【感想・ネタバレ】悪名高き皇帝たち──ローマ人の物語[電子版]VIIのレビュー

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Posted by ブクログ 2014年08月31日

 『クォ・ヴァディス』および、藤本ひとみのマリナシリーズ『愛してローマ夜想曲』を読んでいたので、皇帝ネロは極悪非道な悪人のイメージが強かったが、思ったよりもまともな人だったのかとわかり、ほっとする。後世のイメージがこれだけ悪いのは少し気の毒。妻のポッペアについても、「史上言われるような悪女ではない」...続きを読むとのこと。クラウディウス帝の皇妃メッサリーナの方がよほど素行が酷かった様子。
 ティベリウス帝とクラウディウス帝の性格の違いがとても面白い。ティベリウス帝は、元老院に嫌気がさして隠遁政治をしたが、政治は投げなかったどころかきちんと行った。一生働かなくてはいけないのだから、隠遁したって政治をちゃんとやってもらえればそれでいいじゃないかと私などは思うけれど、そういうわけにはいかないのが世間か。
 クラウディウス帝。身なりがだらしがなく、学者肌で、一人では生きていけなくて、妻にいいように支配されてしまうところになんだかサラリーマンの悲哀のようなものを感じる。頑張っているのに報われない愛すべき人だったのかも…。
 皇帝の人となりをこのように描いてもらえると、ローマ皇帝に親近感を覚える。(この巻以降は、世界史で名前がほとんど出てこない皇帝の治世が続くので、楽しく読むことができるか?)また、ユダヤ教の特殊性についてかなりページが割かれており、ユダヤ教の勉強にもなる。

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Posted by ブクログ 2012年09月10日

ティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロ―帝政を構築したアウグストゥスの後に続いた四人の皇帝は、人々の痛罵を浴び、タキトゥスら古代の史家からも手厳しく批判された。しかしながら帝政は揺るがず、むしろその機能を高めていったのはなぜか。四皇帝の陰ばかりでなく光も、罪のみならず功も、余すところなく描いて...続きを読む新視点を示した意欲作。ローマ史を彩る悪女・傑女も続々登場。

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Posted by ブクログ 2011年10月23日

意外(?)と面白かった。悪名と言われても、恥ずかしながらここで書かれている皇帝を私は知らなかった。。とは言うものの、皆個性的で、十分に楽しめる内容。

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Posted by ブクログ 2010年03月13日

ヨーロッパの歴史ができる様子を眺めているように本書に引き込まれる

歴史の事実が著者により、現代の出来事、人物に感じられるように描く著者に脱帽


神君アウグストゥスの後に続いた、ティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロの4皇帝時代の物語。

ネロを最後にカエサルから続くユリウス・クラウディス朝...続きを読むは終焉する。

後の歴史家タキトゥスによって悪評ばかりが目立つこれらの皇帝を暖かい目で再評価した作品、と感じた。
文中ではタキトゥスの悲観的な記載に対する苦言が散見される。

ティベリウスは立派で非常に共感できる部分が多い
ネロが暴君ネロとして歴史上、有名な理由には納得がいかない

各皇帝とも個性的で、本人の意思とは裏腹に、それぞれの理由で元老院や人民の支持を失っており反面教師として学ぶに良い教材。

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Posted by ブクログ 2009年12月30日

神君アウグストゥスの後に続いた、ティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロの4皇帝時代の物語。ネロを最後にカエサルから続くユリウス・クラウディス朝は終焉する。
後の歴史家タキトゥスによって悪評ばかりが目立つこれらの皇帝を暖かい目で再評価した作品、と感じた。文中ではタキトゥスの悲観的な記載に対する苦...続きを読む言が散見される。
ティベリウスは立派で非常に共感できる部分が多いが、各皇帝とも個性的で、本人の意思とは裏腹に、それぞれの理由で元老院や人民の支持を失っており反面教師として学ぶに良い教材。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

