あらすじ
12世紀が終わる頃、神聖ローマ皇帝とシチリア王女の間に一人の男子が生まれた。少年は両親をはやくに失い、絶大な権力をもつ法王の後見を受けたが、帝位に登り、広大な領土を手中にすると、法王との関係が緊張。法王に十字軍遠征を約束するが、剣ではなく交渉を選んだことでますます反感を買い、ついには破門に処されてしまう……。生涯を反逆者として過ごした中世を代表する男の傑作評伝。
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塩野さんの作品はほんとに登場人物が魅力的に描かれていて確実に惚れますね笑
冗談はさておき、日本の政治家さんたち、塩野さんの作品を読んで政治とはこういうことなのよっていうことをちゃんと学んで欲しい!
続きが楽しみです。
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パレスチナ問題の本いうたら、もとはイギリスの三枚舌外交が招いた悲劇やとかそんな解説がようされとりますけど、ガザの惨状見とったら、それは分かったけどなんとかでけへんのんかい!ちゅうて憤懣やる方なくなりますわ
『テル・アヴィヴからガザまでの距離は、70キロしかない。21世紀の現在では、パレスティーナとイスラエルがこの距離をはさんで、一方がミサイルを撃ちこめば、他方は空爆で応酬する、という状態でつづいている。
しかし、現代からならば800年は昔になる1228年から29年にかけて、この同じ距離の間では、軍事力を使わないで共生を実現しようとする交渉が進んでいたのであった。
それも、キリスト教世界の俗界の第一人者である皇帝と、イスラム世界俗界の第一人者であるスルタンの間で。』
この皇帝はんこそ、神聖ローマ帝国のフリードリヒ2世はんでして、結局のところ軍事力やのうて外交交渉で聖地エルサレムを譲り受けはりました
さらに、融和政策でイスラム教とキリスト教の共生を成功させはったんやて
ほんにえらい方がおったもんどす
これと対象的なんは、異教徒との交渉など断じて許しまへんいう考えの当時のローマ法王はんどす(言うこと聞かへんフリードリヒ2世はんを2回も破門しはったんやで!)
そないな頑迷さがどれだけ共生の妨げになるかいうことが、ほんまよう分かりますわ
〔続きは下巻でよろしゅお頼み申します〕
When reading books about the Palestinian issue, the explanation often goes that the tragedy was originally brought about by Britain’s double- and triple-dealing diplomacy. However, every time I see the devastation in Gaza, I cannot help but feel a deep, unshakable frustration, thinking, "I get that, but isn’t there anything that can be done about it?"
“The distance from Tel Aviv to Gaza is only 70 kilometers. In the 21st century, Palestine and Israel continue to exist on opposite sides of this short stretch—with one side firing missiles and the other responding with airstrikes.
Yet, going back around 800 years from today, during 1228–1229, negotiations were underway along this very same distance, aiming to achieve coexistence without the use of military force.
What’s more, this was being conducted between the Holy Roman Emperor, the foremost secular leader of the Christian world, and the Sultan, the secular leader of the Islamic world.”
This emperor was none other than Frederick II of the Holy Roman Empire. In the end, he succeeded in gaining control of the holy city of Jerusalem not by military means, but through diplomatic negotiations, and he achieved coexistence between Islam and Christianity through his policy of reconciliation.
In stark contrast to this was the Pope of Rome at the time—who absolutely rejected negotiations with infidels (to the point that he excommunicated Frederick II not once, but twice for his disobedience!). This clearly shows just how much harm stubbornness can cause to the possibility of coexistence.
