塩野七生のレビュー一覧
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突出した主人公が描かれるのではなく、多くのキャラクターが多彩に生き生き描かれている。その中でもやはり、イェルサレムの初代王になったボードワンの懐の大きさと、若き英雄タンクレディの活躍が目を引く。塩野さんに「チンピラ」「十字軍のチンピラ」と何度も書かれているが、チンピラも成長する、すごい。塩野さんの筆には、ボードワンとタンクレディへの愛があふれている。
殺戮と破壊の嵐ではある。戦争なのだから当たり前なのかもしれないが勝った方のやることが苛烈。
まえがきで著者が投げかけているテーマが気になる。今後読み進めると明らかになっていくのか、ぜひ続きを読む予定。
1.200年続いた十字軍時代で勝ったのはイス -
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☆☆☆2019年8月レビュー☆☆☆
「十字軍」とは、だれもが知っているようで、実際はよく知らない。そういうものでは無いだろうか。世界史を勉強しても、さらっと第一次だ、第三次だとあらすじをたどるだけで何もわからない。
本書では、十字軍というものが起こされた背景から、当時う人物の息遣いまで感じることができる、読み応えのある作品だ。
まず、背景として「カノッサの屈辱」から筆を進めるのが面白い。カノッサの屈辱の後、ローマ教会はハインリヒ4世に押されに押されたが、巻き返しのため、権威を取り戻すために十字軍が考えられたという。ウルバン2世によって。
「聖地を取り戻す」という目的だけではなかっ -
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ネタバレ西暦1571年、スペイン王フェリペ二世率いる西欧連合艦隊は、無敵トルコをついに破った。コンスタンティノープルの攻略から118年にして、トルコの地中海世界制覇の野望は潰えたのだ。しかし同時に、この戦いを契機に、海洋国家ヴェネツィアにも、歴史の主要舞台だった地中海にも、落日の陽が差し始めようとしていた。文明の交代期に生きた男たちを壮大に描く三部作、ここに完結。
「コンスタンティノープルの陥落 」「ロードス島攻防記」から続く一作。
迫りくるオスマントルコ帝国の脅威に立ち上がったヴェネツィア共和国を中心とした地中海世界。
レパントの海戦は、ガレー船が主力を成す大海戦としては最後の海戦となったが、十 -
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イスラム世界に対してキリスト教世界の最前線に位置するロードス島。コンスタンティノープルを陥落させ、巨大な帝国を形成しつつ西進を目指すオスマン・トルコにとっては、この島は喉元のトゲのような存在だった。1522年、大帝スレイマン1世はついに自ら陣頭指揮を取ってロードス島攻略戦を開始した―。島を守る聖ヨハネ騎士団との5ヶ月にわたる壮烈な攻防を描く歴史絵巻第2弾。
闘いが始まる前にロードス島に着任したイタリア騎士のアントニオと、
ヴェネツィア共和国が密かに送り込んだ城塞築城技師のマルティネンゴ。
この二人を登場させたことで、圧倒的防御にまわったロードス島攻防記の、
騎士たちの戦闘による活躍と、市民た -
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ネタバレまずは、皇帝フリードリッヒによる第6次十字軍。戦うこともせず、無血でイェルサレムを取り返したのにもかかわらず、無血という理由で法王に破門されてしまう。
これまで以上の成果が出てるにもかかわらず、反宗教的な十字軍とされてしまうところが、宗教戦争であったのだろう。
次は、聖王ルイによる第7次十字軍と第8次十字軍。散々な結果に終わってしまい、かつ、イスラム側に勢いを与えてしまう結果に。
さらに、悪い結果は続くもので、イスラムのスルタンも教養者から軍人奴隷の出身者へと変わってしまう。そのことが重なり、十字軍構想は200年の時を経て、なくなってしまうのだった。 -
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ネタバレ第1章は、イスラムの英雄サラディンと獅子心王リチャードによる第三次十字軍の話。
ヨーロッパ側の様々な思惑と裏の裏を読まなければならない政治情勢の中、フランスと手を組み十字軍を敢行するイギリス。また、先遣隊であったはずの赤ひげのフリードリヒの突然の死などドラマになる展開が本当に起こってしまうことが歴史の面白みなのかもしれないな、と感じた。
