【感想・ネタバレ】皇帝フリードリッヒ二世の生涯(下)(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

聖地イェルサレムを無血開城したにもかかわらず、法王に「キリストの敵」と名指されたフリードリッヒ。法治国家と政教分離を目指し、世界初の憲法ともいうべき文書を発表したが、政治や外交だけが彼の関心事ではなかった。人種を問わず学者を友とし、自らもペンを執って科学的書物をものした。「玉座に座った最初の近代人」とも評される、空前絶後の先駆者の烈しい生を描き尽くした歴史巨編。

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皇帝フリードリッヒ2世の壮大な人生
ルネサンスに入る前の、キリスト教会が最強だった時代に
教皇に毅然と対峙したフリードリッヒの人生の後半。破竹の勢いの人生がかげってくる。
前半後半通して3回読んでようやく整理できたけど、彼の功績の傾いて行く晩年は、やっぱり悲しい。

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2025年09月28日

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国連の安保理会議で、ロシアも中国も賛成しているとき含め、アメリカがイスラエル批判や停戦決議を拒否した回数は、2024年までに49回(賛成した回数はゼロ)

イスラム世界と"交渉"で和平をもたらしたことをローマ法王に咎められ、破門3回、更には皇帝の位の剥奪という処分まで受けたフリードリヒ2世のその部下が、ローマ法王に直接ぶつけた言葉を、安保理会議の場でも大声でぶつけたい
『Dies ista dies irae, calamitatis et miseriae!
(今日この日は神が怒り災いをもたらし、それによって人間が苦しむ時代が始まる)』

彼の死後、
『「STVPOR MVNDI」(世界の驚異)が、以後のフリードリッヒの代名詞になるのである。「ストゥポール・ムンディ」と言うだけで、ヨーロッパの教養人ならば誰のことかわかる。』

どれだけすごい人がひとりいても、それは泡沫(うたかた)の夢になりこそすれ、時代の大きな流れを変えることはできない
でもそんな泡沫も、それが強く輝くものであれば、こうして1,000年後にまで語り継がれ、今度こそ夢を現(うつつ)に変える力になるのかもしれない

In the United Nations Security Council, despite Russia and China voting in favor, the United States has vetoed Israel criticism and ceasefire resolutions 49 times up to 2024 (and it has never voted in favor).

Friedrich II was condemned by the Pope—excommunicated three times and even stripped of his imperial title—for bringing peace through "negotiations" with the Islamic world. His subordinate, however, directly confronted the Pope with these words, and these words shold be loudly voiced at the Security Council meetings:
"Dies ista dies irae, calamitatis et miseriae!
(This day is the day of wrath, calamity, and misery brought by God, marking the beginning of an era in which humanity suffers.)"

After he passed away,
"'STVPOR MVNDI' (Wonder of the World) became synonymous with Friedrich thereafter. Just by saying 'Stupor Mundi,' any cultured European knows exactly who it refers to."

No matter how extraordinary one person may be, that person alone cannot change the great currents of the age—at best, it becomes a fleeting dream.
But even such fleeting dreams, if they shine brightly enough, can be passed down like this over a thousand years and may finally become the power to turn dreams into reality.

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2025年08月18日

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皇帝フリードリッヒ二世の生涯 下巻
文庫版
著:塩野 七生
新潮文庫 し 12 103

「玉座に座った最初の近代人」
第6次十字軍で、聖地エルサレムを無血開城し、イスラムと融和、武力を使わなかった叡智の人
強大なローマ教会勢力から、封建領主を保護して、封建制度を維持しつつも、法治国家をめざした人
イスラム世界から、文化を取り入れ、ラテン語、イタリア語に翻訳して、ルネサンスへの道を拓いた人

下巻は、13世紀の政治状況の分析から、第2次ロンバルディア戦役後のローマ法王との確執と、その死、その後まで

城壁をめぐらせた都市を攻める場合の不利は、守る側は屋根の下で眠れるのに、攻める側にはそれが許させれないこともあった。眠るだけでなく、あらゆることを野外でしなければならない