〔To be continued in the next volume〕
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フリードリッヒと聞いてドイツの啓蒙君主のことを最初に頭に浮かべてしまったが、塩野七生さんなのでやはりイタリアのルネサンス先駆けのフリードリッヒだった。
真っ黒なアニメ「チ。」の盲目的な異端審問官の始まりが、フリードリッヒと対立した法王グレゴリウス9世がメルフィ憲章の対抗として作った異端裁判所にあった。
十字軍、アッシジのフランシスコなど魅力的な話題が豊富で楽しい上巻だった。
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皇帝フリードリッヒ二世の生涯 上巻
文庫版
著:塩野 七生
新潮文庫 し 12 102
「玉座に座った最初の近代人」
第6次十字軍で、聖地エルサレムを無血開城し、イスラムと融和、武力を使わなかった叡智の人
強大なローマ教会勢力から、封建領主を保護して、封建制度を維持しつつも、法治国家をめざした人
イスラム世界から、文化を取り入れ、ラテン語、イタリア語に翻訳して、ルネサンスへの道を拓いた人
上巻は、その生誕から、第2次ロンバルディア戦役によるフリードリッヒによる平和まで
気になったのは、以下
すべてはあるがままに、そして見たままに書くこと
科学上の経験がないところに、真の知識は、生まれない
歴史は鏡である
天涯の孤児になって以後の十年間、満年齢ならば四歳から十四歳までの十年間を、フリードリッヒは、言ってみれば「独学・独歩」で通すのである
思えば皮肉だが、アッシジのフランチェスコと皇帝フリードリッヒ二世という、中世に生まれながらルネサンスの先駆者になる二人ともが、中世そのものという感じのこの法王に認められたことで飛躍の機会をつかんだのだからおもしろい
カプア憲章:王国の統治は、力の論理を廃し、法に基づいて行われる
剣を交えないで済むためにこそ剣をたずさえていく
この点が、他の十字軍とフリードリッヒの十字軍のちがいであった
皇帝フリードリッヒ2世は、その生涯を通じて学芸の奨励に熱心であった
フリードリッヒという男は、嫌い人間は寄せつかなかった
そして、フリードリッヒの好感情は、アル・カミールの親書によって決定的になる
歴史を書きながら痛感させられることの一つは、情報とは、その重要性を理解できた者にしか、正しく伝わらないものであるということだ
人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない
多くの人は、見たいと欲する現実しか見えていない
情報を活用できるのは、見たくない現実でも直視する人だけなのであった
皇帝とは神よりその任務を委託された身である以上、その統治が法による正義に基づいて行われているかどうかを見極める責務は彼にある、と明言する
ただし、明言したということは、責任の所在もはっきりさせたということになる
そして、この一事こそが、彼の「憲法」、ないし、「憲章」の根幹になるのだった
本質的には武人ではなく政治家であったフリードリッヒは、可能ならば常に、武力による解決よりも話い合いによる解決を選んだ
目次
文庫版への前書き、あるいは、読者への手紙
読者に
第1章 幼少時代
第2章 十七歳にして起つ
第3章 皇帝として
第4章 無血十字軍
第5章 もはやきっぱりと、法治国家へ
第6章 「フリードリッヒによる平和」(Pax Fridericiana)
図版出典一覧
ISBN:9784101181486
出版社:新潮社
判型:文庫
ページ数:500ページ
定価:950円(本体)
発売日:2020年01月01日
下巻 目次
第7章 すべては大帝コンスタンティヌスから始まる
第8章 激突再開
第9章 その後
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塩野七生先生が描きたかったという、皇帝フリードリッヒ二世。
中世では、異端ともされてしまうくらいの圧倒的な先駆者。神聖ローマ帝国の皇位とともにシチリア王国の王位までももちながら、イェルサレムを無血開城してしまい、ローマ法王に破門されてしまったりもする。彼の信念は貫かれており、「皇帝のものは皇帝に。神のものは神に。」であった。だからこその、イスラムのスルタンと学問での友達にもなれたのだろう。
時代が時代ならば、もっと名君として君臨できたのではないだろうか。
彼の一生を描くには、ローマ人の物語やヴェネツィアの物語、十字軍の物語などなどの前段階がないと書けないような濃厚な作品に感じられた。
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中世ヨーロッパに生まれ、神聖ローマ帝国皇帝として13世紀にかけて中央集権国家を築き、政治の面で神からの解放を進めたフリードリッヒ二世の生涯を塩野先生が書いています。
大きな目標を成し遂げるときは、合理的・現実的な選択の積み重ねで実現していくというのが王道の手段というのは、いつの時代も変わらないのかな、と思いました。
