる。この時、ポンペイウスには2つの選択肢があった。①クリオを撃破したポンペイウス派の武将と合流し体制を立て直して再度カエサルとの対決に挑む。②エジプトのプトレマイオス朝への「貸し」を頼りに、一時の助力を乞う(プトレマイオス朝を共同統治している姉と弟の父親は過去にポンペイウスに助力を求め、ポンペイウスのお陰で王に返り咲きした過去がある)。ポンペイウスの取った選択は②であったが、これが判断ミスとなる。カエサルの覇権を予知したプトレマイオス朝は、ポンペイウスをだまし討ちしてしまう。エジプトに到着したカエサルはポンペイウスの変わり果てた姿を見て涙を流したと言われている。すぐにローマへ帰ると思われたカエサルだったが、意外に長期滞在をすることになる。弟(プトレマイオス13世)と姉(クレオパトラ)の権力闘争を収める必要性を感じたからであった。この時、有名な逸話として国外逃亡中の身にあったクレオパトラは洗濯籠に隠れてカエサルの居室に侵入し、カエサル目の前に突然現れてその美貌で魅了したというのがある。クレオパトラの鼻がもう少し低ければ歴史は変わっていた、みたいな、どうしようない話も残っている。(クレオパトラに魅了されたか否かはともかく)カエサルの下した裁定は、先王の遺言(弟と姉の共同統治)を守る、という事であった。プトレマイオス13世陣営からすればたまったものではない。カエサルへ反抗しアレクサンドリア戦役が始まる。戦力では劣ってたカエサル陣営は援軍が来るまで耐えるしかないが、援軍が合流した後は即決着となり、プトレマイオス13世は戦死。戦役後もカエサルは姉クレオパトラともう一人の弟プトレマイオス14世との共同統治を裁定するが、プトレマイオス14世はまだ幼いため、実質的にはクレオパトラ単独の王位となる。ポンペイウスの残党が残るアフリカへ赴いたカエサルは、タプソスの会戦にて勝利し、内乱を終えるのであった。
ローマでの凱旋式を終えたカエサルは、終身独裁官として様々な治世を行うも、カエサルの独裁を警戒した勢力により3月15日に暗殺されてしまう(著者によると、ヨーロッパでは3月15日はカエサルが暗殺された日として皆が認知しているとのこと、本当か?)。カエサル亡き後は、ローマ世界はアントニウスとアクタヴィアヌス(後の初代皇帝アウグストゥス)の覇権争いへとステージを変える。オクタヴィアヌスはカエサルの姉の子を母親にもっており、カエサルの遺言状にて後継者に指名されていた。暗殺者のメンバーには、カエサルの元幕僚も名を連ねており、カシウス、マルクス・ブルータス、デキウス・ブルータスが主要なメンバーと言える。デキウス・ブルータスはカエサル配下の軍団長であり、遺言状ではオクタヴィアヌスに相続できない場合の次点に名前を挙げらていたほど信頼されていた人物であった。「ブルータスお前もか」のブルータスは、一般的にはカエサルの愛人セルヴィーリアの息子であるマルクス・ブルータスとされているが、このデキウス・ブルータスの事を指す説もあるとのこと。暗殺直後は騒然となったローマも、次第に英雄カエサルの暗殺者達を恨むムードが醸成されていく。共和制主義者のキケロは暗殺者達を援護する事でローマが共和制に戻る機運を高めようとするが、既に時代はそれを許さなかった。カエサルの死後専横を誇っていたアントニウスを弾劾する演説(フィリッピケ)を行うも、民衆の支持は得られなかったようである。軍事力を得たオクタヴィアヌスは、元老院を脅して暗殺者達を国外追放とする法案を成立させ、北伊属州へと旅立つ(この時、キケロはオクタヴィアヌスがアントニウスを打倒してくれる事を期待していたらしいが、オクタヴィアヌスとアントニウスが組んで第二次三頭政治を表明した事で希望は打ち砕かれた)。三頭政治と言っても、その一角レピドゥスの存在感は薄く、実質的には二人のタッグであった。この二人はカエサルの「寛容(クレメンティア)」の精神は引き継がなかったようで、スッラばりの「処刑者名簿」を作成し、共和制主義者・ポンペイウス派の人物を皆殺しにしてしまう。
この後は、オクタヴィアヌスとアントニウスの権力闘争の色が濃くなるが、この時点は圧倒的にアントニウスが有利な状況だった。アントニウスはローマを二分し、「西」をオクタヴィアヌスに、裕福なオリエント文化圏を有する「東」を自身の担当とした。エジプト女王のクレオパトラを呼びつけカエサル・ポンペイウス対決の時に協力しなかった事を弾劾しようとしたアントニウスだが、豪華絢爛な登場を演出したクレオパトラに圧倒されると共に、クレオパトラに文字通り骨抜きにされてしまったアントニウスのこの後の運命は悲惨なものとなる。クレオパトラとの間に子供を設け、事あるごとにクレオパトラ寄りの判断を行うようになったアントニウスに対し、ローマの民衆は冷ややかな視線を送る。アントニウスとしては、カエサルも成し遂げられなかったパルティア遠征を成功させれば、カエサルの後継者であるオクタヴィアヌスの正当性も失われるだろうという戦略であった。ローマ防衛線構築のためのパルティア遠征なら兵もついてくるが、クレオパトラの野望に巻き込まれたアントニウスはパルティアの占拠を戦略とするも、これでは兵はついてこない。結局パルティア遠征は失敗に終わり、あまつさえ凱旋式をエジプトにて行うという暴挙に出た事でローマ市民の反感を買ってしまう。オクタヴィアヌスは巧みにプロパガンダを行い、アントニウスをそそのかしたクレオパトラという図式を喧伝し、あくまでもローマ対エジプトという図式の中で、打倒アントニウスに向けて軍を発するのであった(オクタヴィアヌス対アントニウスという図式とでは、兵の士気に差が出るからであった)。