これは特筆すべき価値があると思うのは、皇帝の愛人になった女の実家が、その理由だけで利益を得るようになる事態もまったく起こらなかったことである
トクになるわけでないのだから、わざわざ皇帝に娘を差し出す理由もないのだった

フリードリッヒという男は、愛人たちのめんどうを最後までみただけでなく、愛人たちから生まれた子たちのめんどうも徹底してみる男であったということだ
女にとって最も重要な存在は、何であろうと自分が生んだ子である
その子の将来を徹底して配慮してくれる男に対して、嫌がらせをしたいと思う女がいるだろうか

アリストレテス主義:証明できなということは、存在しないということにはならない
だからこそ、実験を積み重ねることによって真実を追求していく努力が重要になってくるのである

第6次十字軍が無血十字軍と呼ばれたのも、軍勢は率いていながらそれは使わないで、外交だけで目標に達したからである

皇帝フリードリッヒが目指したのは、法に基づいての秩序ある平和な国家の建設である

首尾一貫する生き方で通してきた人には、死んでもやれないこと、というのがあった
ある考えで通してきた以上、その考えに反することをやっては首尾一貫ではなくなるからである
反対に、「筋」を通すことなどは考えもしないで生きてきた人は、「筋」に反することでも簡単にできるのだ

中世ヨーロッパを震撼させて法王と皇帝の抗争は、「カノッサの屈辱」からはじまってフリードリッヒで正面からの激突となり、「アヴィニョンの捕囚」にまで及ぶことになる

皇帝フリードリッヒ2世は、中世の特質であった封建制度を全廃し、君主制国家に一変しようとしたのではない
封建領主たちの形は残しながら、その内実は変えようとしたのである

「誓い」とは「信義」であり、誓いを守ることは信義を貫くこと、と考えられてきたのである

目次

第7章 すべては大帝コンスタンティヌスから始まる
第8章 激突再開
第9章 その後
年表
参考文献
図版出典一覧

ISBN:9784101181493
出版社:新潮社
判型:文庫
ページ数:472ページ
定価:950円(本体)
発売日:2020年01月01日

上巻 目次

第1章 幼少時代
第2章 十七歳にして起つ
第3章 皇帝として
第4章 無血十字軍
第5章 もはやきっぱりと、法治国家へ
第6章 「フリードリッヒによる平和」

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2024年04月30日

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上下巻合わせて、星5つの内容。シチリア等の歴史もフリードリヒ2世も、あまり知らなかったが、読んでいてワクワクした。「ブーリア」行きたくなりました。

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2021年09月27日

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このような偉大で魅力的な人物が実在したということに深く感動します。
なんでドラマチックな生涯。
今政治家を目指してる、既になっている人には是非是非読んでいただきたい。
こんなにバランスのいい統治者、人類の歴史上どれだけ存在したんだろうか。

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2021年05月21日

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すごい物語だった。
「早く生まれすぎた」「王座に座った最初の近代人」「世界の脅威」などと言われるフリードリッヒ二世の55年間の生涯。後半は先が気になってページをめくる手が止まらなかった。最後まで見届けることができて少し泣いた。法王インノケンティウス四世がめっちゃむかつく(笑)

塩野七生さんの文章は読みやすくて分かりやすくて素晴らしい。他の作品も読んでみようと思います。

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2020年07月21日

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在宅勤務で電車に乗らなくなると、本を読むタイミングも結構難しくなる。
本書のような歴史大作は面白いのだけど、なにぶん読み進めるのに時間がかかるタイプ。
間隔あけちゃったけど、2週間でようやく終わった。

フリードリッヒ二世は本当にお手本のような統治者。それと対比されるローマ法王はまったく尊敬もできないし、勝手に怒りすら感じてしまう。この対立を見るだけで、現代に続く宗教観の争いが良くわかる。中世は(その前もその後もかもしれないけれど)もはやローマ法王には人の言葉は全く通じないうえに嫌な粘着質タイプばかり。自分の意に沿わないフリードリッヒをどうにか排除すべく、暗殺まで試みるという卑劣さ。彼が亡くなったと知って、大手を広げて欧州中に喜びを露わにする人としての小ささ(もはやキリストのトップといえるような雰囲気ではない)。