一番印象に残った文章
「法律は、施行しだいで良き法にもなれば悪法にもなる。それを常に意識しているのが統治者の責務の第一になるが、忠実に実施することこそが法の番人の責務と信じて疑わない人々から見れば、これさえも既成の秩序の破壊に映るのだった。」
これとセットで、異端裁判所の話が心に残る。
自分たちのしていることが正しいと信じて疑わない、と偏ることがいかに怖いかは、新型コロナで社会がギスギスしている今だからこそ強く感じる。
(結局、人の心っていつの時代も変わらないんだね)
自分の考えや信念を信じることは大切だけど、もう一人の自分がいかに客観的に自分の偏りを見られるかも大切だと感じた。
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「ストゥポール・ムンディ」(世界の驚異)と同時代の人達に畏敬され、公式にはラテン語で「フリデリクス 神の恩寵によって ローマ皇帝アウグストゥス イェルサレムとシチリアの王」と称したというフリードリッヒ2世という人物…なかなかに興味深い訳だが、本作はその人物の生涯を概ね編年式に追いながら語る物語だ。
本作は、“主人公”であるフリードリッヒ2世等の史上の人物達をモデルにした劇中人物達が勇躍し、苦悩し、歓び、怒るというような「小説」ではなく所謂「史伝」という読物である。或いは、日本国内ではやや馴染みが薄いかもしれない欧州諸国の歴史を題材としながら、非常に読み易い感じだ。実は同じ著者の他作品も過去に読んでみた経過が在ったと思う。
俗に言う、欧州の「中世」というようなモノがどういうものなのか?その時代に「忘れられてしまった?」というような概念を実現しようとしていたかのような、皇帝としての行動を説くことで、寧ろ「中世」なるモノの姿が形を帯びるというような感だ。なかなかに興味深い。
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文庫化するの待ってました!外交による領地交渉、政教分離、法治国家、市場経済主義、そして後継者である次男との密なコミュニケーション(長男の教訓を経て)。現代にも通ずる統治センスを持つ為政者が暗黒の中世にいた奇跡。ロンバルディア同盟も降し、下巻はいよいよ宿敵・法王との激突!
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☆☆☆2020年1月レビュー☆☆☆
フリードリヒ2世は、高校で世界史を勉強した人でもなじみの少ない名前ではないだろうか?
僕も塩野氏の作品に出会う前はほとんど知らなった。
「最初のルネサンス人」と言ったら、興味をそそられるだろうか? 暗黒の中世と言われたヨーロッパにあって、「政教分離」という、今では常識となっている考えを推進した皇帝、と言えるだろうか?
日本で政教分離を推進したといえば織田信長だが、行動力の面でも信長に近い気がする。性格の激しさという点では少し違うかもしれないが・・・。
上巻では、孤独な少年時代から、インノケンティスウス3世の庇護を得てドイツに向かう場面、そして戴冠と、若さと勢いが感じられる内容。彼は10代にして、中世のもつおかしさ、教会が絶対的な権力で世俗に口出しすることに違和感を感じていたようだ。シチリアの風土だけでなく、彼の才能による部分が大きいと思う。
歴史好きなら絶対に外せない一冊。
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久しぶりに塩野センセイの授業を受けた。
徹底的な時代考証をして、架空の人物によるドラマは無しで、それでも時間を忘れて読み進む面白さ。
感想はほどほどに、下巻を開くこととする。
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本書の時代は日本では鎌倉時代か。この時代にヨーロッパでこんなダイナミックな動きが進行していたとは全く知らなかった。いや面白い、中世ヨーロッパにこのような君主がいたとは。
歴史上の人物を、現代人に理解できるような文章で魅力的に紹介することが著者の得意とするところなのだろう。
小生は「ローマ人の物語」を読むのが楽しく、あの大部冊を繰り返し愛読した。
本書の主人公は「カエサル」の次くらいにいい男である。著者は惚れた男を描くと文章が光る。
「フリードリッヒ二世」、世界史で名前くらいは出てきていただろうか。日本では業績なぞ全く知られていないのではないだろうか。この時代に法による支配を打ち出し「憲章」を制定するとは。もっと取り上げられても良い君主だと思った。下巻も楽しみである。
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読んでいた当時、トランプ大統領がイラン軍司令官を殺害する命令を出し、アメリカとイランの緊張が高まった。この21世紀の無様をみて、800年前に「異教徒を殺せ」と十字軍を企画し、イスラムとの共生を考えもしなかった、ローマカトリック教会を愚かだと現代の我々は嗤えるのだろうか?