さらにほ、獅子心王リチャードの行き当たりばったりな行動がのちの平和へのメリットにつながっていくのも面白かった。
第2章は、ヴェネツィア主催の第四次十字軍。
計算し尽くされたであろうヴェネツィアの国益のために行われた十字軍。自らの経営支配領域の拡大とともにそこ -
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その距離を~競うより~♪ どう飛んだか、どこを飛んだのか♪
♪それが、一番、大切なんだ♪、そうである。
人生ならそんな生き方もあってはいいと思うが、これが勝負の世界、とくに戦争ではそうはいかない。どう飛ぼうが、どのルートを飛ぼうが最後に目的地に着けばいい(勝てばいい)のであって、目的地に着かない(目的を達成できない)のであれば、それは飛んでないのと同じだ。
十字軍の目的は聖地イェルサレムの奪還だ。それ以外ない。第六次十字軍を率いた神聖ローマ帝国皇帝のフリードリヒ二世はイスラム文化に通暁し、自らもアラビア語を解し、通訳なしで交渉にも臨めるほどの稀有な皇帝。スルタンのアル・カミールとも打ち -
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若々しく大胆な魂と冷徹な現実主義に支えられた時、政治もまた芸術的に美しい。ルネサンスとはそういう時代であった。女たちはその時、政争と戦乱の世を生き延びることが求められた。夫を敵国の人質にとられれば解放を求めて交渉し、生家の男たちの権力闘争に巻き込まれ、また時には籠城戦の指揮もとる――。時代を代表する四人の女の人生を鮮やかに描き出した、塩野文学の出発点。
「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」と同時期に読むと理解が深まると思います。
魅力あふれる4人の女性が取り上げられており、個人的な好みランキングを作るとすると…
1.カテリーナ・スフォルツァ
2.イザベッラ・デステ
3.カテリーナ・ -
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十字軍がどのようにして成りどのようにイェルサレムを奪還していくかの物語を塩野七生氏の人物を中心にして紡ぐスタンスで描かれる。
この書は十字軍がエルサレムを奪還し、十字軍国家を形成するまでが描かれる。
書くというよりは描かれるというような感覚になるのは塩野七生氏の人物を中心にして感性から入って理屈に繋げていくスタンスならではなのだろう。
事実の列挙とは正反対に位置する氏の描く歴史物語は、フィクションを読んでいるような心地で歴史を読むことができる非常に稀有な本だ。
物語の当時、
ローマ皇帝と法王の対立は「カノッサの屈辱」という事件をきっかけに、決裂は決定的となる。
そこで法王はローマ皇帝に -
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まず現実を知る。海外の報道もきちんと見ることが大切。
外国語は道具として学ぶ。何より大切なのは母国語。
選択肢を多く持ち、情報を集める。
そのコツは軸となる考えを立てて、そこに磁石のように情報を引き寄せる。
著者が子どもを育てる際に気をつけたのは2点。
語学。つまり道具を身につけさせたこと。
そして、自分の頭で考えること。話す時にはあなたはどう考えているの。と言うように心がけたとのこと。
他から刺激を受けて、自分なりに創った結果が独創性の高い作品であり、何もない所からは生まれない。
だから多くのことに好奇心を持つのは自分を豊かにするだけでなく、独創の出発点でもある。
短時間で読める。もっと -
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あいかわらずの塩野節で、飽きさせない一品。
イスラムの海賊がキリスト教徒に対してどう対したかがよく分かった。ジハードとグエッラ・サンタ、どちらも聖戦と訳すのだなと妙に納得した。トルコがEU加盟を望んでいるが、この本を読んでしまうと、イスラム色を一掃できない限りトルコのEU加盟は無理と思ってしまう。
[private]以下心に残った部分
・情報とは、量が多ければそれをもとにして下す判断もより正確度が増す、とは、全くの誤解である。
情報は、たとえ与えられる量が少なくても、その意味を素早く正確に読み取る能力を持った人の手に渡ったときに、初めて活きる。P.57
・トップを失ったアラブ人の兵士たち