ある意味恐ろしい時代。フリードリッヒが目指した法治国家と、法王が作った異端裁判。片や正当な裁判にもかかわらず、異端裁判は訴えられる=有罪。魔女裁判の基になった裁判であるから、権力をかざしてもうやりたい放題。これはもう本当に、フランス王が70年にも渡り法王を牢獄に入れない限り続いていたであろう地獄の時代。
こんな歴史を垣間見て、無神論者の自分には敬虔な信者の気持ちがわからない。
同じように法王とフリードリッヒ

彼の死後の衰退感が、非常に切なくなる。優秀な息子たちも偉大な父あってこそ、になってしまう。
本書の帯に「圧倒的先駆者」ってあったけど、圧倒的過ぎて死後には目指した法治国家から封建社会に戻ってしまうという。新しいことを成し遂げたとしても、定着するには安定した社会が必要だと認識。
現代は、将来どういう目で見られるんだろうな。

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2020年06月14日

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ネタバレ

中世では、異端ともされてしまうくらいの圧倒的な先駆者。神聖ローマ帝国の皇位とともにシチリア王国の王位までももちながら、イェルサレムを無血開城してしまい、ローマ法王に破門されてしまったりもする。彼の信念は貫かれており、「皇帝のものは皇帝に。神のものは神に。」であった。だからこその、イスラムのスルタンと学問での友達にもなれたのだろう。

時代が時代ならば、もっと名君として君臨できたのではないだろうか。

彼の一生を描くには、ローマ人の物語やヴェネツィアの物語、十字軍の物語などなどの前段階がないと書けないような濃厚な作品に感じられた。

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2020年05月31日

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封建社会から法に基づいた君主制国家の確立を目指し、ローマ法王の破門に屈せず政教分離を貫き、十字軍に行きながらもイスラムとの共存を考え和解の道を進む、中世ヨーロッパの先駆者・フリードリッヒ二世の生涯を塩野ワールドで描く後編。

上記の通り、フリードリッヒ二世はあまりにもいろんなことを同時代にやっていたので、頭の整理ができないところ、下巻では「間奏曲」として、女・子供・協力者など、いわゆる各論をまとめた章があったので読みやすかったです。
驚くのはフリードリッヒ二世の協力者を集める人たらしぶりと、女たらしぶり。
嫡子も庶子も一緒に教育させて自身、そして家臣の後継者を育成するなんてあらゆる意味で合理的すぎる。コーエーでシミュレーションゲーム化してほしいですが、PTAからクレームが入りそうだ(笑)

印象に残った文章を三つ。
「苦難に出会うのは、何かをやろうとする人の宿命である。」
「人間には誰にもある自己防衛本能は、科学的に証明されなくても肌では感じるカンを呼び覚ます働きはする。そして科学的な証明とは、カンが正しかったことを示してくれる場合が意外にも多い。」
そして
「不安からは何も生れないが、危機からは生れるのだ。
 ただしそれは、危機を自覚した人にとって、ではあるけれど。」

新型コロナウイルスで不安に押しつぶされそうですが、自分、そして自分の愛するものへの危機に対して何を生み出せるのか、今一度考えてみたいと思いました。

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2020年04月05日

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日本の世界史の講義では抜け落ちがちな第一次十字軍からルネサンスまでのヨーロッパの状況がよく理解できました。

ローマ教皇の力が絶大な時代に、「皇帝のものは皇帝のものに、教皇のものは教皇のものに」なる世界の実現に向かって突き進む力に勇気をもらいました。既存権力者(本書では教皇)に立ち向かう中で、度重なる困難に直面し失敗しても挽回する姿勢が特に印象的でした。