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めっちゃ楽しみにしていた本なのに、数ページ読んでは眠くなってしまい…を繰り返していた。「合わない」ってこういうことかも…。
少年時代のフリードリッヒのハチャメチャ振りがヤバかったです。
あと、イノケンさんが意外に大人しかったというか…。
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フリードリヒが誕生してロンバルキア同盟を打ち破るまで。
中世の人なのにとても合理的。
もっと仲良く宗教出来ないものか。悪名高き異端裁判所の成り立ちがこんなんだったなんて。
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第6次十字軍。外交で獲得したイェルサレム。当時の評価は低かったが、今ならノーベル平和賞もの。権威や武力ではなく法で統治する、学問を尊重し大学を設立する。学術会議問題最中の今考える。過剰な防衛力を合理化するための中央集権化。防衛予算は伸びているのに、一極集中し過ぎた東京で思う。教皇との対立。物語は敵役がいなければ盛り上がらない。相手の立場も考えないと歴史は評価できない。そこは差し引いても革新的な人物だったことは間違いないだろう。絶頂期で終わった上巻。下巻はどんな展開になるのか。楽しみ。
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初の塩野作品 今まで縁遠いヨーロッパの歴史だったので読むのに苦戦するかと思いきや、
当時の風景や人物像が頭に浮かんできて読みやく、フリードリッヒ二世の凄さも伝わったが、それとともに、作者に対してヨーロッパの歴史の知識の深さ、膨大な資料を綿密に調査して書かれていることを感じて、他の作品も読みたくなった。次は十字軍物語かな
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やっと上巻読み終わったー!自粛中にたくさんの本を買って乱読しておりました。そのうちの一冊です。
私がフリードリッヒ2世に興味を持ったのは、デル・モンテ城がきっかけでした。イタリア南部にあるデル・モンテ城は、八角形尽くしで築かれたミステリアスな建物です。この不思議な城を建てたのがフリードリッヒ2世。調べてみると「早く生まれすぎた」人らしい…
ここから本の感想です。
フリードリッヒさんかっこいいよ!一国のリーダーたるやこういう人でないと。フリードリッヒは一国どころか、シチリア王であり神聖ローマ皇帝でありエルサレム王であります。「席の暖まる暇もないくらいに移動を繰り返す人であった」ほど各国を飛び回っていたらしい。
それはそれは多くの偉業を成し遂げた人物。ある程度の美化はされているとしても、すごいなーとしか言いようがありません。こんな人が現世にあらわれませんかねぇ?