長い歴史の中のどうでもよさそうなエピソードすらきっちり深い読み物に仕上げてしまう塩野七生に脱帽。ヨーロッパが形成されていく様を自分で見ているような驚きがある。

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Posted by ブクログ 2009年10月07日

第7巻は紀元14年、第2代皇帝ティベリウスの即位から、紀元68年第5代皇帝ネロの自死まで。
「追従かそれを言われた人を不快にするのは、そのようなばかげたことを言われてイイ気になる程度の人と値踏みされた事が不快なのである」
「人事権を手中にしているのは権力を手中にしているのと同じだが、その施行となると...続きを読む簡単ではない。当事者に加えて周辺も納得させねばならない」
「外交は平和裡の解決ではない、軍事力を使って脅した後こそがもっとも有力な外交であると歴史が証明している。人間とは、理で目を覚ます場合は少ないのに、武力を突きつけられれば目を覚ますものだからだ」
「多神教の神は、一神教の神がそれを信ずる人々の生き方まで定めるのとは違って、人々を保護する役割しか持たない」
「情報収集の重要性とは絶対的な速度にはなく、他の誰よりも早くそれを得て、得た情報を基にしての判断を他の誰よりも早く下し、そしてそれによる指令を他の誰よりも早く発することにある」
「カリブ島の干菓子の端の崖の上に立てられたヴィラを南の海上から眺めたことのある人ならば、ロードス島中部のリンドスの崖の上に建つ神殿を思い出すのではないか・・・リンドスのアクロポリスの遺跡を訪ねたときは、小石が散乱する細く曲がりくねった田舎道をロバの背にゆられながら、やっとの想いで着いたものだった」
「人間は、常にニュースを求める。大事に関心を持つ必要がなければ、小事に関心を持ってしまう」
「カリグラ・・・すべてを所有する人にとっての最大の恐怖は、現に所有しているものを失うことである」
「ユダヤ教・・・一神教の神は非寛容な神にならざるをえない。多神教の世界で、弱者の立場で守り抜こうとすれば、神から選ばれた民族であるという選民思想が、唯一の拠りどころになる」
「常に弱者の立場にあり続けた民族は、被害者意識から自由になることが難しい・・・強者に対しては過敏に反応しがちである」
「テロ行為とは、文明が未熟であるから起きるのではない。権力が一人に集中しており、その一人を殺せば政治が変わると思えるから起きるのである」
「歴史に関心を持つということは、懐古趣味などではまったくない。人間性に関心を持つか否か、がそれを決める」
「歴史に関心を持つことは、自分を含めた個々の人間の独創力に全面的な信を置かないことでもあるからだ」
「理を解してそれを了承する人は、常に少数派である。多数派には、脅しのほうが効果的な場合が多い」
「皇妃メッサリーナの放縦は、虚栄欲と物欲と性欲という、考えてみれば実に女らしい欲望を満足させることに向かう」
「多くの人の人生は、喜劇と悲劇の繰り返しで成り立っている」
「誠心誠意やっていれば分かってもらえるのか?人間とは心底では、心地良くだまされたいと望んでいる存在ではないか」
「人間は問題がなければ不満を感じないというわけではない。枝葉末節なことであろうと問題を探し出しては、それを不満の種にするのは人間性の現実である」
「勝気な女が逆上すると、言葉は洪水のごとくにほとばしり出る」
「ネロには、問題の解決を迫られた場合、極端な解決方法しか思いつかないという性癖があった。本質的にはナイーブであったゆえ・・・」
「マキャベリ・・・悪事を働かなければならない場合は一気にやるべし。他民族侵略という悪行は短期に済ませ、戦後処理を充分にしたほうが、征服者にとっても被征服者にとっても好都合。歴史は侵略の歴史でもあり、人間の悪業の歴史でもある」
「戦争は、武器を使ってやる外交であり、外交は、武器を使わないでやる戦争である」
「新しい運動は、もっとも身近な人々からの反発をまず浴びるものである。エルサレムのユダヤ教会の敵意が、イエスの処刑の真因であった」
「ユダヤ教の選民思想・・・他民族への布教には不熱心」
「キリスト教・・・キリスト教の神の前には人間はみな平等、その神を信じない人は真の宗教に目覚めないかわいそうな人だから、その状態から救い出してやることこそがキリスト者の使命と信じている」

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

高くて面白いのでもったいなくてちょっとずつ読んでる途中です。『悪名』高き皇帝はとても魅力的だ。でも、ユリウス・カエサルの足元にも及ばない。当時のローマ市民もそう思ったのかなあ。