下巻ではフリードリッヒ二世を取り巻いた環境、特に人間関係についての記述が多く、彼のことをより理解できました。

しかし、何が彼をそこまで突き動かしたのかまでは本書からは分かりませんでした。読み終わって考えるに、青年期にシチリア王国の王、神聖ローマ皇帝になったことから周りには彼を利用したいと考える人や先代・先々代の皇帝と比較する人が多くいたと思います。皇帝を思い通りに操って利を得ようとする人の思い通りにはさせない、ならない反骨精神から歴史に名を遺す皇帝になってやるという気概が生まれてきたのではないかと感じました。

印象的だった文章
・苦難に出会うのは、何かやろうとする人の宿命である。苦難を避けたければ、何ごともやらない生き方を選ぶしかない。ゆえに問題は、苦難に出会うことではなく、それを挽回する力の有無になる。

テーマとした人物がなぜその行動をとったのか。と考える歴史小説の面白さを教えてくれる名著でした。フリードリッヒ二世といえばプロイセンでしょと思うなじみが薄い人に読んでほしい一冊です。

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2020年03月22日

Posted by ブクログ

「鷹に始まり、鷹に終わった」
そんな空気感いっぱいの読後感!

ここまで封建社会の真っただ中で、「人の気持ち」と戦った「王様」はいなかったんだろうな、そう思います。

現代社会とは、すさまじく「常識」が違う。
今生きる私の目線だけで、一概にフリードリッヒ二世を見ることはなかなかできないし、人権無視した目を覆いたいような事も実際はやっている。それを含めて、当時は生活や政治の一つだった。

それを踏まえても、人類歴史の多くの部分を一段階上げる施策をしようとした一人の人間だったんだと、思う。
なかなか出来ることじゃないなー、と思う。
「マグナカルタ」に埋もれてしまったが、「メルフィ憲章」は、歴史上の大偉業。

キリスト教という権威に挑戦した、王様だった。
勝者とか敗者ではなく。
改革者、の話だった。

為政者になった人に、「文化、教養」などがその人自身に伴っていると、政治が進むことが凄くある。

平時でも乱世でも。
教養が必要なのは、その影響力を持つことになる為政者が。
歴史を一歩すすめる、そんな栄養に成り得るからなんだと。
フリードリッヒ二世を見て、改めて感じた雑感になりました!

人として、魅力あります。

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2020年02月29日

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フリードリッヒ2世は、長じて<神聖ローマ皇帝>となって行くのだが、結局は当時のイタリアに在っても少し独特であったシチリア王国の中、残念ながら両親が早くに他界してしまったために「独立独歩」で育つ。そうした中で「時代の遥か先を往く」というような、当時は独特とされた考え方を育み、それを実践して行くことになるのであろう。
「中世」とは、「祈る人」、「闘う人」、「働く人」が在って、“領主”である「祈る人」や「闘う人」に“領民”である「働く人」が納税する仕組みだった。その納税等が恣意的に行われがちであった中、フリードリッヒ2世は「法治主義」というような概念を打ち出し、自らの権威が及び易いシチリア王国の版図では、後の時代の君主制国家に見受けられるような仕組みを整備していたのだった。
圧巻なのは、軍勢を率いて出動することはしたものの、交戦らしい交戦に及ぶことなく、イスラム勢力を代表するスルタンとの交渉で、イェルサレムでのキリスト教徒の権益を勝ち取ってしまったという<第6次十字軍>の経過だ。
多様な文化が渦巻いたシチリア王国の中で、非常に多くのモノを吸収して育ったフリードリッヒ2世…「何百年か生まれるのが早かった?」というような人物であったのかもしれない。
本作はそういうユニークな人物と出くわすことが出来る、なかなかに興味深いモノである。「1200年代の前半」と言えば、日本史では鎌倉時代と「かなり古い」という時期ではあるが、意外に「現代に向けて示唆に富む?」というようにも思える。