オクタヴィアヌス対アントニウスの決戦は「アクティウム(ペロポネソス半島より北西の海域)の海戦」に委ねられる。アントニウス側は最初から海戦にて敗北した際はエジプトの陸戦にて決着を行うという戦略を決めていたがこれが裏目に出てしまう。海上に指揮を執っていたクレオパトラが激戦の地獄絵図に折しも吹いた北からの風に乗り早々に離脱してしまったのである。アントニウスもこれを追い南へ逃げるが、主力軍が湾に取り残されオクタヴィアヌス軍に囲まれて降伏してしまう。これを見たアントニウスは絶望することになる。
ローマ軍が迫る中、残る騎兵を先導し迎え撃とうするものの、味方騎兵の寝返りに遭う中、クレオパトラ自死の報をアントニウスは受け取る。これに絶望したアントニウスは自死を選ぶが即死はできなかった。そこにクレオパトラの自死は誤報であると告げる使者が到着し、アントニウスは自身をクレオパトラの元へ連れていくよう命じ、死後は愛する女クレオパトラの腕の中で死んだ。クレオパトラはローマへ連行される道すがら、忍ばせた毒蛇で自死したと言われている。ここに長きに亘った内乱が終結するこになり、オクタヴィアヌスによる「パクス・ロマーナ」の時代となるのであった。
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ルビコン以後は カエサルとポンペイウスの内乱、元老院との政治闘争が中心。外国だけでなく、自国をも デザインしようとしたのが、ハンニバルやポンペイウスとの違い
カエサル50歳以後の 数々の改革は 驚く。ローマの安定成長の基礎を カエサル一人で 築いている
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壮年後期から、死後のアントニウス・クレオパトラ対オクタヴィアヌスまで。
カエサルの描写は絶対著者の贔屓目が入っているんだろうと思う。
思いはするけどマリウス、スッラの粛清の凄惨さを見て育ち、40歳にして立って寛容路線を貫いた生き方。それから彼の死後のアントニウスとオクタヴィアヌスによる復讐とそれに続く戦争を考えると、やっぱりカエサルは特異な得難い人物だったんだろうなあ。
同時代人のキケロも面白い人物だなあと思うんだけど、当時の当事者にとってはなかなかそう思えないだろうし、実際カエサル暗殺後には粛清されている。
そんな厄介な人物を最後まで遇したカエサルについて、やっぱりもう一度考えずにはいられないのだった。
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塩野氏が紀元前に生まれたカエサルに惚れてしまっていることが感じられて面白い。そのためカエサルびいきになっている部分があると思われるが、カエサルの内面へのアプローチはこれ以上にないというくらい深いのではないか。彼女が推測しているカエサルの意思や意図というのは赤裸々ではあるが本当にそうであったとしてもおかしくないと思ってしまう。
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カエサルが暗殺された。
第四巻からここまで読んできて、カエサルに魅了されてしまった私には2000年以上も前のことながらなにか、悲しいものがあった。
元老院による寡頭制に疑問を呈し、人生をかけてローマ帝国を築き上げようとしたカエサル。
戦略的頭脳にも、政治的頭脳にも優れ、それでいて女好き。 魅力満点の男である。
また元老院に担がれた感じの「三頭政治」の一人、ポンペイウスも戦いに敗れ、戦術家としてはおもしろい人物である。
この二人の「ファルサルスの戦い」は、読んでいるだけで興奮してしまう。
才能ある二人だからこその歴史上に残る戦い方。
当時のローマ人の知性には頭が下がる。 今でいうインテリジェンス(情報)を十分に駆使した戦いは、まさにお手本ともいうべきものであった。
そんなカエサルの凱旋式でのシュプレヒコール 「市民たちよ、女房を隠せ。禿の女たらしのお出ましだ!」は傑作である。 ユーモアもあるローマ人にもまた魅力を感じる場面であった。
そんな彼の考えとは正反対のローマ人。共和制ローマを維持することこそ、ローマの本来の姿と疑わなかった人たちもまた、否定されるべきものではないであろう。
どちらが正しく、どちらが間違っているかの答えは出せないのではないか?