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Posted by ブクログ 2022年11月13日

専門家や歴史好きの一部からは批判されているが、私はこのシリーズが好き。単純に面白いから。正確な歴史を知るというより、ローマ人に想いを巡らせる上で、とても役に立つと思っている。
「悪名高き皇帝たち」では、ローマ帝国第二代皇帝ティベリウスから第五代皇帝ネロまでの治世が描かれている。カエサルが道を開き、ア...続きを読むウグストゥスが作り上げた帝政を、次代の皇帝たちがどのように治めていくのかがテーマになっている。
ローマ帝国の面白いところは、皇帝があくまで市民の中の第一人者であるところ。強大な権力が付与されるが、それには元老院と市民の支持が必要なのである。冠を被ったステレオタイプの王様とは全くの別物だ。どちらかというと大統領に近い。そして大統領と同じく、高度な統治能力が求められるわけだが、皇帝になる誰もがこの能力を持ち合わせているわけでもない。というのも、カリグラ、クラウディウス、ネロの3名は実力というよりは血統と都合により祭り上げられて皇帝になっているからだ。なので能力を測られもせず国のトップに立っている。その割にクラウディウスは優秀だったのがローマにとっては幸いだったかもしれない。カリグラみたいな皇帝が三連続してたら流石に帝国も崩壊していたかも。。いや、流石にその前に手は打たれただろう。何故ならネロ帝のヤバさを痛いほど感じた軍団や元老院は彼の殺害を画策したのだから。この時代のローマ人には、悪い状況を修正する気概と能力があったのだ。そして修正力は血統主義から能力主義への移行に生かされたようだ。
このシリーズの面白さは扱う時代に左右される。正直なところ、ハンニバル戦役を描く2や、カエサルを描く4、5の方が手に汗握って面白い。平和なローマとなると、どうしてもハラハラする展開が少なくなる。それでもそこそこ面白いヒューマンドラマが楽しめるので、これからもこのシリーズを読んでいきたいと思う。

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ネタバレ購入済み

経験と理性

mac
2022年09月30日

一部ご紹介します。
・偽善とは、演技をすること。フリをすること。
・全てを所有する人にとっての最大の恐怖は、現に所有しているものを失うことである。
・最も有効な外交は、軍事力を使って脅したあとで握手をすることだ。なぜなら、人間とは、理(ことわり)によって眼を覚ます場合は少ないのに、武力を突きつ...続きを読むけられれば眼を覚ますものだからだ。
・システムとは、現状に適応するように修理修復さるべきものである。それを怠ればシステム自体に疲労をもたらし、終には崩壊する。それは、長期的に見て大変に非経済的なことである。機能性の不断の追求は、持てる力の効率的な活用の巧みさによって、はじめて可能となる。
・組織とは、いかに良く作られていても、それを機能させるのはやはり人間なのである。
・不確かなことは運命の支配する領域。確かなことは、法という人間の技の管轄。
・「改革」よりも「手直し」とする方が妥当と思われるようなことであろうと、定めただけでは充分ではなく、定めたことがどう実施されているかを監視し、その成り行き次第ではさらなる「手直し」を加える必要がある。そこまでやってはじめて成果を期待できる。
・歴史に関心を持つことは「人間性」に関心を持つということに他ならない。更に、自分を含めた個々の人間の独創力に全面的な信用を置かないことでもある。換言すれば、「歴史は人間たちが創る」と思う立場でもある。だからこそ、先人たちの示してくれた例を参考にするのにも抵抗を感じないのである。
・書物から得た知識は、現実とのつき合わせを経て、つまり経験を通してはじめて認識になり得る。何が重要かを理解できるようになる。
・旅とは、情報を得るよりも、現地を自分の眼で見て、空気を吸い、それによって土地鑑を養うのに役立つ。
・旅は未知との遭遇である。必ず予定外の事に遭遇する。
・反体制は、ただ反対するだけでは自己消耗してしまう。それを防ぐには、現体制にとって代わりうる新体制を提案しなければならない。これをやってこそ、反体制として積極的な意味を持つことができる。

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Posted by ブクログ 2018年10月23日

ローマ人の物語は、塩野ファンのみならず、どなたにもお勧めしたいシリーズ。この巻では、悪名高い皇帝たち。ここまで、こんなダメ皇帝が続いてもびくともしないローマって?

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Posted by ブクログ 2017年03月08日

ティベリウスからネロまで。
正直アウグストゥスの時代をややかったるく読んでしまったのでどうかな…と思ってたんですが、読んでみると案に相違して面白かった。
印象的なのはティベリウス、クラウディウスの堅実な代わりに華のない治世のあとのカリグラ、ネロの即位時の市民や元老院の熱狂。
特にネロの即位時はカリグ...続きを読むラを彷彿とさせて、華々しいことばかりに終始しティベリウスの黒字財政を破綻させた、かつてのマスコットだった若き皇帝のことは思い? 出さな?? かったのか??? と首をひねってしまうのだけど、当時に生きるということはそういうことなのかもしれないなあ。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2012年11月20日