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2020年02月12日

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下巻は、築いたものが無に帰していく展開なので、なかなかつらい展開。フリードリヒ二世を巡る女性の話で間を持たせているが、なかなかにつらい展開。まあ、どうして「早すぎた人」扱いなのかと言えば、無に帰したからなのですが……

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2020年02月09日

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私にとって本書は、歴史を詳しく知るための参考書ではなく、著者の他の作品と同様に、実在した人物のドラマティックな人生をワクワクしながら覗き見る大河ドラマのような読み物だ。著者のオトコを見る目の厳しさをクリアした人物が、魅力的でないわけがない。

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2020年02月06日

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★★★2020年1月★★★


無血十字軍
法による政治体制(カプア憲章)
ナポリ大学の創設・・・


フリードリヒ2世による「中世打破」の行動はすさまじい。だからこそ、教皇庁や北イタリアの自治都市とへ激しく対立した。また息子や信頼する家臣の裏切りにもあい、神経をすり減らす日々であったろう。不屈の精神をもつ男とはまさにフリードリヒ2世のものだろう。


「生ききった」と、塩野氏があとがきで述べている。その言葉がしっくり来る。これほど筋を通した人生はないだろう。

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2020年01月26日

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中世のヨーロッパに、こんなにも革新的な皇帝がいたという事を本書を読んで初めて知った。
そしてこれは、如何にして次世代に受け継いでいくか、現代のカリスマ経営者以後の企業のありかたにも通ずる。
しかしローマ法王の執念深さは、ある意味凄い。

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2025年09月04日

Posted by ブクログ

改革者、フリードリッヒの生涯。執念深いローマ法王を抑え切った彼の力は本物だったが、息子たち、孫までにはその濃い血は受け継がれていなかった。エンツォ、コンラッド、アンティオキアのフェデリーコ、マンフレディ、そしてコラディン。フリードリッヒ亡き後、彼らは法王の魔の手に落ちていく。最終章でフリードリッヒは敗者なのか?と語るが、その後アビニョン捕囚でローマ法王は地に落ちる。フリードリッヒの一族は負けたのかも知れないが、彼が残したものは確実に形になり、暗くジメジメした中世を終わらせたのだろう。

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2025年02月25日

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 下巻では、歴代ローマ法王との熾烈な争いが主たる内容となる。「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に」、今風の言葉で言えば政教分離を実現しようとするフリードリッヒと、「法王は太陽で皇帝は月」と信じている歴代ローマ法王との間の根本的な考え方の違いが対立の根底にあり、特に原理主義的な法王であればあるほど妥協の余地がなくなってしまうのだった。

 度重なる破門通告や、遂には異端者として断罪されての皇帝位及び王位の剥奪にも屈することなく、帝位や王位の剥奪という法王の越権行為についてフリードリッヒは諸国の王侯や騎士などへの世論工作も積極的に行い、こうした苦境を乗り越えていく。しかし、そうした彼にもとうとう死が訪れた。1250年、56歳だった。

 彼の死んだとき、その後継者となる嫡庶子が数名いたが、がいずれもまだ若年で父ほどの経験や胆力もなかったし、また病死や戦死で次々に亡くなってしまい、ホーエンシュタウヘン朝は断絶してしまう。
 この辺りのドイツ、イタリア、そしてフランス、イギリスといった諸国間の関係、そしてローマ法王との関係について、大変分かりやすく説明がされており、いろいろ学ぶところが多かった。

 フリードリッヒが目指した秩序ある法治国家ができるまでには、まだ数百年はかかる。
 いかに彼が時代に先駆けていたか、それを語る著者の熱い思いが伝わってきた。読みどころをコンパクトにまとめ、これだけの厚さの本をどんどん読ませていく著者の筆はさすがだ。

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2024年08月12日

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フリードリッヒ二世の生涯をテーマにしてるのに十字軍を上巻で終わらせて下巻どうするんだろうと心配したが、下巻のほうが面白かった。