カエサルの考えたは、どの民族であろうが関係ないとしたところには、現代に生きる私も違和感がある。
それよりも日本古来のものを重視したい、と願うのは私だけではないであろう。
それと同じ考えだったかはわからないが、小カトーは最後に壮絶な自死を選ぶが、彼もまた、ローマを愛した男であったことは間違いない。
それに比べて・・・と言っては失礼だが、この書籍で登場するキケロは何とも優柔不断であった。
ローマ有数の知識人としてだれもが認め、その文体も素晴らしいものであったそうであるが、ひたすらグチを言う人物として私の頭の中に定着してしまった。
彼もまた、共和制ローマを愛した男であったが・・・
カエサル暗殺とはなんだったのか?
カエサルが殺されたことでは、共和制ローマは復活しなかった。
市民はそれを望まなかったからなのか。
それが今後のローマにとってよかったのか、あるいは・・・
カエサルに後継者として指名されたオクタヴィアヌス。
カエサル死後、オクタヴィアヌスはひたすら帝政ローマを樹立する道を選ぶが、そのやり方がカエサルとは正反対なのが印象的だ。
処罰者名簿の作成がその典型。 カエサルの後継者として恥じぬよう、必死だったのか? あるいは、ローマを自分のものにするための行動なのか?
カエサルに心奪われた私は、オクタヴィアヌスのやり方が少々、強引で、カエサルはこれで納得するのか?と疑問に思ってしまった。
まぁ、クレオパトラというエジプトの野心を持った女に心を奪われ、ローマ人としての誇りも捨ててしまったアントニウスを敵に回しての戦いは別として。
カエサルの副将として戦ったアントニウスの人生さえも狂わせたクレオパトラとはそこまでの美女だったということか。
クレオパトラ = 世界三大美女、しか印象のなかったが、このような形でローマとかかわりあい、悲しい最期を遂げているとは・・・
しかしこれで、いよいよオクタヴィアヌスの帝政ローマがはじまるわけである。
どんなローマになっていくのか。 カエサルの臨んだローマなのか。 期待とともに、不安の気持ちで次巻を読み始めることとなりそうだ。
カエサルの有名な言葉
人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は見たいと欲する現実しか見ない
私の心に残るこの言葉で第五巻の書評を結ぶ。
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ローマ帝国の礎を築いたユリウス・カエサルの偉業。彼の遺志を受け継いだオクタヴィアヌス。日和見な文筆家キケロ。まだ日本に卑弥呼もいない古代なのにこのスケールの大きさ、人物のダイナミックさ、進んだ文明。いやあ、読み応えがあった。ときどき独特の塩野節が気になるかな。
Posted by ブクログ
英雄カエサルの壮年後期〜改革〜暗殺。
さらに後継者オクタヴィアヌスがアクティウムの海戦で
アントニウス/クレオパトラ連合軍を破るまでを描く。
志半ばにして凶刃に倒れたカエサルであったが、後継者選びには成功した。
当初の目論見通り、事実上共和制に幕を引き、帝政への礎を築いたカエサルの
卓越した政治手腕と先見性に脱帽の一冊。
野心に燃えるクレオパトラ、恋に落ちるアントニウスなど
カエサル以外の登場人物のドラマも見逃せない一冊でもある。
Posted by ブクログ
ルビコンを渡ったカエサルはあれよあれよとローマを制圧。
正直、著者のカエサル萌えがひどすぎる。批判されない完全無欠のスーパースターとして、カエサルを描くなら、小説でやってくれ。
カエサルの陰の部分を書かないおかげで、カエサル暗殺シーンが非常に薄っぺらい。シェークスピアによるフィクションなのはわかってるけど、名言「ブルータスよ、おまえもか」の暗殺シーンに期待したほどの感動・迫力はない。
この巻ではこのシーンこそ、一番力を入れるとこだろう。