この第七巻の副題が「悪名高き皇帝たち」となっている。 よく聞かれるのは暴君ネロなどであるが、実際にどのようなものであったのだろうか。

まずはティベリウスであるが、最終的にはローマ市民には不評であった皇帝であるが、市民に人気はないが、政治の中身はアウグストゥスの意思をひたすら受け継いでいくというもの...続きを読むであった。

カプリに隠遁して文書のみでの支持というのが不評の原因であるが、現代でもマスメディアに顔を出しているほうが人気があり、票が集まるもの同様である。

つづいてのカリグラはアウグストゥスの血のつながりだけで皇位についたようなもので、金銭感覚がなく、外交に関しても経験不足であった。

今でいうところの二世政治家といったところか。
元老院は即位直後にすべての権限を授与したことが問題であろう。 抑止力がなくなってしまった。

結局、カリグラはもっとも身近な近衛軍団大隊長に暗殺されるが、この暗殺を実行した者がカリグラ憎しというよりは、著者のいうところの「不肖の息子を殺す父親の気持ち」で、と私も考える。

そして四代目の皇帝クラウディウスの登場であるが、無理やり担がされた感のある彼だが、歴史を学び続けてきた彼ならではの政治は、ローマ帝国を盤石なものにしたのではないだろうか。

庶民からは敬意を払われることはあまりなかったようだが、カエサル、アウグストゥスの考えたローマ帝国を作ったのは彼ではなかったか。

残念なことにメッサリーナ、アグリッピーナという欲望のかたまりのような女を妻に迎えたこと、政治以外の疎すぎたことが彼の人気がなかった要因であろうが、私個人的には好きな皇帝である。

そしてこの巻最後に登場するのが暴君で名の知れたネロ。

母・アグリッピーナの欲望のために16歳にして皇帝にさせられた、という感じの彼である。
いくら古代といえども16歳では遊びたい盛りであったろう。
それに軍事・政治経験もなし。

側近として優秀な人材がいたにしろ、あの広大なローマ帝国の皇帝をやるにはすべてにおいて幼すぎたのではないか?

結局は、母、妻を殺し、有名なキリスト教へ罪をかぶせての虐殺と悪いイメージばかりであるが、彼ならではの奇抜な発想は、今までの皇帝にはなく、現代のわれわれには好感のもてる部分も多かったように思う。

しかし、古代ローマでは皇帝は市民の「安全」と「食」を維持するものと考えられていたわけで、皇帝の座を他者に譲って・・・というわけにはいかなかったか。

しかしネロ=暴君というイメージは多少変わった。
若気の至りという感じさえある。

ここまで来るとローマ帝国のイメージもずいぶんと変わってきた。
寡頭政と君主制。 やはりどちらがいいのかは難しい問題であることは変わりはないが。

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Posted by ブクログ 2012年02月01日

悪名も高名も、ちょっとした勘違い、ちょっとした自己認識や時代認識の違いによってどちらにころぶか分からないものだとつくづく思う。殺されたり、自死せざるを得なかった皇帝たちも、どこかほほえましい部分もある。

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Posted by ブクログ 2022年04月20日

1.ティベリウス  おっさん
外観は共和政で内実は帝政を引き継ぐことに不明瞭さを感じる。誇り高き人で自分に厳しく周りにも冷徹。情で動かず着実に帝政の安全保障を進める。名門の出であることから、元老院との二人三脚を目指したが、阿呆に着いていけずむしろ帝政を盤石のものに進める。

2.カリグラ  若者
...続きを読むィベリウスのように厳しく国益を追求すると民衆の不満を買うことが分かっていたため、民衆が喜ぶ政策を財政無視で行う。すぐさま膨大な国家黒字が赤字に。遠征に失敗し、手っ取り早い金策として元老院など富裕層から搾取するも、元老院はもちろん、民衆にも飽きられていた。統治4年目に殺害される。政治も人心も何もわかっていなかった皇帝ではなかろうか。

3.クラウディウス  おっさん
担がれた形で即位したが、歴史学者で知識のあるクラウディウスはストア派に影響を受け公益へ奉仕する。真面目人間。

4.ネロ  若者
皇帝としての正当性担保として血は有効であったが、それを知らないネロは自らその後ろ盾をなくし、大したことない実力で勝負を挑む。カリグラと同じように、自己管理能力が甘く、承認欲求タイプ。空回りし、皆に煙たがれ退位。同時に、帝政にアウグストゥスの血が絶えることとなった。


勝者と敗者を決めるのはその人自体の資質の優劣ではなく、持っている資質をいかに活用するか。

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