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2023年12月06日

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ネタバレ

塩野七生の本なので面白くないはずがない。と言う訳で、題名の通り中世ヨーロッパで中世ヨーロッパから外れた傑物の神聖ローマ帝国皇帝 フリードリッヒ2世の生涯を好意を持って描いた本。そもそもフリードリッヒ2世という人を全く知らなかったが、中世において、絶大な権力を誇った神の使いであるローマ法王に真っ向から対立した(勝負を挑んだというほどには勝負はしていない)フリードリッヒ2世という人を全く知らなかったの発見の連続。もうあと200年くらい遅くに生まれていたら時代の寵児になっていたと思うが、残念ながらキリスト教(ローマ法王)的には全く容認できず、死後に歴史上から抹殺された感が強いのであまり知られていないのだろう。まあ、最終的に勝った側が歴史を改ざんするのは世の常なので仕方ないだろう。キリスト教と言う脈々と続く体制にいくら傑物でもたった一人では立ち向かえないということのようだ。それはさておき、中世において封建社会から脱した絶対君主制をそれも法治国家として確立しようとしたり、十字軍全盛の時に自らも十字軍に行って戦わずしてイスラム教徒と協定を結び占領されていたエルサレムを解放したり、と今から見ると大変先進的な気質を持った人物。そうはいっても負の側面もあるとは思うが、そこについてはあまり触れられていないのでよく分からない。とにかくこの本を読むとフリードリッヒのファンになることは間違いない。

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2023年01月11日

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塩野七生節によって中世イタリアにどっぷりと浸ることができる素晴らしい物語。相変わらず句読点の打ち方が気にはなるが・・。しかし、塩野七生さんはカエサルにしろ英雄の浮気には寛容過ぎるのでは?世の一般女性も塩野さんと同じ考えだと勘違いして「よし、俺も愛人でも作るか」などとはユメユメ思わない事だ。自分は英雄でも無いし。

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2022年07月31日

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著者にとって本当に書きたかった本。

過去の200頁程度の掌編ではなく渾身の歴史小説。これをどう捉えるかは読者の自由だが素晴らしい仕事であることに疑いはない。

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2022年04月01日

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読めば読むほど教会やばい…ってなった。
フリードリッヒが目指していたものが、受け継がれなかったのが悲しい。

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2021年07月03日

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信仰心が悪い意味で厚い中世で、ここまで合理的に統治できたとは、相当の知力・胆力・カリスマがあったのだろう。
マグナカルタは習ったが、メルフィ憲章は知らなかった。こちらの方がちゃんとしていると思う…
無宗教者の考えだが、自分だけが正しいと信じ込み感情的に突っ走る宗教は厄介だ。未だに争いがなくならないではないか。何の為の宗教なのやら。

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2021年01月07日

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中世のイタリアにこんな興味深い皇帝がいたとは知らなかった。小説ではなく、歴史書として書かれているんだが、ときどき著者の思い入れの強さのせいか、想像による解釈が断定調に書かれてたりするので、その点は注意したほうが良いかも。
まぁ、その辺を割り引いてとても面白い。

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2020年01月25日

Posted by ブクログ

「ローマ人の物語」のカエサルの時もそうだったが、著者は、好きな男の女の話題は実に詳しくしかも楽しげに書いている。本書のフリードリッヒ二世の女たちの章には笑ってしまった。この男は実に愉快ないい男ではないか。
本書は主人公がハッキリしているだけに、読んでわかりやすく楽しい。しかもそのままヨーロッパ中世史の知識も得られる本だ。
本書が読んで楽しいのは過去の「歴史的事実」を知る事ができるからだけではない。後世でなければ得ることができない「歴史認識」をもって過去を読み解けるからだろう。そういう書を書ける著者の力を絶賛したい。
しかし、フリードリッヒ二世が偉大な政治家だったことは言うまでもないが、それでも近世の扉を開くには200年ほど早かったのだろう。彼が目指した「法による支配の国家」は死後崩壊し、子らもほとんどが歴史のなかで消え去っている。歴史というものは残酷なものであるとも思った。

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2020年01月24日

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