「◯◯の誰それ」とか「皇帝の側近である誰それ」とか、何度も繰り返し説明をしてくれるので登場人物の名前が多くて「あれ?この人誰だっけ?」というのがありません。難解な言葉もほとんどないので読みやすくてわかりやすいです。一気に下巻も読んでいこうと思います。
Posted by ブクログ
以前何かの番組で、小泉進次郎が塩野七生さん(の小説)が好きで・・・ということをおっしゃってて、その時初めて存在を知ったのだけど、読まれていた題材が中世の歴史関係でなんだか難しそうと思った印象しかなかった。
世界史は好きだけど、詳しくはない。十字軍って名前はよく知っているけど、どこに何しに行ったんだっけ?という感じ。(単純にヨーロッパの雰囲気が好きなだけ・・・)
それが、たまたま書店の平積みで本書を見かけて、あ。この人かと手に取ったのがきっかけ。
フリードリッヒ、、、聞いたことあるようなないような。(おそらく知らないのだろう)。帯を見ると「武力行使なしに聖地を奪還」や「独、伊、仏、ラテン、ギリシア、アラビア語を自在に使った」「ヨーロッパ初の国立大学を建学」と、なんだかすごいことを成し遂げた人物のよう。でも、法王に破門され、生涯を反逆者として過ごしたらしく、そのギャップが魅力的に見えて上下巻の長さにもかかわらず、購入してしまった。
ただ、この手の作品は手を付けるまで結構時間がかかる。ちょっと難しそうなので読み切れるか、読書モードを万全に望まねば、と思うからだ。
ただね、読み始めたら面白い。引き込まれる。世界史のこの時代は、この本を読めば一発じゃない?という感じ。宗教の強さが、すごいんだね。世界史は宗教を理解できたらほぼ理解したも同然なのかも。
そして、フリードリッヒが、すごすぎる。世界史の教科書に出てたかなぁ、出るべきだけど、私が覚えてないだけかも。神聖ローマ帝国の皇帝としてなるべくしてなった人物でもあるし、ふさわしい人物でもあった。革命児でもあり改革者でもある。
これから下巻だけど、どんな苦難が待ち受けていて乗り越えるのか、どんな生き様を見せてくれるのか、楽しみ。
Posted by ブクログ
塩野七生先生がずっと書きたかった人物を書いた本が文庫になったということを知り、購入しました。
高校時代に世界史を学んでいましたがあまり記憶に残っていない人物だったので、新鮮な気持ちで読め面白かったです。
ローマ法王の権力が絶大だった中世時代に、法王とどう折り合いをつけて改革を起こしていったのか。ルネサンスに繋がる一大人物の生き方は魅力的でした。
下巻の内容がたのしみです。
Posted by ブクログ
法王と熾烈な闘争を繰り広げたことで知られる、中世きっての知識人であった皇帝フリードリヒリッヒ二世の前半生。
エルサレムを血を流さず手に入れ、南イタリアのイスラム教徒と共存し、ミラノ大学を設立。
Posted by ブクログ
著者が長年書きたいと念じていたフリードリッヒ二世の生涯を描いた作品。
上巻は、誕生から始まり、神聖ローマ帝国皇帝即位、第6次十字軍におけるイスラム側との交渉によるイェルサレム回復、ナポリ大学の設立やメルフィ憲章に見られる皇帝を中心とする法治国家づくり、法王との対立、「法王派」に組するロンバルディア同盟との戦いなどが描かれる。
彼は、父ハインリッヒ六世(神聖ローマ帝国皇帝)、母コスタンツア(ノルマン朝シチリア王ルッジェロ二世の娘)の子として1194年に生まれ、三歳で父を亡くし、シチリア王に即位、その直後四歳で母も亡くしている。こうした厳しい状況にありながら、その出自もあり、神聖ローマ帝国皇帝の座に就くことになった、そんな彼が、どのような国の形を考え、いかにして自らの理想とするところを実現していくかに著者の関心があるようだ。
中世という時代に生まれ、時代にあまりにも先んじてしまった人だったなというのが、読んでの先ずもっての感想。
例えば、十字軍と言えばイスラム教徒との戦争による聖地奪還が当然視されていた時代に、交渉による講和を実現し、その咎でローマ法王から「キリストの敵」と断罪されてしまったことや、近代の先駆けともいうべき中央集権的な法治国家づくりを目指したことなど。